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追放もの

ついほうもの

『追放もの』とは主に『小説家になろう』をはじめとするWeb小説サイトで閲覧できる小説ジャンルの一つである。 文字通り「主人公がパーティ若しくは団体から追放宣言を出されて、クビになる」という出だしから物語が始まる。
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追放ものとはどんな内容か?編集

話の類型としては古典的なものであり古くは巌窟王などにも見られるが、現在なろうで模倣されている詳細な類型は「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」が生み出したものである。


主人公が所属パーティ(またはブラック企業)のメンバーからクビ宣告されて始まる追放ものだが、作品によっては主人公の所属するパーティがダンジョンでお目当てのアイテムを手に入れる等の目的を達成したら「お前はもう用済みだ」と言わんばかりに『主人公を囮や蜥蜴の尻尾切りにして自分達を襲ってくる(追いかけてくる)モンスターから逃げる』という悪質極まりないパターンからスタートするケースや『主人公とは恋人婚約者な関係であったパーティメンバーの女性がメンバーの一人(主に勇者等のリーダー格)に奪われていたという不幸の上乗せで更に悲惨なパターンも中には存在する。


パーティに限らず、会社や冒険者ギルド軍隊、果てには国家からの追放も存在する。国家からの追放の場合、クビ宣告を受けるのは勇者自身というケースもある。(悪の魔王退治後の勇者不要論、狡兎死して走狗烹らる


追放される理由もそれぞれで、現代ものだと「会社のお荷物なので解雇」や「SNSで炎上したのでグループ追放」と言ったようなものもあるかもしれない。


主人公の性別は男性である事が多いが、女性が主人公の場合もあり、その場合、追放理由が男性より緩和されている場合が多い。



定型パターン編集

作品ごとに異なる点は多いが、主に下記のようなストーリーである。

※人によっては、導入だけで不快になる事があるので閲覧注意。


その1"クビ宣告"編集

勇者「〇〇。お前はクビだ」

戦士「お前みたいな足手まといは俺たちのパーティにはいらないんだよ!」

  • 主人公は冒険者パーティ所属するメンバーであるが、ある日突然メンバーの一人(主に勇者等のリーダー格)からクビを宣告されてしまう。
  • これは物語が主人公の追放から始まることに加えて、一方的に宣告されることにより、勇者パーティがその誉れに相応しくない輩なのを分かりやすくするためである。

補足:追放される理由(一応は納得できる理由のパターン)

  • 他のメンバーと比べて主人公だけ目立つような活躍貢献ができていない。
  • 主人公以外の他のメンバーの職業勇者剣聖賢者聖女といった上級の職業を連想させるものに対して、主人公の職業遊び人盗賊魔物使い等で比較して下級系かつ地味である。
    • だが盗賊なら怪盗ランクアップして『アイテムや装備品どころかスキルやステータス(能力値)すらも奪える』、魔物使いなら『実は(主人公に限り)神獣幻獣すらも使役できる』等の大化けするような素質を秘めているケースが多い。
  • 主人公の持つスキル(アビリティ)が鑑定錬金育成、生産等のように戦闘では直接役に立たないタイプである。
    • だが「使い方次第」で実は戦闘用のスキルを遥かに凌駕するなどのパターンが多い。
  • 職業やスキルで考えれば主人公の上位互換新メンバーが加わったから。
    • だが後述で述べられる通り、結論上は新メンバーではなく主人公の方が『得意分野』に限り優れていたというパターンも多い。
  • 実は追放者側も追放したくはないが、何らかの事情で追放せざるをえなくなる。
    • 変化球として存在するパターン。このパターンでは主人公と比較的良好な関係だったことが多い。主人公がその事情を知っていて円満に抜けることもあれば、知らずに困惑しながら追放されることもある。

その2"主人公の追放"編集

主人公「なんで私が!」

勇者「お前は俺たちより弱いし、スキルも役立たずだ。そんな足手まといは俺たちのパーティに必要無い」

  • 突然のクビ宣告に納得できない主人公は文句を言うのだが、状況によってはそのメンバーに具体的な理由悪口を一緒に言い返されてしまう。
  • それを聞いた主人公は諦めて、そのメンバーの言われるがままにパーティを離脱してしまう。
    • 作品にもよるが主人公が所属していたパーティを抜ける際に、主人公を追い出す張本人(主に勇者等のリーダー格)が主人公に対して退職金の類を一銭も出さない(出しても『銅貨が数枚』や『安価で買える最下級クラスの回復アイテム』『自分達にとっては無用の長物である装備品やアイテム』等主人公の今までの働きで考えると釣り合っているとは言えないものであることがお約束)ならマシな方であり、どころか「そうそう、出ていく前に装備は全部置いて行ってくれよ。それは僕たちが手に入れたものだからね」理不尽極まりない事を言うと、何故か主人公はこれを拒否せず馬鹿正直に装備を置いていくという卑屈な対応をするケースも多い(作品にもよるが主人公が力不足なのを認識している事も要因)。…とある有名RPGでは主人公が率いるパーティーから離脱するキャラクターが装備を置いて行く事はお約束だし、種泥棒と呼ばれたキャラも存在するが…。
    • さらに酷い追放ケースになると奴隷商人に売られたり、ダンジョンなど証拠隠滅できる場所で殺害されかけるケースもある(追放者が追放したい者に対する悪意が強い場合)。
    • 逆境を切り抜けて立ち直るケースもあれば、追放された者が追放者に殺害されるケースもあり、その場合は追放された者が自身の能力発動又は何者かに蘇生させられたり(この場合生存ルートと同じルートに戻る)、新たな生物として転生して第二の人生を歩む要素も含まれてくる。
    • 逆に主人公はパーティーから追放されても過去の貢献に対し、つつましく暮らせば一生暮らしていけるだけの多額の退職金を渡すという普通の組織・集団として真っ当な対応もできるものもあり、互いにライバルとして機能して成長するジャンルも出始めている。……正確には追放ではなく退職・転職ものと言った方が正しいが。

補足:主な追放理由(理不尽な理由のパターン)

  • 発言者の「俺のパーティ俺以外の男はいらない」という考え(男性主人公前提)。
    • だが『パーティ内の女性メンバー達にとっては好意も信頼も主人公>>越えられない壁>>発言者であるため主人公が発言者のせいで追放されたという事実を知ると発言者を見限って主人公との合流を目指して行動するという展開になり、追放者のハーレム計画は破綻してしまう』というケースもある。
  • 発言者は『仲間の一人を狙っているが、その仲間は主人公が好きなので理由をつけてパーティーから追い出したい』という最低横恋慕(男性主人公前提)。
    • しかし予想外にもその仲間が怒って、「〇〇を追放するなら私もこのパーティー抜ける!」と言い出して主人公を連れてパーティーを離脱し、忌々しい主人公を追い出すと同時に狙っていた仲間までも失う事になるという本末転倒なオチになるパターンもある。
  • 主人公の身分種族を理由とした差別
  • 冒険やクエストの最中にあったトラブルは主人公のせい』という思い込みやリーダーである勇者の判断ミスが原因なのに主人公のせいにする責任転嫁
    • しかしその判断が後に自分達のパーティの首を絞めることになるのがお約束である。ブラック企業のよくあるいじめの標的が辞職したら他が次のいじめの標的として狙われるが、繰り返す内に組織の自洗能力が残っていた場合、最期は害のある元凶に残った仲間達による報復によって逆に追放される。元凶が生き残った場合は寄生された組織ごと崩壊するのがオチである。
  • 主人公には実力は本当にないが追放者以上に知恵があり、追放者が真のリーダーシップがとれない事による嫉妬思考。主人公の欠点を理由にリストラまたは追放する(さらに酷いケースになると奴隷商人に売ったり、暗殺するケースもある)。
    • しかし、追放者には主人公より悪知恵があっても真の知恵や人心を掴むコミュニケーション能力などはないので今まで上手く行っていた事が上手く行かなくなり仲間達の関係が悪化して、犠牲者や離脱者が増え信用を失う。離脱者は追放された主人公の離脱を一例にしてパーティを離脱するケースもある。最悪組織が崩壊したり、追放者自身の命がなくなる。しかし中には逆上して離脱を申し出た仲間をその都度闇討ちして殺していくという業を積み重ねる追放者もいる
  • 「俺達のパーティは攻撃こそ全てだから、それができないお前はいらない」という脳筋な体育会系思考きっとこの追放者は回復魔法補助魔法を唱えた事がないのだろう……
    • だがその脳筋な体育会系思考で今までやってこれたのは自分達が自覚していない主人公の援護フォロー(詳細は後述)、尻拭い等があったからというのがお約束である。そのため主人公を追放してしまった結果……
    • または、主人公が覚えたスキルが(覚えた主人公も)仕様がよくわからず、字面で戦闘に役立たないだろうと見做して追放するというパターンもある。これについては、習得者にもスキルの概要を説明しないスキルシステム自体に問題がある。

