概要
主人公と言っても良いことばかりではなく、むしろ一般的なキャラと比較すると受難も非常に多い。俗に言う主人公補正というのはこれらを乗り越えるために必要なものでもあり、そういった意味では正負の主人公補正は表裏一体とも言える。
ちなみに主人公以外のキャラクターにこういった補正を付加して厄病神とする事で主人公を苦しめる作品も存在する。
- 事件、事故、災難、トラブルに巻き起こされたり引き起こしてしまうことが極めて多い
- 俗に言う不幸体質。主人公が平穏無事なままでは物語は始まらず退屈なものとなる。そのために物語は主人公にありとあらゆるトラブルを容赦なくぶつけ、その結果命に関わる危険な目や重傷を負わされることも珍しくない。
- 故に主人公は平和や平穏とは無縁の生活を強制されるのである。もちろんそれが原因で主人公本人が死んでしまうことは基本的にないが、裏を返せば死なない程度に酷い目に遭い続けるということでもある。強運が幸運であるとは限らない好例。
- 上記のように主人公以外のキャラクターに負の補正を付与して厄病神とする事で主人公を苦しめる作品の場合はこのタイプの補正を持っている事が最も多い。そういう作品の場合は主人公が現実と物語を混同した考え方を持っている場合が多く、それ故にそのキャラクターに対する敵意が行動原理となっている。
- ちなみにこのような「疫病神」キャラは下記の「異性運が悪い」をこの不幸体質とセットで持ち合わせている事が多い。不幸体質を使って「両親などの肉親の死亡率が高い」を起こし、主人公の肉親又は想い人を死に追い遣るキャラも存在している。
- 主人公が探偵の場合、行く先々で事件が起きて人が死ぬ。
- 主人公が医者の場合、行く先々で病人や怪我人が多発する。
- 上記の特に顕著な例。これらの主人公の場合、そもそも活躍を描くために事件(特に殺人事件)や事故が必要になるため、このような確率論的に明らかに異常な事態が発生することになる。特に長期作品であればあるほどこの怪現象は特異かつ露骨なものになるため、本人には一切の非がないにも拘らず作品内外を問わず死神や疫病神等と揶揄されてしまうケースも珍しくない。
- 理不尽な憎しみをぶつけられる
- 上記の事件やトラブルに巻き込まれながらも何とか生還した結果、憎しみの捌け口を求める犠牲者の遺族等から理不尽な形で怒りの矛先を向けられたり、最悪の場合は命まで狙われるケースも生じる。酷い場合は、自身を苦しめてやりたいという動機から敵対勢力に加担したり、「贖罪」を求めて無茶苦茶な要求をしてくる、自身ではなくあえて周囲の人間に攻撃を仕掛けて人間関係を壊そうとしてくる等、主人公にとっては心身共において苦痛に苛まれる展開になり、周りを巻き込みたくないが故に自ら孤立する道を選ばざるを得なくなる事さえもある。
- あくまでも「劇中」だけでならまだしも、最も酷い形と言えるのは、「劇中外」…つまりは「リアル」においてまで憎しみをぶつけられてしまう事にあると言える。特に主人公と敵対するキャラクター達等に何らかの悲劇的な過去や同情を引き寄せる様な魅力があった場合だと、判官贔屓と言える感情移入が集まった結果、所謂アンチや信者によって、客観的な事実が無視されてしまう形で主人公に憎悪の矛先が向けられてしまう事になる。揚げ足を取る様な屁理屈で批判されるだけならマシであるのだが、エスカレートしていくと風評被害からキャラヘイト、ヘイト創作と歯止めが利かなくなっていき、その影響で公式の続編等で本当に主人公の扱いが悪くなってしまう事さえもある。
- 死ねない
- 主人公補正の「死なない」を裏返すとこうとも言い換えられる。
- どれだけ苦難に晒され尊厳を傷つけられようが、どれだけ親しく大切な人を喪おうが、どれだけ取り返しのつかない深刻な過ちを犯そうが、それこそ死んだ方がマシであっても物語が主人公に死を許されない。仮に死んだとしても前述の通り蘇生が前提か、死んだ状態でまた生きていた時と変わらずか、それ以上の苦難や試練が待ち受けている展開がほとんどで、いずれにせよ主人公が主人公である以上は「死」の安寧が与えられることはまずない。
- 似て非なるものとしては「『逆転のカタルシス』の演出の為に不自然に劣勢に追い込まれる」がある。『逆転のカタルシス』は達成されれば爽快感こそある一方で、劣勢下の尺のバランスを誤れば冗長な鬱展開にしかならない。更に劇中で「修行を行った」と明言されていた場合、前述の劣勢状態が長過ぎると「本当に修行したのか?」と白けを誘発させてしまう。
