概要
1989年から1992年にかけてJR西日本が新製・投入した直流近郊形電車。
JR西日本では初の在来線用新造車両。
(よく勘違いされるが、初の新形式ではない)
斬新なデザインと、最高速度120km/hを叩き出す高性能、そして快適な内装で高評価を獲得し、JR西日本のイメージアップに多大な貢献を果たした。
特に新快速においては競合私鉄との差別化に成功。以後のJR西日本の一般型車両の基本形を作り上げたといっても過言ではない。
本形式の最大の特徴として、車体は普通鋼製であるがアルミ車両に匹敵する軽量車体であることと、異なるユニット方式の混在が挙げられる。
通常、一形式内のユニット方式は一種類であるが、221系はMM'方式と1M方式の両方が採用されている。MM'方式は「221」、1M方式は「220」の形式を使用している。
最高速度は120km/hであるが、初期グループの一部は681系開発のために改造の上で湖西線での160km/h試運転を実施した実績もある。
潮風の影響を受けやすいJR京都線・JR神戸線での走行に対応するため、海寄りに空気制御部品、山寄りに電気部品関係を集中的に配置した。
車両編成は当初2両、4両、6両とあり、のちに8両編成が登場した。
2011年3月までに2両編成はすべて4両編成に組み替えられた。
性能
最高速度 | 120km/h |
---|---|
歯車比 | 16:83=1:5.19 |
制御方式 | 直並列組合せ抵抗制御・界磁添加励磁制御 |
起動加速度 | 2.5km/h/s(登場時)→2.1km/h/s |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)、4.2km/h/s(非常) |
走行機器は205系1000番台・213系の設計を踏襲している。
MM’ユニット車であるクモハ221形・モハ221形には主電動機としてWMT61S(定格120kw 端子電圧375V時)を搭載し、クモハ221形に搭載されたWCS57B形主抵抗器によって2両分8台が制御される。
単独M車であるクモハ220形・モハ220形には主電動機としてWMT64S(定格120kw 端子電圧750V時)を搭載し、各車両に搭載されたWCS59C形主抵抗器によって自車の4台が制御される。
213系に引き続き、補助電源装置には静止形インバータを採用。クモハ220形・モハ221形・モハ220形に搭載され、空気圧縮機や冷房装置、添加励磁装置などの電源を供給する。
台車はヨーダンパ取付台座付のWDT50H・WTR235Hである。当初はヨーダンパが未設置であったが、1998年以降、順次取り付けが行われている。
電動車比率は1:1が原則とされ、現在は8・6・4両編成が存在。
2両編成については、編成組み換えにより現在は消滅している。
クモハ221-モハ221-サハ221-クハ221を基本とする「221形グループ」と、クモハ220-サハ220-モハ220-クハ220を基本とする「220形グループ」が並行して製造され、以下のように編成組成された。
編成形態 | 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 | 7号車 | 8号車 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8両 | クハ221 | サハ220 | モハ220 | サハ220 | モハ220 | サハ221 | モハ221 | クモハ221 |
6両 | クハ221 | サハ220 | モハ220 | サハ221 | モハ221 | クモハ221 | ||
4両 | クハ221 | サハ221 | モハ221 | クモハ221 | ||||
2両→4両 | クハ220 | モハ220 | サハ220 | クモハ220 |
※太字は220形グループ。
※221形グループはモハ221形に、220形グループはクハ220形・サハ220形に空気圧縮機を搭載する。
※2両編成はクハ220-クモハ220の組成で登場し、8両・6両編成から抜き取ったモハ220-サハ220を組み込んで4両化。
運用
当初は混雑が激しくなっていた東海道・山陽本線系統(JR琵琶湖・京都・神戸線)の新快速等に投入され、117系を置き換えた。
同時期に関西本線(大和路線)の快速・大和路快速にも投入され、113系の運用を置き換えた。
登場初期には臨時急行時代の「きのさき」など夏場の紀伊・山陰方面への臨時急行にも充当されていたことがある。「遜色急行」扱いされたりしていたが、この頃完全に陳腐化していたキハ58系急行用気動車や165系急行型電車に派生型である元修学旅行用の167系よりは速度も速く、騒音も少なく座席の質も良かった。
製造開始から5年後に最高速度130km/hの223系が登場し、定期運用では新快速から撤退した。
しかし、今もなおアーバンネットワーク内各線において快速・普通列車に広く運用されている。
223系に比べると車両のバリエーションや改造も少なく、塗装も登場時より変わっていない。
JR西日本の鋼製車で行われている塗装単色化については、221系については今の所は行う予定がない事が同社から発表されている。
