1975年創業。前身は1972年に開店した模型店・ホビーショップ・マックス。
「創る楽しみいっぱい!」のキャッチフレーズで、創業以来ほぼNゲージ車両・ストラクチャーを専門に製品を展開している。
通称は「GM」「グリマ」「爺」。
略歴
創業間もないころから、一体成型車体キットや、旧型客車や旧型国電、私鉄電車の板状キット、さらにレイアウトに欠かせないストラクチャーのキットを精力的に製品化していた。
当時のNゲージは完成品の種類も極めて限られており、特に旧型国電や私鉄電車に関してはGMの(主に)板キットを組む、または改造するぐらいしか選択肢が無い時代が長く続いた。
また、板キットには「おまけの正面パーツ」などが一緒に成型されているものも多く、これらを使用してキット(または他社の完成品)を改造することも当然のように行われ、また模型誌にも作例が数多く紹介されていた。
1990年代に入ると、東武10030型や京王5000系など、比較的手軽に完成できる塗装済みキットもラインナップに加わるようになる。
しかしながら2000年代に入ると、これまで大手メーカーが製品化を見送っていた私鉄電車など、所謂「ニッチ」な市場に強い完成品メーカーや製品が出現。新規で車両キットを製品化することもほぼなくなり、現在新規の製品は塗装済み完成品に主軸を移している。
さらに最近は、古来の未塗装キットやストラクチャーの再生産も積極的に行われており、新たに「塗装済み」のストラクチャーキットも出現している。
未塗装キット
かつては以下のような分類があった(一部は現行品の名称として使用されている)。
- ペアキット
未塗装ながら車体が箱型に成型済みの2両セット。
103系(ATC車)、111系、72系全金属車(厳密にはタイプ)、クモヤ143、小田急1800系(タイプ)など、比較的初期の製品が多い。現在は殆どが絶版になっており(エコノミーキットに移行した103系と、カスタムキットに属するモハ70とモハ80 300番台は除く)、ヤフオクなどの中古市場でもあまり見かけない(黎明期の製品ゆえにクオリティがお世辞にもよくないためか、大して人気があるわけでもないが………)。
- カスタムキットシリーズ
国鉄や私鉄の通勤電車がメインのシリーズ。いわゆるプラモデル同様の板キットで、組み立てにはランナーから切り出して接着する必要がある。台車や動力ユニットは別売。
選択パーツの中には側面の形状や窓配置の似ている他社車両の前面パーツが含まれており、これを利用してそれっぽい車両を組み上げることもできるほか、切り継ぎなどの改造やスクラッチのベースなど多用途に使用できた。
余談だが、この多彩なオマケパーツ(特に私鉄電車に関するもの)が許諾申請の足枷となってしまい、新規でこのようなキットを出しにくい原因ともなっているという。
- エコノミーキット
上記の一体成型、または板状のキットを4~6両程度にまとめたセット品のキット。「Eキット」とも呼ばれる。近年ではキット製品全般を指す名称となっている。
なお、2020年代からは、ランナー成形色を車体色にしたうえで、ある程度の塗装・印刷を行った状態の「着色済エコノミーキット」が、旧型客車や旧型国電を中心に発売されている。
- バリエーションキットシリーズ
カスタムキットに台車・動力ユニットを加えたもの。
1983~87年にかけて、箱根登山鉄道の旧型車、国鉄キハ04系、京阪京阪京津線(500形と600形。260形タイプのオマケ付)、江ノ島電鉄1000形タイプ(600形タイプのオマケ付)の4種が発売された。名鉄岐阜市内線や美濃町線のモ510形とモ600形の製品化も予定されていたが、未成に終わっている。
動力ユニットは片台車駆動の専用品である(動力のみの分売もされ、昭和末期に絶版。構造が特殊なためすぐに調子を落としやすかったようである)が、箱根登山は専用品絶版後、京阪・江ノ電は初めからTomixのOEM品(箱根登山・ベルニナ用)が採用されている。言うまでもなく江ノ電は本来連接車であるが、キットでは動力に合わせて車体を延長・普通のボギー車にした「タイプ品」である。
いずれも現在はディスプレイモデルのキットとして発売されており、別途ベルニナ用動力や他社製動力などを組み込むことで、一応走行させることはできる。
- エボリューションシリーズ→ハイクオリティエコノミーキットシリーズ
車体を箱型に整形済みとし、更に色々なメーカーの部品を流用できるようにした次世代のキット。台車・動力ユニット類は別売。
- 金属・レジンキット
1990年代から2000年代初頭にかけての期間で、ショップ限定品として販売されていた。南海21001系や11001系などが製品化された。富士急5000系は、決して検索してはいけない黒歴史である。
なお板キットに関しては、所謂「上級者向け」とされる製品も存在する。
例えば両側面と妻面の「天地寸法」がそれぞれ揃っていないため、側面裏側のリブを造り直したり、箱状に組み立てる際にプラ板などで寸法を調整するなど、製品によってはベテランのモデラーからも「作る苦しみいっぱい」などと言わしめる程である(顕著なものでは伊〇急や113系・115系キットetcが該当する)。
