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作品解説編集


正式名『反逆のソウルイーター ~弱者は不要といわれて剣聖(父)に追放されました~』。

弱さ故に故郷からもパーティーからも追放され、何もかも失った青年が手に入れた『魂喰い(ソウルイーター)』で周囲を見返そうともくろむ物語。

いわゆる追放もので主人公が強くなっていく成長譚も含まれている。性的な描写も多い(一度運営から警告を受けたようだ)。反面復讐相手を殺害したりする場面は他の作品と比べ多いわけではない。


作者:玉兎


2019年12月13日オーディオドラマ化


2020年初旬、コミックアース・スターにてコミカライズ化、執筆者は『コードギアス双貌のオズ』『幼女戦記』の東條チカ氏。なお副題はなろうではスタンダードの説明したものから「HE REVENGE OF THE SOUL EATER~」に変更されている。しかし、わずか2巻で打ち切りとなる(現在はページも削除されている)。

だが、2024年1月から溝口隆一郎氏による『反逆のソウルイーター -魂の捕食者と少女たち-』というタイトルでコミカライズが連載する。


あらすじ編集

帝から鬼門を守る大役を任せられた御剣(みつるぎ)家。

その嫡男として生まれた御剣空(そら)は、十三歳をむかえた年、試しの儀にのぞんでいた。


御剣家に代々つたわる幻想一刀流を学ぶため、絶対に越えなければならない試練。

七人いる同期生は全員が合格した。残るは空ひとり。

父、弟、許婚、守り役である兄妹らが見守るなか、空の試しの儀がおごそかに開始された……


登場人物編集

主要人物編集

  • ソラ(空)

本作の主人公。18歳。

幻想一刀流御剣家の跡取りだったが、故郷では心装を会得できず、レベルも何故か上がらないという特質により成果が出せず、試しの儀で竜牙兵にあっけなく負けたことで追放される。

カナリア王国の都市イシュカで冒険者を目指したが、こちらでもその弱さから『寄生者(パラサイト)』と侮蔑され続け、ついには冒険者ギルドからも追放される。

かつての在籍していたパーティ『隼の剣』が強大な魔物・蝿の王から逃げる所に出会い、ミロスラフらによってそのまま囮にされ、瀕死の重傷を負い、生きながら幼虫達のエサにされかける。

しかし、この土壇場で心装『魂喰い』を得て、復活。自分を見放したかつてのギルドと仲間達に復讐を画策する。

『隼の剣』は搦手を仕掛けて最終的に解散させ、ギルドに関してはあくまで合法的に復讐する事を目論んでいる。

奴隷になったルナマリアを使って多くの高難易度の依頼と塩漬け依頼(依頼内容が厄介なのに実入りが少ないなどの理由で、長く放置されている依頼のこと)を受注し、それらを達成して信用と顧客を得ると、クラン『血煙の剣』を立ち上げ、クラウ・ソラスに跨って竜騎士となり、さらに躍進して台頭する。

魔獣暴走(スタンピード)の際に幻想種・ヒュドラを討伐したことで『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』の称号を得る。しかし、イシュカ内では『寄生者』として侮蔑されていた過去から手柄を横取りしたと疑う者も少なくなく、そういう者達からは『偽・竜殺し(ドラゴンライアー)』と中傷されているが、本人は意に介していない。

『竜殺し』の武功によりカナリア王国から非貴族では最高峰の『聖銀光輝勲章』授与と一代に限り貴族の地位を認める『士爵』を授かるなど、カナリア国内では貴族の地位を得る。

また、ドラグノート公爵家の次女クラウディアの呪いを解呪し、クラウディアを直接殺害すべく襲撃した青林旗士の慈仁坊を返り討ちにして窮地を救った縁で公爵家と誼を結ぶ事になった。その後クラウディアを政争から遠ざけるためにイシュカで同居させることになり、国内外で事実上の婚約と見做される等ドラグノート公爵家の与党関係者としての立場を確かなものにしている。

魔獣暴走(スタンピード)の前後に青林旗士ゴズ、クライア、クリムトと再会したが、保護している鬼人のスズメを問答無用で殺害しようとしたため戦闘になり、ゴズの空装に苦戦するが、ヒュドラの現界により痛み分けとなった。ヒュドラ討伐後に再び刃を交えるが、ヒュドラを喰らい大幅にレベルを上げた後はゴズ、クライア、クリムトの三名を同時に相手をしていたにもかかわらず圧倒した(ただしゴズ達は三日三晩の戦闘で疲弊しており、一方ソラはヒュドラを喰らった直後で絶好調と言って差し支えない状態だった)。

クライアを人質にした上で御剣家に対してスズメに今後一切手出ししない要求を突きつけるが、条件として実力を示すことが求められたため、問題行動を起こさなかったクライアを先んじて解放し、母の墓参り、スズメの安全のため力を御剣家に示す、青林旗士たちの強さを確認するために鬼ヶ島へ向かうことになった。

力を証明するための儀では、ギルモアの陰謀で青林旗士でも殺される事がある土蜘蛛と戦うが、心装すら用いずに圧倒し逆にギルモアの面目を叩き潰した。

鬼人達の襲撃時にはベルヒ邸で拘束されていたクライアを逃げる意思があるなら助けようと赴くが、クライア自身にそのつもりがなかったため断念。そのままイシュカに帰ろうとするが、鬼神化したイサギの咆哮を聞き、御剣邸に引き返したところで危機に瀕しているエマ達とオウケンに嬲られているイブキを目撃し間一髪で救出、オウケンの部下を皆殺しにして、オウケン自身には瀕死の重量を負わせている(助けたのはあくまでエマとイブキのためとラグナのせいで喰えなかった土蜘蛛の穴埋めが目的であり、2人がいなければそのまま見捨てるつもりだった模様)。

オウケンの助けを呼ぶ悲鳴に呼応し現れた鬼神と対峙し、シドニーから共闘を持ち掛けられるが殺意交じりの視線で拒絶し、単独で鬼神と戦い討ち滅ぼした。

その後オウケンを始末し、カガリとの邂逅を経て、目的を全て果たし鬼ヶ島を後にした。


性格は仲間以外には冷淡だが、スズメやセーラの養子など子供や弱者には年相応の優しさを見せているなど人間味が無い訳ではない。特にスズメに関しては自身が御剣家を追放された時と同じ13歳であり、ずっと孤独に生きていた経緯が自身と重なっている事もあり、守るべき大切な者と考え、溺愛気味に接している。

一度怨みを抱いて敵対しても相手が十分な報復を受けたり、その後の働きを認めた場合は態度を軟化させている。

復讐方法については搦手で精神的に追い詰める方法を好んでおり、直接相手に危害を加えたり殺害する事は少ないが、直接敵対した相手は基本的に容赦しない。

興味の無い事に関しては無関心であり、故郷である鬼ヶ島に関しても『魂喰い』を得て自分は「帰りたかった、認められたかった」訳ではなく、単に「見返したかった」という本心を自覚した以降は故郷への帰属意識や望郷の念を見せる事はなく、極一部を除いた御剣家の関係者に対しては一貫して冷淡に接し、かつての同期生や婚約者でも「別に死んでも構わない」という無関心な敵意で対応している。

御剣家関係者では恩義のあるエマと幼いイブキ、捕虜にした際の交流で態度を軟化させたクライア、良好な関係を維持しているウルスラ以外には全く心を許していない。

かつての傅役であるゴズ対しては憐みの視線を向け続けられたため、本人も気付いていないほど強い屈折した感情を抱いていたが、ヒュドラ戦後の再戦時に圧倒しゴズを超えた実感を得た後は興味を失い、赤の他人と接するような無関心な態度に変化した。

姉のように慕っていたセシルに対する感情も冷え切っており、路傍の石を見るような視線と無関心な態度で接したため、帰郷時に出迎えに来たセシルに強い衝撃を与えている。

シーマ兄妹が追放時に自分の意志でソラを見限ったにも拘わらず、今になって親しげに接してくる姿や御剣家の帰参を望んでいる事を嫌悪しており、本心から鬱陶しく思っている模様。

御剣家からスズメの保護を認める条件とした「試しの儀により力を示す事」を認めても、「青林旗士の資格を与える」という事実上の臣従要求には強い拒絶の姿勢を崩さなかった。ただし、故郷に対して『隼の剣』の様な報復心は無く、あくまで見返す対象と見做している。

また青林旗士が自分以外の相手に苦戦するのを目の当たりにして不快感を募らせる等、ソラ自身はまだ複雑な感情を抱いている。


心装は『魂喰いの竜(ソウルイーター)』。太陽を喰らう蝕の顕現にして、神話時代に十七の戦神を屠りし、最強最古の幻想種の現身。外見は真っ黒な刀。能力は下記の通り。

魂・魔力の吸収

傷つけた相手の魂を奪い、それを自身の経験値として吸収する能力。また、相手側がソラに魂を譲り渡すことに抵抗が無い場合は、相手と接触する事で魂を喰らう事も出来る。

他者とは違い敵を打ち倒すことによるレベルアップは原則として行えず、更に他者よりもレベルが上がりにくい特徴があるが、同時に能力の上昇幅が他者とは比較にもならない程に高く、ソラより数倍以上のレベルを持った心装使いでも互角以上に戦う事が可能。下記の『回復能力』と併せ持つ事で相手の力を奪いながら身体を回復させ続ける事で長時間の継戦能力を持つ。

