概要
道路上の定められた経路を巡回し、停留所(バス停)で乗客を乗降させるバス。
乗客は停車したい停留所名がアナウンスされたら降車ブザーを押してバスを停車させ、降車する。乗車待ち客も降車したい客もいない停留所は通過する。
法律的には一般乗合バスと呼ばれ、高速バス・一般路線バスに分かれる。
高速バスは専ら高速道路によって全国主要地点を結ぶバスで、途中停車しない特急バスと高速道路上の停留所に停車する一般高速バスに分かれる(立ち乗り出来る場合は高速道路においても上限60km/hとなる)。
一般路線バスは一般道路を走行するものであるが、稀に高速道路も経由するものもある。この内自治体が住民の交通の便宜のために事業者に運行委託するものをコミュニティバス、特定の停留所間を往復するものをシャトルバスと呼ぶ。
また、バス事業者自ら企画する観光ツアーのために運行するものを定期観光バスと呼び、観光バスと付いているが路線バスの一種である。遊覧バスもこれに含まれる。
1日走行距離が100kmを越える路線バス車両はタコグラフ装着が義務付けられている。
路線バス事業者と経営
※後述の「主な路線バス事業者」も参照
2025年(令和7年)現在のデータによれば、日本で路線バス営業免許を持っている事業者数は2,337社にも及ぶ。鉄道会社と比較すると事業規模は小さく、乗合バスの民営事業者の約95%が資本金1億円以下の中小企業である。鉄道会社系列会社や鉄道会社バス部門、あるいは以前は鉄道会社であった事業者も多いが、1990年代以降バス事業者経営状態が軒並み悪化し、大手事業者でも分社化や子会社化による人件費抑制が進められた。
かつて50社近くを数えた公営バス事業者は23社と半減した。残っている仙台市・東京都・川崎市・名古屋市・京都市・神戸市等の公営事業者も認可上最大限の民間委託が行われている。
なお、路線バスを運行する事業者は一般乗合旅客自動車運送事業者許可、運輸局への旅客運送事業用自動車登録(事業用バス登録)の他、道路運送法第4条の規定による国交大臣のバス路線開設許可(通称4条免許)が必要である。これは路線ごとに与えられるもので、その路線が廃止されれば消滅する。この許可は容易に取得出来るものではないため、不採算路線でも免許維持のために1日1往復 - 1週間1往復は走らせる場合があり、これを通称「免許維持路線」という。この様な路線は大都市圏でも珍しくない。
日本では路線バス等の公共交通機関は運賃で採算を取るのが基本的な考えであるが、現状では70 - 90%の事業者が赤字とされている。2023年(令和5年)9月には大阪府南東部(富田林市等)を営業エリアとする金剛自動車が運賃収入減少と乗務員確保が出来ないことを理由に同年12月に自主廃業することを発表。公共交通を民間事業者任せとする日本の交通政策破綻を印象付ける出来事となった。関係する自治体から南海バス・近鉄バスに運行継承の打診がされ、両社共に可能な限りの協力を表明しているが、条件として「自治体による経費負担」「現状の運行に支障しないこと(恐らく乗務員確保等)」を挙げている。
また、後述の様に運転手確保がままならない状況から2030年頃の開通が見込まれる北海道新幹線並行在来線区間の代替バスに地元事業者が参入に難色を示したり、BRTへの置換が検討された北陸鉄道石川線もバス転換自体が断念される等、鉄道の代替としての役割すら機能不全に陥りかけているのが現状である。
一方、英国以外のヨーロッパでは公共交通は道路同様の公的インフラと位置付けられているため公的資金での維持が前提であり、運賃は(採算度外視で)極めて安く抑えられている。自動車産業のロビー活動により、政府や政治家が鉄道・路線バスを支援したがらず極端な車社会に陥ったとされる米国ですら、一部大都市では都市機能荒廃等の反省から中心部(ダウンタウン)再開発に合わせ、公共交通機関再構築を進めている状況である。
乗務員
