概要
青森県南部地方を中心に乗合・観光バス事業を展開する交通事業者。国際興業グループに長らく加盟していた(2013年で離脱、現在は岩手県交通・秋北バスとともに「国際東北グループ」を形成している)。
また、2012年3月31日までは鉄道事業を行っており、イベント用とはいえ、日本では珍しい存在となったバス窓の鉄道車両がいるなど、非常に話題が濃厚な会社であった。
現在はバス事業のほか、十和田湖での遊覧船の運航も手掛けている。
鉄道事業
1922年に古間木駅~三本木駅間にて開業。当時の社名は「十和田鉄道」だったが1951年に「十和田観光電鉄」へ社名変更した。
1961年3月に東北本線に接続する古間木駅を三沢駅に、1969年5月には三本木駅を十和田市駅に改称した。
しかし、ピークだった1970年頃を境に乗客が減少していった。三沢駅は国鉄時代、十和田方面への玄関口として特急「はつかり」「みちのく」「ゆうづる」、急行「くりこま」「八甲田」「十和田」といった上野駅や仙台駅から直通する優等列車が停車していた。しかし、1980年頃からの減便に加え東北新幹線の開業・延伸や青函トンネルの開通に伴うダイヤ改正で停車する優等列車が減少して行き、2010年12月の東北新幹線新青森駅延伸開業によって青い森鉄道に移管され遂に停車する定期の優等列車が無くなってしまたった。そして、新たに開業した七戸十和田駅に十和田湖観光の玄関口の座を奪われてしまったため乗客減にさらなる拍車が掛かった。さらに2011年に発生した東日本大震災により会社ぐるみで赤字となり同社は沿線の三沢市・六戸町・十和田市に支援を要請するも断られ2012年限りでの廃線を決断。多数のファンに見送られ、その生涯を終えた。89年間続いた沿線住民の足も、今では遺構が晒され、朽ちるのを待つのみとなっている。
停留場・停車場一覧
凡例:◇∧=列車同士の離合が可能な駅 |=傍線駅
駅名 | 場内配線 | 備考 |
十和田市 | | | 引上線・駅ビル・バスプールを有する有人駅 |
ひがし野団地 | | | 旧称渋沢農場前。近くに同名の団地がある。無人駅 |
工業高校前 | | | 近くに青森県立十和田工業高校がある。無人駅 |
北里大学前 | | | 北里大学十和田キャンパスが400m程の距離にある。無人駅 |
高清水 | | | 読みは「たかしず」である。無人駅 |
三農高前 | | | 三本木農業高校を近くに有する。無人駅 |
古里 | | | 「こり」ではなく「ふるさと」。無人駅 |
七百 | ◇ | 車庫を付近に有し、駅舎と絶対信号機を十鉄で唯一もつ駅。晩年は無人駅となる |
柳沢 | | | 現在は駅付近にバス路線が通っている。無人駅 |
大曲 | | | 秋田県大仙市にある駅と同名だがそんな地名が付近になく、一説には線路がカーブしていたことが由来とされる。無人駅 |
三沢 | ∧ | 1面2線。東北本線(のち青い森鉄道線)三沢駅との接続駅。片側は実質留置線であった。駅舎は外見こそ2階建てだが、2階は閉鎖されている。1階にはそば屋があり、現在も営業している。有人駅 |
晩年の所有車両
※全車両平成24年3月31日に車籍を抹消されている
形式 | 元保有社 | 備考 | 車番 |
7700系 | 東京急行電鉄 | 日本で初めて地方に譲渡されたVVVF制御車両。CM-CTの編成が3本在籍。番号は下1桁を譲渡順にふり直し、デハをモハに変えた以外変動なし。 | モハ7701-クハ7901 モハ7702-クハ7902 モハ7703-クハ7903 |
7200系 | 東京急行電鉄 | 東急7200系の片運転台車両を両運転台化して元の番号のまま十鉄入り。新設した運転台は平面顔である。2両在籍していたが、2両編成での運用が多かった。この2両は路線廃止後に大井川鐵道へ移籍し現役。 | モハ7204・モハ7305 |
モハ3400 | 自社発注 | 一見は日車標準車体然としているが、帝国車両製造のクルマである。晩年はイベント用車両として、モハ3600と連結していた。相方にクハ4400がいたが、モハ3400より先に廃車解体となっている。 | モハ3401 |
モハ3600 | 東京急行電鉄 | 元東急デハ3650形3665号車。当初は十鉄独自塗装を纏っていたが、営業運転を退いた際に東急グリーンを再び纏い、晩年までイベント用車両とて在籍。 | モハ3603 |
ED300 | 自社発注 | 日立製作所製30t凸形電機。1951年導入。 | ED301 |
ED400 | 自社発注 | 1962年導入の川崎車輛製35t凸型電機。 | ED402 |
トラ300 | 川崎車輛製17t積み無蓋貨車。国鉄トラ40000とほぼ同型。 | トラ301・302 |
代替バス路線
現在は十鉄バスにより、電車線をなぞるようにして路線が開設されている…ものの、渋滞に巻き込まれる等で定時運行が難しい等、転換後早々からデメリットが露呈している。
バス事業
前述の通り、乗合自動車事業を行っており、現在は乗合自動車に専念している。
車の塗装は国際興業の標準塗装である「白色を基調に淡い黄緑にビリジアンの塗装が入るもの」と、一部「白に赤色と藍色の模様が入る、かつての自社鉄道車両に似た塗装」の車(メイン画像参照)が混ざっている。
また「方向幕は車両前面のみ設置」「車両のドア数に関わらず前乗り・前降り(後扉・中扉は基本締切で、車椅子対応時のみ使用)」といった独特な運用方針がある。
営業車両は、元国際興業系列ゆえいすゞ車が多数派だ(とりわけ国際興業系の時代は川重~IK製車体のキュービックやエルガばかりだった)が、上記代替バス開始以降は、移籍車で日野車や三菱車も見られるようになっている。
中には「神奈中仕様・国際興業カラーのエアロスター」なんていう首都圏では考えられない車両も…。
一方でUD車は超少数派で、高速車がごく少数移籍導入されたのみ。
キャラクター
トミーテックの鉄道むすめでは、鉄道線のアテンダントという設定で清水なぎさというキャラクターが登場した。
但し登場したのは2012年の2月で、同年3月末の鉄道線廃線とともにアテンダント業務も廃止されたため、わずか一ヶ月で実質引退扱いになった。