魔力・魔法なども吸収するも可能。本来の吸収系能力は自身の限界量を超える魔力を吸収すると肉体が膨張四散する等のリスクを持つが、魔力を喰らい尽くす『魂喰い』は無条件・ノーリスクで吸収し尽くすが可能。


魂付与(ソウルドナー)

他人へ魂を分け与えることで相手をレベルアップさせる能力。

原則として『相手のレベルを1上げると、ソラのレベルが1下がる』という特性がある。

ソラ自身は前述のレベルアップが難しい特性もあり、単純な労力と比較した場合は割に合わない。更に使用するとソラは著しい体調不良を引き起こしてしまうが、反面で呪いなどを掛けられている相手に使用した場合は呪いの効力を無力化する事も可能。

ソラ自身は『魂付与』の能力が知れ渡れば、トラブルを呼び込む可能性が高い為、心装以上に他者に知られない様にしており、現状で知っているのは『血煙の剣』のメンバーとドラグノート公爵家のみに止めている。


回復能力

心装の影響で高い身体回復能力を有しており、心装に初めて目覚めた際には『蠅の王』の幼虫に全身を喰い荒らされ瀕死の重傷を負っていたが、後遺症無しで全快している。ドーガ戦でも砕かれた左ひじの関節を瞬時に治癒するなどの芸当を見せており、肉体を欠損しても完全に再生できるが、心臓や首を切断された場合など即生命に関わる致命傷からでも回復可能か不明。ソラは不可能と考えており、自身の体で攻撃を受け止める場合は急所は避けるように心掛けている。

ソラの血液自体が強力な回復薬としての能力を持ち、直接飲ませたり、自身の血をポーションに混ぜる事で毒や病気にも多大な効果が見込める程に底上げを行う事も可能だが、劇薬としての側面も持つため、連続しての服用は推奨されない。また、血の持ち主であるソラ自身には他者ほどの効果は望めない。


『魂喰い』はルナマリアの視点では幻想種の竜として映り、御剣家の基準から見ても強力な戦闘力を有する。少なくともクライアの見立てではソラのレベル『26』の時点で『四象』クラスを超越する量の頸を有し、幻想一刀流の本場である御剣家視点でもソラの頸量は常識外れな状態だと驚愕されている。

心装を修得する前はレベルが上がらなかったために戦闘力は高いとは言えなかったが、幼少期から鍛錬をしていたため剣術の技量自体は高く、冒険者なりたての頃のラーズとイリア達を助ける事も出来ていたため、大陸基準で全くの無力だった訳ではない。

青林旗士に正式に加入する事が出来なかったため、独学で幻想一刀流の技を使用している。一時的に捕虜としたクライアから技を習ってからは戦闘技術も向上しているが、現時点ではまだ未熟で膨大な勁と高い再生力で押し切るように戦う事が多く、ハクロからは荒い戦い方と評されている。

一方でゴズ戦でも戦闘中に相手の技術を見様見真似で奪う、幻想一刀流を元に独自の勁技を短期間で編み出すなど、剣才はかなり高いようでドーガからはカガリに匹敵する才の持ち主とみなされている。


鬼人族の少女。13歳。ティティス大森林の奥深くに存在し、数十年前に御剣家に滅ぼされた鬼人族の村「カムナの里」の生き残りの末裔で、現状では最後の一人。

蠅の王に囚われていたところをソラに助け出されて知り合う。当初は人間は鬼人を襲う恐ろしい生き物と認識していたが、ソラの一件で考えを改め、他の人間を恩返しの意味も含めて助けたが、それが鬼人狩りを目的とした人間の侵入を招き、『蛇鎮めの儀式』を行うだけの食糧が集められなくなってしまう。

儀式が執り行えなかったために復活したバジリスクによって命の危機に陥ったが、再び空に助け出される。

3歳の頃に父を、6歳の頃に母を失って以来ずっと一人で生きていたらしくやや内気な性格で、他者への警戒感が強い。ただし、二度も命を助けてくれたソラには当初より心を許し、強く慕う。そのため、引き取られたばかりの頃に、ソラが一人でメルテ村に赴いてしまった際には心細さを感じる程だったが、現在はシールやルナマリア等にも良好な関係を築いている。

鬼人族の角は高い魔力を有し、極めて高価な魔力触媒となるため命を狙われる危険が高いが、現在はソラの働きにより正式にカナリア国王から市民権を得た上でソラの庇護下で暮らしている。

ソラもスズメの頼みごとを内容も聞かずに快諾するなど、他のメンバーよりも過保護気味に接している。

ゴズ達の襲撃を経て自身の無力さを痛感。ソラ達に一方的な世話なり続けている事に後ろめたさを感じ、足手纏いにならない力と強さを求めて魔法の修得を本格的に始めている。上記の鬼人族の角によりミロスラフやルナマリアをはるかに上回る体内魔力(オド)を有しているため、魔術師としての素質は高い。

ただし、力を渇望し始めた頃からに「赤い目をした人が現れる夢」を定期的に見るようになり、妙な現実感もあって不安を感じている。

人の世界へ踏み出したばかりであるため、将来への具体的な展望はまだ持っていないが、母親の遺言もあり、「幸せになりたい」という漠然とした目標を抱いていたが、現在はソラの隣に立てるだけの強さを持ち、彼の為に「血煙の剣」の一員として役に立てる事を望んでいる。また、ソラと高度な訓練を行うクライアの姿を見て羨むなど、無力な自身の境遇に強い焦りも抱いている。


ソラの奴隷として買われたオセロット(ヤマネコ)の獣人の女の子で、名前は「獅子の花嫁」を意味する。15歳。ソラの夜の相手も務めさせられる。

アドアステラ帝国西部辺境地帯の開拓村出身で七人兄妹の長女だったが、猟師の父が魔獣により片足を失った事により働くことが出来なくなってしまい、困窮。家族の生活費の為に自ら奴隷になった経緯がある。

ソラ自身はラーズを貶める策の手駒として購入しただけであり、ラーズとの決闘後にソラは奴隷から解放するつもりだったが、そのまま家族の元に帰っても再び身売りするしかない状況であるため、そのまま金払いが良いソラの元で今まで通りに働く。

後に「魂喰い」の詳細を教えられた際には自ら魂の供給源に志願。ソラは報復対象者以外から魂の補給をするつもりはなかったが、シールの覚悟が強かったため、敢えて奴隷から解放した上でシールの志願を受け入れている。現在は「血煙の剣」の正式メンバーとして所属し、ソラから給与を受け取っている。まじめで素直な性格でソラからもらったお金は故郷の家族へ仕送りをしている。

ルナマリアから戦い方を教わっており、武器として小型の鉈を使用している。まだ戦闘能力は高くないが、野生動物の様な鋭い勘を持っており、はるかに高い実力者であるクライアからの奇襲を直前まで気づいていなかったにもかかわらず、攻撃を受け止めた事もある。

また、当初奴隷になった際には不安から全身がカチカチになる程に固まっていたが、現在ではソラの「魂喰い」の話を聞いても全く動じないなど、結構神経が図太い一面がある。

ソラがスズメを連れてきた際には、奴隷になったばかりの自身の境遇と重なって見えたため、何かと世話を焼いており、仲が良い。


  • ウィステリア

カタラン砂漠に存在する『森の王国アンドラ』の元筆頭剣士(グラディウス)を務めたダークエルフの女性。

悪霊(デーモン)と呼ばれる己の中に住み着いた己ならざる存在に身を乗っ取られかけたため、アンドラ政府よりベヒモスへの生贄として処刑されることとなり、本人もその運命に甘んじた。しかし、ベヒモスをなぜか発見する事が出来ず、そのままオアシスに辿り着いてしまったため、「外の世界」の存在を知り、驚愕。

そのままベヒモスの情報を求めてベルカに辿り着き、遂に本格的に悪霊に乗っ取られ、意識が途絶える最中にソラと接触。ソラに打ちのめされたが、同時に意識を取り戻すこととなった。

ソラから「悪霊は同源存在(アニマ)」である可能性を指摘され、制御するためにソラと同行する事になる。


書籍版では悪霊憑きであることを周囲に隠しており、登場時でもアンドラ王国での筆頭剣士としてリドリスのエルフ達と対立している。リドリス制圧後は始祖の命令を受け、ベルガの街の神殿を焼き払うように命令されるが、自身に反感を持つガーダが独断で攻撃を仕掛けてソラに一蹴されたたため、そのままソラと交戦するが、敗北。悪霊憑きの力を開放して更に戦闘を継続するが、一方的に打ちのめされてしまう。

その後はソラに保護され、ソラの『魂喰い』ならば悪霊憑きとして苦しむ同胞を開放することも可能であることを考え、ソラと同行する事を決める。

Web版同様に悪霊は同源存在(アニマ)と考えて制御を目指すことになるが、子供の頃に悪霊に乗っ取られてしまった父が母に襲い掛かった際に初めて悪霊が目覚め、父を殺害した経緯があり、自身の悪霊は父の仇でもあるため、悪霊はもう一人の自分であるという事を受け入れがたいという思いも持つ。