近年では以前同梱されていたステッカーが省略されており、ハードプレイ用のガレージキット的性格が大きくなっている(ただし、GMストアーや通販等で在庫があれば入手可能である)。
塗装済みキット
キットはかつては未塗装品ばかりで初心者にはやや敷居の高いものであったが、車体を塗装済みにすることでその敷居を下げたもの。1990年代に、当時の大手私鉄の最新鋭車両が続々と製品化されたのを皮切りに、現在までにさまざまな車両が製品化された。
屋根上機器を中心に一部のパーツが未塗装だが、そのまま組んでもそれなりに仕上がる。
車体が一体整形のものと板状になっているものの2種類があり、後述の要因などから車両によって構造が異なる。
201系や京急旧1000形白幕車、小田急1000形、東急8000系など、一部はエコノミーキットを元に塗装したものであり、当然金型が古いものに関しては微修正が必要なため、それを塗装面を痛めずに行うのは非常に困難であり、何気に難易度が高くなっている。また、エコノミーキットを塗装したものの一部は、乗務員扉や貫通扉など、扉周りの塗装が回りきっていないものがあり、その辺りのタッチアップ作業も必要になる場合がある。
完成品
「私鉄に強いグリーンマックス」を自称しており、大手私鉄の近代的な車両を中心にラインナップしている。
マイクロエースと同様、大手二社(KATOとTOMIX)の合間を縫ったニッチな商品展開を得意とする。
そのため製品あたりの販売数が見込めず、少量生産となることから価格は高い傾向にある(6両セットで定価約3万円~)。
完成品の歴史は意外と古く、創業からしばらくの間上記の「ペアキット」シリーズと同じ金型の成形品を塗装・組み立てした完成品を少数販売していた。しかし後が続かず、間もなく「グリーンマックス=キット専業」のイメージが定着することになる。これらは後に「グリ完」と呼ばれ、一部のコレクター向けのアイテムとなって今に至っている。
同社が再び完成品市場に参入したのは1990年代末のことである。
当初は「塗装済みキットを完成品向けに叩き直した」ような構成であり、品質としては他社の後塵を拝していた。後の製品も車体造形の評価は高いものの、2000年頃には既に当たり前だった方向幕の点灯機能が実装されていないことが、長らくユーザーの不満の種であった。さらに同時期の鉄道コレクションと出来が大して変わらないものもあった。
こちらは2017年発売の製品で初めて実装され、以降の新製品には順次展開していく予定である。
同じく動力にも問題を抱えていたが、こちらも改善により解決している(後述)。
ただし、同様にとうの昔から当たり前となっている中間車の貫通幌は未だに装着されておらず、一部製品では内装も省略されている。
床下機器も部品共用の為に実車と異なることが多く、車体造形以外のリアリティは高くない。また、プラの成型材料に問題があるのか室内灯を入れるとそこの部分が透けてしまうことも。
2010年代以降は、KATOとTOMIXのラインナップ拡大の影響か、完全新規の製品は大幅に縮小。
マイクロエース同様、既存製品の車番違いによるバリエーション展開が主となっている。
動力ユニット
長らくグリーンマックス製品の一番の泣き所は動力であった。
初期のものは自社製であったが、間もなくエンドウからOEM供給を受ける形が暫く続いた。さらに80年代後半には再度自社製に移行する(21m級や小型電車はTOMIXのOEM)。
しかしながら、黒塗りのウエイトが車内空間のほとんどを占め、機構部分は70年代後半エンドウ動力の構造をそのまま踏襲した、同時代の他社製品と比較すれば完全に前時代的な代物であった。それゆえに走行性能がイマイチであったり、不調気味になりがちだったりと、なにかと問題の多い仕様であった。
完成品については初期のTOMIXのOEMから自社製に移行したが、その際に採用された2個モーターの動力も走行性能そのものに問題があり、動力を他社製に換装するユーザーが多かったほどである。なお、この動力は同時期に発売された塗装済キットにも採用されていた。
2017年にコアレスモーターを採用した新動力が発売されたことで、ようやく長年の懸案であった動力に関する問題は解消されることになった。
ストラクチャー
レイアウトの必需品であるストラクチャーも、創業期から精力的に製品化されていた。1970年代後半当時、Nゲージの日本型ストラクチャーは極めて少なく、TOMIXから自社線路の規格に合わせた駅舎やホーム、機関庫、その他商店や戸建住宅などが少数発売されているぐらいであり(KATOに至っては、駅舎・ホームですらユニトラック発売後の製品化である)、「キット」とは言え駅舎やホームだけにとどまらず、詰所や信号所、小型ながら駅ビル・雑居ビル、さらに住宅・商店、さらに架線柱や信号機・関連するアクセサリー、果ては路面電車(都電)まで網羅されるなど、事実上鉄道施設関連以外のストラクチャーは「(自作するか)グリーンマックスしか選択肢が無い」程だった。
