概要
1984年に登場したキュービックのモデルチェンジとして2000年6月に登場し、数多くのバス会社・交通局に導入されている。縦置き4灯のヘッドライトが特徴。車名はラテン語で「~に向かって」と言う意味を持つ。
製造はいすゞバス製造→ジェイバス宇都宮工場。一般的に「エルガ」はいすゞ純正のボディに対して用いられる愛称で、同じシャーシを使用して富士重工業製や西日本車体工業製のボディを架装した場合は、7Eや96MCといったコーチビルダーにおけるモデル名を用いる。
初代LV系とLT系には教習車仕様が存在した。LV系の教習車仕様は2012年に製造中止となったが、自家用仕様車からの改造扱いで初代LV系の製造終了まで製造されていた。
初代(2000年~2015年)
KL-LV280/380系(type-A)
発売当初のモデル。当初からノンステップバスが設定されていた。
オプション仕様でリーフサスの車両もあり、2002年からCNGノンステップバスが発売され、2004年から日野自動車へ「ブルーリボンII」としてOEM供給が始まった。一目見ただけでは判別が非常に難しい。
エンジンは路線バスとしては珍しいV型8気筒エンジンの8PE1。高出力車と標準出力車の違いは噴射ポンプなどで、ヘッドやシリンダーブロックなどは特に相違点は無し。
判別点は後の6気筒モデルと違ってラジエーターが車体左側にあるため、排熱グリルが左側に開いているので分かりやすい。(車体左側の排熱グリルはPKG-LV車以降にもあるが、ラジエーターのグリルかDPDのグリルかはグリル上方にエアーダクトがあるか冷却水点検口があるかで判別できる)
また、後ろから見るとナンバー灯は大型のものがナンバープレート左右に付き、横長のマフラーエンドがバンパー右側に付く。(純正状態を維持していれば)PJ-LV以降の車と比べてブレーキランプレンズやウインカーレンズの色が薄い。
KL-LV834系(type-B)
KL-LV280系と同時に発売された「フルフラットノンステップバス」。変速機はZF製5速ATのみでMTの設定がない。
最後部に直列6気筒エンジンを横向きに設置し、後車軸をドロップアクスルとすることで中扉より後側も超低床化した。
一方で、デッドスペースが多いために乗車スペースが減る、導入・整備コストが高くなるという欠点もあって導入が少なく、結局2005年に製造中止された。
車体後部の排熱グリル等の形が全く違うので外からも一見してそれと判る。
PJ-LV234系
2004年12月に発売されたモデル。エンジンが直列6気筒エンジンの6HK1(出力191kw/260PS)に変更され、排気量はKL-LV280/380系の半分程度にまで小さくなった。エンジン変更と共に燃料噴射が列型噴射ポンプからコモンレール式となり、排気量縮小分の出力を補うため過給器が搭載されて燃費性能が上がった。とは言うものの、とにかく非力らしく乗務員からの評判は良くない様子。
この型式よりブルーリボンⅡとは統合車種扱いとなった。
これ以降のモデルはISOホイール採用車まで見分けるのが大変だが「ノンステップ車は車体右側の最後部席の窓が少し狭くなっている」「リアバンパーの切欠きが牽引フックの他にマフラー用の小さい切欠きがある」点で判別可能。
PKG-/PDG-LV234系
2007年2月に発売されたモデル。エンジンは以前と変わらないが、走行性能はPJ-規制車より大幅に向上された他、内装色も大幅に変更された。また、日野・ブルーリボンⅡは2灯式のヘッドライトに変更されており、エルガとは外観で区別が出来るようになった。
排気ガスの新長期規制に対応させるために連続再生式DPDが搭載されている。このため車体後部左側にも廃熱用グリルが開けられるようになった。(純正では)このモデルのみフォグランプがマルチリフレクターなのですぐわかる。
LKG-/LDG-LV234系
2010年8月に発売されたモデル。ポスト新長期規制に対応させるため、新たに排気ガスを浄化する「尿素SCRシステム」が採用された。EGR冷却容量の増加などによる出力の向上やDPDの再生のための燃料をシリンダーへのポスト噴射から触媒への直接噴射とし、またMT車については全車6速化、AT車もマッピング改良などによって燃費性能が良くなった。トランスミッションは6速MTが標準で、6速ATはオプションとなる。
運転席のメーター・計器のデザインが変更となった。ホイールは新・ISO方式のディスクホイール(10ピン 座金付き)を採用している。PKG/PDG-車にあった公式側後部の小ルーバーは再びなくなった。
