エルガミオ
えるがみお
J-BUSが製造し、いすゞ自動車が販売する中型路線バス。現在は日野自動車のレインボーとの統合車種になっている。
車名はラテン語の「~に向かって」を現す「エルガ」を新たな時代に向かって走り始めた路線バスをイメージして名付け、英語のminiとフランス語のmiocheを組み合わせた造語である「ミオ」は大型より一回り小さいことを現す。
登場時
1999年6月23日、平生10年排出ガス規制適合に合わせ、ジャーニーKをフルモデルチェンジして発売。ジャーニーKに比べて丸みを帯びたボディ、ヘッドライトを横置きから縦置き4灯式に変更して視認性を向上させた。このデザインは翌年にフルモデルチェンジされた大型路線バスエルガに共通するが、これは部品を共通化することによるコスト削減を視野に入れたもの。決して手抜きではない。
フルモデルチェンジと同時にラインナップに変更が加えられ、ノンステップバス、CNGノンステップバス、7mワンステップバスが追加され、ツーステップバスは路線用にオプション設定されるに留まり2004年消滅。これは自家用・観光用ツーステップ車がガーラミオに統合されたため。
これらのラインナップの変化により、床形状はノンステップ・ワンステップ・路線仕様ツーステップの3種類、ホイールベースは4.4m(J尺)・3.75m(F尺)・3.4m(E尺)の3種類となった。なおノンステップは中扉より後ろを段上げする構造を採用している。
サスペンションは乗降時に床面高さを下げられるニーリング機能を装備できるエアサスが標準設定され、リーフサスはオプション扱いに格下げ。2002年にリーフサスは廃止された。
アイドリングストップ機能を国内の中型路線バスとして初搭載。トランスミッションはディーゼル車はワンステップ・ノンステップともにマニュアル車(フィンガーシフト式MT)とオートマチック車(AT)を設定。CNG車は5速MT車だったのがPDG-規制車以降は5速ATになっている。
登場後の変化
登場後は一転してラインナップの減少やコスト削減を目的とした仕様の統一が目立つ。
2001年には全長7m級・WB3.4mのワンステップ車が早くも製造中止。2002年にはメーカー標準仕様・「ERGA-VP」の設定によりリーフサス車が、2004年にはWB3.8m(F尺)車が、2005年8月にはツーステップバスがそれぞれ生産中止となり、WB4.4m(J尺)のノンステップバス・ワンステップバス・CNGノンステップバスのみに整理された。
ちなみにERGA-VPとはどの事業者でも使いやすい仕様にし、部品を共通化してコスト削減を図る取り組みのことで、大型路線車のエルガでも行われている取り組みである。
一方いすゞ自動車と日野自動車のバス製造事業統合に伴い、製造会社がいすゞバス製造からいすゞ・日野の合弁会社であるジェイ・バスへと移り、現在は一部の例外を除いてジェイ・バス宇都宮事業所にて製造されている。
また、いすゞ・日野間では車種の統合が行われ、エルガミオは日野に「レインボーII」として供給されている。PA-規制車はいすゞから日野へのOEMという扱いだったが、PDG-規制車からは統合車種という扱いになっている。
2016年にフルモデルチェンジを実施し、外観は再びレインボーII(→レインボー)と共通化された。2017年9月に三菱ふそうのエアロミディが製造中止となり、それ以降の中型路線バスはエルガミオ系列の車両が独占している。
KK-LR系
1999年6月発売。登場時はワンステップバス・ツーステップバスのみが展開され、8月にノンステップバスを発売。 エンジンは出力225馬力の6HH1型を搭載。変速機は直結5速MTが標準設定、5速ATもオプション設定された。
ラインナップはディーゼル車がWB4.4m(J尺)、3.75m(F尺)がエアサス、リーフサス双方で発売されエアサス7mバス(E尺)も発売された。
なおE尺は2001年に、リーフサス車は2002年に、F尺は2004年に生産中止。ツーステップ車もこの代限りとなった。
詳細なラインナップは以下のとおり
WB3.4m | WB3.8m | WB4.4m | |
---|---|---|---|
エアサスワンステ・ツーステ | KK-LR233E1 | KK-LR233F1 | KK-LR233J1 |
