クロウ/飛翔伝説
くろうひしょうでんせつ
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本記事は映画第1作について記載する。
1994年公開のアメリカ映画。
上述のアメコミを実写化した作品であり、本作公開後に数本のシリーズが作られた。
あらすじ
犯罪が猖獗し荒廃したデトロイトで、シェリー・ウェブスターという若い娘が強姦され重傷を負い、彼女の婚約者でロックミュージシャンのエリック・ドレイヴンは銃撃され、彼らの最上階のアパートの部屋から投げ落とされて死亡する。巡査部長のアルブレヒトはシェリーとともに病院へ同行するが、しかし彼女は最終的に、負った傷から死亡する。ナレーションは、カラスが冥界へと魂を運ぶという伝説を語る。もし死者が悲劇的な死を遂げた場合、カラスは彼らの休まることのない魂を、理非曲直を正すべく蘇らせるという。
一年後、シェリーとエリックの墓を、サラという、二人が彼女の母親の不在ゆえに世話していた少女が訪れる。一羽のカラスがエリックの墓石の上に留まり、嘴で碑を叩いて、エリックを蘇生させる。戸惑い、苦しむエリックは彼の荒れ果てたロフト部屋へと戻り、殺人現場のフラッシュバックを体験する。ティン・ティン、ファンボーイ、Tバード、スカンクというギャングの男たちは、ギャングの領袖で無慈悲な犯罪界のボス、トップ・ダラーが狙うアパートの強制立ち退きに二人が反対していたことで彼らを標的とした。エリックは自分が負った傷がすぐに癒えることを悟り、白と黒のフェイスペイントを施し、カラスに導かれて彼自身とシェリーとの復讐に乗り出す。
カラスがエリックを、そのナイフがエリックの死因となった、ティン・ティンのもとに導く。エリックは次に、ティン・ティンがシェリーの婚約指輪を売った質屋へと赴く。エリックは指輪を見つけ出し、店を爆破するが、店主のギデオンの命を取らず、彼がトップ・ダラーの部下たちにエリックのことを伝えるようにする。アルブレヒトは現在のヴィジランテによる騒動を調べ始め、エリックはファンボーイが、サラのドラッグ中毒の母親ダーラとともに薬を摂取しているところを見つけ出す。彼はファンボーイをオーバードーズで死に至らしめ、一方でダーラの体からドラッグを流し出し、サラが彼女を待っていると伝える。
エリックはアルブレヒトのもとを訪れ、「自警団員」の身元に関する彼の疑いを晴らす。アルブレヒトはエリックに、シェリーが死ぬまで彼女のもとに留まり、彼女が味わった三十時間の苦痛を見たことを話す。エリックはアルブレヒトに触れ、シェリーが感じた痛みを感じ取る。その後、エリックはサラを車との衝突から助け、サラに彼が帰ってきたことを告げる。エリックは次にTバードを狙い、彼を爆殺する。翌朝、サラとダーラは和解し、サラはエリックと彼のアパートで再会する。トップ・ダラーは仲間たちと、悪魔の夜に、町を完全に焼き払う計画を話し合う。スカンクを狙うエリックがそこに現れ、銃撃戦が始まり、エリックがスカンクを窓から投げ落として殺すことで終わる。トップ・ダラーと、彼の恋人で異母姉妹マイカ、そして彼の右腕であるグランジは逃げ延びる。マイカは適切にも、カラスがエリックの不死性の源であると推論する。
仇討ちを果たし、エリックはシェリーの婚約指輪をサラへと渡し、彼の墓へと戻る。グランジが家に帰るサラを拐かし、彼女を打ち捨てられた教会の、マイカとトップ・ダラーのもとへ連れていく。トップ・ダラーはサラの指輪を奪い取る。エリックはカラスによってサラの危殆に気がつき、彼女を救出すべく急ぐが、グランジが待ち伏せをしてカラスに傷を負わせ、エリックを脆弱に変える。アルブレヒトが到着し、グランジを殺すが、マイカがカラスをその不死性ゆえに奪うことを試みる。マイカの眼球をカラスがつつき出し、彼女を鐘楼から落下させ死なせる。トップ・ダラーはサラとともに教会の屋根へと退き、エリックと戦い、大きな手傷を負わせる。エリックはシェリーの苦痛をトップ・ダラーへと移し、彼を屋根から転落させ、ガーゴイルに串刺しにさせ死なせる。
サラと負傷したアルブレヒトは教会で発見され、苦痛を抱くエリックはシェリーの墓へと赴く。そこにシェリーの魂がエリックを慰撫し、彼の体を安らぎに還すべく現れる。少しして、サラが二人の墓を訪れ、カラスがシェリーの指輪を彼女の手元に戻す。
登場人物
- エリック・ドレイヴン(Eric Draven)
「晴れる日もある」
原作では職業はぼかされていたが、映画版ではギタリスト。ハロウィンに結婚式を挙げる予定だったが、暴漢たちによって婚約者ともども殺され、一年後に墓地の番人であるカラスによって冥界から連れ戻される。
