概要
初の同社設計による通勤形電車。
当時建設中だった片福連絡線(JR東西線)への直通運転を考慮して設計が行われ、乗り入れる学研都市線・JR京都線・JR神戸線・JR宝塚線へ導入された。
221系の4ドアロングシート版という設計コンセプトで、国鉄・JRの通勤形では初となる幅広車体を採用した。車内を広く見せる意向から、当時の関西私鉄の通勤形と同様座席端部のスタンションポールが省略されている。
妻面には開閉可能かつ換気可能な大型の窓を設置した関係から、車内貫通路が中心からずらされて設置されているという他に例を見ない構造となった。
最高速度は120km/hで、導入当時最速の通勤形電車である。非常扉の設置や離線対策としてパンタグラフの2基搭載(1996年以降)を行なっている。
量産先行車を除いて、3両+4両で分割運用できるようになっているが、これは導入当時、学研都市線松井山手以東のホーム有効長が4両しかなかったことによる(現在は7両に延長済み)。このほか和田岬線の代走時には3両で運用されることもあった。
なお、カラーリングは登場時はブルーの濃淡の帯であったが、2005年のJR福知山線脱線事故後、遺族の感情に配慮して大幅に変更して現在の濃紺とオレンジの帯となった。321系も当初は207系と同じカラーで登場する予定であったが、同じ理由で濃紺とオレンジ帯となった。この塗装変更の影響は実車ばかりでなく、鉄道模型(TOMIX)やゲーム(電車でGO!)にも及んだ(鉄道模型では旧塗装の絶版、「電車でGO!FINAL」の東海道線パートのPSP移植で影響を及ぼした)。
座席モケットも登場時は青色であったが、尼崎脱線事故後に緑色に変更された(321系も同様)。
営業最高速度 | 120km/h |
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起動加速度 | 2.7km/h/s(0番台登場時)→2.5km/h/s |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)、4.2km/h/s(非常) |
歯車比 | 14:99=1:7.07 |
動力伝達方式 | WN平行カルダン |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 ※出力は1時間定格
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制御装置 | PWMインバータによるVVVF制御
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台車 | ボルスタレス台車
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WN平行カルダン駆動方式はJR在来線車両として初採用で、以後のJR西日本の在来線車両は一律、WN駆動が選ばれている。
歴史
1991年1月に、量産先行車として7両編成1本が登場。各種試験の後、同年4月に学研都市線で運用を開始。
同年12月以降、量産車が2代目淀川電車区(現在の明石支所放出派出所)に配置された。
1993年3月には、0番台2次車が淀川電車区と、新たにJR宝塚線用として宮原電車区(現在の網干総合車両所宮原支所)に配置された。2次車として落成した編成は、クハ207・クハ206の車番が130から始まっていることから区別できる。
1994年度以降の増備は1000番台に移行。まず1994年3月に、JR京都・神戸線向けとして6両編成・2両編成が製造され、吹田工場高槻派出所(現在の明石支所高槻派出所)に配置された。主に6両・8両編成で普通列車に運用されていた。
1995年3月には、1000番台2次車が宝塚用として3両編成・4両編成で製造され、宮原電車区に配置された。これ以降製造される207系は、全て3両または4両編成に(1000番台1次車と2次車以降では、ドアガラスの形態で区別が可能)。
1996年5月から、開業を1997年3月に控えたJR東西線への直通運転に備え、207系全体の整理が行われた。これによる編成組み替えの途上で5両編成が見られることもあった。
- まず、京都・神戸線用の1000番台6両編成からモハ207・サハ207を1両ずつ抜き取り4両化。抜き取ったサハ207は2両編成に組み込んで3両化。
- 0番台の3両編成は、出力が低く東西線での運用に支障を来すことが懸念されたため、前述の6両編成から抜き取ったモハ207からパンタグラフ撤去・車番に+500して1500番台に改番の上で組み込み4両化した。元から組み込まれていたモハ207形0番台も、改造され車番に+500されている。
それに先立って1996年3月には、1000番台3次車として4両編成・3両編成が少数と、組み込み用の1500番台が2両製造された。さらに、4両編成と併結する3両編成を確保するため、1996年7月から翌年1月にかけて1000番台4次車が3両編成28本と大量に製造された。この時点で、3両編成55本・4両編成58本・7両編成1本が在籍。
2002年からは2000番台が製造された。側面に主電動機冷却風取り込み用のルーバーがあるのが特徴。またVVVFの素子がGTOからIGBTに変更されている。2002年1月と、2003年6〜8月の2次に亘って3両編成12本・4両編成11本が増備され、総勢484両が出揃っている。
福知山線脱線事故を受け、Z16編成とS18編成が運用離脱。2010年3月のダイヤ改正では片町線の4両編成での運用が消滅したため、T18編成からモハ207-1032号車を抜き3両編成にすることで3両編成と4両編成の数を揃え、一時は全ての運用が7両のみで揃えられていた。