バス運行には多数の乗客を乗せた大型自動車をあらゆる環境下で安全に運行するための特殊な技量と万一のトラブルに冷静に対処出来る器が求められる。そのため、かつてバス事業者への入社ハードルは極めて高く、大型(主に貨物)自動車の職務運転歴やその間の事故・違反経歴は勿論採用の際に審査され、さらに大型2種免許も自前で取得する必要がある等、誰もが「なりたいから」といって簡単になれる職業ではなかった。
ところが、上記のバス事業者経営悪化に伴う分社化に加え、2000年代に「競争促進」「サービス改善」が叫ばれ規制緩和が行われた結果、過酷な長時間の超過勤務、職務上の責任にとても見合わない薄給…といった具合にバス運転手の待遇が劣悪なものとなってしまったのである。近年では、様々な業種が少子化で少ない若者を取合う人材獲得競争が激しさを増す中、バスドライバーは「若者から見向きもされない職業」の代表格となってしまっている。
それでも2010年代初頭頃までは公共交通機関である路線バスは零細事業者が乱立しているトラックやタクシーと比較すればまだしも安定していると見られ、労働条件の悪さを承知の上で、職にあぶれた就職氷河期世代がバス運転手を目指す動きも散発的にあった。また、大阪市営バスの様に妥当な賃金水準の事業者も残っていたが、おおさか維新の会と在阪マスコミ主導による行政改革キャンペーンの一環として「市バス運転手で平均年収800万円弱なんてあり得へん」といった所謂地方公務員バッシングが繰広げられ、結果として大阪シティバスとして公設民営化されている。結局は年収が40%程削減されて労働時間も激増し、民間バス事業者同等かそれ以下のブラックな労働水準に引下げられてしまい、その過程で多くの運転手が退職してしまったという。また、京都市ではSNSに「バス運転士を含めた、交通局現場職員の低水準な年収」をPRする内容の投稿までやっていた程である。
現在は公営・大手事業者ですら通年・常時乗務員募集・採用をする程人材確保に苦労している状況で、30・40代の未経験者でも入社可能、しかも会社負担で大型2種免許が取得出来るのが当たり前となる等、就業ハードルは格段に下がっているが、それでも労働環境の悪さによる退職率の高さに追付いていない(事業者によっては深刻なパワハラ問題もあるという)。特に、十分な人件費を出す余裕がない地方事業者ではベテランドライバー引抜きが相次ぎ、人手不足に伴う減便・路線廃止が続いている。
特に、旺盛な観光需要を受け、好調な貸切バスとの間で人材引抜き合戦が起こっていることが大きい。2020年代のコロナ禍で観光客相手の運送事業が立ちいかなくなり、仕事がなくなった貸切バス運転手が路線バスに回ることでこの問題は一時的に落ち着くこととなったが、ポストコロナの観光需要回復に伴い、貸切バスへの人材流出が再度活発化(2024年問題を抱えている)。トラックドライバー・(高齢化社会で需要が大きい)病院送迎バスや介護タクシー等への人材流出もあり、自治体から補助金を受けずにバス会社が自主運行している路線バス路線は次々に廃止・減便され、公共交通機関が存在しない「交通空白地」が急速に拡大しつつある。さらに、自治体から運行を受託しているコミュニティバスすら引受ける事業者がいなくなったり、大都市部でも人手不足を理由に大規模な路線短縮・廃止に踏み込む事業者が出て来ている。「AIによる自動車の自動運転化」がささやかれる状況で「運転手は将来性がない職業」と見られており、また国や行政、さらに政治が既存の公共交通機関に極めて冷たい制度を改める気配もない現状では、残念ながら今後の見通しは暗い。
また、1960年代までは車掌が乗務することも多く、かつては女子小学生のあこがれの職業の筆頭でもあった。1980年頃までにごく少数の例外を除きほぼ全ての一般及び高速路線バスが車掌の乗務しないワンマンバス化され、残るのは事実上定期観光バスのバスガイドのみである。車掌が乗務していた時代のバスは車内に停発車合図用ベル(ブザー)または釣り鐘を設置していた。
