概要
株式会社関水金属が製造・販売する鉄道模型のブランド。
1965年に日本で最初にNゲージを発売し、その普及の立役者となった。
社名は創業地である東京都文京区「関」口「水」道町、ブランド名は創業者名の「加藤」祐治 にそれぞれ由来している。なお現在も加藤家は経営に関わっている。
最初のモデルは、1965年に発売したC50形蒸気機関車とオハ31形客車であり、これは改良されながら2024年現在に至るまで製造され続けているロングランモデルである。
2015年には、50周年記念としてC50形蒸気機関車の特別パッケージが発売されている。
その間1986年には、国内型1/80のHOゲージ(16番ゲージ)に参入している。
鉄道模型の国内市場においてはTOMIXと並ぶ二大巨頭の一角を占めている。
車両
昔から品質および技術力の高さに定評があり、国内生産でありながら価格も比較的安価な設定であり、また後述する鉄道模型への新規入門者向けのセットにも力を入れていることから、多くのファンを獲得している。
さらに、車体を分解せずにトレインマークを変更できる構造や、実車さながらに曲線で車体が傾く振り子機能など、新技術の開発にも余念がない。
TOMIXと異なり車番や別パーツは基本的に全て装着済みの状態で販売しているため、購入直後から遊べるという特徴も持つ(ただし、車番がすでに記入されていることから、他の編成を再現するのに一手間かかるデメリットもある)。
製品展開はメジャーな車両や話題性の高い新型車が多く、良くも悪くも非常に手堅い。そのため国鉄・JR車両の割合が多く、逆に売れ筋が偏りがちな傾向がある私鉄車両のモデルは少なめである(過去のカタログでは、大手私鉄の代表的な車両の製品化を見込んでいる旨が告知されていたが、京急800形や阪急6300系以外は未発売のまま至る)。
性格の似ているTOMIXとは、古くから(国鉄時代の200系新幹線や211系など)競作になることが多々ある。特に新幹線や首都圏の新型車両で何度もぶつかり合い、その度にユーザーに天秤にかけられている。
中には両方とも購入し、出来を比較して楽しむユーザーも一定数存在する。
しかしながら、2010年代中盤からはメジャーな車両を漁りつくしたためか、マイクロエースやグリーンマックスの土俵だったマイナー車両や過去の車両(昭和後期の急行列車等)も手掛けるようになり、後発とはいえこの二社とも競作する例が発生している。
この傾向は、ライバルであるTOMIXにも共通している。
また、近年では国鉄形車両を製品化するも、訴求している購買層の関係や、JRへの許諾申請の手間を回避するためからか、JR化後の仕様を一切出さない場合(103系や119系、415系など)もあり、仕様そのものが大きく偏る傾向も見られる。
特別企画品
通常製品の色替えを行ったもの。あくまで色を変えただけで、金型には手を入れてないタイプ品扱いのものが多い。通常製品と違って再生産は行われないが、後に通常製品扱いで再販されることもある。
レジェンドコレクション
鉄道史を語る上でエポックメイキングとなる昭和の名列車を中心に展開されるシリーズ。
特別企画品扱いで再生産はない。在庫を売りつくした時点で販売終了となるが、仕様を一部変えて通常製品として再販されることもある。
ベストセレクション
入門者向けのシリーズで、紙製パッケージに身近で親しみやすい新型車両をまとめた3~4両編成のセット。これにより新規の鉄道模型趣味者を増やし、業績を大きく伸ばしたといわれている。
ポケットライン
2軸車を題材とシリーズで、専用の小型動力を組み込んだもの。遊園地のおとぎ列車を思わせるチビロコ・チビ客車、2両編成の軽快電車風路面電車のチビ電、産業用機関車を思わせる電気機関車のチビ凸、無蓋貨車のチビ貨車がある。
なおポケットライン用動力ユニットは単体でも販売されており、BトレインショーティーのNゲージ化で重宝されている。
独自の装備品
- KATOカプラー
密着連結器と自動連結器を模した外観のカプラーで、台車マウント形とボディマウント形の2種類がある。密着連結器形は電気連結器に見立てたアーノルドカプラー形のフックで固定される。
2010年代後半より密着連結器形のKATOカプラーから電気連結器に見立てたフックをなくした新タイプを装備した製品が発売されている。
- オープンノーズカプラー
E2・E3・E4系の先頭部に装備されている新幹線用連結器を再現したもの。現車同様に前頭部が左右に分かれて連結器が飛び出る構造であるが、それゆえに操作が複雑だったり、パーツが外れやすかったりするのが玉に瑕。E5・E6系については先頭形状の問題からかオープンノーズカプラーを装備せず、先発のTOMIX製同様ノーズカバーを外すタイプとなった。
- ダイヤフラムカプラー
0・200・E3・E5・E6系以外の新幹線車両に装備されている編成中間用連結器。貫通幌そのものが連結器となっている。
- KATOダイヤフラムカプラー
ダイヤフラムカプラーと名前こそ似ているが、こちらは貫通幌に連結機能を持たせず、その下にある密着連結器で連結を固定するもの。
- 変換式トレインマーク
先頭車のトレインマークを付属のドライバーだけで簡単に変更できる構造で、485系や381系といった「電気釜」顔の国鉄特急車や、24系客車などを中心に採用。更にトレインマークのパーツ自体を別売品に交換することも可能なため、多種多様な列車を再現できる。
ただし、トレインマークの表面が曲面になっている事と、装着位置が奥まってしまうという欠点もあり、ライバルのTOMIXはトレインマークをプリズムの表面に直接印刷するという構造により差別化している。
- 振り子機構
実車が振り子機構を装備している381系や883系といった車両で採用。E351系から採用され、実車同様にカーブで車体が傾斜するもので、迫力ある走行を演出する。