ベヒモス討伐後はソラ一行を連れてアンドラに帰還しラスカリスにすべてを報告、悪霊憑きであることを隠していた一件により筆頭騎士を解任され、アンドラを100年にわたり追放されることになるが、同時にアンドラで発生した悪霊憑きの居場所を外の世界に作る事を命じられる。

ガーダが悪霊憑きに変じ暴走した際は圧倒され追い詰められるが、死を目前にパズズと向き合い真意を悟ることで心装の会得に成功、逆にガーダを圧倒し巨大な熱砂の剣で両断した。

以後、悪霊憑きの居場所を作るため、ソラに同行する事となった。


同源存在は「風の王パズズ

獅子の顔と腕、鷲の脚と羽、蠍と蛇の尾を持つ熱病と蝗害をつかさどる魔神。ウィステリアが乗っ取られつつある際には、徐々に体中がバズズの姿に変化していくという現象が起きている。WEB版では制御ができていないため、御剣家の心装使いの様に武器としては顕現していない。

書籍版では同現存在と向き合った結果、制御に成功し心装を会得した。

形状は獅子の顔が象嵌された白銀のロングソード。灼熱の砂塵を風と共に生み出し、自在に操作する能力を持つ。砂塵で巨大な剣を形成し対象を切り裂くなどといった芸当も可能。

筆頭騎士を務めていたウィステリアの卓越した剣術と相まって、ソラの見立てでは青林旗士の上席に匹敵する戦闘能力を発揮している。


  • クラウ・ソラス

ソラに付き従う藍色翼獣(インディゴ・ワイバーン)。本来は人間に心を許さない凶暴な魔獣だが、マンティコア達から助けられたことでソラに懐く。当初は名前が付けられていなかったが、アストリッドのアドバイスで「炎の剣」を意味すクラウ・ソラスと名前を付けられた。

ソラ以外の人間には中々懐かない一面があり、当初シールに対しては自分の方が序列が上と認識し、シールが話しかけても無視するなどの行動を取っている。しかし、クラウディアやアストリッドには初対面から触れられる事を許容するなど、全く懐かない訳ではない。


隼の剣編集

  • ラーズ

売り出し中の冒険者パーティ『隼の剣』のリーダー。18歳。物語開始時のレベルは『16』。メルテの村出身。ソラのかつての仲間。

ソラをパーティに誘った人物だったが、ソラがレベル1から上昇しない特質を知ると追放した。

彼のメンバーが蝿の王に追われ、ソラを囮にした際は失神していた。そのため、この行為に直接加担していないためか、ソラからの復讐心は若干薄い(パーティに熱心に誘ったことに恩義を感じていたこともある)。

かつて、妹分だったカティアが奴隷として売られた時に何も出来なかった過去があり、奴隷制度に憤りを持つなど真っ当な感性と正義感を持っている反面、仲間の言葉を盲目的に信じるという極度の視野の狭さを持っており、そこを突かれて自身の没落とパーティの崩壊を導いていくことになる。

奴隷のシールを酷使している(と思っている)ソラに憤慨して決闘を挑むもあっさりと完敗。ルナマリアが奴隷となってしまったことで打倒ソラに執心してしまい、イリアの諫言よりも(ソラに心酔するようになった)ミロスラフの甘言に耳を傾けるようになり、ついには疫病に苦しむ故郷の報せを受けた時に自身の面子を優先して村に戻らないと決めてしまったことでイリアとの絆にも亀裂が生じる。

そして、ミロスラフが主導したスキム山遭難事件では、何もできずにミロスラフをスキム山に置き去りにしてしまったという自責の念を植え付けられ、更にミロスラフをソラに助けてもらったことに恩義を感じて、ソラへの敵意は消滅。同時に自身の実力不足を痛感して一からやり直すとメルテ村に戻る。


  • ミロスラフ・サウザール

『隼の剣』のメンバー。美少女の魔術師。19歳。王国でも屈指の大商会・サウザール商会会長の娘。物語開始時のレベルは『15』。

会長の実子だが七番目の妾との子であるため、幼い頃から冷遇されてきた。その生活から脱するために勉学に励んで賢者の学院に入学する。しかし、当時は化粧などは愛人が媚を売る手段と見ていたため身嗜みが酷く、神童として持て囃されるほど優秀だったものの性格が災いして孤立していた。また、魔物の生態調査でラーズと出会い、彼に惹かれていく。

将来を約束されていたが、卒業試験の日、何者かの手によって寮の地下の古書庫に閉じ込められたため試験を受けることができず、さらに自分を見るために来ていた王族が「無駄足を踏ませた」と激怒。学院側も「大恥をかかされた」と激怒し、学院を放校される。

やむなく冒険者に身を落とし、最初に組んだパーティで男達に犯されそうになったことで極度の男嫌いになる。

その後、冒険者になったラーズのパーティに加わる。ラーズのことは大好きだが、彼が誘ったソラを今までの男の中で最も激しく嫌悪し、彼の悪評をばらまきつつ、それをルナマリアによるものと思わせるなど陰湿な行為を働いていた。

蝿の王に追われた際にソラを囮にした主犯格で、反省すらしていなかったため、復讐として謹慎中に誘拐されて蝿の王の巣に監禁されて凌辱される。当初は激しい反抗心を見せていたが、自分の状況があの時のソラと同じ状況ではと気付いてストックホルム症候群のような状態に陥り、やがてソラに心酔するようになってソラの復讐に加担し、『隼の剣』の解散などの工作に暗躍する(なお、ソラの誘拐は街に戻った後に謹慎処分に納得いかず抗議で行方を晦ましたとエルガード達に誤魔化した)。

『隼の剣』のスキム山へのグリフォン狩りでは自らラーズに不意打ちを行い昏倒させ、自分以外のメンバーよりラーズを強制下山させる。ミロスラフがスキム山で遭難したと見せかけて、ソラによって救助されるという状況を演出する事で、『隼の剣』を正式に解散に追い込み、エルガートの評判を落とす事に成功する。ラーズに対する想いは色褪せてしまっていたが、情が無くなった訳ではなく、ソラにラーズにはこれ以上は手を出さない事も約束させた上で、冒険者ギルドを脱退して『血煙の剣』に加わる。

『血煙の剣』加入後は積極的に行動しているが、これは前述の経緯から『血煙の剣』メンバー内で最もソラから不興を買っていることを自覚してるためであり、役に立とうと躍起になっている側面もある。ソラからは当初いきなり従順になったため、内心で気味悪がられていた。ゴズ達のスズメ襲撃では捨て身の手段で必死にスズメを護ろうとしたため、現在は献身を認められており、関係は大きく改善した。また、ソラに役立つために更なる力を求めており、蝕魔法にも興味を持っている。


  • イリア

『隼の剣』のメンバー。メルテの村出身。ラーズの幼なじみの女神官。18歳。格闘と回復魔法の使い手。

父を早くに亡くし、母のセーラに女手一つで育てられたため、自他ともに厳しく気が強い。

ラーズに好意を寄せているが、ソラのことは、当初はミロスラフほどではないが快く思わず、長く才能限界を隠していたことを知ると強く嫌悪する。書籍版では少し異なり、当初は逆にソラに助けられたこともあって好感を抱いていた。

蝿の王の一件では、非がこちらにあることを理解してもソラに謝罪することに納得いかず、ミロスラフの罪を強引な理由で庇い立てようとするなどやや俗物的な面を見せる。

その後、ソラに固執して暴走するラーズを止めようとするがミロスラフに邪魔されてしまい、ついには故郷のメルテの村で疫病が蔓延している時にラーズが帰らないことを決めたことで、絆に亀裂が生じる(これは『隼の剣』を解散に追い込むミロスラフの策略でもあった)。しかも、村に到着するとすでにソラによって疫病は沈静化し、母や村人達がソラに懐いてしまう。

その後、村の近くに現れたオークの群れの討伐にソラとともに向かったが、ソラが蝿の王の件をセーラ達に話したら自分の破滅が待っていることを危険視して襲い掛かるも返り討ちに遭い拘束される。そして、その状態で現れたオークたちに取り囲まれて輪姦される恐怖に心が折れ、泣きながらソラに許しを求めて屈服し、生涯ソラに従うことを神に誓わされる(神官にとっては特に重い誓約である)。

だが、屈服後はセーラやイリアの義弟妹達の存在もあって逆に丁寧に扱われていることに戸惑いを見せる。そのままなし崩し的に『血煙の剣』に加わったが、ミロスラフやルナマリアと違って何かソラを支える力を持っておらず、蚊帳の外状態にいることに焦りを募らせている(唯一、未だ冒険者ギルドに籍を置いていることにも拍車が掛かっている。ちなみに、籍を置いているのは亡き父との約束によるもので、ソラからの配慮でもある)。

WEB版では、村に到着した時にはオークはすでにソラに討伐されている。その後はイリアがケール河の毒に冒された件(書籍版ではラーズが冒されていた)もソラにより助けられており、セーラの存在もあってソラ自身がイリアへの報復を望まなくなったため、双方敵意を失い自然に和解へと繋がった。