所属・運用
すべての車両が網干総合車両所に所属し、明石支所に配置されている。基本的に321系と共通運用。
7両編成
- 東海道・山陽本線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線):野洲 - 加古川
- 日中は京都 - 西明石間で運用。草津・加古川乗り入れは平日朝ラッシュ、野洲乗り入れは毎日最終電車のみ。普通電車として運転される。
- 福知山線(JR宝塚線):尼崎 - 篠山口
- 日中は尼崎 - 新三田間で運用。篠山口乗り入れは朝晩のみ。基本的に大阪で折り返すか、JR京都線およびJR東西線・学研都市線と直通。普通電車・快速として運転される。
- JR東西線・片町線(学研都市線)・関西本線(大和路線):尼崎 - 京橋 - 木津 - 奈良
- JR神戸線・JR宝塚線と直通運転するほか、学研都市線内のみの運用もあり。普通電車・区間快速・快速として運転される。早朝・深夜に限り木津 - 奈良間も走る。
6両編成
- 和田岬線:兵庫 - 和田岬
- 2022年12月6日、突如として明石支所構内にて207系の貫通6連が組成されているという情報が出た。それから約3ヶ月後、公式より和田岬線専用の103系R1編成(6両)が引退するという旨の発表がされ、以降は専用のX1編成が運用に就いた。このX1編成は本来は4両組成であったT3編成とT18編成(久しく使われていなかったモハ207-1032が組み込まれている)から片側の先頭車1両ずつを外して、6両に組み直したもの。
- 余った片側の先頭車1両ずつは2両編成のY1編成を組成し、現在は休車扱いを受けている。
- T3編成とT18編成、それぞれの元の併結相手であったZ19編成とS3編成はペアを組んで営業運転に就いている。
- 和田岬線の103系時代は検査時の代走で207系が使用されていた。付属の3両を2編成繋げた6両編成、土曜日ダイヤもしくは休日ダイヤでは3両編成単独。この場合は方向幕は用意されず、行先は表示されなかった。
過去の使用路線
編成・車両形式
- クモハ207形
- 京都寄りの先頭に連結される制御電動車。パンタグラフと主回路機器を搭載。0番台には存在しない。2018年時点で、3両編成のクモハ207形は和田岬線での代走に使われる場合以外、営業運転で先頭に立つことはない。
- モハ207形
- 0・500番台:パンタグラフと主回路機器、空気圧縮機を搭載する中間電動車。0番台は単独もしくはモハ206形とユニットを組んで使用。0番台から改造の500番台は1500番台とユニットを組んで使用。
- 1000・2000番台:パンタグラフと主回路機器を搭載する中間電動車。単独で使用。女性専用車両。
- 1500番台:モハ207形500番台とユニットを組んで使用される中間電動車。1000番台からの改造車(改造時にパンタグラフを撤去)と当初から1500番台として製造された車両(登場時から乗降ドアに複層ガラス採用)がある。女性専用車両。
- モハ206形
- モハ207形0番台とユニットを組んで使用される中間電動車。モハ207形0番台からパンタグラフ・空気圧縮機・静止型インバータを省略。女性専用車両。
- クハ207形
- 京都寄りの先頭に連結される制御車。0番台のみ存在。当初から電気連結器を装備した編成は100番台と区別されたが、のちに試作編成以外の0番台にも電気連結器が装備された。1000・2000番台はクモハ207形がこの位置に連結されるため存在しない。
- クハ206形
- 西明石・新三田寄りの先頭に連結される制御車。0番台は試作編成のみで、すべてのZ編成・H編成は100番台が連結されている。2000番台は連結面の南側に車椅子スペースがある。2010年3月以降、4両編成のクハ206形は試運転を除き、営業運転で先頭に立つことはない。
- サハ207形
- 付随車。0番台は試作編成に2両のみ存在し、1000番台・2000番台はでは1編成につき1両連結されている。1000番台T1 - T14編成のサハ207形は、製造当初は6両編成に連結されていたため、空気圧縮機付きの1100番台。
最盛期の組成
「#xxx」は「xxx番台」を示す。斜字は女性専用車両。
←京都・木津・奈良(学研都市線経由) / 西明石・新三田→
←奈良(おおさか東線経由。直通快速) / 新大阪→
0番台
編成 | |||||||
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F1 | クハ207-1 | モハ207-1 | モハ206-1 | サハ207-1 | サハ207-2 | モハ207-2 | クハ206-1 |
Z1 - Z16 | クハ207-#0 | モハ207-#0 | モハ206-#0 | クハ206-#100 | |||
H1 - H16 | クハ207-#100 | モハ207-#500 | モハ206-#1500 | クハ206-#100 | |||
Z17 - Z23 | クハ207-#100 | モハ207-#0 | モハ206-#0 | クハ206-#100 |
※F1編成は量産先行車
1000番台
編成 | ||||
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T1 - T14 | クモハ207-#1000 | サハ207-#1100 | モハ207-#1000 | クハ206-#1000 |
T15 - T19 | クモハ207-#1000 | サハ207-#1000 | モハ207-#1000 | クハ206-#1000 |