その3"主人公の再スタート"編集

主人公「今までやっていけたのも奇跡だったんだ…でもこれからどうしようか……」

  • パーティを抜けた主人公は、途方に暮れながらも一人で頑張っていくことを決意する。
  • この後は復讐するか、冒険をするか、農場を営むか、新しい道(再就職)を探すなどに分類される。

補足:追放された主人公が取る行動

  • ソロ冒険者を続ける(この場合ギルドでのランクリセットされて最下級のランクからスタートしたり、『主人公は勇者パーティの一員ではあったが、ギルドに所属する冒険者ではないためギルドで冒険者になるための試験を受ける』というパターンもある)。もちろん勇者パーティに見放された悪評が広まっている主人公にギルドはいい顔をしない。中にはけんもほろろに追い出されたり、試験に合格するまでに礼節のなってないゴロツキに等しい冒険者に絡まれる事もザラ
  • 故郷帰省したり、自分のことを知る者がいない田舎辺境の地で一人暮らしを始める。
  • 自分のスキルや能力等を活かした商売ビジネス領主建国などを始める。
  • 国や組織のトップ、もしくはその関係者であるヒロイン等にスカウトされる形で、その組織に所属するようになる。
  • なお自分の力の使い方に気づけずに他の組織にスカウトされるまで再就職と追放(解雇)を繰り返すケースもある。
  • 傷心旅行や自分を見つめ直す等の理由で一人旅を始める。

その4"スキルの真価やヒロインや勧誘者との出会い"編集

※パターンが重なるケースもある

  • パターンA

主人公「俺のスキルにこんな使い方があったなんて…!」


  • パターンA'

主人公「この武器を使えば……宝の持ち腐れだった俺の魔力を十二分に活かすことができるぞ!」


  • パターンB

ヒロイン「ねぇ(主人公の名前)ちゃん……私の仲間になってくれない?」


  • パターンC

勧誘者「(主人公)さん……ぜひとも我が○○(国や組織など)に来てはいただけませんでしょうか?」


  • パターンD

主人公を追放したパーティの仲間「キミにはこういう仕事が向いていると思う」


  • 主人公は真の力を発揮した自分のスキルや偶然手に入れた武器などの装備品アイテム、または出会ったヒロイン等がきっかけで、実力冒険者としてのランク、そして名声等を徐々に上げていく。
  • ヒロインが主人公の仲間(従者)になる理由は『モンスター悪徳な盗賊団等に襲われたり等のピンチから助けてもらった(庇ってもらった)』『奴隷として売られていた所を主人公に購入される等で助けてもらった』等で主人公に恩があるタイプの物が多い。
    • ヒロインは主人公の理解者及び味方である。復讐ものに繋がる場合は人間を遥かに超える実力を持つ魔族女神などの設定がされていることが多い。
  • 主人公を追放したパーティが主人公の新たな道を示す事もある。追放後も互いの関係が良好なパターンに多い。

補足:主人公におこるターニングポイント


その5"勇者パーティの没落"編集

  • パターンA

勇者「付与術師なら一回で味方全員に全種類の強化魔法をかけるぐらい簡単にできるはずだろうが!あの野郎はいつも平然とやっていたぞ!」

名うての付与術師「は?何言ってるんだお前……そんなお伽噺みたいなことできるなわけないだろ!!」

勇者「なん…だと…」


  • パターンB

勇者「くそっ!いつもより切れ味が鈍いじゃないか!どういうことなんだ!」

魔法使い(勇者は気づいていないようだな。追放したあの娘のスキルは我々の生命力を僅かに吸収する代わりに攻撃力を大きく倍増させる効果を持っていることに…)

  • その一方で、主人公を追い出した冒険者パーティは落ちぶれて行くのだった……
  • この段階で主人公に対して酷い仕打ちをしたパーティがその報いを受けるというざまぁ展開を欲する読者が現代は多いためか、このジャンルの小説原作とした漫画はとても多い。

勇者パーティのその後編集

  • 主人公が所属していた元・パーティが落ちぶれる理由は実は主人公のスキルや能力や知識が地味だがとても優秀な物で、それがあったから今までは問題なくやっていけたというパターンがお約束である。
    • 主人公が「普通」にやってのけていた立ち回りが専門家すら上回っていた、主人公の防御力が常人より高くタンク役を引き受けてくれたお陰で敵の激しい攻撃も大したことが無かった、主人公のスキルによるバフデバフの支援効果が極めて優れていたからなど…

普通に没落する

王様「勇者よ、ゴブリンやスライムすら倒せないとは何事か。勇者の称号は剥奪する!」

勇者「ぞ、ぞんなあああぁぁぁ…!」

  • 結果、惨敗の事実や功績に隠されていた素行の悪さ・自力の乏しさ等が一気に知れ渡り、勇者の地位や高ランクな冒険者としての資格そのものを早々に剥奪されてしまうケースも珍しくない。主人公の序盤の踏み台や壁として破滅する事もあれば、他の要因で勝手に破滅する事もある。
  • 元パーティ(または追放者)の素行がすこぶる悪く、主人公追放前から周囲からの評判が悪く、本人達がいないところで陰口を叩かれていたというパターンもある。大概はその尻拭いを主人公が行ったため許されていたが、主人公が追放されたのを期に素行の悪さがエスカレートして、「これでやっと、断罪する理由ができた」とこれ幸いと王様や上司が資格剥奪に重い腰を上げる展開もある。
    • 逆に素行の悪さを知っていながら甘い汁を啜りたい思いで元パーティ(または追放者)に胡麻擂りする民衆や上司もおり、元パーティの没落に合わせて彼らも破滅するという展開もある。

反省し己を顧みる者は報われ、そうでない者は破滅する

  • その後のメンバーの行方は作品によって様々だが、追放に反対していた穏健派などは、主人公と復縁する事や自力で他の道を歩む事が殆ど。逆に賛同していた者たちの中で反省した者や頭のいい者(善悪区別なく)は自力で他の道を歩んでいく(腐っても有能な実力者)が、反省できなかった愚者は過去の威光を喚きたて、それを周りから嘲笑される日々を送る。最悪破滅したり、命を失う。善人も悪人も愚かであれば平等に破滅するのである。

覆水盆に返らず…?

勇者「○○○、ここにいたか。今すぐ復帰しやがれ!」

魔法使い「アンタが抜けたせいでアタシ達大迷惑してんのよ!」

主人公「うん帰れ」


  • 主人公の重要さにようやく気付いた勇者パーティ(元・所属パーティ)が連れ戻しに来るパターンもあるが、主人公に酷い仕打ちをして追放した件は特に謝罪しないケース、謝罪するケース、仮に謝罪しても再び主人公にすり寄るための方便に過ぎず誠意が感じられないケース等様々。
    • だが新たな居場所を手に入れた主人公には断られてしまい、納得して再勧誘を諦めて穏便に会話を終わらせる場合もあれば、逆上して襲い掛う場合もあり、その時は害虫のようにあっけなく叩き潰される。温厚な性格や怠惰な性格の持ち主でも愚者まぬけな性格でなければ飛んでくる火の粉は払う。再就職した会社のいこごちがいいなら当然の話である。

別れた方がためになる場合も

勇者「あれからお前のスクルトベホイミのありがたみを実感したよ。今まで頼りすぎて済まなかったな」

主人公「もう昔のことだよ。またいつでも来なよ。ポーション安くするから」

  • 逆に主人公を追放した事で新たな道を歩んだ主人公やうまく体制を整えた追放パーティにとって互いに大きな利益になったり、対等なライバルといえる存在になったり、いい影響を与える事もある。