その後1980年代後半には、木造商店や大型木造公共建築(役所・学校)、路線バス(いすゞ・キュービック)/スーパーハイデッカーバス(三菱・エアロクイーン→スーパーエアロⅡ)、さらに防波堤や漁港、それらの関連アクセサリーなどが、1/144スケールで製品化されている(そのため、物によっては1/150・1/160スケールの建築物・人形を混用すると違和感が発生する場合があるので注意を要する)。
近年、90年代前半に企画・試作され長いことお蔵入りとなっていた「格納庫」「映画館」(双方ともに本体を共通する。建造物本体自体は既発売のバス営業所と共用である)が発売されることとなった。これらも試作時期や近年の1/144ミリタリーモデルを意識したと思しいことから1/144スケールであると思われる。
以前は印象深い小林信夫氏のパッケージイラストが目を引いたが、最近の再生産ではそっけない緑色の共通パッケージとなってしまった。
その後ほとんど新たな展開は見られなかったが、2010年代に入り「公団住宅」「ビジネスビル」「(ホテル)東横イン」などの新製品が製品化され、また上記のように既存製品のキットも塗装・印刷済みを加えて再生産されるなどの動きがある。ステッカー類も近年の建造物に合わせて印刷内容が更新されている。
なお鉄道模型以外の模型分野でも、グリーンマックスのストラクチャーキットがジオラマ製作などに使用されている。ただし、あくまでも日本型の製品のため、無配慮に配置すると日本国内の風景にしか見えなくなってしまう(ガンプラなどのキャラクターモデラーがよくやりがちである)。
塗料
未塗装キットには必須の塗料も、「鉄道カラー」のブランドで瓶入り・スプレー缶が2017年現在で国鉄色や私鉄向けなど44色発売されている(全て油性アクリル系)。
元々GMでは1979年に発売されたタカラの「鉄道カラー」が指定され、カタログの巻末にもカラーチャートが掲載されていたが、1985年にタカラが塗料販売から撤退したため、GMがブランドを引き継いで販売を継続した(1986年版カタログで告知)。
以前は私鉄色も「近鉄オレンジ」「東武ライトブルー」など直接的な名称で販売されていたが、近年は許諾上の関係か「オレンジA」「ブルーD」などの(正直、購入・使用時に混乱する)名称に改称されている。ただし、基本は40年前のものであるため、近年の新興メーカーの塗料製品に比較すると色調や色相・彩度の再現に見劣りするものも多い。しかし、2024年には色調を刷新したものを発売する旨が案内されたことで、これらの問題も解決する見込みである(ただし、瓶塗料のみ)。
なお、溶剤等はGSIクレオス製の使用が指定されている。
クロスポイント
当社が運営する実店舗「グリーンマックス・ザ・ストアー」のオリジナルブランド製品の名称である(他社でいうところのKATOのラウンドハウスに近いものがある)。
主に205系1000/3000番代や営団・東京メトロ、小田急3000形1次車、小湊鐵道などマイナー車両の一体整形キット(一部は板キット)や、既製品のエコノミーキットをベースに塗装済としたものおよび専用パーツを付録したもの、特殊用途の塗料などを販売している。塗料を除き、ほとんどが一度限りの限定生産であるため、完成品同様製品の価格が高価になりがちである。
のちに、こちらから発売された板キットが通常品として一般流通することもあり、近年では地方私鉄の17m級電車や、小田急2200形などが挙げられる。
このほか、過去に発売されたエコノミーキット(営団6000/7000系旧製品)や、エッチングパーツを同封した上級者向けキット(西武6000系や、北陸鉄道8000系)などをショップ限定で販売したこともある。
艦船模型
鉄道模型以外では、1978年に1/700スケールの艦艇およびストラクチャーのプラモデル「スカイウェーブシリーズ」の展開を始めた。
これは7年程度で代表同士が血縁関係にあるピットロードに移管されたが、グリーンマックスが開発したキットも今なおピットロード名義でたびたび再版されている。
また、紆余曲折を経てウォーターラインシリーズのひとつとしてタミヤから再版されることになったキットも存在する。
カタログ
製品を網羅するカタログは、1979年以降2021年現在までに17回発行されている(2024年現在の最新版は2017年発行)。
1982年から87年までは毎年発行、その後は3~4年に1回のペースで発行されているが、2004年から2013年まで実に9年も間隔が空いたこともあった。
特に毎年発行されていた昭和末期のカタログは、単なる製品紹介にとどまらず、模型化の参考資料や改造作例の紹介にもかなりページが割かれており、また代表の鈴木雅夫氏の車両工作・レイアウトに関する数々の知見や提言、ボックスアートも手掛けた小林信夫氏のイラスト共々当時の内容を知る者からの評価は極めて高い。
さらに同時に名言も数多く残しており、今であればネット上で賛否が飛び交うような発言も少なくなかった。
一部を抜粋すると
「A君の小田急とB君の小田急は色が違って当然なのです」
「テキサン練習機はゼロセンを黄色く塗ってごまかしておけば良い(シロウトはだませる)」(海外映画のテキサン改造レプリカ機を踏まえての発言だろうか)
「何を走らせても似合うレイアウトは、本当は何も似合っていない」
なお、1986年には上記の提言等を選抜して追記した、「GMマニュアル」も発行されている。