また、書籍版では屈服後は基本的にソラには敬語で話しているが、WEB版では和解後も砕けた口調で接している。


  • ルナマリア

『隼の剣』のメンバー。精霊魔術を行使する精霊使いの狩人で、賢者の称号を持つ美しいエルフの女性。原初の森(プリムシルヴァ)出身。

パーティメンバー内ではソラへの侮蔑が無く、追放前はよく二人で行動しており、一時はソラに好意を寄せられていた。追放後も気遣っていたのだが、ミロスラフが仕掛けた策略によって『寄生虫』のあだ名をつけた張本人と誤解されてしまっていた(ミロスラフの巧みな情報工作もあって、自身もこれに弁明できなかった)。

蠅の王との一件で再会したソラの異変に最初に気付き、竜のような何かを見てソラに恐怖心を抱いて怯えていた。調停決裂後、密かに蠅の王のことでソラに謝罪しに一人で訪れたが、調停の場で謝罪せずに一人だけ謝罪に訪れた姿勢を「保身的な行動」と断じられ、『偽善者(フェイカー)』と罵られる。

ソラとミロスラフの策略で行われた決闘でラーズが敗れたことでソラの奴隷となるが、彼を蝿の王に追われた際に囮にした事に強い罪悪感を持っており、贖罪として奴隷の身分や夜の行為を抵抗する事なく受け入れている。

ソラの指示で多くの塩漬け依頼を受注してこなした後に冒険者ギルドを脱退し、新しく結成されたクラン『血煙の剣』に加わる。

後にシールと共に奴隷環を外され、奴隷の身分からは解放されるが、自身の意思で空の支えとなる。また、シールやミロスラフが『血煙の剣』に加わった結果、肌を重ねる行為の回数が減った事に安堵以外の焦りの様な感情を覚えている。ゴズ達やヒュドラとの戦いを経て、ソラを失う事を本気で危惧するなど恋慕に近い感情を抱き始めており、同時にソラに並べる様な強さを求め始めている。

穏やかかつ聡明で、ソラたちの参謀役を務めることも少なくない。

書籍版では自身と同じ長命種であるウィステリアが心装を会得した結果、全てにおいてウィステリアに劣っているのではないかという強い不安と嫉妬心を抱いた事がきっかけとなって発現した、同現存在のアルラウネに心身を乗っ取られてしまう。

アルラウネがルナマリアの振りをしてソラを誘惑するが、あっさりとルナマリアではないことを見破られ、ルナマリアに力を貸すことを約束し引き下がった。結果として、ルナマリアは心装を会得するに至った。


心装は「アルラウネ

黒の弓幹と紅の弓柄を持ち、鳥打に一凛の赤い花が巻き付いた長弓。

矢が刺さった相手に根付き、生気を吸い取る能力を持つ。更に根に毒が含まれており、無理に引き抜いた場合は大変なことが起こるとのことだが詳細不明。

生気を吸い取るほど赤い花が成長し、大輪の花を咲かせたときアルラウネが最大限の力を発揮できるという。ほかの心装にはない珍しい特性を持つ。


カナリア王国編集

  • クラウディア・ドラグノート

カナリア王国の公爵令嬢。13歳。愛称は『クラウ』。ボクっ娘その1。

竜騎士団を率いる『雷公』パスカル・ドラグノート公爵の次女で姉にはアストリッド・ドラグノートがおり、関係は良好。

カナリア王太子のアザールと婚約していたが、アドアステラ帝国第三皇女と婚儀を結ばせるようにとの皇帝の勅命および御剣家の命を受けた慈仁坊の呪術により、命に関わるほどの強力な呪いをかけられていた。

これによって王太子との婚約も解消されてしまい、余命も幾ばくも無い状況に陥ったが、ソラの『魂付与』の力で強制的に生命力を吹き込むことで解呪に成功。実力行使で彼女を殺害を企てた慈仁坊もソラによって討ち取られた為、危機を脱した。

その後は本人の強い希望とクラウディアを王国内の政争から遠ざけようとするパスカルの意思もあり、ソラと共にイシュカへ同行する。また、未婚のソラとの同居は周囲からは事実上の婚約と見做されており、クラウディア自身もソラには強い好意を寄せている。

ソラ以外にはあまり心を許さないクラウ・ソラスと僅かな会話で良好な関係を築いており、ワイバーンの鳴き声を正確に読み取って会話するなど、竜騎士として非常に高い素質を持つ。


  • パスカル・ジム・ドラグノート

カナリア王国の公爵にして、『雷公』のあだ名を持つ実力者。カナリア王国軍の精鋭である竜騎士団の団長であり、個人の戦闘力もカナリア王国最強を謳われる。レベルは『49』。

聡明であり国王からの信頼も厚い。

ソラには他人のレベルをアップさせる能力『魂付与(ソウルドナー)』を明かした上で、クラウディアの呪いを解いてくれた恩もあり、娘をソラに託す形で支援を行っている。ソラからも敬意を払われている。

鬼人の里の壊滅に心を痛めていた様子から、鬼人に対する偏見を持っていないようで、スズメの保護にも力を貸した。

現状パスカル自身はクラウディアをソラに嫁がせる意思はないが、クラウディア本人が望むならば受け入れるつもりでいる。ただし、アストリッドがソラに無自覚ながら惹かれている事には感付いており、姉妹間でソラを巡って仲違いする可能性を危惧している。


  • アストリッド・ドラグノート

ドラグノート公爵令嬢の長女。年齢は20前半。クラウディアの姉。若くしてカナリア竜騎士団の副長を務める才媛で、イシュカ冒険者ギルド長エルガートと同等以上の実力を持つ。レベルは『37』。

初対面ではソラが見惚れる程の美貌を持ち、身長もソラより高い。

妹同様に全く人になつかないクラウ・ソラスが初対面で、触れられる事を許容するなど竜騎士としての実力は高い。クラウ・ソラスの名付け親でもある。

ソラが藍色翼獣の竜騎士として頭角を現した時に知り合ったため、当初より好意的。ソラも高位な立場にもかかわらず、傲慢さとは無縁なアストリッドには好感を抱いている。

クラウディアの呪いを解き、元凶の慈仁坊を討ち果たした後はソラに多大な恩を感じており、クラウディアをソラの元に預ける口実を姉妹仲良く考えるなど、妹をソラに託すことを望んでいる。

書籍版では自身もソラへの魂供給に志願しており、ソラからも受け入れられている。また、彼女自身もソラに妹同様に惹かれているのだが、まだ自身の感情には無自覚な模様。


  • トールバルト

カナリア王国の現国王。

王としては真っ当な見識を持った人物で、スズメの「蛇鎮めの儀式」を功績として認め、鬼人にもかかわらず、保護を決定する。また、王太子のアザールとは違ってドラグノート公爵家が帝国の謀略によるものだったとはいえ、アザールとクラウディアの婚約を破断させられたことに関する怒りを感じ取っており、仲を修復させることも考えていたが、クラウディアのソラへの想いを理解し、断念。

その際にクラウディアに対して、「そなたを娘と呼びたかった」と話しており、本心より好意的に考えていた模様。


  • アザール

カナリア王国の王太子でトールバルトの息子。13歳。クラウディアの元婚約者。

竜騎士に強い憧れを抱いており、幼少の頃から最強の竜騎士になることを夢見ている。そのため厩舎の翼獣が一斉に恭順を示したクラウ・ソラスに惚れ込み、将来の騎竜にすべくソラに献上を要求したため、彼から良く思われていない。

更にはクラウディアが呪いで苦しむ中にあっても手紙すら送らず、あまつさえ父王トールバルドがクラウディアが呪いをかけられたことを理由にした婚約破棄、および帝国第三皇女・咲耶とアザールとの婚姻を帝国から迫られたのをすんなりと受け入れたため、パスカルやアストリッドからも苦々しく思われている。

クラウディアとは婚約者だったが、文武ともに自身より優れる彼女を疎ましく思っており、関係が良好だったわけではない。婚約者だったときにクラウディアが一歩引いて自分を立てていた事は気付いていたが、その気遣いすら不愉快に感じていた。

クラウディアからは「悪い人ではない」と弁護されており陰険ではないが年少のせいと言うこともあり未熟な性格が目立つ。

その後、咲耶と婚姻を結ぶも、彼女から「私に対して指の一本すら触れる事は許さない。父か兄の子を養子として迎える。不満なら他の女性を妾に迎えて構わない」との極めて一方的な言葉を並べられたことで不満を爆発させる。その後呪いが解け、以前より魅力的になったクラウディアを第二夫人に迎えようとして復縁を画策し、ソラを「偽・竜殺し(ドラゴンライアー)」と悪罵する。しかし、彼女の心は既にソラにあったため、「さもしい言葉」と一蹴された上に「ボクは今、幸せです。殿下もどうか咲耶様とお幸せに」との言葉と共に決別されてしまった。


  • コルキア侯爵

カナリア王国の大貴族で、ドラグノート公爵家に次ぐ権威を有する親帝国派筆頭格。

カナリア建国以来の名門閥族出身で、王太子と帝国第三皇女の婚約を推し進めている。


御剣家編集

  • 御剣式部(みつるぎ しきぶ)

鬼ヶ島の主にして幻想刀流の使い手で第十七代剣聖。

稀代の剣術家で、己の剣と鬼門の守護にしか関心がない。また、弱者は不要との信念を持っており、試しの儀に失敗したソラを「弱者」と見下して切り捨て、何のためらいも無く廃嫡・追放をした。

