概要
京阪神地区の新快速で使用されてきた153系を置き換え、並行私鉄との競争に対応することを目的として開発された。
ライバルとの差別化を図るべく、近郊形ながら2扉転換クロスシート、木目調の化粧板、吊革を未装備という当時としては画期的な設備で登場した。デザインもスピード感を重視したもので、貫通扉を持たない流線形となった。
国鉄の電車では初めて電気連結器と自動解結装置を搭載しており、連結の省力化に貢献している(同じメカニズムで併結運用の多い185系には搭載されなかった)。
登場時にはメイン画像のようなクリームとマルーンの塗装で登場したが、これは戦前の流電52系の流れをくむものである。現在でもJR西日本の歴代新快速用車両にこの配色は引き継がれている。
1982年には名古屋地区にも投入され、それまで名鉄が有利だった豊橋~岐阜間での巻き返しを図った。名古屋地区導入分は耐寒・耐雪装備や電気連結器・自動解結装置が省略されるなど、見た目はほぼ同じだが走行地域に合わせた仕様の変更が見られる。
1986年の最終増備車はマイナーチェンジが実施され、側面窓を1段下降、台車を205系等と同じボルスタレス式に変更し100番台に区分された。100番台は京阪神と名古屋地区ともに導入されたが、後者は先頭車のみで編成がそれまでの6両から4両に短縮され、全編成に側窓で1段と2段が入り混じることとなった。
その優秀な車内設備とスタイリッシュなデザインは大いに注目を集めたが、2扉ゆえにラッシュ時の詰め込みが効かない上、乗り降りに時間がかかるという欠点も持ち合わせており、JR化後は地方電化線区への転用が進んだが、すでにそこでも2扉の中途半端さが嫌われ、ワンマン化等で撤退した路線も多い。
1981年に登場した185系は117系とよく似た車両で比較の対象となり易い。実際、落成当初の新車解説では本形式のメカシステムを「将来の急行形置き換え用として活用可能…」と記しており、その設計方針が生かされたことになる。
1980年鉄道友の会ローレル賞受賞。
民営化後
JR東海
JR東海では東海道線名古屋地区を中心に運用され、車体は白とオレンジ、床下はグレーのJR東海流の塗装に改められた。1989年3月より設定された新快速にも投入された他、特急・急行(いずれも臨時列車のみ)、特別快速、区間快速、普通と幅広い運用実績がある。
花形だった新快速運用は、同年7月に登場した311系に早々に置き換えられ、普通列車での運用も徐々に縮小。
末期にはラッシュ時の運用終了後、熱田駅構内で留置される姿がお約束のように見られた。
- 1編成が期間限定でイベント用車両「トレイン117」に改造・運用されていた。
- 現在はクハ117-30が原色に復元の上でリニア・鉄道館に屋内で静態保存されている。当初は休憩スペースも兼ねて3両屋外保存されていたが、N700系を屋外展示するスペースを確保する為、ともに置かれていたクハ116-209とモハ117-59の2両が展示終了・撤去された。
JR西日本
JR西日本でも新快速、快速のほかに急行、マリンライナーなど幅広い運用実績があるが、JR東海と同じく新快速運用は221系に譲り、後に湖西線・草津線・紀勢本線・福知山線・山陽本線(岡山以西)等へ転用されていった。転用に際し、一部編成は混雑対策でつり革を設置したほかドア付近をロングシートに改造の上で300番台へ改番。
また、その際余剰となったモハユニットは、115系3500番台に改造されて山陽本線に投入された。
- 2010年からは地域塗装(所謂抹茶色や末期色)への塗り替えが進んでおり、原色の編成は消滅した。また、元々の車内設備が優秀なためか、JR西日本のお家芸ともいえる体質改善工事は施工されなかった。
- 2015年より廃車を開始。2016年1月に山口地区、2019年3月に和歌山地区、2023年4月に京都地区から撤退。最後まで残ったのは山陽本線岡山地区と赤穂線で、227系500番台の導入に伴い2023年7月21日をもって定期運行を終了。
- クルーズトレイン『トワイライトエクスプレス瑞風』と対になる廉価版の特急列車として、1編成が大規模改造を受け、『WESTEXPRESS銀河』として2020年5月より運行を開始した。車体の見た目や設備から寝台特急と勘違いされがちだが、書類上は寝台車を表す「ネ」の記号は未使用。
- 現時点で車藉を持つ117系はこの『銀河』編成。他は117系由来の115系3500番台ぐらいとなった。
- 2022年5月に廃車されたクハ117-1が原色に復元の上で吹田総合車両所に保管され、のち2023年7月29日より京都鉄道博物館で保存・展示されている。