逆恨みされるケースも…。

勇者「くそっ!〇〇め、せっかく許してやろうと思ったのに再加入を断りやがって……」

仲間「勇者よ、俺に妙案があるぞ。〇〇は今エルフの小娘と組んでるんだ。その小娘をだな……」

基本的に主人公に酷い仕打ちをした元・パーティ一同がその報いを受けるというのが『追放もの』の定番だが、逆恨みされるケースもある。

  • 主人公がかつて所属していた元・パーティの中には悪知恵の働く卑劣漢悪女がいて、主人公が保護するヒロインなどをにしたりする等、魔王もびっくりの外道ムーブに走る作品もある。
  • スローライフに移った作品でも、こうした主人公の成り上がりを許さない元パーティの追撃が現れ始めた。生産したポーションや装備などの販売が軌道に乗り始め、幸せを取り戻しつつあったはずの主人公だが、それを風の便りで知った勇者パーティが主人公の幸せと利益を奪おうと目論むのである(現実のコンビニ経営みたいな…)。

主人公が気が付いたら主人公を追放した組織がいつの間にか滅んでいた

新聞『勇者パーティ《神の剣(ゴッドソード)》、メンバー全員違法アイテムの所持と使用及びサギの容疑で逮捕されました』

そうなんだ主人公「そうなんだ(無関心)

主人公が何もしなくても主人公を追放した組織がいつの間にか他団体に滅ぼされ、その情報を主人公の知人や噂で聞くケースもある。稀にその情報すら主人公に渡ってない事もある


特に触れられずフェードアウト

「『ざまぁ』はメインでは無いんで」と作者に割り切られている場合、特に追放した側の事は描写されなかったりする。愛の反対は無視

  • 役者の都合がある実写ドラマなどでもありがち。

悪に堕ちた勇者

勇者「俺は世界を救う使命を背負う勇者なんだぞ!なのにどうして俺が落ちぶれて、あいつばかりがどんどん持て囃されるんだ……!」

怪しいローブの男「……力が欲しいか?」

勇者「誰だお前は!?」

自分の身勝手で追放した主人公が順風満帆に成り上がっていき、その逆に坂を転がり落ちるボールのようにノンストップで落ちぶれて行く(中には逆恨みで主人公に危害を加えるも返り討ちにされるパターンもある)現実を受け入れる事とができない勇者パーティーに謎の男(大抵は魔族や魔王等の世界の平和を脅かす存在であるのがお約束)が自分達の前に姿を現し、そのまま誘いを掛けてくる。


当然、勇者や冒険者としてはその誘いには絶対に乗ってはいけないのだが、『主人公への逆恨みな憎悪』もしくは『地位や金、女を思うがままにできる人生を送りたいという私利私欲』が理由でその誘いに乗って悪に堕ち、主人公どころか国や世界の平和を脅かす勢力に与するようになる。というのが定番である。

そうなってしまっては、『勇者の肩書きは失われてしまい、悪に堕ちた自分を倒した主人公が勇者としての肩書を引き継ぐ』のがお約束である。


その他の派生パターンなど編集

今更もう遅い編集

これは、最近の小説家になろうカクヨム等で投稿されている追放ものに用いられている要素で、以下のような特徴がある。(もちろん当てはまらない作品もいくつかある)

  • 追放される主人公は、自分の持つスキルの詳細を完璧に把握しており、自分を追放しようとする張本人に「俺(私)を追放したら俺(私)のスキルの効果が適用されなくなってこういう損失がある」と丁寧に説明するのだが、追放する張本人は『追放を逃れるための聞き苦しい言い訳』等と決めつけて聞く耳を持たず主人公を強引に追放してしまう。
    • その後の流れは前述の通りで、現在の順風満帆ぶりが嘘のようになくなってから主人公の言っていたことが本当だったと思い知ることになる(最期まで理解しない愚者もいる)。
  • 主人公と同じパーティにいる女性メンバー達は主人公を信頼していたり、好意を寄せているのだが、張本人が彼女達に断りも相談もなく独断で追い出したため、『張本人が主人公を追い出した』という事実を知らない。
    • そのため張本人は『あいつが勝手にパーティから抜けた』等の嘘を言って正当化するのだが最終的にはバレてしまい、主人公を追い出した張本人に愛想を尽かして見限りパーティを抜け、女性メンバー達は追放されて行方知れずとなった主人公との再会や合流を目標に活動していく(ただし中には脅迫等の何らかの事情で自分の意志でパーティを抜けられずジレンマを味わうケースもある)。ただし、作品によっては男性キャラクターがそのポジションになる場合もある。
    • 追放がパーティの総意ではなく張本人個人の独断だった場合、バレた事で張本人がリンチを受けたり冷遇されたりして酷い目に会うパターンもある。
      • 逆にパーティが張本人に口封じとして皆殺しにされるパターンもある。
    • 張本人が勇者やリーダー的ポジションではなく参謀的ポジションの人物の場合は、勇者・リーダーが主人公と仲が良い・好意を寄せているポジションになり、主人公を探すために失踪し、パーティが解散する羽目になったりする場合もある(または、使命や義務に囚われて主人公を探しに行くわけにはいかなくなり、歯がゆい思いをするケースもある)。

追放視点編集

追放者が主人公の場合もある。有能な人材を追放する事で達成できる目的遂行(恋愛関連など)の為に他の犠牲(没落や組織の崩壊など)を払う事を覚悟している。

追放された側の事を想っての追放で、悪意がないパターンもある。


ライバル関係編集

主人公がスキルで成功しつつ、その後のパーティの成功も喜び、パーティも追放した主人公の成功を喜びつつ、競い合うライバル関係のような対等な存在になり、別組織になっても助けあう存在となりえる事もある。

追放が両者の同意の元で行われた場合や、追放者が悪意がなかったり人格者だったりする場合などがこのパターンになりやすい。


自主離脱編集

追放されるのではなく、主人公が理不尽な扱いに耐えかねて自らの意志で離脱するパターン。厳密にいえば追放ものではないが、離脱後の展開は同じような経過になることが多い。

こちらの場合は、元パーティが主人公の真価を理解しており、主人公が離脱すると聞いて慌てて止めようとするが、結局プライドの高さが原因で決別する羽目になる……というパターンも存在する。


影武者パターン編集

勇者としての功績は全て主人公によるものであり、民衆から勇者として慕われているのはそれらの功績を主人公から奪ったお飾りな無能というパターン。

この場合は主人公は最初から自分の実力に自覚しているが、何らかの理由で偽物の勇者(もしくは主人公の上司である王族)に強迫(大概は主人公の容姿が醜悪だったりなど公の場に出れない理由があるのが大半)されて渋々従っていたが、やがて相手の横暴さに嫌気が差して自主的に離脱することが多い。

なお、このパターンでは何故か主人公の実力を知っているはずの偽勇者やその部下が主人公を舐め切っており、主人公にあっさり返り討ちに会う展開もある。


親から勘当編集

『自分が属する実家や一族から追放される』という亜種パターン。

  • 基本的に主人公は『家柄、容姿、能力、性格のいずれも申し分なく、長兄であることから次期当主の地位を約束されたも同然だった。
  • だが、成人等決まった年齢の時に行った儀式によって主人公が得たスキル・職業が主人公の父親(現当主)のお目当てでないものであった(剣聖賢者の家系でありながら、それらとは無関係……どころか詳細が一切不明だったり、裏方系なスキルや職業)であった。
  • それに加えて、次男(主人公の弟で、その時点では全てにおいて主人公の完全下位互換なのがお約束)やたまたま近くにいた赤の他人の得たスキル・職業の方が主人公の父親のお眼鏡にかなうものだったことから、主人公は一族(実家)から勘当されるという形で追放され、次男や赤の他人を養子にするなどして次期当主にする。

そもそも、主人公自体が前述の通り正しい心の持ち主であり、得た職業・スキルに頼らずともやっていけるだけの能力持ちである上に、その職業・スキル自体が鬼に金棒(虎に翼)を体現するかの如く、主人公にとって大きな助けとなることが多い(ソシャゲ感覚でガチャで頼れる仲間や装備品を次々と得る、更地の荒野に畑や村を作り……最終的に大都市や城、国の経済に大きく影響するようなブランドとして成り上がるetc.)。

