概要
ご都合主義は『主人公やヒーローをはじめとする正義(善玉)側の登場人物にとって都合のいい設定や物語の展開』を指す言葉だが、負のご都合主義は"負"と付いている通りその逆である。「逆ご都合主義」とも。
元来は
- 主人公にとって不運な展開/敵にとっての幸運な展開が理不尽に起こってしまうこと
についてそう言われる事が多かった。
主にリアル商売の為に「話を引き伸ばすために敵を延命させたい(例:とどめの刺すところに狙ったかのように敵の仲間が登場して回収される等)」「とにかく主人公を理不尽な目に合わせ、そこからシナリオを展開したいまたは話を面白くしたい」等と言った理由から生じる事が多く、また、いわゆるバッドエンド症候群の作品に対して言われる事もあった。
不幸体質の記事も参照。
だが近年ではこれに加えて新たに、主に小説家になろうやカクヨム等のWeb小説サイトで読めるWeb小説(及びそれを書籍化したライトノベルもしくは原作としたコミカライズ版作品)において
場合にも言われるようになった。
元々の負のご都合主義と異なる点として、
- 話としては筋が通っている場合
- 不運以外の理由(例えば作中キャラの倫理観の欠如、主人公サイドの登場人物のお人好しの域を大きく出た恩情や優しさ)
による場合でも、とにかくヘイト役が制裁を受けない時点で、負のご都合主義と非難されやすい。
後者(web小説等)の例
- ダンジョン攻略やクエスト等で危険なモンスターを目前にした際に、仲間を怪我させたり状態異常にする等して無理やり蜥蜴の尻尾切りにしたということが捨て石にされた張本人(主人公の場合もある)によって告発される形で大勢に知られても、冒険者ギルドで受ける処罰が口頭注意や冒険者ランクの降格程度で済む。(※自己責任範囲内)
- 主人公への逆恨みや差別意識等から、主人公どころかその他の大勢の無関係の人達を巻き添えにする程の事件(騒動)を起こすも、それが解決した後に自分達がその事件(騒動)の原因たる張本人だと被害者達にバレても、資格剥奪や終身刑のような『冒険者として二度と活動できなくなるような処罰』にはならない。(※弱者では強者を処罰できない)
- 主人公をはじめとする罪もない人達に身勝手な理由で危害を加える改心や更生の余地がない小物な悪役を『殺害する』『捕縛して警察や衛兵の類に突き出す』等と言った形で引導を渡すことは十分可能なのに、主人公が平和主義(不殺主義)という名目でそれらを一切行わず見逃した結果、後に罪もない人たちが被害を被ったり主人公の目的を達成する上での障害となってしまった。(※自己満足のエゴ等)
- たとえ、捕まった悪党が極刑を言い渡されて執行まで牢獄に収監されたとしても、(無名のモブ悪党でない限り)大概は主人公達と敵対する勢力の手引きによってあっさりと脱獄を許す(もしくは減刑して釈放される)上にその悪党が主人公達への復讐を目論んで異常に強くなる謎の力を得た状態で再び立ちはだかるなど、中々因縁を絶つことが出来ずに長引いてしまうことケースが多い。(※マンネリでよくある展開)
ただし、
- 世界の平和を脅かす魔王を討伐できる唯一の存在たる勇者パーティーである。
- 件の悪役の親族・味方となる者が上級貴族や国の経済に影響を与える程の大商人等で悪役の不祥事を揉み消しできる(減刑できる)だけの権力や地位を持っている。
等の一応の説明がつく描写がされているならこの限りではない。(※組織のバックアップで鉄砲玉を生かす形)
仲間内による『負のご都合主義』
中には主人公自身やその仲間、身内が引き起こす『負のご都合主義』も存在する。
一例として、
- 敵対勢力と対峙する際に主人公達の献策や指摘、説得を悉く無視し、独断専行を強行。2人以上で強行する場合でも何故か主人公や戦力となる仲間は外す。結果、回避や対策が出来ていたはずの敵の術中に丸腰も同然でハマり、主人公サイド全体がピンチに陥る、最悪の場合は仲間は物語から退場する。(死亡フラグ、無能な働き者も参照)
