概要
人や集団がみせる、散り際の美しさのこと。とうてい勝てそうもない敵に対し、死を覚悟しながら勇ましく戦った武将や兵士たちを指して言うことが多い。また、永遠に失われるもの達の、束の間の美しさを指して言うこともある。
武士道によって育まれた日本特有の美学と説明されることがあるが、同種の美学は古代ギリシャなどにも見受けられる。アドルフ・ヒトラーは、アルベルト・シュペーアの提唱した「建築物は千年後にギリシャやローマのような美しい廃墟となるよう建てるべき」という建築美学を熱烈に支持しており、ヒトラーも滅びの美学にとりつかれていたことが窺える。
批判
戦国時代や二度の世界大戦時代こそ、賛美される事の多い概念であるが、現在において、滅びの美学に関して否定的見解を示す者も少なくない。
世界大戦中の日本では、日本軍によって結成された神風特攻隊が自らの命を引き換えとした「特攻」を潔いものとして世間から絶賛されていたが、敵対していたアメリカ側の視点で見れば、「部下達に死を強制する=使い捨ての奴隷にする」という正気の沙汰ではない行為でしかなく、リアリズムに大きく欠如していて、一部からはその行為はむしろテロリズムに近いものであったとさえ言われている(自爆テロ)。
実際の所、特攻隊の乗っていた戦闘機は、使い捨てを前提にしていた為に、性能はポンコツ同然となっており、敵艦への体当たりに成功する前にあっけなく迎撃されて散るのが大半であった為、戦いの勝利に貢献できなければ犬死に以外の何物でも無かった。
ただ、米軍側にとっては大きな精神的な衝撃を与えたとも言われ、その様な面で一定の効果はあったという意見もあるが、同時にこの光景を絶賛した中東側のテロリスト達は、日本兵の特攻を模倣する形で自爆テロを積極的に行う要因になる等、悪い影響も多大に与えている。
人間の生き方としては、それも美しいかもしれない。
しかし、激変する社会と時代に求められる
『機能的な生き方(目的のために動き、それ以外のことには動かない)』
観点からすると迷惑至極であることを忘れてはならない。
こういった滅びの美学は、裏を返すと
『納得したくないから今の不合理で不毛な自分のやり方を変えない』
という事でもあるからである。
とどのつまり、自分の事しか考えず駄々をこねているだけの子供と然程変わらないのである。
このため、滅びの美学を持つ人間や集団は、滅びるときは非常に早いということを頭の片隅にとどめる必要がある。
関連タグ
玉砕 特攻 切腹 自己犠牲 捨て身の覚悟 命がけ 殉教 殉教者
判官贔屓…「滅びの美学」的な展開によって生じやすい概念。
デストルドー…「滅び」を求めようとする欲望。
源義経・浅井長政・石田三成・真田幸村…「滅びの美学」の代表格とされる武将達。
平宗盛…大河ドラマ『平清盛』で「滅びの美学をお見せしましょう!」という台詞を発している。
百獣のカイドウ…「華々しい死」を望む海賊。