なお、このパターンは

  • 農民や料理人といったモブ職を授かって勘当されたが主人公限定で凄まじい効果を発揮する(農民なら地属性魔道士を上回るレベルで大地を操れる、料理人なら生きた高位モンスターを料理してしまえる、など)
  • 大地を統べる者宝石の支配者など詳細不明ながらも何やら凄そうな職業を授かったのに一切検証せずに勘当され、当然だが超強力な効果があった
  • 実際に役に立ちそうな術や技を持っていなかったので勘当されたが、雑魚モンスターを何体か倒してレベルを上げたら超強力な術を修得できた

など、ある種のご都合主義を感じさせる設定が多いと共に、批判意見への対応を繰り返してきた歴史を感じさせる。


追放されたのが異世界からの転移者編集

主人公が現実世界からの転移者で、最初は世界を救う勇者として歓迎されるがハズレのスキルや職業を引いた途端に蛇蝎の如く忌み嫌われ、国から追放・酷い時には処刑されそうになるというパターン。勘当型に近い。

「だったら元の世界に帰してくれ」と主人公は懇願するが、大概は「黙れ勇者の名を騙る犯罪者め」と一蹴されて酷い仕打ちを受けてしまうことも。この場合だと追放者が王族という事もあり、悪徳勇者より地位と人望が大きい分たちが悪い。中には、異世界の事情を知らない主人公に何故主人公が嫌われ続けるのかを追放・処刑の直前まで説明しないというものもあり(主人公が目覚めた能力はかつて王国に害をもたらした、かつての裏切り者の職業が主人公が目覚めたものと同じ、など)、追放者の陰湿さと身勝手さがかなり強調される。

主人公からすれば相手側の都合でいきなり拉致された挙げ句、使い物にならないと見做されて殺されそうになったという状況であり、心が荒みきってダークヒーローや復讐者に堕ちるのがお決まり(対して恨みを抱かない超弩級のお人好しのパターンも存在する)。

異世界転移者ではないパターンもあるが、どちらにせよ主人公が不当な扱いを受けることには変わりがない。または追放者の国側に良心的な人物がおり、主人公を不憫に思って抗議したり(聞き入れられないのがお約束)、主人公を密かにサポートしたり、主人公と協力して暴君を失脚させるなど協力関係を築くものもある。


追放者が異世界人編集

追放者である悪徳勇者ポジションが異世界から転生・召喚された人間というパターン。

この手の追放者は、転移してきた世界が元の世界での本やゲームに酷似するというものが多く、ゲームでの知識を駆使してやりたい放題するという「ゲーム知識で無双する主人公」に主人公補正を無くしてそのまま悪役にしたものである。主人公を追放する理由についても「前知識で役立たずだと知っているから」「後に悪党になると知っているため先手を取った」「相手の功績を自分のものにするため」「単に嫌いなキャラだから」「ハーレム作りに邪魔だから」などなどと様々。

ただし、あくまで酷似するだけで異世界人が知る本やゲームの世界とは別物だったりするのが大概で、この手の追放者は「異世界=本・ゲーム」と認識し、ゲーム感覚で所詮NPCだと簡単に人の命を奪うド外道と化している(本来のゲーム知識で無双する主人公の中には「本・ゲームは同じようで全くの別物」と認識する者もいるが、追放者はそれすらも認識しない)。

そして、本・ゲームに無い展開(悪役キャラがこの世界においては罪もない善人、ゲームでは絶対にしない行動をするモンスター、など)になって狼狽し、自分の思い通りにならないことに憤慨・混乱して醜い本性が露わになり破滅する。

自分が物語の主人公であり自分の知識が絶対に正しいと信じて疑わないため、例外や間違いを断固として認めず救いようのない結末になることが多い。

一方で、話の流れから自分が追放ものの悪党側になっていることに気付き、破滅する運命から逃れようと醜く藻掻くパターンもある。


神様による出来レース、またはスキルシステムの欠陥編集

与えられたスキルは字面で考察したり、実際に使ってみて判断するしかなく、神様・システム側からの説明がない(または簡単な説明だけで詳しい使い方は説明されない)というパターン。「スキルは神様から与えられた神聖なもの」と捉える世界もあり、そこではハズレスキルを引いても主人公に文句を言う余地がなく、最悪「神の寵愛を受けなかったもの」として差別の対象になる。

この場合では、悪徳勇者に付与された一見すると大当たりに見えるスキルが、実はとんでもないデメリットもある(人としての心を失う、または「選ばれた者だから何しても許される」という選民思考になる、神様陣営の命令に絶対服従、など)という欠点が意図的に隠されていることがある。そしてそれを隠していた神様的な存在が、自分にとって都合のいい駒を量産してマッチポンプを行うという諸悪の根源として描かれる事が多く、大概はラスボスとして君臨する。

主人公にハズレスキルを付与した意図としては、「勇者の当て馬・踏み台にするため」であることが多い(あるいは「気まぐれ」や「嫌がらせ」などの理不尽な理由だったり、特に理由がないパターンもある)。ただし、神様自体が与えたスキルの隠された裏技を知らなかったという、杜撰であるとしか言いようがないパターンが存在する。

逆に主人公に依怙贔屓して「役に立たないように見えて実は優秀なスキル」を付与していたというパターンがあるが、どのみち主人公を追放させる要因を作ったとして読者からの反応がよろしくない場合がある。


ただし、作中世界のシステム的な概念だった場合、それで理不尽な目にあった主人公ですら「そういうものだ」と受け入れてしまい、結果として明らかに欠陥があるスキルシステムが改善されずにエンディングを迎えて読者がモヤモヤしてしまう事もある。



悪役令嬢ものタイプの追放もの編集

そのテーマ性から悪役令嬢ものにも追放ものとの親和性が高い。

主に婚約破棄に際し国外追放や投獄がなされた後、


  • 悪役令嬢が実は神や大精霊といった超越存在のお気に入りで、悪役令嬢を追放や投獄をした結果、それら超越者の怒りを買い、元婚約者とその取り巻き、あるいは国そのものが災厄に襲われる。
  • 聖女(正ヒロイン)はただのお飾りで悪役令嬢こそが国を守る聖なる結界の源で、悪役令嬢を追放したせいで結界が消えてモンスターの襲撃を受ける。
  • 悪役令嬢は政治や外交をほとんど一人で担っていた天才で、彼女がいなくなったことで国がたちゆかなくなる。
  • 悪役令嬢の実家が強大な軍事力や経済力を持っており、婚約破棄をきっかけにクーデターを起こしたり一族郎党や領地ごと隣国に鞍替えして王家や国を滅ぼす。

等のパターンがある。


通常の追放ものと異なり、王族・貴族の婚約は政治的な要素が含まれているので、婚約破棄は相手の家系だけでなく自分の家系にも泥を塗る行為であるため、相応な理由がなければそう簡単に婚約破棄は許されないものである。ただし、理由を問わず大概は婚約者の家系が婚約破棄を原因は全て主人公の努力不足であるとみなして容易に承諾するケースが多く、同様に婚約破棄された主人公の家族も、主人公を責めて冷遇するケースもある。


「よくも我が家紋に泥を塗ってくれたな。主人公よ、貴様は今後我が家名を名乗ることは許さん。平民となって惨めに死ぬが良い!」


大概は両親に甘やかされた主人公の妹が婚約者を奪ったケースが多い。もっとも、その妹が政略結婚のための英才教育や礼儀作法を学んでおらず、普段は猫を被っているだけで性格が悪い者が多い。

両親は妹の本性に気づいていないか、寧ろ王族として姉を謀るくらい強かであるべきと歓迎している。要は負けるような弱者が悪いの理論


どのパターンにしろ勇者追放同様、元婚約者が不自然に無能である、もしくは悪役令嬢が追放されて当然の行為しか行っていない、という批判を受けやすい。


または悪役令嬢とは名ばかりで、


  • 何も悪いことをしていないのに元婚約者に悪役令嬢の烙印を押されて追放される。(冤罪パターン)
  • 主人公が聖女で、偽物の聖女に立場を奪われて追放される。
  • 元婚約者がクーデターを目論む悪人で、主人公が国を救うために奔走する。
  • 婚約破棄が元婚約者の独断であり、周囲や両側の親族の怒りを買った元婚約者の方が(元婚約者に言い寄った悪女共々)投獄・追放される。(主人公にお咎めはなく、再婚相手とのラブロマンスになる)
  • 主人公が周囲のために悪役令嬢を演じており、自らの罪を自白して主人公側が婚約破棄して身を引いただけで、逆に事実を知っていた元婚約者や周囲が主人公を慕って引き止めようとする。(恋愛ゲームの世界に転生した作品に、よく見られる)

