概要
男性側が払う着手金のような意味合いがあり、通常は女性から男性には贈らないものである。
英語では「エンゲージメント・リング(engagement ring)」。日本では「エンゲージリング」とも呼ばれる。
左手の薬指に嵌めるが、これは古代ローマにおいて「左手薬指の血管が心臓に直結している」と考えられていたためである。心臓内部に感情の中心があり、これが愛に結びつくとされていたことから、左手薬指に嵌める習慣が生まれた。また、途切れることがない丸い輪は永遠を表し、魔を防ぐものともされている。
また婚約指輪を贈らなかったり、婚約指輪と結婚指輪を兼ねた指輪を贈るカップルもいる。
起源
婚約指輪の歴史は古代ローマにさかのぼる。当時は結婚自体よりも、様々な約束を含んだ婚約の儀式の方が重要視されていた。そして、その約束の履行を誓約する印として、鉄の輪を婚約指輪として用いるようになった。
当初、婚約指輪に貴金属を使用することは一部の特権階級に限られていたが、2世紀になると金製の婚約指輪が一般にも普及するようになった。しかし当時の金は非常に価値の高いものだったため、金の指輪は外出時に着用するだけで、帰宅するとすぐに鉄の指輪に着け替えていたという。
現在、婚約指輪に使われる宝石といえばダイヤモンドが一般的だが、中世ではサファイアやルビーが使われていた。1477年、神聖ローマ帝国皇帝になるマキシミリアン大使がブルゴーニュの公女・マリーに結婚を申し込んだ時に、ドイツのモロルティンガー博士が、「不屈の力」「永遠」を意味する石のダイヤモンドの婚約指輪を贈るよう助言したのが、ダイヤモンドを婚約指輪に使った最も古い記録である。
婚約指輪の価格
「給料の3か月分」というフレーズが有名だが、これは1970年にデ・ビアス社(宝石会社)が宣伝広告で使用したキャッチフレーズが広まったものである。当時は円が弱かったため「給料3か月分」であったが、現在の円の価値なら給料1か月分ほどと思われる。実際、2012年時点での婚約指輪の価格は20~40万円ほどであることが多かった。平均価格は31.7万円(ゼクシィ結婚トレンド調査2012)。
プロポーズに婚約指輪は必要か
ドラマや漫画では、「プロポーズの言葉とともに、男性が女性に指輪を差し出す」……というシーンがよく見られる。このサプライズプロポーズを現実にやってみたいという男性は意外と多く、プロポーズの前に婚約指輪を購入する男性は全体の3~4割ほどだという。
しかし実際には「サイズが合わなかった」「彼の選んだデザインが好みではなかった」「ふたりで選びたかったと言われてしまった」などの失敗談もあり、成功させるためにはかなりの計画性とリサーチ力が必要である。この失敗はそれなりに多いらしく、これを防ぐために、「プロポーズリング」と呼ばれるプロポーズ用の仮の指輪を提供している宝飾メーカーも存在する。
また最近では、おもちゃの指輪や指輪をかたどった雑貨(キーホルダーなど)を渡し、「OKなら、今度一緒に本物を買いに行こう」という演出方法もメジャーになりつつある。
創作では
もろもろの事情で指輪などを調達できなかったりした結果、指輪以外の何かしらはまる輪状のものを婚約指輪代わりに使うケースがある。
工事現場に落ちていたナットを指輪代わりとした作品は有名所。最近では追手に向けて投げた手榴弾のピンをプロポーズに使ったケースが出てきた。