QPG-/QKG-/QDG-LV234系
2012年4月、新エコカー減税対応に伴う排出ガス規制記号の変更に対応するため、排出ガス規制記号をQ*G-に変更。
同年7月、新ワンマンバス構造要件構造要件に合わせた改良版が発売された。このモデル以降、教習車の設定を廃止した(ブルーリボンIIには設定がある)。
路線車がフルモデルチェンジした2015年9月以降は自家用ツーステップ車のみの製造となり、ポストポスト新長期規制適用直前まで生産が続けられた。
2代目(2015年~)
QRG-/QPG-/QKG-/QDG-LV290系
2015年8月に15年振りにフルモデルチェンジ。特徴的だった縦型4灯の前照灯は、吊り目状の大型ディスチャージ式ヘッドランプに変更された。これまであったワンステップ車の設定を廃止しノンステップ車に一本化。オーバーハングの改良などによりワンステップ車と同等の走破性を確保している。
車両サイズは全長10.4m・WB5.3m車と全長11.1m・WB6.0m車の2種類に統一。WB4.8mのL尺車の設定は無くなったが、N尺車ハンドルの切れ角を大きくすることで従来のL尺車と変わらない旋回性を実現している。
トランスミッションもMTを廃止し6速ATと6速AMT(機械式AT)を設定。エンジンは出力250psの直列6気筒6HK1から、出力250psの直列4気筒4HK1にダウンサイジング化。その分をシングルターボからツインターボとする事で補っている。従来モデルにあった高出力車の設定も廃止されている。
その他、優先席を含めた全席前向き化や、反転式スロープの採用、前扉をグライド式から折戸式に変更など、先代からの変更点は多数ある。京成バスや西武バスなどがAT車、東武バスなどがAMT車を導入した。
2TG-/2PG-/2KG-/2DG-LV290系
2017年8月に発売された、ポストポスト新長期規制適合モデル。前照灯がLED式に変更されたが、オプションで従来のディスチャージ式も選択可能。エンジンは同型式ながら出力を240psに落とし、最大トルクを発生する回転領域をやや低回転寄りに変更。燃費性能がわずかながら向上しており、ハイブリッド式ではない一般路線用バスでは初めて平成27年度重量車燃費基準+15%を達成した車種がある。
同年9月にはトップドア仕様車が追加された。トップドアでありながら車内はノンステップ構造で、座席の段差を減らすために座席部分が段上げされている。座席はシートベルト装備のローバックシートで、高速道路は車線逸脱警報・衝突被害軽減防止ブレーキ等安全装備がないため走行不可。
2019年6月にはさらなる改良型が発売され、ドライバー異常時対応システム(EDSS)の搭載とリアランプのLED化・AMT車のアクセルインターロック自動化が行われた。
エルガハイブリッド
初代(LV系)
2012年8月、QQG-LV234系として発売。ハイブリッドシステムは従来のエンジンとモーター(44kw/60PS)を動力とするパラレル方式、変速機は6速AMT(機械式AT)を採用。
なお、最後部右側(非常口後方)にバッテリーを搭載しているため、座席定員が僅かに少ない。2015年1月に改良が施され、車両が軽量になり定員が1名増えた。
2015年4月に排出ガス規制記号をQSG-に変更し、2017年9月に販売終了。
2代目(HL系)
事実上ブルーリボンハイブリッドとの統合車種であり、車両仕様も全く同じ。2018年4月より2SG-HL系として発売されたが、これに先駆けて東京ベイシティ交通・関東鉄道に先行投入された。
2019年6月のマイナーチェンジでEDSSなどが装備された。
エルガEV
エルガEVは2024年に運用を開始した国内大手自動車メーカー初のフルフラット電気バスで、急速に販路を広げる中国のBYDやALFA BUS、日本発の新興メーカーEVモーターズ・ジャパンに対抗して開発された。
スペックは125kW(170ps)×2/最大トルクは480Nm(49.0kgm)である、駆動系には、ZF製のEVアクスルが採用されている。
通常のバスとは違いホイールパークが電動化された。一方でタイヤハウス上の座席が前後とも廃止され、これ以上の着席定員減を避けるため最後尾の座席を向かい合わせにしてスペースを捻出している。それでも後部機器が車内を圧迫しており、短尺・都市型の着席定員はわずか19人。
エルガデュオ