- しかし主人公達の指摘や説得があった場合でも何故かハッキリとした言葉を使わなかったり、結論を話さず、遠回しな言い方だったり、濁した言葉で指摘や説得をする。結果として指摘・説得になっておらず、引き止めたい仲間に伝わってない事がある。
- 重大な話があるにも拘らず、特に話さなければいけない人物や周囲には何故かその事を黙っている(若しくは言おうとすると邪魔が入って言うタイミングが無くなる)。話さないままズルズルと時間が過ぎていき、最終的に最悪のタイミングでその話が話さなければいけなかった人物の耳に入る、或いは最終的に話さなかった事で仲間内のトラブルに発展する。(報連相の怠り)
- そういった中には、言おうと考えるものの「これは自分だけの問題だから、みんなに迷惑を掛けれない」「確証が無いことを言えば、みんなを混乱させてしまう」等といった余計な気遣いで自分一人の心の中で収めてしまう。だが、話さなかったがために結局はみんなに迷惑をかける結果となることが大半である。
上記の通り、主人公サイドの登場人物の行動や言動があまりにも不自然だったり、筋が通っていなかったりする。
このパターンは話を鬱展開などへ持っていく結果ありきな為、負のご都合主義に留まらず、作品によっては誰得シリアスとも評される事となる他、このトラブルを起こした仲間キャラも視聴者や読者からは戦犯として大顰蹙を買う事となる。
その他の例
悪役が主人公やヒロイン等に悪質な迷惑行為や危害を加えるも、その悪行に見合った報いや処罰を受けなかったり、反感を買うようなことをやらかしたキャラクターがそれに見合った報いや扱いを受けない時に、それらに対する文句として読者や視聴者・プレイヤーが用いる場合もある。
一例
学園ものの場合
- 逆恨みなどの身勝手極まる理由で主人公を刃物で刺そうとしたり、実際に刺して負傷させ病院送りにしたのに逮捕されず退学にもならない。
- 主人公やヒロインを強姦しようとするも失敗に終わり、これまた逮捕や退学等の処罰にならない。
- 自分の方から告白してきた主人公をフッたにも拘らず、主人公が自分以外のヒロインと親しくすると腹を立てたり過干渉するにも拘らず、主人公に拒絶されない幼馴染女キャラ
- 友人キャラを気取っており、作中でもその通りに扱われているが、実際は『主人公への嫉妬(妬み・逆恨み)をはじめとする私怨から主人公とヒロインを引き離そうとする』『ことある毎に主人公を貶す・見下す』など読者の反感を買う要素が目立つ男のサブキャラ
他には敵役の強さをインフレしすぎる、もしくは主人公を含めた味方の強さをデフレさせすぎて、敵と主人公サイドの強さの差が開きすぎてしまい、敵が舐めプをし続けるか主人公サイドに何かしらのご都合主義展開が起きないと主人公たちが敵に勝てないような状況に陥ってしまい、そんな展開に白けてしまった読者や視聴者・プレイヤーが用いる場合もある。
※以上の事柄は、具体例を挙げると特定作品への誹謗中傷に使われる可能性があるため記述しない方針とする。
また、具体例として実在のクリエイターを列挙することは「コイツの作品は負のご都合主義だからゴミ」と勘違いされかねないため論外である。
関連タグ
ご都合主義:対義語にして語源。主人公・ヒーローサイドのキャラが得をしたり恩恵を受ける(もしくは悪役や敵役にとって都合が悪かったり損をする)場合はこちらを用いる。
賭け(決闘):主人公サイドと悪役サイドでこれらを行う場合、主人公サイドは負けた時の大きなリスク(ヒロインや重要なキーアイテムを失う、主人公が学園等の組織を抜ける等)を背負わねばならない一方で、悪役サイドはリスクがないに等しい(負けても『何もしなくて良い』、『土下座をはじめとする謝罪など主人公サイドのリスクと比較すれば些細な行為で済む』等)という賭けや決闘として成り立っていないという客観的に見れば不公平そのものでありながら成立してしまうという負のご都合主義が働くこともある。