などというケースもある。


正確には悪役令嬢ものとは言えないが、婚約破棄に際して投獄・追放され、元婚約者が「ざまぁ」や没落するなどの要素は共通する。(むしろ上述の正ヒロインポジションの人物が本来の意味での悪役令嬢である)


溺愛系編集

女性向け界隈で人気がある溺愛系も追放ものの要素を持っている場合がある。

多くは典型的なシンデレラストーリーで大雑把な流れとしては


  • 主人公は家族から虐げられてる少女であり、虐げられてる理由は
    • 主人公は愛人との間の子供であり、それ故に正妻とその子供達から見下され、虐げられている。
    • 逆に主人公は正妻の子供だが愛の無い政略結婚で、実母の他界後に父親が愛人と再婚したため、その義母と異母妹に虐げられる。
    • 単純に容姿や才能が劣っていると思われている。
    • 主人公が天才であることは知っているが、その才能を妬んで虐げているパターンもある。(現実にも子供の才能や成功を妬む毒親はいる)

  • その後、名門ではあるが残忍であるなどという悪評がある一族との縁談が持ち上がって主人公が嫁ぐことになる。
    • 当初は親から愛されている姉妹に縁談が来ていたが、悪評を嫌って主人公に押し付けられるパターンが多い。
    • 引き立て役としてつれていかれたパーティーで未来の夫と出会うパターンもある。

  • だがその結婚相手は噂とは裏腹にイケメンでかつ優しく主人公を溺愛してくる。
    • 当初は噂通りかなりの塩対応だったが、心の交流イベントを切っ掛けに溺愛モードになるパターンもある。
    • もしくは主人公の家族が主人公に関して悪い噂を流していて、その噂を鵜呑みにして主人公を悪女と信じて邪険に扱い、酷い時は「お前に愛される資格などない!必ず追い出してやる!」と宣言した後で真実に気づいて慌てるパターンもある。
    • 最近では本当に主人公を追放してしまい、彼女の死後に真実を知って結婚相手も実は逆行してましたという展開がやたら増えてきた(特に韓国産の作品)恐らく全て知っているため最初から好感度カンスト・未来予知により主人公を要所要所で助けてキュンキュンイベントが簡単に作れる点が注目されたと思われる。

  • 一方で主人公の実家は没落していく。
    • 主人公を溺愛している夫が、妻が虐げられていたことを知って妻の実家に直接的あるいは間接的に報復する。
    • 無能扱いされていた主人公が実は精霊に愛される特異体質で実家の繁栄はその体質の恩恵だったため、主人公が嫁いだためにその恩恵が失われる。
    • 主人公のチート能力が発現し、聖女扱いされたためその聖女を虐げていた問題のある家系として周囲から迫害され出す

  • 進退極まった実家は主人公を逆恨みして謀略に走る。
    • 嫁ぎ先で幸せに暮らす主人公の話を聞きつけた家族が、その恩恵を奪い取るために金策を持ちかける。が、すげなく追い返される。
    • 或いは噂と違って優しくイケメンな理想の男たる夫に娶られた主人公に嫉妬した姉妹が家族と共謀して色仕掛けに走る。が、まるで相手にされない。
    • やがて業を煮やした実家は主人公を夫の知らないところで脅迫、または拉致監禁し、強引に婚約破棄と新たに姉妹との婚約を締結するよう夫に迫る。主人公が嫁ぐ際に付いてきた使用人や、主人公の出産した子供を人質に取ることが多い。が、当然こんな極悪非道な所業を夫が許すはずがなく、夫は一族総出で主人公奪還に突撃を仕掛ける。

元鞘系編集

上記の溺愛系の派生の一種。明確なカテゴリ分けがされている訳ではないが、溺愛系との大きな違いは新婚約者が存在せず、元婚約者が主人公への愛情を思い出し、あの手この手で主人公を取り戻そうと足掻く点である。

簡単に流れを纏めると、


  • 主人公と婚約者の決別から始まる。
    • 主人公は王太子など後に国を代表する人物の妻となることが決められており、それまで必要な英才教育をこなして来た努力家。
    • しかし突如、婚約者から婚約破棄の申し出を受ける。大衆の面前で宣言する断罪劇ではなく、秘密裏に伝えることが多い。
    • 理由は自身より出来の良い主人公に嫉妬した婚約者のコンプレックス。または主人公の姉妹や平民出身の令嬢と「真実の愛」を見つけたため。
    • 中には婚約者に「貴方の子を妊娠したわ。これを公表したらどうなるかしらね?」と婚約者が別の女に脅されていたケースも少なくない。

  • 婚約破棄を受け入れ、国を離れる主人公。
    • 長年慕って来た婚約者からの別離宣言に大なり小なりショックを受けながらも気丈に振る舞い、その場から去る主人公。
    • 前世の記憶が蘇った場合は自身を悪役令嬢と認識して、今後彼らに関わらないように国外や辺境に移り住む。
    • 若しくは王太子の妻に認められなかった娘の不甲斐なさに呆れた両親によって無一文で勘当される。
    • 中には第三者の陰謀を疑い、騙されたふりをして主人公を安全圏に逃がそうと尽力してくれる事も。

  • 新天地で一平民として生きる主人公。
    • 多くは隣国の農家や居酒屋、宿屋などで住み込みで働き始める。
    • 中には身なりや振る舞い、言葉遣いから貴族と勘づいて冷たく当たる人もいるが、真正面から受け止めて仕事に打ち込む主人公を周囲も徐々に認め始める。
    • 若しくは勤め先に頼んで親戚の平民の子と偽ってもらう事もある。

  • 元婚約者はというと、
    • 念願叶って、或いは脅しに屈して新たな女性と婚儀を結ぶ。
    • しかし主人公がいなくなった事で様々な不都合(他国の主要人物を把握していない、軍備や政務を負担させていたため処理が追いつかないなど)が生じ始める。
    • または新たな妻に重大な問題が発覚する。(主人公の悪評はデタラメで彼女のでっちあげだった。婚約者の子と称して托卵だったなど)
    • 焦った元婚約者は部下に命じて、主人公の行方を探させる。(事態を察した元婚約者の旧知の友人が目星をつけてくれる事もある)

  • 主人公に凸して復縁を宣言する元婚約者。
    • 主人公の勤め先が分かるや否や周囲の目も気にせず現場へ突撃。婚約を復活するので今すぐ戻るよう迫る。(主人公が貴族である事を隠していた場合はその場で全てを周囲に暴露する)
    • 流石に横暴だと拒否する主人公。周りの人たちも勝手を言うなと加勢。
    • ここで元婚約者が常識的な人物なら一度は大人しく引き下がる。しかし強引な性格なら「王太子に逆らうのかい?何ならこの場の全員を不敬罪で切り捨てても良いんだよ?」と主人公を脅迫。強引に城へ連行する。

  • 若しくは元婚約者の動きを察知した妻が主人公の排除に動く。
    • 元婚約者が引き上げたタイミングで勤め先に凸して、使用人として直ちに屋敷に来るよう脅迫。逆らえば周囲の人達がどうなるか分からないと人質を取る。
    • または勤め先の建物に火を放ち、強盗に見せかけて暗殺を図る。主人公は拿捕され、勤め先の人たちは殺される。
    • 更に悪どい場合は主人公の実家の人々にターゲットを絞り、当主にあたる父親に毒を盛る、暗殺者を差し向けるなどして、主人公が当主代行として表舞台に戻らざるを得ないように手を回す。
    • 尚、これらの悪行で主人公を引き摺り出して対面した際には「元婚約者には感謝しかないわ。こうして貴女を引きずり出せたんですもの」とあたかも元婚約者がグルだったように見せかけて両者の溝を深める根回しも忘れない。
    • 当然事態を察知した元婚約者は主人公のもとに駆けつけるが、主人公は家族や職場を危険に晒した一人と思い込んでいるため激しく拒絶。元婚約者はショックでその場を立ち去るか、自暴自棄になって主人公をベッドに引き摺り込む