運行頻度
鉄道同様、地域によって運行頻度が大きく異なる。大都市では運行系統が重複する区間等では10分間隔以下等で高頻度運行されているが、郊外では30分 - 2時間、田舎では5時間以上間隔が開くことも珍しくなく、過疎地域等では朝と夕方 - 夜のみ運行という場合もある。路線網の大半は高度経済成長期までに設計されており、昔ながらの街を通るため、道が狭いことが多い。大都市郊外でも道路事情が劣悪な地域では乗客数が多くても運行間隔を増やせないこともある。
路線バス依存度が高い都市では多数のバスを円滑に通行させるため、道路上ににバス専用車線またはバス優先車線を設置している場所が多い。バス専用車線は一般車は原則通行禁止(自転車・軽車両は通行可能。また、自動車も方向別指定で通行が指定されている場合は交差点手前限定で通行可能)。通常は朝ラッシュ時のみ有効となる。また、PTPS(公共車両優先システム)・バスロケーションシステム・都市新バスシステム等、信号機をバス優先とするシステムも各地で利用されている。
地方小都市では商店街衰退及び旧来バスが通っていなかった地域の商業開発(大規模ロードサイド店建設等)により、バスでは買い物に行きにくいことも多い。こうした都市のほとんどは既に民間路線バス自体が路線縮小や廃止に追込まれており、後述するコミュニティバスで代用されているケースが多い。
近年の傾向として上記の様に乗務員確保が極めて難しくなったことから、大都市の比較的運行頻度が高い黒字路線であっても減便が相次いでいる。郊外地域(多摩地区)ではかつて20分間隔で運行されていた系統が減便を繰返した末、現在では2時間近くも間隔が開く時間帯が発生する事例や、郊外の駅から住宅地(ニュータウン)に向かう系統の運行時間繰上げ(21 - 22時台が最終便)で、遅い時間まで残業等しようものなら自腹でタクシーを利用するか、家族に頭を下げて自家用車で迎えに来て貰う事例も珍しくない。さらに、郊外から都心部に直通していた路線を近距離にある鉄道駅で打切る(札幌市内)等、利便性低下による旅客の逸走と運賃収入減少を承知の上で運行本数を無理矢理確保する末期的な状況すら見られる様になっている。
高速路線バスにおいても一般路線同様減便や休廃止が相次いでおり、公式HPの時刻表には「運休中」の便記載が目立つ状況である。また、廃止される際も告知から短期間で廃止となってしまう場合もあり、廃止を知らない利用者が現地で困惑するケースすらあるといわれる。
車両
高速路線バスでは長距離・長時間乗車となる路線が多いことからいわゆる観光バスタイプのフルデッカー・ハイデッカー車が用いられる。また、空港関連路線向けに大型荷物スペース等、用途を特化したモデルも設定されている。
一方で都市郊外で使用されている一般路線バスは2002年に施行されたバリアフリー法によって(上記の高速路線バスを除いて)車椅子に対応出来ない新車販売が不可能となったこともあり、基本的に車椅子スペース付ノンステップまたはワンステップ低床車で運用される。
現在、主に都市部で運用されているバスはエアサスを搭載し、ニーリング(ドア開放時に車体を傾ける機構)またはスロープ付としているものが多い。扉は前・中扉の2扉車で、中扉が引き戸→折戸に変わっているが、これはドア幅広化・巻き込み事故防止・戸袋を不要として車内幅を広くすることが目的である。また、都市部車両の中には貸切バス兼用の用途外車というものもある。
1980 - 90年代に都市部で良く見られた仕様として、車体長10 - 10.7m、2ステップ都市低床またはワンステップ低床・リーフサスペンション・中扉4枚折戸または前後ドア・上下2段窓・直結式冷房等・導入台数が多い反面比較的ベーシックな仕様となる傾向が強かった(勿論例外は多数ある)。