2024年までに225系のさらなる導入によりJR京都線・神戸線から全車撤退し、玉突きで奈良支所の201系を置き換える予定。
その先陣を切る形で2022年ダイヤ改正でおおさか東線の定期運用から201系を追い出した。
さらに同年網干総合車両所および奈良支所所属の一部編成が京都支所に転属し、113系、117系を置き換えている。
2023年度からは207系、321系に代わって直通快速運用にも入ることに。一部では、編成数が足りなくなる為、上記2形式もおおさか東線内普通列車としてとして運用されると報道されたが、やり繰りが上手くいったのか、おおさか東線での207系、321系の定期運用は消滅することになった(結果同線のVVVF車運用がゼロになった。ちなみに大和路線は平日1本存在する西明石発奈良行き、および奈良発西明石行きが残存)。
体質改善工事
これまで国鉄型車両を対象に施行されてきたJR西日本の体質改善工事だったが、2012年末より自社オリジナル車である本系列にも施行されることになった。
工事内容は213系に施行されたものとほぼ同じ要領だが、ヘッドライトがHIDランプ4灯(左右各2灯)になった点が最も注目を浴びている。
制御方式は更新されず、直並列組合せ抵抗制御・界磁添加励磁制御のままである。
他にドアチャイム・ドア上へのLEDの設置・正面の行先LED・トイレの大型化・立席スペースの拡大と同スペースの椅子の補助椅子化などが行われ、吊り革も225系と同様のものに変更されている。
単独運用にしか使用しない編成を除き、先頭車両の先頭部に転落防止ホロを装着している。
また2020年までに側面行先表示機のフルカラーLED化が追加で行われた。
体質改善工事は2020年3月末までに全車に対して施行され、原型車は消滅している。
ちなみに京都鉄道博物館に展示されているモックアップは更新されていない。
プチリニューアル?
そんな221系だが、全車リニューアルされてから3年近く経った2023年2月下旬、突如種別幕がフルカラーLEDに換装されたという目撃情報が出た(リンク先は一例。目撃情報は他にもある)。体質改善工事と同時に種別表示が変更されたケースはこれまでにも存在するが、221系は体質改善工事時は種別表示器はそのままであった(まだ幕で大丈夫と判断されたのかもしれないが真偽は不明)。なお種別表示器と行先表示器でシャッタースピードの許容値がかなり異なる(前者は1/1000、後者は1/125)。鉄オタたちからはわけわからんとかどんだけ使い倒す気だよなどの(ある意味当たり前であろう)反応が出ている。
この換装工事自体は、2023年3月までに奈良支所所属の8両編成全てに行われ、2024年2月中旬から奈良支所所属の4両編成を対象に施行が再開された。
またこの衝撃的な情報から約2週間後、今度は別の車両でも同じことが起きた(詳しくはリンク先を参照)。
編成・配置車両所
←長浜・JR難波・京都(嵯峨野・山陰線)
上郡・播州赤穂・加茂・京都(奈良線)→
8両 | クモハ221(Mc) | モハ221(M') | サハ221(T) | モハ220(M1) | サハ220(T1) | モハ220(M1) | サハ220(T1) | クハ221(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6両 | クモハ221(Mc) | モハ221(M') | サハ221(T) | モハ220(M1) | サハ220(T1) | クハ221(Tc) | ||
4両(MM') | クモハ221(Mc) | モハ221(M') | サハ221(T) | クハ221(Tc) | ||||
4両(1M) | クモハ220(M1c) | サハ220(T1) | モハ220(M1) | クハ220(T1c) | ||||
2両(消滅) | クモハ220(M1c) | クハ220(T1c) |
網干総合車両所本所
- 8両編成:A編成
- 6両編成:B編成
- 4両編成:C編成
吹田総合車両所京都支所
- 6両編成:F編成
- 4両編成:K編成
吹田総合車両所奈良支所
- 8両編成:NB編成
- 6両編成:NC編成
- 4両編成:NA編成
余談
- 形式名は213系の続形式として「215系・217系」とすることも検討されたが、新生JR西日本の意気込みを込めて、一の位を1とした「221系」となった。2形式が検討されたのは、電動車方式ごとに形式を分ける案だったため。最終的に電動車方式の違いは形式の奇数・偶数(221形・220形)で区別することになったが、215・217は後にJR東日本で採用されることになる。
- 223系との連結運転が可能で、かつてはこのコンビでの新快速運用が見られた。また、223系の5500番台や6000番台は性能を221系に合わせたグループであり、現在でも日常的にコンビを組んでいる。
- 嵯峨野線向けの車両の一部は、寒冷地対策でパンタグラフを増設している。
- JR他社では311系など同時期に製造された形式や後に製造された形式にも既に置き換えによる廃車が出ているのだが、本形式は登場から34年経った現在も1両の廃車も出ておらず全車が健在である。