  • 主人公に迫る妻の凶刃に、周囲の人達が立ち上がる。
    • 妻の手中に落ちた主人公は使用人として壮絶な虐待を受けたり、職場の放火殺人犯にでっち上げられたり、当主たる父の殺害未遂犯にでっち上げられたりして、社会的或いは精神的抹殺に追い込まれかける。
    • しかしここで無事だった主人公の家族や職場、元婚約者の友人らが結託して法廷や処刑台、妻の屋敷に突撃。先頭に立った元婚約者が自ら主人公の窮地を助ける。
    • 元婚約者は主人公を蔑ろにしてしまった事実を詫び、許してくれるならもう一度チャンスを欲しいと申し出る。
    • 主人公が出す答えは作品によって異なるが、いずれも主人公が自分なりの幸せを取り戻す終わり方となっている。

長所と短所編集

「追放もの」の長所は、主人公の立ち位置と目的が明確化されていることにある。

大筋において冷遇された被害者が報われる展開と、加害者が自業自得で落ちぶれる展開を見せるストーリーラインが主軸となっているため、著者としては展開を書きやすく、様々なアレンジも利かせやすい。

読者としても清濁両方の爽快感を得られる点や、「成り上がり(立身出世)」ものは古来より人気のある物語である点、話の主軸がしっかりしているため期待している内容と大きく外れることが少ないという点が大きなメリットである。


追放された後の道筋に農場生活が多いのも、競争社会やブラック企業過労死しかねない状態から抜け出して平穏な生活を送りたいという共感を募る意図があるのかもしれない。

農業は農業で大変なのだが魔法やスキルを駆使して何とかしてしまう事が多い。

金は生活必需品だが、必要な分あれば過剰に頑張る必要もないのだ。……と言いつつ、結局は金も異性も才能も仲間(人材)も超一流レベルで過剰に手に入るのがお約束だが。



短所としては、話の軸やコンセプトが明確すぎるが故に、主人公の強さや目的といった内容が単一化(主人公は第二の人生を歩む、勇者パーティは落ちぶれる、美少女と一緒に農場生活を送るなど)してしまい、他ジャンルと比較して作品ごとの差異が特に少ない。

追い出される主人公が本当に役立たずなままだったためしが無いというのも、昨今のタイトルで作品の内容がほぼ把握できてしまう小説と同じテンプレと言っても良い。


また、上述した所謂ざまぁ要素はほぼ確実に付属し、ネット小説において根強い人気を誇るジャンルであると同時に、醜い感情から成り立つため根強いアンチも多いジャンルである。元よりざまぁ系は「加害者側があまりに愚か過ぎて現実味がない」と言う批判を受ける事が少なくないが、追放ものの場合は「主人公を追放する」と言う結論有りきで話が進むため、特にそれが顕著であり、展開に矛盾が生じやすい。


  • まず、ここから記述する問題点全てに言える……というか、追放ものに限らずあらゆる創作に言える事だが、現実にあるかどうかと、読者にリアリティを感じて貰えるかどうかは別の話である。例えば、現実にはリアリティがないほど無能で理不尽な人間と言うのは確かに存在するものではあるが、それをそのまま創作にしても、読者の納得を得られるとは限らない。
    • 事実は小説より奇なりとはよく言ったもの。実話なら「本当にあった」と言う理由で許されても、それが小説だと「奇妙で説得力がない」と取られてしまう事は多いのだ。
    • ただし、それは読者側にも言える事であり、読者が掲げるリアリティが「読者個人にとってのリアリティ」であることもまたあり得る(中世または近代西欧を意識した剣と魔法のファンタジーの世界に、常識も価値観も異なる現代社会でのリアリティを持ち出すなど)ため、いわゆる声がでかい批判者がこれを犯してしまい他の読者からツッコまれることもある。

  • 解りやすく強い能力を持つ主人公であればどう考えても、こんな有能なヤツを追放するのはおかしいと言う話になり、どうしてもリアリティが無くなりがち。不自然を解消するため追放する理由に説得力を持たせようとするとよくよく考えれば追放は妥当であり、追放した側にさほど非がないと言う状況になってしまうため、読者の共感が得にくい作品になってしまうことが多い。
    • 一応現実においても、例えば縁の下の力持ちな仕事をしている技術系や事務系の人間を軽んじて冷遇した結果大きな損失を招く、などと言ったケースはある。だが、そうした状況の多くは「実際には現場を良く分かっていない上層部や他部署の判断」である場合が多く、「恩恵を実際に受けているパーティメンバー」が追放するとなると、不自然さが大きくなってくる。

  • 「追放時点では主人公は無能で、追放後に能力に目覚めたので見返す」と言う場合、追放する時点では無能な主人公をクビにするのは仕方のない事である。
    • 「主人公はスキルでパーティの力になっていたが、その事をパーティが理解していなかった」と言う場合、「主人公がパーティに自分の能力を伝える努力を怠っていた」または「伝えようとすらしなかった」「むしろ隠していた」など主人公側に非がある場合も多い。「スキルを学んだ師匠との約束で他言できない」等の理由が設定される場合もあるが、パーティメンバーにとっては当然知ったことではない。
    • さらには「追放される際に主人公が全く弁明もしない」事も非常に多い。いくら優秀な人材でも、報連相が全く出来てないような人間との協力関係など成り立つ筈もなく、クビになって当然である。

  • こうした問題を力技でどうにかするために、追放側を過剰に悪辣・無能な存在する事も多い。
    • 前述のような「主人公の能力が明らかにもかかわらず、その有用性を理解しない」といったパターンの他、例えばそもそも追放するなら穏便にお別れ・解雇で済ませれば良いものを、「複数人で罵詈雑言に等しい悪口を主人公によってたかって浴びせる」、酷い時には「明らかに殺すつもりでダンジョン等の危険な場所に置き去りにする」と言った行いをする追放元パーティなども少なくない。
    • だがこのような描写はやりすぎると、「主人公にざまぁされるだけのための、都合の良い存在」と取られて読者の反感を買いやすい。
      • また、勇者サイドの描写に罪のない市民なども巻き込まれて被害を受けると、それもヘイトの対象となる。「追放されたとはいえ元同僚のせいで起きた被害なのに、主人公は知らぬ存ぜぬ」は通りにくい。「主人公のせいで没落し、そのせいで悪事を働いた」と言う事になれば、間接的には主人公の責任とも取れるので尚更である。そして、それに対して主人公が無関心を決め込むと読者からの印象が悪くなるのは必然である。
      • なお、後にそれを知った主人公もそう考えて、被害者を助けたり、勇者サイドに戦いを挑むなど、主人公が最終的に責任を取る形になる場合も多い。だが、「主人公の間接的な責任で被害が出る」のと「主人公がそれを解決する」間にタイムラグ(現代のようにリアルタイムで情報が短時間で伝達できるような世界観でなければある程度タイムラグが起こるのは仕方がないのは留意)が生じると、その間に不快に思った読者が離れる可能性が出てくる(ただし、解決に駆けつけるのが早すぎると「出待ち」だとか「ご都合主義」だと批判される場合がある)。
    • 中には、「勇者サイドの愚行や暴走はすべて裏で操る黒幕のせいだった」というフォローを入れようとする場合もあるが、上述の過剰な愚行や悪行をおこなった後だと後付けとして批判されるのが多々である。

  • むしろ主人公の方に非や落ち度がある場合もある。
    • 例えば「主人公のチートスキルが経験値やスキルの貸与系」である場合に、駆け出しだった冒険者パーティにレベルやスキルを付与して冒険を楽にする→その後は活躍もせずに追放される→パーティ離脱の際に「貸したものを利子つきで返してもらう」と主張し、勇者パーティーは突然弱くなって慌てふためく……と言った場合。
    • これで主人公の説明がなかったり、説明があっても一部伏せていたり(例えば単利形式と思わせて複利形式など)と言った場合、主人公が悪徳高利貸しのようになってしまうという意見もある。
      • もちろん「主人公が説明していたが、聞く耳を持たなかった」と言うパターンも多い。が、それに関しても「主人公が貸与しなければ、そんな勘違いは生じなかったのに」と言う事になりやすい。現実の高利貸しもそうだが、「借りる決断をした者も悪いが、借金のデメリットを隠して(あるいは矮小化して)貸した方も当然悪い」のである(中には追放された後で精算できると気付き、意図せず高利貸しになってしまう場合もあるが、どのみち同じことになる)。
    • 流石に、読者の感想が「主人公が一方的に悪く、追放側は悪くない」と言う作品はそこまで多くない。だが、「追放側も悪いが主人公も悪い、どっちもどっち」となってしまう作品も少なからずある。