一方、郊外や田舎では道路事情が悪かったり、雪深い地方では降雪に対応しなければならない関係で低床化が進んでおらず、都市部より保守的な構造の車両が多く使用されている。何より財政的な面で新車更新も思うに任せず、かつて都市部で使用されていた中古車も広く使用され、特に沖縄県では車両寿命が長い。しかし、これら地域では高齢利用者が多いこともあり、バリアフリー化が課題となっている。
以前の地方・郊外路線の標準的な仕様として車体長10.5 - 11m・2ステップ標準床・エアサスペンション・座席数重視のハイバックシート・前後引違い窓・サブエンジン式冷房等・乗車時間が長くなるため、快適性に重点を置いた仕様となるケースが多かった。
また、経年化した貸切・高速車を一般路線用に転用するケースも特に珍しいことではなかった。
近年はメーカー統廃合、市場縮小や法規改正によって車種・仕様整理が進んでしまい、事業者が路線の実情に合った新車を購入出来ないケースも発生している。極端な例ではバリアフリー法によって(会社構想に合致しない)ワンステップ・ノンステップ車導入を義務付けられたことを嫌い、その後約10年新車購入を停止した事業者も存在した(そもそも既存車も特注レベルで自社仕様にこだわっていたが…)。
車両サイズにより、大きい方から(連接車を含む)大 - 小型車・マイクロバス等に分けられ、特に大・中型車を中心に、複数の車体長が「標準尺」「長尺」「短尺」等と大まかに設定されている。
大型車の場合、一応標準尺車(車体長10.5 - 10.8m)が基本サイズであるが、道路事情に余裕があり、乗客が特に多い路線では長尺車(車体長11 - 11.5m)も使われる。なお、連接車は輸送需要が極度に逼迫している等、特殊な事情がある路線において「特認の上」で使用される。大都市では小回りが利く短尺車(車体長9 - 10.3m)が使用されるケースが多い。
中型車(車体長約9.5m・車体幅2.3m)はかつて地方の閑散路線向けに使用されることが多かったが、近年は大都市やその郊外で使用されることも多く、特に地方事業者では主力車として大型車の代替に中型車を購入する場合も多い様である。
小型車は中型車同様の用途に使われる他、コミュニティバスで良く使用される。
マイクロバスは特定輸送に良く使用されるが、少なからず路線バスでも使用される。
平成時代に入ってからは車両の「ダウンサイジング」が進み、かつて大型長尺・標準尺が多かった路線でも短尺車や中型車が幅を利かせる様になり、小型車や中型車が多かった路線に至っては廃止・自治体による代替バスに移行した路線も非常に多い。
扉配置がいくつかあり、用途やバス会社によって使い分けている。
- 1扉車(前扉車・中扉車・後扉車):前扉車はトップドア車とも呼ばれ、高速バスはほとんど全てがこれである。また、旅客がそれ程多くない地域の一般路線バスに見られる他、都市部でも用途外車等で使用される。中扉車はマイクロバスでは標準的な配置で、かつて車掌が乗務していた時代は広く使われた(ボンネットバスではほぼ全てが1扉であった)。後扉車は日本ではほとんど使用例がないが、英国のロンドンバスがこのタイプである(ただし、ロンドンバスは扉がない)。
- 2扉車(前中扉車・前後扉車・中中扉車):前中扉車は、現在の一般路線バスでは最も標準的な配置で、均一料金制地域では前扉、距離別若しくは区間別料金制地域では中扉から乗車するのが基本。ただし、かつての神奈川中央交通の一部営業所では整理券発行機が前ドアにあり、途中停留所では前扉から乗降の双方を行う(中ドアは起点の乗車専用)「トップドア車同様」の運用を行っていた(前乗り後払い方式)。また、大阪シティバス・京都市バス・神戸市営バスの様に均一料金制でも中扉から乗る方式を取っている事業者もある。前後扉車は前中扉車と運用は同様で、特に近畿圏ではかつて主流のドア配置であった。中中扉車は日野・ポンチョ(2代)特有の構造である。