寡黙であり家族や家臣でさえ内心を読み取れない。

アドアステラ皇帝によれば徹頭徹尾、己にしか関心のない人物と評されている。

亡妻・静耶の他にも多くの女性を側妾として抱えており、ソラ追放と重なる形でゴズの妹・セシルを側妾に迎えるなど意外に女癖が悪く、この点はギルモアですら苦々しく思っている(余談ではあるが好色な面はソラにも多少受け継がれていたようでルナマリアやシールで睦み合う場面などに反映されている)。

他にもソラと性格面で似ている部分は結構多く、「かつて敵対した者を許容して重用する事を厭わない(式部はゴズ・シーマ、ソラはルナマリアやミロスラフ・サウザールが該当)、「興味のない相手や事柄に関して徹底的に無関心」などが似ている。

カナリア王国から帰還したゴズからソラの成長と要求を聞き、静耶の命日を指定してソラを鬼ヶ島に呼び出す。ソラが鬼神を倒して去った後、「鬼神討伐の功績はラグナのものである」と事実の改竄を目論んだギルモアの直訴を「敗れて落ちた評価は勝利によって上げよ」と一蹴し、一人になった時にソラに対して「見事だ」と称賛したが、その際の笑みには讃えの他にも嘲りも含まれている模様であり、本心は不明。

国政にはそれほど興味を持っていないが、当時下級旗士だったギルモアを見出すなど、人物眼はそれなりに優れている模様。


心装は「光神(リオス)バルドル」

賢明・穏健・公正な光を司る神で、母神の寵愛を受け『世界中のありとあらゆるものから傷つけられない』という加護を得ていたとされる。

心装の中でも数少ない、同源存在そのものを表す具現型で、光神としての権能が具現化した光が、後光のように式部の全身を覆う。


  • 御剣静耶(みつるぎ しずや)

式部の前妻でソラの実母。故人。

空が幼少期にどうしてもレベルが上がらず、周囲から「空っぽ」呼ばわりされて苦しんでいた時に「何にもないなら、何にだってなれる。たくさんのものを詰め込んで、なりたい貴方になりなさい」と優しく諭した。

大陸東部の市井の出身だったとされているが、ソラにも自身の出自を語らず、息子の問いにも哀しさと寂しさを含んだ表情をした事からソラも詳しく聞く事はしなかった。その為、大陸東部のアドアステラ帝国領出身なのか、更なる極東地域なのかすら不明。

ただし、アドアステラ皇帝アマデウス2世は静耶を「性根の優しい娘」と彼女の人格を詳しく知っているなど、謎が多い。


  • 御剣エマ(みつるぎ ――)

ソラの義理の母に当たる現在の御剣式部の現正妻(元は側妾筆頭。静耶が病没したため繰り上がった)で、ラグナの母。

帝国四大貴族の一角であるパラディース家の出身で、現パラディース公の実姉。

優しく聡明な女性でソラの母である静耶とも友人関係であり、その忘れ形見であるソラを我が子同然に思っている。

ソラの追放時には重病で事情を知らず、快癒後にラグナが継嗣になったこと、ソラが鬼ヶ島から追放されたことを知り血相を変え、即座に式部に処置を取り消す様に直談判まで行ったが実らなかった。式部の意思を変えられないと判断した後は、実家パラディース家当主の実弟を頼ってソラを探させたが、時すでに遅く、そのパラディース家の力をもってしてもソラを見つけられなかったことで打つ手がなくなり、静耶の墓前で謝罪する事しかできなかった。

もっとも、幼い頃のソラは正妻になった彼女への反抗心から彼女を受け入れず、ソラに構ったら構ったでそれに嫉妬したラグナへ悪影響を及ぼした為、陰ながら見守っていた。

ソラ自身は過去にエマの好意を袖にした事に負い目を持っており、後にクライアから追放後にエマがソラの追放取消しを式部に唯一直談判した事を知り、更に後悔の念を強めている。ソラが島に在住していた時の御剣家関係者の中では唯一現在も全幅の敬愛を寄せている人物で、エマもソラとの再会時には思わず抱き付き、涙を見せるなど、今でもソラの身を深く案じている。


  • アヤカ・アズライト

ソラの元許婚であり、同年の門下であった少女。

帝国四大貴族の一角、アズライト家の現当主の長女で、「黄金世代」序列一位で同年の中では最も強い。青林旗士では第二旗三位。敏捷性に優れており、「舞姫」の異名を持つ。

弱いソラにも気にすることもなかったように親身に振る舞っていたが、廃嫡されたソラに同情しかわかなかったと述べ決別した。

ソラの絶望にしてトラウマとなっている人物だが、クライアにはソラとの関係が非常に良好だったにもかかわらず、あっさりと突き放した事やその後も全く気にする素振りを見せない事に違和感を抱かれたり、ソラがゴズを退けたという多くの青林旗士が疑問視する報告を無条件で信じていたり(この事はシドニー・スカイシープからは『信じる』というより『知っている』様な物言いだと違和感を覚えている)、イブキのソラに対する幼い敵意に一瞬動揺する、そしてイブキに幼少期のソラが考えた痛い技名を教える際にはソラの事を『私の友達』とイブキに話すなど、式部と並んで心理描写が謎に包まれている。

現在はラグナと婚約しているが、ラグナとの仲はソラが廃嫡される前との関係からほとんど進んでおらず、義弟に対する親しさから変化していない。

鬼ヶ島に訪れたソラとは、ラグナが襲い掛かろうとして仲裁した時に対面し、一切言葉を交わさなかったが、昔二人で作った暗号を使ってクライアが幽閉されていることを伝えた。その後、ラグナとともにイサギと対峙するが、イサギが鬼神化するとなす術も無くラグナが倒されたことで、アヤカはラグナを運ぶために戦線離脱。戦後、目覚めたラグナを看病し、ソラが鬼神を倒したことをラグナに伝えた。その際、自分の心中で蠢く何かを抑えており、ソラがすぐに鬼ヶ島から去ってくれてよかったと思っていた。

見分役として潜入していたカガリからは、ソラ・式部・ディアルト・淑夜と共に要注意戦力として警戒されている。

ソラの力を「忌まわしい竜の力」と呼んでおり、ソラの同源存在の正体を把握している可能性があるが詳細不明。

浄世の徒(龍(かみ)による人類粛清を肯定する者たち)でありながらその軛から逃れようとしており、そのために力を求めて旗士を志した。式部の監視と(可能な場合の)排除を命じられていた。

法神教の教皇ノアとは、それぞれの実家が過去に何度も婚姻を重ねた経緯から親戚関係にあり、幼少期に共に遊んだ間柄で、ノアの失った左目の義眼に宿るものの正体も知っている。

鬼ヶ島に移住して以降もノアの耳目となり柊都にある法の神殿を経由する形で、鬼ヶ島の情報を聖都に送っていた。

ソフィア・アズライトと龍が消滅すると、ノアから帰還命令が下ったため、式部とソラの戦いの後、「御剣家嫡男の許嫁としての立場と、青林第二旗第三位の旗士としての地位」を返上し、これまでの忠誠と尽力により封印の儀を免除された上で島を出てカリタス聖王国聖都オルドに帰還する。

式部には目的を見抜かれており、「龍に見初められた娘」と言われている。

ノアに宿っているモノからは巫女の予備として見られている。


心装は緋色の双刀「カルラ

神代の空を飛んだ霊鳥で、竜の天敵となる能力を持つ「竜喰らい(ドラゴンイーター)」。心装の中でも稀有な飛行能力を持つ。竜種だけでなく神族の天敵でもあるため、ソラの「魂喰いの竜(ソウルイーター)」だけでなく式部の「光神(リオス)バルドル」に対しても耐性を持つ。


  • 御剣ラグナ(みつるぎ ――)

ソラの異母弟で同い年。母エマと同じく金髪碧眼の青年。「黄金世代」序列二位にして、青林旗士では第三旗四位。

実力で勝りながらソラが廃嫡されるまで跡取りになれなかったことやアヤカに想いを寄せていたことが相まって、幼い頃からソラに対して強い嫉妬と敵意を抱いていた。母のエマが静耶からソラを託されていた事も悪影響に傾き、長じるうちに御剣家の家中で誰よりもソラへの憎悪と殺意を募らせ、存在そのものを完全否定するなど、その仲は極めて険悪であった。

母のエマに対しても、ソラが追放されて自身が嫡子になったことを報告した際、褒められるどころかエマが式部にソラの廃嫡撤廃を訴えた上にパラディース家を頼ってソラ捜索と保護を依頼したことで、母は自分よりソラの方が大切だと思い込み、不信感を抱いている。

ソラが追放された事を誰よりも喜び、アヤカと婚約したことで次期当主の座は盤石になったと思っていたが、ソラがゴズ達を倒したことによって次期当主の座を奪われるのではないかと内心恐れている様な節がある。

アヤカとの関係は周囲からうまくいっていると見られているが、両者の関係はソラ追放以前から進んでいない。ラグナは距離を縮めたいと考えているがアヤカの態度に一切変化が無いため、今でもアヤカの好意はソラに向けられているのではないかと疑っている。

慈仁坊亡き後の第四旗(特にヘイジン)をそそのかして(その時はあくまでも人質のクライア救出を名目に)ソラの抹殺に動かしており、ソラに対してかなり感情的な姿を露わにする傾向がある。