開発当時はカント付きレールが発売されていなかったこともあり、画期的だと話題になった。
- サスペンション機構
集電用の金属板を板バネとし、台車や車軸に加重を加えることで走行安定性を高め、脱線・逸走を防ぎつつ集電の安定をはかる。
- ローフランジ車輪
従来の車輪よりフランジを低くし、厚さも薄くして形状をより実感的にしたもの。
- 運転台シースルー
ライトユニットを小型化することで電車の運転台と客室の仕切りを再現したもの。
- スロットレスモータ
通常のモータにある鉄芯溝(スロット)を廃止し、巻線を円筒状の鉄芯に接着・固定した構造のモータを指す。当社はこれを鉄道模型に採用することで、コキングと呼ばれる回転時の振動を低減し、スムーズな走行を行うとしている。また走行時の静粛性も向上しているとされる。2024年現在は、新製品のほとんどに採用されている。ただし、モータの磁力があまりにも強いため、TOMIX製の分岐器を勝手に転換させたり、隣に留置している他社製車両が勝手に動き出したりといった事象が起きることから、磁力を減らす対策が必要なこともある。
- ハーフミラー加工
側面窓がマジックミラーのように反射し、室内灯を点けると内装が透過する構造。智頭急行HOT7000系で採用。
2023年4月に製品化が発表されたEF55形電気機関車では、台車の軸を変則的に動かすことで流線形の車体カバーとの接触を避け、実車のプロポーションとカーブの通過を両立する構造を新たに開発。過去に発売されたマイクロエース製品は先輪を浮かせてダミーとしていたため、全車輪が接地するプラ完成品は初となる。
線路・制御機器
かつての固定式線路の時代は、米国・ATLAS社のOEM・ライセンス品を使用していた。そのため現在の「ユニトラック」線路の規格である直線線路長248mm・曲線半径315mmなどの一見中途半端な数値はここに起因する。
現在発売されている道床付き線路の「ユニトラック」は1980年に発売、現在までに2回(1987年・1997年)のモデルチェンジを経て現在に至る。
発売当初から道床付き線路にTOMIX製の先行品が存在したこともあり、当時はマイナー感が否めなかったが、2000年代以降カント付き複線線路や独自設計のターンテーブルを発売したこと、入手性に関してはTOMIX製品と同等であることもあり、現在では「ユーザーの好みや用途」によって選択されるレベルに達している。なお、1986年から発売されているHOユニトラックは、入手性や価格の観点から(国内では)かなりのシェアに達していると思われる。
制御機器に関してもDCCへの対応や「サウンドカード」を除けば手堅い製品が多く、自動運転などギミック的な要素を好むTomixとは好対照をなしていると言えよう。
輸出向け・輸入製品
アメリカやヨーロッパにも進出しており、これらの地域でも高く評価されている。欧米型Nゲージ車輌に関しては1/160を採用しているが、2021年5月に発売されたグレートウェスタン鉄道およびロンドン&ノースイースタン鉄道(いずれも現行2代目)のクラス800に関しては、イギリス型Nゲージ独自の1/148を採用した。なお、スイスのメーターゲージシリーズではあえて1/150を採用しているという。結果、日本型(とスイス型の一部)の1/150、アメリカおよびヨーロッパ大陸型(+新幹線)の1/160、そしてイギリス型の1/148といった、全てのNゲージ規格を取り扱う、世界的に見てあまりに珍しい鉄道模型メーカーとなってしまった。
近年イギリスPeco社とのタイアップにより、英国型ナローゲージ(1/76・9mm)の取扱いも開始、2024年には「ナローゲージ・ユニトラック」もラインナップに加わっている。
また、レイアウト用品を中心に欧米からの輸入品を取り扱っている。
工場・直売店
また直営店として東京都新宿区西落合のKATO本社内にホビーセンターカトー東京店が、JR京都駅ビル9階にホビーセンターカトー京都駅店がそれぞれ存在する。かつては大阪店も存在したが2016年に京都駅内に移転する形で閉店している。
なお、鶴ヶ島市の埼玉工場の敷地内には、国鉄EF65形電気機関車(536号機)の先頭部カットモデル(タイトルイラスト)、都内新宿のKATO本社前には京急230形電車がそれぞれ保存されている。
また、関越道鶴ヶ島ジャンクション付近に新設された、鶴ヶ島新工場の敷地内では、610mmと762mm軌間の軽便鉄道を動態保存する「関水本線」が敷設された。
その他
先述のとおり、埼玉県鶴ヶ島市に工場を構えていることが縁となり、同市のふるさと納税の返礼品に当社の鉄道模型が選ばれている。かの石原良純氏も、この制度を利用して当社製の鉄道模型を入手したことを日経Goodayのコラムで語っている(参考)。
2016年3月まで営業していたホビーセンターKATO大阪のX(旧Twitter)アカウントでは商品紹介画像に時折アイドルのアニメや戦車のアニメのフィギュアを写り込ませていた。担当者の趣味だろうか。
XアカウントはホビーセンターKATO大阪の閉店→京都移転後も引き継がれているが、担当者が交代したのか商品紹介はシンプルなものとなったが、稀に例のアレを意識したものが出てくることもある。
また、近年のホビーセンターKATO東京店のXアカウントでも、商品紹介に時折少女暗殺者のアニメや、永遠の17歳な津田沼民、女子高生が電車を運転するアニメ、陰キャがバンドを結成するアニメ、日野市に生息するシカのアニメなど、話題の作品を意識したツイートがなされている。やはりこちらも担当者の趣味なのだろうか。
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