- 3扉車:前中後と3つの扉を備える車両。混雑が激しく、終点での降車客が多い路線、いわゆるニュータウン輸送に実力を発揮した。郊外路線では長尺車が多かったが、都市内路線でも標準尺・短尺車の3扉車を標準仕様にしている事業者も存在した。基本的に乗車は前扉であり、途中の停留所では中・後いずれかのみから降車する(乗客動向に合わせて臨機応変に対応した事業者もあった)。終点では全扉を開放し、乗客がスムーズに降車出来る様にする。構造上3扉車として使用する際は均一料金制が主であるが、前乗り・信用乗車制路線で使用されることも多かった。1990年代に入ると需要の減少もあって次第に廃れ始め、さらにワンステップ車が普及し始めると降車時間短縮よりも低床化が重視される様になり、1998年頃を最後に3扉車導入は終了した。
車両サイズもいくつか用意されている。
- 大型車
- 幅2.5m・長さ10 - 12m程度の車両。輸送力を必要とする路線で良く使われる。三菱ふそう・エアロスター、日野自動車・ブルーリボン、いすゞ自動車・エルガ・UDトラックス・スペースランナーRA等。
- 大型ショート車
- 幅2.5m・長さ9m程度の車両。大型短尺とか9m大型と呼ばれ、地方のバス会社、国鉄バスで良く導入された。いすゞ・エルガLT、日野・ブルーリボン9m大型タイプ、三菱ふそう・エアロスターMM、日産ディーゼル・スペースランナーRP等。
- 中型車
- 幅2.3m・長さ9m程度の車両。輸送量が少ない路線・道幅が狭い路線で使われる。三菱ふそう・エアロミディMK、いすゞ自動車・エルガミオ、日野自動車・レインボー、UDトラックス・スペースランナーRM等。
- 中型ロング車
- 幅2.3m・長さ10m程度の車両。道幅は狭いが、乗客数が多い路線、安価に大型バリアフリー車を導入したい事業者で好まれた。日野自動車・レインボーHR、三菱ふそうエアロミディMKロング、いすゞ自動車・エルガJ、UDトラックス・スペースランナーJPが主な製品。
- 小型車
- 幅2 - 2.3m・長さ7m程度の車両。輸送量が極端に少ない路線、コミュニティバスで使用される。三菱ふそう・エアロミディMJ・ME、日野自動車・ポンチョ、いすゞ自動車・エルガ7m、日産ディーゼルRN系等。
- マイクロバス
- 自治体が運行する自主運行バスや輸送量が小型車を入れる程でもない路線で使われる。三菱ふそう・ローザ、日産・シビリアン、トヨタ・コースター、日野自動車・リエッセⅡ、いすゞ自動車・ジャーニー等
ちなみに、2012年(平成24年)に制定された「新ワンマンバス構造要件」では中ドアが開いている際は動力伝達をカットしなければならないことが定められている。MT車やシフトセレクターがレバー式タイプAT車であればシフトレバーをニュートラルポジション、ボタン式AT車はドア開閉時に自動的にニュートラルポジションにシフトチェンジする。
また、公害及び燃費対策として一早くハイブリッド化やCNG(天然ガス)燃料化が行われたが、コストや整備性の問題で一時的な導入に留まり、現在は一部車種にハイブリッド仕様車が設定される程度である。
運賃徴収方法
現在では車掌が乗務して運賃収受を行う(いわゆる「ツーマン」)方式は一般には行われていないため、「ワンマン運行」による運賃収受方法を解説する。
基本的には均一料金か距離別運賃か、前払いが後払いかが主な違い。現金で支払う場合が多いが、切符やカードを使用する/出来る路線もある。
- 均一料金前払い制
都市部の一般路線バスやコミュニティバスに多く、距離に関わらずに同額の運賃を乗車時に支払う。一般路線バスの場合は前扉から乗車することとなるので前乗りという。
- 距離別料金前払い制
乗車時に運転士に降車する停留所を告げて、その区間の運賃を支払う。乗客の申告を基に運賃が決定されることから「信用乗車方式」の一種として扱われる。
過去には首都圏郊外を中心に実例が多く見られたが、1990年代にプリベイトカードが普及すると後述の「後払い」方式に切替えられて行った(上記の3扉車が廃れた一因でもある)。