一方ソラには現在の実力を見切られており、脅威に値しないと興味すら抱かれていない。それどころか、ラグナを傷つければエマを悲しませて、恨まれる恐れがあるため、ソラは傷付けない様に注意すらしている。


ギルモアからは次期当主の筆頭格として推されている。

鬼人襲撃の際、試しの儀を終えたソラに詰め寄り、襲撃を手引きしたと言い掛かりをつけるも、ソラからは「その言い分が正しければ(ラグナを含む)御剣首脳部はかつての追放者の策略に引っ掛かった無能揃い」と断じられたことで怒り(日付の指定から試しの儀の手順を整えたのは全て御剣家が取り仕切っているため)、更には心装を開放して身にまとっていたため、ソラへ一種の恐怖心を抱えている事を嘲られて逆上して斬りかかろうとしたが、兄弟での殺し合いを危惧したアヤカに制止された(この時、「俺に兄はいない」とソラを存在から完全否定している)。

その後、鬼人の襲撃時はイサギと対峙、アヤカの援護と心装の相性に助けられていたが、格上であるイザキ相手に互角の戦いを繰り広げる。しかし、イサギが鬼神化するとなす術も無く倒されて気絶し、アヤカに運ばれて戦線離脱。目覚めた時にアヤカからソラが鬼神を正面から切り結んで討伐した事を聞かされて絶句、デマと断じようとするも、母のエマが目撃者の一人で、アヤカもエマから聞いたと知って愕然とする。

自分では歯が立たなかった鬼神をソラが正面から打ち破った一件を、ソラに対する敗北であると考えて強い焦りを覚えており、昼夜問わず過剰なほど修練に打ち込むようになる。

結果として幻想一刀流の奥伝を会得するに至ったが、それでも焦りは消えず、精神的に不安定な状態が続いている。


心装は黄金の両手剣「ハルパー

神や巨人に対して効力を発揮する能力を持ち、刃の形状を鎌の様に自由に湾曲させることも可能。

同源存在(アニマ)としてのハルパーは幼さを感じさせる少年の声をしており、ラグナを我が主(キリオス)と呼ぶ。


  • 御剣イブキ(みつるぎ ――)

ソラの異母弟で、セシルの子供。4歳。ソラ追放後に産まれ、ゴズもセシルもソラの事を話さなかったため、ソラのことを知らない。アヤカからは弟の様に可愛がられている。

強く慕う伯父のゴズが島外でソラに敗れ、傷だらけで帰還した事に憤慨して「強くなってゴズおじちゃんを虐めた奴をやっつける」と意気込み、ゴズ、セシル、エマ、アヤカの四名を動揺させてしまう。

ソラが鬼ヶ島に来た時に敵討ちとばかりに立ちはだかり、自分が発した言動(アヤカから教わったかつてソラが考えた痛い技名やソラを「おじちゃん」呼びなど)でソラに(精神的に)大きなダメージを与える。その後はいつの間にかソラに稽古を付けてもらい、イブキを探しに来たゴズとセシルが現れたことで中断し、大人になったら再戦する約束をする。

その後の鬼人勢力の襲撃ではオウケンに抵抗した際に、セシルの動きを止める道具として利用されてしまうが、ソラによって助け出され、更にソラが鬼神を討ち倒す姿も目撃する。

目の前で行われたソラの活躍に強く魅了されたため、ソラをいつか超えるべき目標と捉えるなど、感情を大きく好転させている。


  • ゴズ・シーマ

かつてのソラの傅役(もりやく:身分の高い子供の世話、教育係のこと)で巌のような大男。御剣家四卿の一つ「司馬」を拝命している重鎮にして式部の側近。レベルは『81』。

最精鋭部隊の第一旗に所属しており序列は三位。各部隊の旗将を上回る実力の持ち主。青林八旗全体でも三位に数えられる実力者だが、双璧との力の差は大きく、カガリからは警戒すべき対象とは見做されていない。

理由は不明ながら、かつては式部と敵対していたが、敗れた後に許された上に生活の援助と側近に取り立てられた経緯があり、絶対の忠誠を誓っている。主君からの信頼も厚いが、御剣家の「滅鬼封神(めっきほうしん)」の掟と理念に染まりすぎており、他国の法や事情をあっさりと軽視(目の前に鬼人がいれば完全無視)するなど融通が利かない。

カナリア王国で任務に当たっていた慈仁坊が心装を使用中に死亡した件を調査するために、クライア、クリムトを伴いカナリア王国を訪れる。イシュカでソラの話を聞きつけて、ギルド関係者と共にソラ邸を訪れるが、鬼人族であるスズメを発見するや、その命を問答無用で奪おうとしたため、ソラと戦うことになる。クリムト、クライア両名を退けられると自ら空装を展開してソラと戦い、当初は圧倒した。しかし、ソラの「魂喰い」が更なる力を発揮した結果、空装の青龍偃月刀を切断されて敗北。ヒュドラ戦後に再戦したが、消耗していた上に、大幅にレベルアップしたソラには歯が立たずに敗退した。その後は式部にソラの現在の実力と鬼人の少女を匿っている事を報告。ソラが鬼ヶ島に一時帰還する原因を作った。

傅役としてソラが生まれた頃より面倒を見てきた事もあり、追放後も身を案じてはいたのだが、廃嫡後のソラが鬼ヶ島で生きていく事は過酷な事になると危惧して外の世界の方がまだ安心して暮らせると判断。追放も式部のソラに対する慈悲と捉えており、同時に故郷に未練を残した様な別れをしない方が良いとの考えから、淡々とソラの追放を決定した式部に従ったため、自らの本心を明かすことはしなかった。

前述の経緯や「心装を手にしたソラが御剣家に帰参するのは当然の事」と考えたり、スズメの命を奪おうしとてシール達を傷付けた事も「滅鬼封神」の掟を理由に悪びれない態度に終始する、ソラが鬼ヶ島への帰参を拒否した場合は拳を完全に砕いて二度と剣を握れない様にするつもりでいたなど、御剣家と「滅鬼封神」の掟と利益の三つをだけを優先しており、現在のソラの事情や立場を慮る事は一切しない。そのため、ソラからは一貫して冷たい態度を取られており、一切信用されていない。その信用の無さは、「スズメの身柄に関してソラに任せてもいい」と発言したことに対し、「当主の言葉次第ですぐに手のひらを返す」とソラに断じられてしまうほど。

ゴズ自身はソラに重傷を負わされた事は一切恨みには思ってはおらず、その後も心装を手にしたソラが御剣家に帰還する事を望んでいる。しかし、そのつもりの無いソラからは心底鬱陶しがられており、ソラが御剣家への臣従を拒否した際には「曲げてご承引していただきたく」と食い下がったが、逆にカナリアでのゴズの行動と「滅鬼封神」を揶揄した痛烈な皮肉で返されてしまい、絶句してしまう(滅鬼封神の理念を侮辱し、挑発する発言だったため、その場にいた多くの旗士がソラに怒りを向けており、説得できる状況ではなくなった)。以後はソラが自分や式部の言葉を聞き入れるつもりはないと認識したようで、帰参してほしいと思いながら説得は半ばあきらめている模様。

また、ソラとの戦いの際は決して手加減をしてはいなかったが、同時にソラに対して本気の殺意を向ける事は心情的に出来なかった。

クライア、クリムトを捨て駒にしてソラをおびき寄せる暴挙にまで出たギルモアを一切咎めない式部の態度に大勢の旗士が困惑する中、実は発案者が式部なのではないかと薄々感付いている。一方で式部が黒幕だとしても、式部の意向に背くつもりは一切ない。

ソラの追放に関しても悔やむ描写はあるが、あくまで追放までに傅役である自分がソラを心装まで導けなかった事を悔やんでいる。そのため、ソラ追放時に突き放した事を悔やむセシルとは焦点が異なっている。

甥のイブキはかなり溺愛している様で、イブキからも慕われている。


心装は「数珠丸(じゅずまる)

他者の心装の能力を封じる能力を持つが、ゴズ自身を上回る相手の能力を封じることは出来ない。

心装自体は格下専用の能力だが、屈指の実力を持つゴズの能力影響下で心装を使用できるのは、極一部の実力者のみ。更に上位の力である空装も会得しており、牛頭をかたどった兜と全身黒光りした甲冑、大型の青龍偃月刀で武装した姿となる。


  • セシル・シーマ

ゴスの妹。元青林旗士第一旗所属。

ソラの乳姉弟と言う関係もあり、実の姉の様に慕われていた。また、かつて式部と敵対した兄を許し、生活の援助と側近へ取り立ててくれた式部には深い感謝の念を持つ。

ゴズと共に追放時にソラを見送った際には、ゴズとほぼ同様の心境に加えて恩義のある式部の決定を無下にはできないとの思いから、ソラには自身の本心や内心を伝えず突き放した。更に式部の側妾になる事を嬉しそうに伝えたため、当時追い詰められていたソラに追い打ちを掛ける形になってしまう(ちなみに側妾になった関係で、第一旗を脱退している)。

その後、ソラの異母弟であるイブキを生む。

ソラの鬼ヶ島への一時帰郷の際には港で彼を出迎える形で5年ぶりにソラと再会したが、冷淡かつ他人行儀な態度に終始された上に自分を見限った相手と話すことはないと拒絶される。