リーフサスワンステ・ツーステ | KK-LR333F1 | KK-LR333J1 | |
エアサスノンステ | KK-LR233F1改 | KK-LR233J1改 |
余談だが、コイツはエンジンの電子制御化が遅れていて、アクセルワイヤーが運転席からエンジンの噴射ポンプまで通っているいすゞでは最後の路線バスである。(たぶん)
デンソークーラー搭載車はビルドインクーラー。ナンバー灯は、側面から照らすタイプなので慣れれば見分けやすい。
PA-LR234J1
2004年8月発売。平成15年・16年排出ガス規制適合車。エンジンは出力240馬力の6HK1-TCN型を搭載。変速機は、OD6速MTを標準とし、OD5速ATがオプション扱いとされた。
相次ぐ生産中止でラインナップが非常にすっきりとしたものになっている。ラインナップは以下のとおりで、PDG-規制車以降も同じようなラインナップとなっている。
WB4.4m | |
---|---|
ノンステップ | PA-LR234J1 |
ワンステップ | PA-LR234J1改 |
なおPA-代規制車から日野自動車へOEM供給が実施され、日野側では「レインボーII」として発売。エルガミオとは外観がほぼ同一で見分けるのは至難の業。
また、このモデルの登場とともにエルガLTも姿を消した。
PDG-LR234J2
2007年8月発売。平成17年排出ガス規制適合車。エンジンはPA-LR234J1と同じく6HK1-TCN型を搭載。
変速機はOD6速MTを標準とし、OD5速ATをオプション扱いとした。
連続再生式DPDが搭載され後ろ周りに若干の変更が加えられている。
この代から、エルガミオとレインボーIIは統合車種という位置づけになり、新たにノンステップバスが日野に供給されることになった一方、CNG車の供給が中止された。この統合車種化によりレインボーHRの同サイズの車種が製造中止になり、二社で重複していたラインナップが整理された。
なお、レインボーII側は、この代からヘッドライトがブルーリボンIIと同様に角形2灯化されたことにより見分けがつくようになった。
型式はノンステップ・ワンステップ共通のPDG-LR234J2。
同じ代のエルガ共々このモデルだけ(純正状態を維持していれば)フォグランプがマルチリフレクターである。
SKG-/SDG-LR290J1
2011年11月発売。平成22年排出ガス規制適合車。前代から引き続き日野へレインボーII(型式:SKG-/SDG-KR290J1)として供給。
SDG-LR290J1ではエンジンを直列4気筒の4HK1-TCH型に変更して、ダウンサイジングを追求することにより、軽量化と環境性能を両立させ、ABSを標準装備とした。
2012年7月からは、新ワンマンバス構造要件の適合、新型アイドリングストップ&スタートシステム(MT車のみ)を搭載したマイナーチェンジ車SKG-LR290J1が追加発売。
エンジンと共に運転席の計器類のデザインが一新された。
SKG-LR290J2
2016年4月に17年ぶりにフルモデルチェンジ。搭載エンジンは出力210馬力、直列四気筒の4HK1-TCNを搭載し、平成27年度燃費基準を達成するとともに、ポスト新長期排出ガス規制に適合。
前年にモデルチェンジされたエルガと同様車体デザインがレインボーと統一されると共にセミATが標準化され、フィンガーシフトMTとトルコンATがなくなった。
2KG-LR290J3
2017年8月29日より発売されている、H28年規制適合車。エルガ同様にロービームのLED化が行われた他、このモデルより尿素SCRシステムが採用されている。エンジンは出力210psの4気筒だが、過給機が2ステージターボからVGRシングルターボに変更された。
2KG-LR290J4(現行車種)
2019年6月11日発売。EDSSを標準装備とした。
2020年6月11日にマイナーチェンジを実施。中扉開扉時にトランスミッションを自動でNに落とす機能や予後診断機能の追加、2代目エルガミオとしては初めてトルコンAT車が設定された。(メーカーはアリソンで、シフトセレクターはボタン式)
CNG、つまり圧縮天然ガスを燃料とするエルガミオ。屋根上にタンクを3本搭載し航続距離はおよそ200km。