S1 - S55 | クモハ207-#1000 | サハ207-#1000 | クハ206-#1000 |
※T18編成はモハ207-1032号車を抜き取って暫定3両で運用されていた。
2000番台
編成 | ||||
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T20 - T30 | クモハ207-#2000 | サハ207-#2000 | モハ207-#2000 | クハ206-#2000 |
S56 - S57 | クモハ207-#2000 | サハ207-#2000 | クハ206-#2000 |
体質改善工事
2014年9月出場のZ22編成を皮切りに、207系の体質改善工事がスタート。主な改造内容は以下の通り。
- 221系同様に前照灯がHIDランプに変更。一部編成はLED前照灯に変更。
- 前面カラーデザイン変更。
- 行先表示器のフルカラーLED化及び号車表示の増設。種別幕はそのまま。
- 化粧板の貼り替え、消火器を座席下に移動。
- 座席のバケットシート化、袖仕切りの大型化。
- 座席定員を利用実態に合わせ7人がけから6人がけへ。
- スタンションポールの設置。座席間は3人目と4人目の間に挟んでいる肘掛状の仕切板との一体構造。
- 室内灯を蛍光灯カバーつきの物からコイト工業製の反射式LED灯へ交換。
- 主制御器は電子部品を総取り換え。0・500番台は三菱電機、1000・1500番台は東芝が担当。
- 補助電源装置の更新。
- 主電動機を換装し、センサレス制御化(0・500番台の一部)。
- 運転台の計器類(圧力・速度・電流・電圧)をデジタル表示からアナログ針式へ交換(2000番台は最初からアナログ針)。先頭に出る機会が殆ど無い3両編成のクモハ207及び4両編成のクハ206は対象外。それ以外で交換されなかった先頭車も存在。
なお、量産先行車F1編成(クハ207-1 - モハ207-1 - モハ206-1 - サハ207-1 - サハ207-2 - モハ207-2 - クハ206-1)は最初から体質改善工事の対象外とされており、2022年4月6日に吹田総合車両所に廃車回送された。
体質改善工事について少々こぼれ話
- 体質改善工事を受けている編成はVVVFがIGBTになっているが、S39編成とT19編成はインバータ未更新のまま(GTOで)出場した。また、その2編成は前面の行き先表示器が側面と同じようにある一定の速度以上で消えるといった他には見られない特徴もあった(インバータが更新されているか否かで区別するために表示器をそうしたのではという推測もあるが詳細は不明)。現在は2編成ともインバータが更新されているので見ることができない(今後また出てくる可能性もなくはないが)。
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───が、今度は別の形で特殊な更新車が出てきた。
インバータは更新されているが、車内の照明がそのままというものである。そのせいで更新車でありながら車内は未更新時代の暖かみのある雰囲気が出ている。
コストカットなどと言われてたりする(らしい)がこちらも詳細は不明。2023年3月中旬時点ではまだいるが(なんなら工事受けて増えていたり)、こちらもいつまでいるか分からないので記録する方はお早めに。
第2のリニューアル?
2023年2月下旬に奈良支社所属の221系の種別幕換装が話題になったが、それから約2週間後の3月8日、207系にも種別幕LED換装車が誕生したという目撃ツイートが出た。最初の搭載車はZ23編成+S16編成。221系とは違いこちらは似合ってるや違和感ないと言った感じで概ね好評のようである。一方でまたJR西の特徴的なフォントが減っていくと言った声もある。
福知山線脱線事故
2005年4月25日9時18分ごろ、福知山線(JR宝塚線)塚口→尼崎間で宝塚発同志社前行き上り快速5418Mが、右カーブで脱線し、先頭2両が進行方向左側にあるマンションに衝突した。事故に遭ったのはZ16編成(4両)+S18編成(3両)の7両。この7両はZ16編成先頭に学研都市線の京田辺駅まで併結した後、京田辺駅でS18編成を切り離し、Z16編成のみの4両が同志社前駅まで向かう予定だった。Z16編成の先頭車両がマンション1階の駐車場に横転して衝突し、前から2両目がマンションの側壁に衝突、3両目、4両目も脱線し、S18編成も最後尾と2両目の後ろの台車を除きすべて脱線した。
Z16編成の4両は事故当日に車籍を抹消され、復旧の際に現場で解体された。S18編成は人力で塚口駅へ回送、DD51の牽引で宮原総合運転所(現・網干総合車両所宮原支所)に搬入された。その後3両が兵庫県警に押収され、前4両の台車とともに保管された。2011年2月1日付で神戸地方検察庁が保管していた編成をJR西日本に返還した。2018年11月17日、JR西日本は解体されたZ16編成を含め保存する意向を発表した。
900番台との関係
日本国有鉄道が1986年にVVVFインバータ制御試験のため試作し、常磐緩行線に投入した207系900番台とは、形式が同一なだけで何の関係もない。
関連タグ
東海道本線 山陽本線 JR京都線 JR神戸線 福知山線(JR宝塚線) JR東西線 片町線(学研都市線)おおさか東線
321系:207系の後継車両。分割運用には最初から対応していない。
209系···本系列より少し後れてデビューしたJR東日本の通勤車両。コンセプトは違えどある意味同期のような形式で、両者を比較する特集が鉄道雑誌で組まれたことがある。