2019年5月に発売された国産初の連節バス。日野自動車のブルーリボンハイブリッド連節バスとの統合車種でもある。型式は「LX525Z1」。
走行機器はRU1A系セレガ・ガーラに搭載されているA09Cエンジン(360ps)に、HL系ブルハイ・エルハイにも搭載された出力90kWの交流同機電動機、新開発の7速AMTを組み合わせている。
エルガLT
車幅は大型車と同等ながら、全長を9mと中型車並みに抑えたいわゆる大型ショート車両。ちょっと幅の広いエルガミオと言った所。
小回りが利き、走破性が高いためモノコック時代のごく初期から地方の事業者を中心に根強い人気があるボディサイズだったが、新短期規制(PJ-)への移行とともに姿を消した。
KL-/KK- LT233/333
兄貴分のエルガと基本構造を同じくしながらも、中型車のエルガミオと同じエンジン(6HH1 165kw/225PS)を搭載する。
サスペンションはエアサスとリーフサスの二種類、ボディはスロープ付きのワンステップとツーステップがあった。
新短期規制への移行とともに一代限りでラインナップから消滅、以降狭隘路線ではエルガミオが導入されることになった。
エルガJ
大型路線バスと同じ全長10.5m、中型路線バスと同じ車幅のモデルで… 超希少車。
中身は日野・レインボーHRでいわゆるOEM車である。
日野のバッジが付いた車両はそれなりに居るが、いすゞのエルガJはかなり珍しいそうな。
型式記号
いすゞ自動車による型式記号の付番は次のとおり。
例えば、「KL-LV280L1改」の場合
KL- | L | V | 2 | 80 | L | 1 | 改 |
排ガス規制記号 | 車両形状 | 車重 | 足回りの仕様 | エンジン | ホイールベース | 改良記号 | 改造の有無 |
---|
このうち、先頭の排ガス規制記号(国土交通省ホームページ)と、末尾の改造の有無(無印/改)は各メーカー共通である。
各項目の内容は以下のとおり。但しモデルチェンジなどで細かい部分が変更されるため、この表は参考程度に。
車両の形状 | L:リアエンジン(バス) | |||
---|---|---|---|---|
車重(事実上の車両サイズ) | V:大型バス | T:大型ショート | R:*中型バス(参考 ※1)* | |
足回りの仕様 | 2:エアサス | 3:リーフサス(~2005年) | 8:フルノンステップ車(~2005年) | 7:*前輪独立懸架(参考 ※2)* |
エンジン(ディーゼル車) | 80:8PE1(V8) | 34:6HK1(直6 ターボ) | 90:4HK1(直4 ツインターボ) | 33:6HH1(直6/エルガLT・エルガミオのみ) |
(CNG仕様車) | 80:8PF1(V8) | 34:6HF1(直6 ターボ) | ||
ホイールベース | L:4.8m | N:5.3m | Q:5.8m(2015年~ 6m) | |
改良記号 | 上記の記号で表すことが出来ない改良の記号 |
- ※1:エルガミオ、ガーラミオ等。エルガシリーズには存在しない。
- ※2:スーパークルーザー ガーラ(~2005年)のみ。エルガシリーズには存在しない。
つまり、「KL-LV280L1改」は平成11年規制(重量車)適合、リアエンジン、大型車、エアサス、8PE1エンジン搭載、ホイールベース4.8m、ノンステップ仕様(Type-A)など型式認定を受けていない何らかの特注仕様の車両、という意味になる。
解説
- 基本的にシャシの仕様などのみが表されるため、型式記号からボディの仕様を特定することは難しく、オーナーの発注どおり作った結果、型式認定を受けた要目から外れた車両であれば末尾に「改」が記されるのが関の山。ボディの仕様を示す記号などは存在するものの、型式番号や車台番号として打刻されるものとは別物である。
- 日野自動車に「ブルーリボンⅡ/ブルーリボン(2代目)」としてOEM供給される車両は「車両形状」の項目がLからKに変わるほかはほぼ同一である。
- 逆に日野自動車が開発、J-BUS 小松事業所で製造・供給された車両は本表のとおりにならない。
- ホイールベースを示す記号の後の改良記号は、例えばLV234であれば、環境規制強化などによるマイナーチェンジに伴ってPJ-LV234N1、PKG-LV234N2、LKG-LV234N3…といった具合に数字を変える(増やす)ことで、どのタイプの改良型であるかを示すものである。
関連タグ
- キュービック・・・ エルガの先代モデル
好敵手と書いて(とも)と呼ぶ路線バス車両