現在でも終点で降車する乗客が極端に多い路線(例:団地発→駅行)の場合、申告式前払い路線も稀にある。
また、一部高速路線バスに同様の扱いをする路線がある。
- 距離別料金後払い制
降車時に乗車した距離に応じた運賃を支払うもので、郊外や地方の路線バスに多く、日本では乗車証明に整理券を用いることが多いので俗に「整理券方式」と呼ばれ、この場合は後扉から乗車するので後乗りという。乗車時に整理券発行機から整理券を受取り、整理券に書かれた番号に対応する運賃が車内表示機に表示されるため、降車時に運賃箱にその運賃と整理券を投入する。プリペイドカードや交通系ICカードの場合、乗車時(整理券代わり)と降車時(運賃支払い)双方に機械でチェックを行う。
- 均一料金後払い制
比較的関西圏に多い収受方式。
都市によっては市街地地域が均一料金、周囲が前述の様な距離別料金という場合もあり、均一料金区域のみ走行するバスも後払い制となっている場合がある。
地域によっては路線により支払い方式が混在していることもあり、複数の方式に対応可能なワンマン機器を装備する車両も存在する。
- 予約制高速路線バス
インターネットやコンビニ端末、またはバス会社や旅行代理店窓口で予約・購入する方法が一般的である。乗車時には乗車券を渡すか、スマホ等の端末画面を乗務員に提示する。
信用乗車制の是非
車内で運賃を収受する方法は非常に効率的であり、また不正乗車等による運賃取り逃れも少ないシステムである。しかし、(特に現金での)運賃収受は停車時間を伸ばし、表定速度を下げる原因にもなっている。そのため、海外(特にヨーロッパ)において路線バス・路面電車で普及している「信用乗車制」導入を検討している会社も存在していた様である。しかし、実際には問題点も非常に多く、そのまま簡単に導入する訳には行かない様である。
日本では馴染みがない運賃収受方法なので簡単に記す。
簡単にいえば運賃支払いを乗客の「良識」と「相互監視」に任せる方法である。また運転士は運賃収受に一切の関りを持たない。
まず、乗車前に停留所にある券売機で乗車券を購入して、乗車後直ちに車内のチケット・キャンセラー(一種のタイムカード)で乗車証明・時刻を打刻(入鋏)することで乗車券が「有効」となる。なお、運賃は(都市によってはバス・トラムの他、地下鉄まで含めた)「ゾーン制」となっている場合が多く、乗換える場合も(時間制限を越えなければ)新たに乗車券を購入する必要もない。また、事業者にとっては車両を大型化してドアを増やすことで輸送力を上げることも出来る。
当然無賃乗車もやろうと思えばいくらでも出来てしまうが、時々私服の検札(警備員同伴)が抜き打ちで乗車券の有無や乗車券不正使用(未入鋏)チェックを行う。不正が発覚した場合、正規運賃の数十倍もの罰金を請求される。単純な入鋏忘れや不慣れな外国人であっても基本的に問答無用である。また、「常習犯」の場合、警察に告訴されることすらあるという。
とはいえ、実際にはザルも同然であるらしく、都市によっては無賃乗車率が10%以上に達すると見られる等、相当な(日本であれば経営が傾きかねないレベルの)運賃取り逃しがあると見られる。
例えば、英国・シェフィールドでは路面電車開通の際に上記のシステムを導入したが、無賃乗車が経営不振の一因となってしまったため、新たに車掌を乗務させる羽目となった例もある。
また、日本では既に都市部を中心に交通系ICカード導入・普及が進み、多少ではあるが状況改善が見られたこと、停留所ごとに券売機を設置・維持管理するためのコスト問題、さらに関係する事業者数も多大に渡り、また警察との連携や刑法改正、さらに裁判への対応等、新たな運賃収受システムを根付かせることは非常に困難と思われる。
鉄道代替バス