舐めプ、油断、よそ見:『勝利は目前でその気になればすぐに決着をつけることができるのに、主人公側がこのマイナス要素を発揮したことで、敵や悪役の逃走や反撃、人質作戦を許してしまった』という負のご都合主義も珍しくない(逆に『悪役側がこの要素を抱えていたことで主人公側の逆転を許してしまった』というご都合主義も存在する)。
理不尽暴力ヒロイン(メスガキ)、悪役(ヴィラン)、クズモブ:負のご都合主義で得をする(恩恵を受ける)キャラクター。
勝ち逃げ:『悪役・クズモブが主人公等に危害を加えたまま、謝罪や償い、報い等で読者や視聴者、プレイヤーの溜飲が下がる描写もなく物語からフェードアウトする負のご都合主義』をこう呼ぶこともある。
イケメン無罪/美少女無罪:加害者や悪人側の登場人物に負のご都合主義が適用される理由として"ネタとして"揶揄するように読者や視聴者、プレイヤーが用いる概念。
お人好し:負のご都合主義と悪い意味で相性の良い特徴。これを被害者側である主人公やヒロイン等の善玉キャラが備える事で、『普通に考えれば重罰を受けるであろう、悪行・犯罪を行った悪役を無条件で、無罪やお咎めなしという形で許してしまう』というケースもある。救いようの無い間抜けで弱い善人は大抵狡猾な悪人に搾取され続けたり、ゴブリンや盗賊などに殺されたりする役回りを与えられる。
ごめんで済んだら警察はいらない:『謝っただけでは加害者や悪人、犯罪者のしでかした悪行や罪は帳消しにならない(からこそキチンと落とし前やケジメ、償い等をしなければならない)』と念押しする、負のご都合主義とは対極に位置する言葉。しかし前述のお人好しにとっては『ごめんで済む"から"警察はいらない』であることが多い。ただし、行きすぎた結果厳罰主義を通り越して明らかに罪と罰が釣り合わない(転生ものでありがちな「なんの実績もない若造(主人公)の、理屈をすっ飛ばした(場合によってはその時点の常識に真っ向から反した)忠告」という聞くに値しないはずの情報を無視したという落ち度とも言えない落ち度のせいで「避けられたはずの悲劇を起こした」として失脚したり投獄されるなど)罰が与えられるような展開になってしまうとそれはそれで叩かれる元となる。
哀しき悪役:読者(視聴者・プレイヤー)のヘイトを買うような許しがたい所業(悪行・蛮行・犯罪)を作中で行っても『お涙頂戴な哀しい過去があれば許される』という(件の悪役を憎む読者視聴者プレイヤーにとって)理不尽な展開となるパターンもある。
お涙頂戴:負のご都合主義を成立させるのに必要な要素の一つにして免罪符とも言える要素。前述の通り許しがたい所業を行った悪役はこれに属する過去(家族からの虐待、孤児でひもじい思いをしてきた、クズモブに属する他人からひどい仕打ちを受けた等)を抱えているケースもいくつか見られる。
正直者が馬鹿を見る、憎まれっ子世に憚る:我々の世界における負のご都合主義に相当する語句。
イライラパート、胸糞:負のご都合主義によって起こりうる(もしくは延長される)読者(視聴者、プレイヤー)の望まぬ展開。ダラダラ引き延ばすほどシナリオフックが少ないなら負のご都合主義で読者を不愉快にさせてまで引き伸ばすのではなく、そのために便利なキャラを入れるなりなんなりする方向のご都合主義に持っていく方がよほど好印象である。
現実:具体例は省略するが、『許せない悪行や蛮行、犯罪を行った加害者や悪人、犯罪者にとって都合の良い判決や末路になる』『落ち度のない被害者が報われず泣き寝入りしたり、自殺してしまう』といったケースがごまんとあるため、どんな創作作品よりも我々の生きるこの世界こそが負のご都合主義で満ち溢れている……のかもしれない。