彼を蘇生させたカラスが無事な限り不死であり、強化された身体能力や他者の記憶を読み取るサイコメトリーのような力を駆使して下手人たちを追いつめていく。
- カラス
カラスは死者の魂を冥界に導くと信じられている だが魂が悲しみのあまり安らぐことができずにいると、悪を正すため死者を呼び戻すのだという
墓場の番人であり、現世と冥界を橋渡しする存在。エリックを蘇らせた。視界はエリックと共有されているらしく、逃げようとする者も空から捕捉する。
監督のコメンタリーによると、ワタリガラスらしい。
- トップ・ダラー(Top Dollar)
「すべてのパワーは目に宿る。目さえあれば本人はいらん。俺はそれを妹から教わった」
原作ではドラッグの売人だが、映画版では町のギャングたちを取り仕切る暗黒街の支配者。混沌と無秩序を愛し、「悪魔の夜」の放火は自分が始めたと豪語する。最終決戦では二挺拳銃と日本刀でエリックを迎え撃つ。
- アルブレヒト(Albrecht)
巡査。原作では白人だが、映画では『ゴーストバスターズ』にも出たアフリカ系のアーニー・ハドソンが演じている。エリックの現場に立ち合い、シェリーの最期を看取った。彼の記憶が後にエリックを助ける。
- サラ(Sarah)
暗い雨に包まれた町をスケボーで駆ける少女。薬物中毒の母ダーラを抱えている。エリック、シェリーの生前からの友人。映画のナレーションも彼女のもの。
- マイカ(Myca)
トップ・ダラーの異母妹で愛人。アジア系の妖艶な美女。兄に劣らぬ異常性を秘め、トップ・ダラーが壊した女の目玉をナイフで抉り出し蒐集している。魔術的な知識に通じ、エリックのカラスを奪って彼の力を奪おうとする。
- Tバード(T-bird)
「悪魔の夜に乾杯。俺のお気に入りの祝日だ」
演じるデヴィッド・パトリック・ケリーは『コマンドー』のサリーの人。
- スカンク(Skank)
「Tバードが悪いんだ」
Tバードの取り巻きの一人。エリックの復讐に怯える。
- ギデオン(Gideon)
「俺はお前らみたいにひねくれちゃいないぞ」
質屋。彼の扱う商品には、Tバード一味が殺害した人々から奪い取った盗品が多く含まれている。エリックとシェリーから奪われた婚約指輪も店に仕入れられていた。
- グランジ(Grange)
「ミーティング中だ」
トップ・ダラーに仕える寡黙で大柄な黒人。『キャンディマン』のトニー・トッドが演じた。指に鉤爪のような銀のアクセサリーをつけている。
- シェリー・ウェブスター(Shelly Webster)
エリックの婚約者。物語の冒頭でエリックとともに殺害される。映画版ではマンション住民の立ち退きに反対していたことが原因だが、原作では道路上にエンストした車を停めていたところをTバード一味に殺害される。
- ファンボーイ(Funboy)
Tバードの取り巻きの一人。ドラッグ中毒のガンマン。腹に銃の刺青がある。報復に現れたエリックの不死の力に「キリストか」と驚愕する。
- ティン・ティン(Tin Tin)
「人殺しだと? ああそうとも、楽しいぜ」
Tバードの取り巻きの一人。ナイフ使いの黒人。シェリーのもとに駆けつけたエリックに投げナイフを喰らわせた。
原作者ジェームズ・オバーのインタヴューによると、Tバード一味やトップ・ダラーの名前は街で見かけた落書きから取ったとのこと。
- ダーラ(Darla)
「ある人に救われたの」
サラの母親。ウェイトレス。ファンボーイの情婦で、麻薬とセックスに溺れる。
- ミッキー(Mickey)
ホットドッグ屋。頽廃した街の暮らしを嘆き、「天変地異に襲われるべきだ」とぼやく。
- トーレス(Torres)
「誰を庇ってる? 顔を白塗りにしたマンガ男か?」
アルブレヒトの上司。巡査でありながら独自に動くアルブレヒトを目の敵にしている。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替(ソフト版) | 日本語吹替(テレビ東京版) |
---|---|---|---|
エリック・ドレイヴン | ブランドン・リー(Brandon Lee) | 池田秀一 | 宮本充 |
カラス | 撮影には四羽使われたらしい | ||
サラ | ロシェル・デイヴィス(Rochelle Davis) | 坂本千夏 | 深見梨加 |
アルブレヒト | アーニー・ハドソン(Ernie Hudson) | 大塚明夫 | 菅生隆之 |
トップ・ダラー | マイケル・ウィンコット(Michael Wincott) | 麦人 | 大友龍三郎 |
マイカ | バイ・リン(Bai Ling) | 雨蘭咲木子 | 沢海陽子 |