バスは鉄道と比較すると維持コストが低いため、乗客が少なくても採算を合わせやすい。そのため、地方では乗客が少なくなった鉄道路線を廃止し、バスに転換することが頻繁に行われた。国鉄も例外ではなく、特に民営化前後に全国各地で地方交通線が切り捨てられた際に、地元の民営バス会社に転換される例が非常に多かった。しかし、近年さらに過疎化が進行(鉄道を失った地方都市・沿線はほぼ間違いなく衰退する)し、転換されたバスですら採算が合わずに廃止となってしまい、公共交通空白地帯に追込まれる例も増加している。
なお、廃止に至る事情は異なるが、鉄道路線としての復活を断念した路線の鉄道用地を道路に転用し、国鉄バス専用道路として鉄道に似た運用を行っていた事例も存在する(例としてJRバスの白棚線)。
2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災において被災したJR東日本気仙沼線・大船渡線においては路盤を舗装。駅至近の場所に停留所を新設する等して代替バスとしての路線運行を順次再開した。この場合、バス専用道路を主軸としたシステムでBRTと称されることがある。
廃止代替バス
地方過疎化や乗客の自家用車への逸出が進んだ1970年代以降、地方バス会社経営も軒並み悪化が進み、支線系統を中心に減便等の合理化や路線短縮。また、廃止が全国的に進んだ。さらに、1990年代以降はこれまで「本線」扱いであった路線にまで大鉈が振るわれる様になり、地域から公共交通機関自体が消滅する事例が相次いだのである。また、これとは別に大都市間を結ぶ中 - 長距離路線バスが、高速道路延伸によって次々と高速道路経由に乗せ換えられてしまい、結果として地域交通としての機能を喪失する例が現在まで続いている。
こうした事情によって地域住民の生活に重大な支障があると判断される場合、地方自治体がバス会社に補助金を支出することで「一定の路線と便数を確保する事例」が全国に多数存在する。
また、コミュニティバス運行を地元バス会社やタクシー会社に依頼して運行するケースも目立っている。
以上の様な支援を行っても住民の足が確保出来ない過疎地域等では、自治体が保有する自家用バス(通称・白バス。公用ワゴン車や公営スクールバス等)を地域バスとして転用することもあり(自主運行バス)、その場合に限り運転士は1種免許で運転出来る。これは自家用バスで旅客営業が出来る例外的な事業で、あくまで法的には特殊なケースである。これは事実上「完全に採算度外視」が確定している、市町村による公共事業の一種(役所の各種手数料と同等の収入)と見なされているためである。当然、この様な事情がない場合、自家用バスで有償旅客運送を行うことは違法である。
自治体によっては利用者を「登録者の予約制」に限定する(事実上のタクシー借上げ)など、もはや公共交通機関としての体を成していないケースも存在する。
トロリーバス・ガイドウェイバス
架線から電気を給電する機構を有するEVを用いたバスをトロリーバス、案内軌条で操舵せずに走行するバスをガイドウェイバスという。これらは乗客から見れば路線バスの一種であるが、法律上は無軌条電車と呼ばれる鉄道の一種であるため、運転士は自動車運転免許ではなく、無軌条電車操縦免許が必要である。ガイドウェイバスの場合、一般道路上も走行するため、バス車格に該当する自動車運転免許第2種免許も必要である。
日本におけるトロリーバス運行開始は兵庫県の新花屋敷温泉土地が観光客輸送用に1.3kmの路線を1928年に開通させたものが最古である(1932年に廃止)。
その後、1932年に京都市、1943年に名古屋市が開通。戦後は東京都・川崎市・横浜市・大阪市にも波及するが、基本的に架線下でしか走行出来ないことから、当時の路面電車同様に道路交通の障害と見なされてしまい、日本において都市交通としてのトロリーバスは1972年までに姿を消した。
路線のほぼ全てがトンネル内で、環境対策等特殊な環境から細々と残存してた関電トンネル・トロリーバスは2018年に廃止されて電気バスに置換。最後まで残存した長野県 - 富山県の立山・黒部アルペンルートの「立山トンネルトロリーバス」も2024年11月限りで運行終了。日本国内から完全にトロリーバスが消滅した。