- 異性運が悪い
- 特に主人公が男性の場合に顕著。モテると言ってもそれが1人であるということは少なく、大抵は複数人の異性による奪い合いとなり、主人公はその板挟みに置かれることとなる。その中には実害を伴うものも多く、当人に自覚があろうがあるまいが主人公も当然のごとく巻き込まれる。また本人の意思に関係なく痴漢の烙印を押されてしまうことも。
- 第三者から見れば羨ましいことこの上ないとしても、当人にとってはたまったものではない。さらに性質の悪いものになるとその異性キャラの親族(主人公と同性の場合が多い)、友人や取り巻き(これらは逆に異性の傾向がある)に目をつけられて敵対されてしまったり、主人公に好意を寄せる異性キャラ自体が災難の化身のような人物だったりもする。
- エロ漫画の異性たちは、良く言えば性的搾取に都合が良く、悪く言えば性的奉仕以外の手伝いをしてくれない。例えば、エロ漫画の女キャラは男ライバルに浮気せずに男主人公に尽くしてくれることはあっても、男主人公に嫌がらせをする男ライバルを退治するべく協力して一緒に戦ってくれたりはしない。体だけが目的のセックスフレンドとしては理想だが、パートナーとしては理想ではない。
- 両親などの肉親の死亡率及び絶縁率が高い
- 死亡フラグも参照。物語開始前、後に関わらず親やきょうだい(特に年上)等を亡くす、亡くした主人公は多い。穿った見方をすれば主人公に降りかかる死を肩代わりしているようにすら見える。
- 肉親の死亡よりも更に酷と言えるのが、肉親から絶縁状を叩きつけられてしまう事である。主人公の方に何の責任も無かったとしても、何らかの大きなトラブルに巻き込まれてしまう事で、場合によっては肉親にまで疫病神扱いされてしまい、地元から出て行かざるを得なくなったり、最悪の場合は「お前(主人公)が生きている限り、自分達は安心して暮らせないんだ!」と、命まで狙われてしまうケースもある。こういった場合だと、その後の主人公は重度の人間不信に陥ってしまう可能性も高く、今後の人間関係に悪影響が出た結果、返って苦難な展開に見舞われてたり、過酷な道を歩んでしまう事さえもある。
- その立場、地位とは不相応な責任の極めて重い役割を課せられる
- ただの学生でありながら世界の命運を託される、民間人や新米兵士でありながら最新鋭機の使用者やパイロットに任命される、強大な敵と最前線で対峙させられる、世界を滅ぼしかねない存在と交流する羽目になる等が具体的な例。スケールが大きくなると、大勢の人間を守る為に自ら手を汚さねばならなくなったり、世界と大切な誰か(ヒロインであることが多い)の二者択一の究極の選択を迫られてしまうことも。
- 味方だと信じていた者から裏切られる
- 「元々敵サイド側から送り込まれたスパイであった」、「人質を取られて止むを得なかった」というケースならまだマシな方であるのだが、「自分の保身や金に目が眩む」、「自分の期待に応えてくれない主人公に一方的な愛想を尽かして敵に魅力を感じる」、「敵に誘惑されて(相手が異性で肉体関係を結ぶとより顕著)売り渡される」、「必死の努力によって一目置かれる様になったのを嫉妬されて追い落とされそうになる」等、いずれにせよ当人達の身勝手極まりない都合で裏切られてしまう主人公はかなりいる。
- 主人公が裏切られる場合、大抵はどう見ても裏切った側に問題があるのだが、中には「○○○が裏切ったのはお前(主人公)にも責任がある!」と揚げ足を取った論理で味方サイドにまで糾弾されてしまうという、裏切られ傷ついた主人公にとって泣きっ面に蜂な展開もある。この場合、責める側の動機は「八つ当たり」の可能性も高い。
- 物語のラストで死んでしまう
- 先天性の持病持ち
- 人間味に乏しい
- ジャンルによっては、顔が整い過ぎているため、身近にいそうな顔が好きな読者が見てモブよりも顔が悪く見えたり、恋人が物理法則無視で生えてきて返って理想から遠くなったりする。
- 「理不尽な憎しみをぶつけられる」の項目と被るが、交流や恋愛に関心が薄い天然ボケで周りにモテる立場、恋人や親友と協力してしつこい当て馬を振る立場は、本人と関係者が全員モブであれば「作者が主人公に自己投影している」「周りを悪く見せて自分を良く見せている」と言いがかりを付けられて読者に嫌われることはなかった。