鬼人襲撃時はエマやイブキ他の側妾達と避難中にオウケンの待ち伏せを受けて窮地に陥るが、ソラに救出され危機を脱した。オウケンの悲鳴に呼応した鬼神がソラに襲い掛かった際に援護しようとするが、ソラからはあらゆる意味で邪魔でしかなく、「手を出すつもりなら先に片付けてやる」と殺意交じりの視線で拒絶されたため、俯きながら引き下がった。


追放時に突き放した事と兄がソラの庇護する鬼人(スズメ)の抹殺を試みた結果、返り討ちに遭い容赦なく重傷を負わされた経緯から自分もソラに恨まれていると考え、覚悟を決めて鬼ヶ島を訪れたソラを港で直接出迎えた。

しかし、ソラの自分を見る瞳が一切の感情を宿しておらず、もはや自分には何の関心も興味も無く、感情を向ける価値すらない存在と見なされていたことに気付いてしまい、強い衝撃を受けている。彼女なりにソラとの関係改善を望んでいた模様だが、かつて自分を姉の様に慕っていたソラから「路傍の石を見る様な冷たい視線」を向けられる事に耐えられず、話しかけることすら出来なかった。

ソラ追放時にもっと別の行動を取るべきだったのではと憔悴するまで自問し続けるなど、当時の行動をひどく後悔する事となった。

しかし、イブキを探していた際、今まで見たことが無いほどのソラの穏やかな表情を見た時は感嘆とする等、ソラに対する蔑視が強い鬼ヶ島内では本心よりソラの帰還を望んでいる数少ない一人。


能力は不明だが、「青く輝く長刀」の心装を有しており、二人掛かりの鬼人の攻撃を巧みに捌きながら護衛対象への目配りを怠らない等、高い戦闘力を有する。


  • ギルモア・ベルヒ

御剣家四卿の一つ「司徒」を拝命している老人で、文官の長。財務と人事を司る。

権勢欲が強く、一族の勢力拡大に勤しむ狡猾な野心家。

本来「司徒」の地位にあったスカイシープ家から「司徒」の地位を奪って衰退させたのに飽き足らず、ウトガルザ家の「司寇」の地位も奪い取って一族関係者を据え、現在はゴズを蹴落として「司馬」の地位を一族関係者に据えさせようと画策しており、四卿の地位をベルヒ家のみで独占しようと企んでいる。

かなり早い段階でラグナを次期当主になると考えて誼を結んでいたため、政敵であるゴズ・シーマやモーガン・スカイシープがソラの後見人として次期当主に押し出すことがあれば、ベルヒ家が主流から外れて衰退する事態にもなりかねないため、ソラを強く危険視している。

御剣家内では支持者が多く、最大派閥を形成しているが、同時に宰相気取りに我が物顔で家政を牛耳るギルモアを快く思わない者達も存在する。

大勢の養子を養いつつも、実力主義による苛烈な教育を施しており、脱落者やベルヒ家に不要と判断した子達を容赦なく切り捨てる為、養子のクライアやクリムトからは恐れられている。

人柄はともかく、主君が本気で迎え入れるなら不興を買うのを防ぐためにソラの御剣家へ帰参する事を認めるつもりだったりするなど、政治家らしく柔軟な性格。

財務担当として主君の女癖のために出費が嵩むことを、不興を買うことを恐れず諌言するなど重職にふさわしい振る舞いをしており、この手の人物でありがちな阿諛追従だけが能の佞臣というわけではない。

ソラに敗れて帰還したゴズを蹴落とすために非難し、なおかつソラの実力を信じもせず、鬼ヶ島に再訪したソラの実力を確かめることを口実に再び試しの儀を執り行うことを提案。しかも、相手は竜牙兵ではなく、青林旗士でも殺されることがある土蜘蛛に代えることでソラの抹殺を図ったが、ソラは土蜘蛛を圧倒し、それと重なるようにして起きた鬼人勢力の奇襲もあって失敗に終わる。

一時は式部のソラは好きにさせるという命に従う心積もりだったようだが、ラグナが鬼神に完敗した上、その鬼神をソラが討伐した事実を政敵の一人であるモーガンが目撃したため、態度を再び硬化させている。

ソラがラグナを押しのけて次期当主に返り咲く事を恐れ、強引な論理と承知の上で「鬼神はラグナによって傷を負っており、鬼神が死に体だったからソラでも討てたというだけ」と事実を改竄し、ラグナの功績と発表するよう式部に直訴するも退けられる。

その後、ディアルトの献策によりクリムトを鬼人王アズマ暗殺を名目に鬼門に送り込み、クライアにはクリムトが鬼門内部で死亡した事を伝え島抜けを誘発させ、ソラを誘き出すための餌にした。

この策はソラがクライアに情が移ったと考え、人質にすることでソラを御剣家に臣従をさせることを目論んだためだが、ソラが短期間のうちに皇帝アマデウス2世と謁見し、鬼門入りの許可を受けた上で『認印指輪』を下賜されたため、迂闊に手出しが出来なくなってしまう。


元々は下級旗士の出身で、式部に見出された事で現在の地位まで上り詰めた過去を持つ。そのため、式部への忠誠は本心だが、ラグナが後継者争いで不利な場合はソラへの鞍替えを視野に入れたり、自身の意にそぐわず『認印指輪』を持って現れたソラの抹殺を企むなど、式部の子に対して忠誠心はほとんどなく、ベルヒ家繁栄の駒と考えている模様。

式部の許しさえあれば、青林旗士を大陸に派遣して各戦争を席巻し、いずれはアドアステラ皇家を排して式部を帝に押し上げた上で自身はその下で万機を振るうという野望まで持つ。

かなり用心深い性格だが、様々な可能性を考えすぎるあまりに、実情から離れた事にも警戒しようとするなど、疑心暗鬼な一面も有している。ソラがアドアステラ皇帝と謁見して『認印指輪』を下賜された件も、ゴズ・シーマかモーガン・スカイシープが背後、もしくは入れ知恵したと勝手に誤解して警戒している。


心装は「神虫(しんちゅう)

八本の脚と鋼のごとき顎を持った、頑丈な鬼を食う虫で、ギルモアはこれを家ほどの大きさにしたり、爪ほどの大きさにすることもできる。

また、これを囚人だけでなく嫡子・ディアルト以外の養子達全員に埋め込んでおり、処刑を行なう時、外から神虫で内から腹を食い破らせるという残虐な手法を好んでいる。


  • ディアルト・ベルヒ

「双璧」の一人。

青林旗士の当主直属の精鋭部隊である第一旗の旗将にして、序列一位。御剣家では剣聖に次ぐ権限を有しており、「司徒」である父ギルモアよりも地位は高い。

御剣式部を除けば最強の実力者で、青林旗士の筆頭として彼らの取りまとめもしている。

ギルモアの「ただ一人の実子」にしてベルヒ家嫡男。クライア、クリムトの義兄に当たり、クライアからは「孟様」と呼ばれている。

白い肌と女性の様に長い黒髪を持つが、能面のごとく無感情で、滅鬼封神の掟に背いたり敗北した者を容赦なく制裁する冷淡にして無慈悲な男だが、同時に義弟妹達の挨拶などにも僅かながら頷いているなど、まったく軽んじている訳ではない様子。

クライアを投獄した一件で、ベルヒへの反抗心が強まったと判断したクリムトに、「クライア開放を条件に、鬼人の中山王アズマ暗殺と命じることでわざと鬼門に送り込み、クライアを島抜けさせるよう追い込んで、空と接触させる策」をギルモアに献策している。これはあわよくば空とクライアを幽閉あるいは婚姻させて、ベルヒ家に取り込もうという策であるとギルモアは認識しているが、彼自身の真意は不明。


心装は「荒絹(あらぎぬ)

純白の刀だが、無数の極細の糸に枝分かれし、視界に入る敵を空間ごと一気に分断する事も可能。


  • 九門 淑夜(くもん しゅくや)

「双璧」の一人。

青林旗士の当主直属の精鋭部隊である第一旗の副将。序列二位。浅黒い褐色の肌と鈍色の頭髪が特徴。

御剣家初代から続く、名門九門家の現当主で、旗将ディアルトと比べて人懐っこい人物で、第一旗の旗士達には人望がある。

「黄金世代」の一人である九門祭は異母弟。


心装は真っ黒な槍「影の女王(スカリィ)

影を突けば、突いた箇所が敵のダメージに繋がる能力を持ち、同時に強力な猛毒を有する。


  • クライア・ベルヒ

「黄金世代」序列六位にして、青林旗士では第六旗所属(書籍版では第五旗)。レベルは『51』。

クリムトとは双子で、自身は姉。ギルモアが、ベルヒ家の手駒として使うために集めた孤児の一人。

ベルヒ家での孤児達の生き残りをかけた生存競争の中で弟と共に生きてきたため、姉弟の絆は深い。アルビノであり、幼少期には周囲から怪訝な目で見られやすかったが、ソラに庇われた過去と恩から、ソラには一切偏見を持っていない。

冷静かつ穏やかでクリムトの抑え役も務めている模様。

ソラとの戦闘で敗れた後は人質として囚われていたが(ただし、制限は何も受けていない)、ラグナにそそのかされた第四旗と接触。慈仁坊の敵討ちを目論む第四旗がソラに蹂躙される事を危惧し、彼らを守るためソラに稽古を行う事を申し出る(これはソラの頸の強さを第四旗に認識させ、交戦を断念させるため)等、聡明かつ機転が利く。

