曖昧さ回避
- 婚約(結婚の約束)を破棄し、関係をなかったことにすること。
- 主人公が自らに害が及ばない形で、1.の結末を目指して行動する物語ジャンルのこと。婚約破棄ものと呼ばれる。
- 近年、流行した「悪役令嬢もの」から発生した、と言われる物語ジャンルのこと。2.と同様に「婚約破棄もの」と称される。
- 3.からさらに派生したジャンルで「婚約破棄をされた側」という一点に集中させた作品。このジャンルにおける「婚約破棄もの」の主人公は必ずしも悪役令嬢である必要性は無い。
概要
1.の概要
結婚の約束をしたカップルや両家が、様々な理由から、その約束を破棄すること。
上述では「なかったことにする」と言ったものの、当然のことながら現実では本当になかったことになんか、なるわけがないので、要注意。
というのも「結婚の約束」というのは、いわば「自身と相手の長い人生の大事を共に背負うために準備を行うための約束」である。いわば「結婚の前段階として、その延長線上に自らを置く(結婚同様の立場にあると明言する)」とする「契約」であり、その関係を明言している事は、つまりは「婚姻を結んでいる者と同様の誠意を相手に対して尽くさねばならない義務を負っている」事を意味している。
- 蛇足だが法上の契約は、通常は口頭でも成立するものなので注意。
「本人が言っているだけ」ならまだしも「契約が家族や友人の周知にある」状態である場合は確実に契約(婚約)は成立しているものとして扱われる。
日本には「結婚をすることになった二人の両家が共同で行う婚約の儀式」である結納というものが存在する。結納金や結納品を形式にのっとって受け渡すことで婚約が調うため、結納を済ませているか否かでも責任の重さは変わってくる。
実際に公文書(結婚届など)を交わさぬ以上は離婚よりかは責任が軽いとも言われがちだが、どのみち契約である以上は時折に聞く「まだ婚約だから」などという文言は(公文書を交わしていない状況は、ある程度は汲まれるものの)普通は通用しない。その破棄に対する責任は離婚と同様、有責側(婚約破棄に至る原因を生じさせた側)が賠償や慰謝などの道義的かつ社会的な責任を負う事になる。(有責に男女は関係ない)
しかし、自由恋愛の(恋愛は「心や感情」なのだから、それは契約や社会とは離れたところにあるべきだ、とする)立場から見た場合には、こうした約束・契約は非常に理不尽に見えるもので、その部分から婚約という社会的な事象に対するアンチ的な感情として以下に言う「婚約破棄もの」が出てきた側面も、まぁ無い事もない。
また、「上記の賠償や慰謝などが発生してもとても一生を添い遂げられないと思ってしまった相手とは結婚する前に縁を切ってしまう方が傷が浅い」と言う考え方もある。
もっとも大抵は離婚同様、賠償や慰謝を約束しても「婚約破棄の余波で生活を建て直せない」「婚約破棄後に結ばれた別の相手との子どもを養育せねばならない。子どもには罪はないのだから許してくれ」(いわゆる無い袖は振れぬ)などとして様々な理由を立てて踏み倒す(さらには婚約破棄した側が自己保身や自らの信用を保つために婚約破棄された側を責め立てる)ケースがとても多く、婚約破棄をされた側は泣き寝入りするしかないというのが現実でもあり、時に社会問題として取り上げられる事もある。(ゆえに「あんな奴の事は早く忘れて、新しい幸せを」という話にも繋がる。また、この現実こそが3.および4.の「婚約破棄もの」が望まれやすい要因でもある)そもそも婚約という「約束」も守れない人間が賠償や慰謝の約束など守れるはずもない、というのは一応の(嫌な)道理ではある。
無論このレベルまで来てしまうと婚約破棄(あるいは離婚)した側は「私は約束を守れない人間です。他の人との約束も自分に利がなければ(あるいは利があっても都合が悪ければ)容赦なく踏み倒します」と喧伝してるに等しく、人としては正真正銘の外道、ケダモノもかくやの最低行為と言えるもので、これを行っている人間には社会的信用など無い(あるいはマイナスである)ものと認識すべきである。
婚約破棄は、自己責任で。
あるいはかつて婚約破棄や自己有責離婚をした人間を信じる事も、また自己責任で。
2.の概要
上述の通り、婚約の破棄においては有責側が責任を負う事になる。
逆に言えば「婚約破棄を望む側」にとってみれば、これを決行するにあたっていかに自分を綺麗に見せ、相手側に責任をなすりつけるかというのが、非常に重要なファクターとなっている。
2.に言う「婚約破棄もの」とは、自分が愛する人と幸せになるそのために状況を整え、「責任が相手にある」証拠(時に捏造や冤罪を含む)を揃え、自らの望む自由な未来(=婚約相手が自らに害を及ぼさないようにする状況)に至る事を目的としている。
3.の概要
こちらの「婚約破棄もの」は2.の主人公たちとは逆の立場で語られるもので、本来はヒロインの攻略対象と婚約関係なのだが、悪役令嬢であるためにその悪事が露見し、断罪されて婚約を破棄され、改めて関係を清算した(元)婚約者はヒロインと結ばれる…事を知っている転生者が「その最悪の事態を回避するため」あるいは「断罪後の余生を平穏に暮らすために奔走する」のがテンプレート。
悪役令嬢が新ジャンルとして台頭に立つと同時に発展し、大抵の場合は主人公が悪役令嬢となるため、悪役令嬢ものの1ジャンルとして扱われる事が多い(なお、婚約破棄しない悪役令嬢も多いため、悪役令嬢モノ=婚約破棄モノと言う訳ではない)。
詳細は悪役令嬢もの項を参照のこと。
4.の概要
また、そもそも主人公が悪役令嬢ではないパターンもある。こちらもまた「なろう系」の1ジャンルであり、何の落ち度も無い(むしろ婚約者を健気に支えて自らの才覚で盛り立てていた)ヒロイン・主人公を人前で婚約破棄し辱めた元婚約者には自らを支えていた主人公が離れたことで天罰が下り、ヒロイン(主人公)は自らの才能や性格の良さでパートナーを得ない形での社会的成功を得ることができ、その後に前の婚約者よりずっと素敵なイケメンと結ばれると言うのがテンプレートとなっている。
『魔道具師ダリヤはうつむかない』などが典型例となる。