  • 中には、主人公は自分の能力について無自覚だったが、追放後に自分より上の立場のギルド職員(または故郷の恩師など)に「勇者パーティが強いのは主人公のおかげ」だと教えられる場合がある。だが、この場合だと「上司的立場の人物が主人公の真価を知りながら、主人公が冷遇されても追放されるまで特に対処せず放置した」と見做されてしまう。
    • 大体は追放前は冷遇される主人公を慰めるだけに留まり、追放された後で「いくら勇者パーティが愚かでもそこまでするとは思わなかった」と放置した理由を述べても、言い訳にすらならないことも多々ある。
    • 追放ものとして成り立たなくなるかもしれないが、上司的立場の人物がしっかりしていれば追放はおろか、主人公が冷遇されるのを防げたのではないかと思われてしまう。
      • ただし、中にはギルド長や国王といった更に上の立場の人物が悪徳勇者と癒着しており、不正や悪行をもみ消していたという場合がある。そういった悪徳上司を断罪した後で、後任になった主人公の理解者は悪徳上司が過去に犯した悪行の事後処理に忙しいあまり、悪徳勇者が悪行を行っても後手に回わざるを得ない場合もある(主人公が手伝う事もあるが大体は依頼を受けての場合が多く、大体はスローライフを優先する傾向があるため、上述のように「主人公にも非がある」印象になりやすい)。

  • その他、追放もの特有という訳ではないので詳細は省くが、「主人公の自己評価が無駄に低くて鼻につく」とか「運と主人公補正だけで上手く行き過ぎてる」とか「主人公に都合の良いチョロインが惚れてくれる」とか、チート物にありがちな描写も、上手く書かないと反発を買いやすい。

このように、主人公が一方的な被害者であると言えず、場合によってはむしろ正当性が追放した側にあるにもかかわらず、過剰に批判されてざまぁを受け、追放された主人公はかつての無能を棚上げして無双するといった作品が少なくなく、当然、読者の共感を得にくくなる。

結果、他のなろう系よりタイトルを見ただけで既にお腹いっぱいになってしまう人もおり、表紙避けならぬタイトル避けされることがある。


もちろん、全ての作品にこうした問題点が当てはまる訳ではない。ちゃんとこのあたりの問題を処理している良作も存在する。

また、「ざまぁ」要素が付随せず(追放した側も没落しない)、パーティから追い出される合理的な理由で主人公も納得し自ら脱退する展開を取る作品も存在し、その場合は元パーティ仲間と良好な関係を保ちお互いの健闘を祈るような間柄となる事が多く、こうした話の場合、整合性は取りやすくなる。


あるいは、「追放もの」を意識したエピソードを作り、追放もののお約束を描きつつ、「追放の理由が妥当なものであり、追放された側が悪として描かれる」「追放者だけでなく追放された側も破滅し、色々あって当人達が和解する」「主人公が追放もののイベント(冒険者パーティーの追放劇)を目撃する第三者的ポジション」「追放ものかと思ったら、ただ単に不調な仲間を親身になって心配していたというオチ(追放された……もとい心配された側もそれを理解している)」などのアレンジを加えるケースもまた存在する。

こうした作品は、話の流れとしてはヘイトが溜まりにくい事も多い。


コミカライズされる段階に至れば、初回の第一話(ある意味、新規ファンを獲得するラストチャンス)だけなら読む読者もいるので、そこで読者を物語に引き込むのがコミカライズした漫画家の腕の見せ所である。

だが逆に、作画担当の技量によっては改悪されているパターンもある。具体的には、原作では戦闘では役立たずだが探索等の裏方系の分野では有用だったことが描かれていたが、コミック版ではその辺りの描写が削除された結果無能な主人公が無能故に追放されるというただの自業自得と化してしまったコミカライズもいくつか存在する。そして勇者パーティを逆恨みして復讐しほくそ笑む主人公の醜悪さに辟易した読者は数知れない。



こうした批判が多い一方で、逆に、読者側のジャンルへの偏見が過ぎた結果、明らかに実態に則していない批判をして叩かれるというケースも存在する。

(こちらも追放ものに限った話ではないが)ネットの広告でかなり悪意のある編集で過剰に表現されることや、まとめサイトにて(大抵は悪意ある)投稿主の主観による偏った評価だけを鵜呑みにし、中身を読んだ気になった者もいる。

そうした偏った情報や知識で知ったかぶりで批評した結果、他者から間違いを指摘されて引っ込みがつかなくなってムキになり、荒れに荒れた実例も少なくはない。


とはいえ、苦手な人にはとことん好まれないジャンルであることもまた事実であり、同時に苦手な人に嫌われやすい描写は、好きな人にとっては面白い描写である事も少なくない。

例えば、これまでに上げて来た多くの問題点は、「細かい事は良いからざまぁ描写でスカッとしたい」と言う読者には何の問題点にもならない。

それどころか、問題点を潰して「苦手な人でも面白く読める作品」を作ったとしても、それがスカッとしたいだけの人にとっては「ざまぁ以外の余計な描写が多い」と取られる事もあるのだ。

追放もののみならず、好みの分かれやすいジャンル全般に言える事だが、「自分の嫌いな作品でも、それを好きな人がいる」「自分の好きな作品でも、それを嫌いな人がいる」とお互いを尊重し、距離を取る事は大事である。


ただ、この「距離を取られがち」と言うのも作品にとっての少なくない問題である。

前述した通り、問題点を解決した良作や、お約束をアレンジした作品など、追放ものが嫌いな人にとっても楽しめる作品は多数存在する。だが、そうした読者に対しても、「追放もの」と言うだけでタイトル避けされて読んでもらえない、と言う事態は少なくない。

かといって、読まずに批判するのはもちろんマナー違反であるため、「自分に合わなそうだから離れる」程度であれば自然なことであり、責められる謂れはない(読んでもらいたい作者には酷な話ではあるが)。ただしわざとらしく捨て台詞を吐くとこれまた荒れる原因になるため、黙って立ち去ること。



さて、これまで「追放ものが苦手な読者」にとっての欠点について上げて来たが、追放ものにはこれに加えて「追放ものが好きな読者」にとっての欠点も存在する。それは、追放元パーティを見返す展開が話の主軸になりやすい、と言う点である。


追放元パーティにヘイトをため、それを見返す事でカタルシスを得る、と言う展開が王道である以上、ヘイトの溜まった追放元パーティが長くのさばり続ける(逆転するまでに話数がかかる)と、それだけ読者にストレスが蓄積していってしまう。

特に、Web小説の投稿頻度や商業作品の出版頻度などによっては、追放元パーティによってピンチを迎えたまま数ヶ月もの間好転しないということもままあり、そうするとその間に読者が離れてしまうことも少なくない。


だからと言って逆にテンポよく追放元パーティを早々に見返してしまうと、それはそれで、話の主軸が簡単に終わってしまう。後に残るのは、追放ものである意味の全くない消化試合でしかない。それならわざわざ追放ものにせず、最初から別のジャンルで書き始めた方が良い。

例えば、戦闘系のチート物であれば、敵を倒したら次の敵を出せば良い。だが、追放ものの場合「追放元パーティを一度見返したら別の追放元パーティが現れる」などと言う事は、当然あり得ない。その結果、どうしても話の主軸が短くなりがちである。


これらの問題をなんとか両立しようとした結果、「追放元パーティへのざまぁは早めに行うが、なんだかんだ生き残ってまた別の場所で悪事を働く」と言うパターンも多いが、これはこれで「なんでこんなにしぶとく生き残れるんだ」とか「逃がしてしまう主人公が無能すぎる」と叩かれがちである(負のご都合主義)。

長々と続けず中編にすればこの問題は解決するが、作者(もしくは出版社)としては「せっかく当たった作品を終わらせても、次の作品が受けるとは限らない」と言う思いは当然であり、その結果ダラダラと長引かせて結局読者に見限られてしまった……と言う事も少なくないのである。