また、DMV(デュアル・モード・ビークル)はガイドウェイバスのうち、従来の鉄道の線路を案内軌条として用いるものを指す。現在は阿佐海岸鉄道で運行されている。
ガイドウェイバスに関しては、案内軌道上と道路上での位置付けが一切異なり、双方の全ての規制に則らなければならないことから、開通には極めて高いハードルがある。
主な路線バス事業者(各県別)
記事が確認され次第追加します。また、「バス会社」も参照。
北海道・東北地方
北海道
- 北海道中央バス 札幌エリア
- 定山渓鉄道 元鉄道事業者として有名。現・じょうてつ【東急グループ】
- 沿岸バス 留萌・羽幌エリア
- 旭川電軌 旭川エリア・元鉄道事業者である。
- 道北バス 旭川エリア
- 函館バス 函館エリア
- 道南バス 室蘭・苫小牧エリア
- 十勝バス 帯広エリア
この他にも多数の事業者があるため、詳細は検索エンジンで検索。
青森県
この他に青森市営バス・八戸市営バス・南部バス(岩手県北バス南部支社)・下北交通がある。
秋田県
この他に羽後交通がある。
岩手県
宮城県
山形県
福島県
関東地方
茨城県
- 茨城交通 水戸・太田エリア。【みちのりHDグループ】
- 関鉄バス 土浦・つくばエリア、子会社もある
- 日立電鉄交通サービス 日立エリア⇒2019年(令和元年)4月限りで上記の茨城交通と経営統合した。
- 茨城急行自動車 東武バスグループ。本社は埼玉県にある。
栃木県
千葉県
- 京成バス グループ会社が多い。
- 小湊鉄道 京成グループであるが、バスカラーリングは独自のものを採用している。鉄道事業も行う。
- 九十九里鉄道 京成グループであったが、現在は小湊鉄道と株を持ち合う。元鉄道事業者。
- 東京ベイシティ交通
- 成田空港交通
以上は【京成グループ。】
埼玉県
東京都
神奈川県
- 京浜急行バス【京急グループ】
- 神奈川中央交通【小田急グループ】
- 江ノ電バス 江ノ電傘下。【小田急グループ】
- 相鉄バス 相鉄傘下。
- 伊豆箱根バス 伊豆箱根鉄道傘下。【西武グループ】
- 箱根登山バス 小田急箱根傘下。【小田急グループ】
中部地方
- 名鉄バス 名古屋エリア
- 豊鉄バス 東三河地方
- 東濃鉄道 東濃地方 元鉄道事業者。
- 北恵那交通 岐阜県中津川市 元鉄道事業者。
- 岐阜バス 岐阜地区・中濃地区
- 濃飛乗合自動車 飛騨地方
- 北陸鉄道 石川県 鉄道事業も行う。
- 小松バス 石川県小松市 元鉄道事業者。
以上7社と先述の宮城交通は【名鉄グループ】である。
愛知県
静岡県
新潟県
長野県
富山県
福井県
- 福井鉄道 鉄道事業も行う 元名鉄グループ。
近畿地方
滋賀県
奈良県
- 奈良交通 近鉄バスホールディングス傘下。【近鉄グループ】
京都府
大阪府
- 大阪シティバス【Osaka Metroグループ】
- 南海バス【南海グループ】
- 水間鉄道 鉄道事業も行う。
兵庫県
中国・四国地方
岡山県
広島県
山口県
愛媛県
- 伊予鉄 鉄道事業も行っている。
高知県
九州・沖縄地方
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
ちなみに、大分のバス事業者4社は西鉄が関わっていた(大分交通は元西鉄グループ、大分バスは近鉄グループから離脱後に西鉄等の支援により再建。亀の井バス・日田バスは西鉄グループ)。
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
JRバス(JRグループ各社のバスの総称)
関連タグ
レールバス ボンネットバス ノンステップバス ガイドウェイバス トロリーバス
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