シェリー・ウェブスター | ソフィア・シャイナス(Sofia Shinas) | 井上喜久子 | 相沢恵子 |
ダーラ | アンナ・トムソン(Anna Thomson) | さとうあい | 小宮和枝 |
Tバード | デヴィッド・パトリック・ケリー(David Patrick Kelly) | 千田光男 | 天田益男 |
スカンク | エンジェル・デイヴィッド(Angel David) | 中村雄一 | 中村雄一 |
ティン・ティン | ローレンス・メイソン(Laurence Mason) | 森川智之 | 二又一成 |
ファンボーイ | マイケル・マッシー(Michael Massee) | 古田信幸 | 伊藤栄次 |
グランジ | トニー・トッド(Tony Todd) | 大友龍三郎 | 石塚運昇 |
ギデオン | ジョン・ポリト(Jon Polito) | 島香裕 | 島香裕 |
ミッキー | ビル・レイモンド(Bill Raymond) | ||
トーレス | マルコ・ロドリゲス(Marco Rodríguez) | 大滝進也 | 金尾哲夫 |
スタッフ
監督 | アレックス・プロヤス(Alex Proyas) |
---|---|
製作 | ジェフ・モスト(Jeff Most)/エドワード・P・プレスマン(Edward R. Pressman) |
脚本 | デイヴィッド・J・スコウ(David J. Schow)/ジョン・シャーリー(John Shirley) |
製作総指揮 | ロバート・L・ローゼン(Robert L. Rosen)/シャーマン・L・ボールドウィン(Sherman L. Baldwin) |
音楽 | グレーム・レヴェル(Graeme Revell) |
撮影 | ダリウス・ウォルスキー(Dariusz Wolski) |
編集 | ドヴ・ホウニグ(Dov Hoenig)/M・スコット・スミス(M. Scott Smith) |
製作会社 | ディメンション・フィルム(Dimension Films) |
公開日 | 1994年5月13日 |
上映時間 | 102分 |
配給 | ミラマックス(Miramax Films) |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
悪魔の夜
「悪魔の夜(Devil's night)」とも「地獄の夜(Hell's night)」とも呼ばれるハロウィン前夜にヴァンダリズムが多発する事件は、デトロイトやミシガンで発生している実在の事件。
少なくとも1940年代には始まっていたとされ、都市部の若年層が悪ふざけに参加した。当初は卵や腐った野菜や果物が家に投げつけられたり、窓に石鹸やワックスが塗りつけられたり、前庭やポーチに犬の糞が入った紙袋が置かれて火をつけられたり、街路樹や街灯にトイレットペーパーが巻きつけられるなど、ほとんど害のない他愛のないものだった。しかし1970年代以降、行動が過激化した。まず都心部で、続けて周辺の郊外で放火事件が発生した。破壊活動は1980年代の中期から後期にかけて頂点に達し、1984年には800件の火事が発生し、3日間に500から800件の火事がハロウィン前夜に起きるのが例年になった。
不動産市場の下落で急速に資産の価値を失いつつあった当時の不動産業者たちは、住宅が焼き払われ、クレームをつけて保険金を無効にできるチャンスを活用した。コメンタリーによれば、映画の中でシェリーが立ち退き運動に反対して殺され、トップ・ダラーが地上げ屋なのはそれが元ネタとのこと。
800件以上の火事を伴う、特に劇的な夜になった1994年以降、当時のデトロイト市長デニス・アーチャーは、放火活動を阻止する夜間パトロールのため、翌年以降は5万人規模のデトロイト市民が参加する「天使の夜(Angel's night)」を組織した。加えて、若年層の夜間の外出禁止が布告された。放火事件の数は目に見えて減少した。2010年、報告を受けた火事の数は169件にまで上り、前年と比較して42パーセントの増加を見せた。しかし翌年の3日間の合計は、再び90件に減少した。2015年、火事は52件の最低数を記録し、そのうち24件だけが放火とみなされた。
関連動画(予告編シリーズ)
クロウ/飛翔伝説(オリジナル版)第1作
THE CROW/ザ・クロウ(日本版)第2作、1996年
クロウ 復讐の翼(オリジナル版)第3作、2000年
クロウ 真・飛翔伝説(日本語吹き替え版)第4作、2005年
クロウ・天国への階段(オリジナル版)テレビシリーズ、1998~1999年、主演:マーク・ダカスコス
リブート版(オリジナル版)