一応、これはあくまで追放元パーティを見返すことが主軸である作品での話である。導入こそ追放ものだが、スローライフや再就職など、最初から「ざまぁ」が目的ではない作品には当て嵌まらない場合もある。そのため、ヘイトの元である追放元パーティとの因縁をあっさり片付けて、別の敵役を新たに設ける作品も存在する。

だが一方で、「わかりやすいゴールがないから終わり時が定めにくい」という別の問題もできてしまい、代わり映えのない内容を延々と書き続けてしまい、読者に飽きられる危険性も存在する(特にスローライフが主体な作品がこうなりやすい傾向がある)。


総じて、成り上がりの逆転劇というわかり易さと言う長所がある一方で、話のテンポや登場人物のヘイト管理、読者のモチベーションの維持が難しいというのが「追放もの」の短所と言えるだろう。


該当する作品一覧編集

※加筆時は『記事が存在する作品』を『タイトルはフルネーム表記』かつ『五十音順に従って』お願いします。


関連タグ編集

因果応報(自業自得) サクセスストーリー(成り上がり)

無能(役立たず)、お荷物ゴミプロローグで主人公が追放される時に元・所属パーティーのメンバー(つまり追放者)から浴びせられる悪口としてお約束の言葉。だが、前述の通り追放者にとっての無能(役立たず)とは自分達にとって実感できる貢献(特に攻撃役)をしていないという意味なので、的外れそのものである。

勇者パーティー:主人公が所属するもプロローグで追放されるパーティーの通称(勇者がいない場合は『冒険者パーティー』である)。十中八九解散や崩壊するが、作品の方向性によっては前述の『ライバル関係』という形で残り続ける場合もある。


悪徳勇者:前述の勇者パーティーのリーダー格にして、主人公をパーティーから追放する張本人及び『追放もの』という物語を成立させる上で必要不可欠な悪役と言える存在。詳細はリンク先参照。


バカ息子:こちらも追放ものをはじめとする異世界ものにおいて定番となっている悪役。ただしこちらは前述の悪徳勇者と比較すると、登場してから破滅するまでの期間が物語全体(プロローグ~最終回)で見ると短い、かませ悪役に落ちぶれることが多い。


雑用裏方縁の下の力持ち:主人公が悪徳勇者達から押し付けられる形で担う事になる役職。基本的に主人公一人だけでこれらを全てこなし、後述の無自覚チートと合わさる事でこの分野にいては『一家に一台』ならぬ『一パーティーに一人』と称せる程の能力を持っていたというパターンもある。


負けヒロイン:主人公がパーティーや実家を追放された際に主人公についていかなかったor序盤の内に主人公と合流できなかったヒロインは『自分の知らない所でメインヒロインが主人公と出逢い、そのまま片思いの相手である主人公を取られてしまう』というパターンがお約束である(もし負けヒロインにならなくとも、『主人公を巡った正妻戦争で大きく出遅れる』という損をすることになる)。



関連・類似するジャンル・要素編集

異世界もの:作中世界を『剣と魔法の世界』にする関係上、ほぼ必ず含まれる作品ジャンル。

現代もの:該当作品こそ少ないながらも、作中世界が『我々が生きる現代日本のような世界観』を作品の舞台にした追放ものも存在する(前述の該当作品『社内システム…』も現代ものに該当する)。

ハーレムもの:『主人公の仲間になるのはヒロインをはじめとして女性である場合が大半で、最終的に主人公以外は全員女性のパーティになる』(チーレムとも言う)という要素を含むものもある。

復讐もの:主人公を酷い目に遭わせた者が報いを受けるという点が共通している。中には兼ね備える作品も存在する。

ざまぁ:小説のタグに高確率で付いている。

もう遅い:こちらも小説のタグに高確率で付いており、中には小説のタイトルに含まれる場合もある。

従者もの:追放ものとは真逆の状況。

出世もの:出世ものの場合、追放もの、従者ものどちらにも転ぶ。


辞職リストラ後の再就職:自分自身の実力より上のエリート企業や環境の悪いブラック企業を辞めて、自分の能力に見合った相性のいい企業に就職して再スタートする方が状況が改善する事も多い。


現地主人公:レトロニムの一つで、追放ものと相性が良いとされている。

無自覚チート:作品ジャンルの一つで、これまた追放ものと相性が良く主人公が備えている場合もある。


関連作品編集

みにくいアヒルの子:『グループ(家族)から追い出された主人公が実は優れた素質を持っていて、それにより報われる』という要素を持っており、そういう意味では追放もののご先祖様とも言える童話である。

ブレーメンの音楽隊:『年を取り仕事が若い頃のようにできなくなり、グループ(農家)から追い出された動物たちが身を寄せ合い、セカンドライフを目指す』、これまた追放もの、リストラからのスローライフご先祖様とも言える童話である。結局ブレーメンにたどり着いてないとか言わない


スカッとジャパン:追放ものの定型パターンを『リストラスカッと話』と揶揄する声もしばしば聞かれる。


真夜中ぱんチ:動画投稿者グループの主人公がSNS炎上を理由に追放、ソロで再スタートする…と言う流れが追放ものに類似する。



関連キャラクター・人物編集

ジル(ドルアーガの塔):主人公だが、盾役なのに突進してきた魔物に気絶させられ、仲間に運ばれるなど明らかに足手まといだった事から主人公の兄によって早々にパーティーから戦力外通告される。ある意味このジャンルを先取りしたキャラ。


ラッキューロ悪の組織の構成員の一人だが、本編終盤にて所属する悪の組織が目的である地球滅亡も目前になった時に、組織の大幹部に「君はもう用済みだから解雇(クビ)だ」と理不尽に解雇されてしまう。その結果、ラッキューロ(の持つアイテム)が悪の組織と敵対する正義のヒーローたちが勝利する要因の一つになり、悪の組織は負けてしまったというある意味では『追放もの』の先駆けのような経歴がある。


流離のグリフォンライダー異世界転生転移モノが元ネタと言われる勇者トークンテーマで圧倒的な封殺性能、出張性能により公式から禁止カードに指定された姿が勇者パーティーから追放された追放ものと比喩された。なお出張性能が高いだけでなく、純粋な勇者デッキではまさにキーカードであるため、禁止による追放後に勇者一行のデッキパワーが悲惨になる事が予測される事も、追放ものを踏襲していると言われている。


黄泉:短気で頭が悪い事を理由にリーダーから刺客を差し向けられ、視力を失った状態で見捨てられる。だが、視力を失った事で慎重に生きる様になり、蔵馬が目標を捨てて唯の盗賊として生きている一方で努力を重ねて霊界からの支配を跳ね除ける程の強さと魔界でも有数の権力者となっている。蔵馬は黄泉に対する劣等感や嫉妬心なんて無いが、追放された側が追放した側よりも出世しているという点では似ている。


秋山駿:冤罪で勤務していた銀行を解雇された挙句、恋人を自身に濡れ衣を着せた上司に奪われたが、投資家としての才能が開花し、銀行員時代とは比べ物にならない大富豪となった。そして、稼いだ金を人生を本気で立て直そうとする人々に無利子に貸すという金貸しとなり、極道すらも自慢の足技で叩きのめす神室町ヒーローの一人となった。

その反面で彼に濡れ衣を着せ、恋人と結婚した上司は彼の活躍の余波で銀行を解雇され、自身も彼と同じ金融業を始めるも彼の様な才覚が無い為に零落れ、その挙句に保険金目的の自殺を考えるも、秋山の情けで彼から金を借りる事となる。

追放された側が追放した側よりも社会的に成功し、人間として成長した事で魅力的な存在となったという点では該当するだろう。


バブル期の有名なディスコ・クラブおよび、その創業に関わった実業家。

この折口雅博氏は「ジュリアナ東京を立ち上げる」→「経営陣内での内紛で追放」→「別のディスコ・クラブを作る」→「経営陣内の内紛で、また追放」→「人材派遣業のグッドウィルを設立」→「数々の不正が発覚し廃業」→「別の会社を立ち上げ経営者になる」という、一度の人生で何度も追放とざまぁを繰り返している人物。

無茶苦茶だが実話である


追放ものに該当する小説作品が閲覧できるWeb小説サイト編集

小説家になろうカクヨムアルファポリス


関連リンク編集

各サイトでの追放ものの作品へのリンク編集

小説を読もう追放物/追放もの
カクヨム追放物/追放もの
アルファポリス追放もの

ニコニコ大百科の『追放系』


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