人質となっていた間、何一つ問題行動を起こさなかったため、ソラに先んじて鬼ヶ島に帰還するも、敗北とソラ達と過ごした日々の居心地の良さを自白したため、「(敗北して)家名に泥を塗った」として烈火のごとく怒り狂ったギルモアによって当初は処刑の許可願まで出されたが、ゴズや淑夜、直属の上司である第六旗の旗将と副将の嘆願により沙汰止みとなる。けれどギルモアの怒りは治まらず、ベルヒ家本屋敷の地下牢に幽閉されてしまう。

その後、ギルモアとディアルトの姦計によって弟を鬼人族のアズマ王暗殺の刺客として送り込まれ、自身はクリムトの死を聞かされたため、島抜けをさせられるまでに追い込まれる。弟の生死の確認をすべく、空に助けを求める。

以後、これに応じてくれた空に同行する。


心装は風を司る翡翠色の長刀「倶娑那伎(くさなぎ)


  • クリムト・ベルヒ

「黄金世代」序列七位(最下位)にして、青林旗士では第七旗七位。レベルは『50』前後。

クライアとは双子で、自身は弟。ギルモアが、ベルヒ家の手駒として使うために集めた孤児の一人。

経歴は姉と同じだが、姉とは違い、門下として当時才能を開花させられなかったソラを最も嘲り、「弱者(カス)」と呼んでいた。

血気盛んで反抗心が強い性格で、ゴズにも突っかかるなどして姉に諫められる場面も多いが、ひたすらに「雑魚は雑魚、弱者は弱者(カスはカス)」と拗ねながら言い返しており、弱者を見下す癖は青林旗士の中でも特段に強い。

スズメを巡る戦闘では逆にソラから「弱者」と挑発された挙句、心装の炎もソウルイーターに一瞬でかき消されて切り裂かれてしまい、ソラに呆気なく完封負けを喫する。再戦時でもソラのレベルが大幅に上がっていた上に魔物との連戦の疲労が祟って一方的に敗退した。

ゴズとともに帰還後、人質のクライアを助けるために式部の直訴しようとするが、ディアルトに力づくで止められる。その後、シドニーを頼ろうとするが、ラグナがすでに手を打ったことを知り安堵する(ただし、ラグナが第四旗を使ってソラを謀殺しようとした目論見までは知らなかった)。

しかし、ソラから解放されて帰還したクライアをベルヒ邸の牢に投獄されてしまい、クライアの心変わり同様に反抗心が強いことをギルモアから危険視されるようになる。

ディアルトとギルモアによって、クライア解放を条件として中山王アズマの暗殺を指示され、鬼門内部へ送り込まれる。

その後ディアルトからクライアに死亡したと伝えられていたが生存しており、クライアを地下牢から救い出すために鬼人が持つ姿隠しの神器を手に入れるべく、大興山の崋山残党軍に「クルト」という偽名を使い潜り込んでいた。

体内の心虫が消滅したのは自身の声などが漏れている可能性まで考慮し、自然な形で処理するべく振斗と手合わせした際にわざと腹部を貫かせたため。

崋山反乱軍潜入後は神器を手に入れる方法を模索し振斗から情報を得ていたが、振斗がランを殺害しようとしたためこれを妨害、礙牢で弱体化されつつも一蹴した。

しかし、直後に現れた蔚塁には歯が立たず、右腕を切り落とされた。


心装は炎を司る緋色の長刀「倶利伽羅(くりから)

一瞬で鉄を蒸発させる程の高温の炎を瞬時に発生させ、大範囲を焼き払うことも可能。


  • ウルスラ・ウトガルザ

「黄金世代」序列三位。青林旗士では第一旗十位。「朱姫」、「死神ウトガルザ」の異名を持つ。ボクっ娘その2。

敵を切り刻むまで止まらぬ神速の刃の使い手で、最精鋭部隊である第一旗に所属するほどの実力を持つ。

青い瞳に蜂蜜色の髪の持ち主で、五年前は小柄で髪が短く小麦色の肌にそばかすがあり、自分のことを「僕」と呼ぶ言葉遣い等、男の子のような感じだった。現在はクライアよりも背が高く、髪を肩口まで伸ばし、そばかすが消えて滑らかな白い肌となり、スタイルも良い美女になっている(そのため、五年ぶりに再会したソラは、本当にウルスラなのか疑った)。

先代まで四卿の一つ「司寇」の位を独占していた名門ウトガルザ家出身で、鬼ヶ島および御剣家の秩序を維持し、青林旗士の犯罪を取り締まる憲兵の役割を担っていた。しかし、その役割故に青林旗士内では疎まれている一族でもあり、御剣家内では名家として名を挙げられる事は無い。

アヤカやクライアの女性陣と仲が良い一方、上司にあたるディアルトを快く思っていない。

父が死去した際、司寇として強引な事を行なってきた経緯もあり、青林旗士内での人望はなく、葬儀も弔問客が少ない淋しいものだったが、ソラがアヤカと共に参列してくれた事を恩義に思っており、他の御剣家関係者の様な偏見を持っていない。

ソラが自身の弱さを自覚し、克服すべく努力を重ねる姿を知っているため、当時から稽古に付き合うなど良好な関係だった。自信が無く肩身が狭そうなソラを心配していたが、大きく成長し自信を付けた今のソラには安堵しており、嬉しく思っている模様。ウルスラ自身はソラをウトガルザの家名を気にする事なく話せる相手と認識している為、今でも自然に親しく会話するなど、ソラが御剣家で嫌悪していない数少ない人物。

ただし、先代司寇だった父を鬼人に殺されており、鬼人に対しては敵意が強い。ソラが鬼人(=スズメ)を匿っている事を諸手をあげて賞賛はできないとも内心考えている模様。

ソラとクライアに対する御剣家からの同行者兼監視役として共に鬼門内部へ向かう。


心装は赤い刀身の刀「雷花

形状は血に濡れたような赤い色をした刀。彼岸花の化身たる心装。

空装を会得しており、空装には彼岸花の在り方が反映されている。発動すれば原因と結果の順序を逆転させることが可能で、刀を振るう前に刀で斬ったという結果が生じるため防御不能な斬撃を放つことができる。

発動時にはウルスラの二割以上の血を雷花に吸われてしまうため、良くて半死半生、最悪死ぬことすらあり得る。そのため一度発動すれば回復するまでは再使用はできない。間合いは刀二本ほどしかなく、遠距離攻撃には対応できないため、引き付ける必要があるなど相応のリスクを抱えている。


  • 九門 祭(くもん さい)

「黄金世代」序列四位。青林旗士では第六旗席次不明。(祭より下位のシドニーが五位のため、五位よりは上と思われる)

「双璧」の一人、九門淑夜の弟(後に判明するが、実際は異母弟)。兄とは違って捻くれた性格をしているが、他者を上回る修練により成果を出してきた努力家。

御剣時代の非才だと思われていたソラを「空っぽ」呼ばわりしてクリムトと共に最もバカにしていた人物だが、同時に今のソラの強さを見て、「本物」と素直に実力を認めるなど潔い一面があり、血気盛んなクリムトと違い、物事をすぐに受け入れる柔軟性を持つ。

ソラがオウケンを一時撃退した際にはソラが「泰山公」と発言した事を見逃さず、戦闘開始前よりこの場にいた事を察して警戒しつつ探りを入れるなど抜け目ない一面もある(書籍版ではこのやり取りはカットされている)。

鬼人襲撃におけるソラの鬼神討伐を目撃した四人の内の一人となる(空からは「邪魔をするなら、先にお前らから片付ける(=殺す)」とばかりに睨まれ、引き下がった)。

青林旗士としての誇りが人一倍強く、祭の基準で青林旗士に相応しいと考える相手には気さくに接するが、相応しくないと考える相手には棘のある態度で接しており、この一面がソラに対する侮蔑的な態度に繋がっている。

空が鬼神を倒した後は実力を認めたのか「空っぽ」呼ばわりすることはなくなったが、空が鬼人族と手を結んだ事実は許しがたいことだったようで呼び方が復活した。


心装は槍の形状をした「聖人殺し(ロンギヌス)

槍の穂先を自由に捻じ曲けて操ることが可能。


  • シドニー・スカイシープ

「黄金世代」序列五位。青林旗士では第六旗五位。祭とは仲が良い。

「黄金世代」では最も温厚な人物で、祭がソラを「空っぽ」と揶揄した際には眉をひそめるなど蔑視感情は持っていない。

中世的な外見を持つ美形の男性で、年齢や容姿のせいで女性と間違えられる事がある。しかし、本人もそれを逆手にとり、面白がって悪ノリする事もあるため、青林旗士では一定数の者が本気で女性ではないかと疑っているという。歌が得意らしく、アヤカ曰く歌姫(セイレーン)として噂になっている様子。

ベルヒ家の隆興により四卿の一つ「司徒」の位を奪われて衰退した名門スカイシープ家出身で、現当主モーガン・スカイシープの孫でもある。

鬼人襲撃におけるソラの鬼神討伐を目撃した四人の内の一人。鬼神との交戦前には祭、セシルと共に共同戦線を張り、増援までの時間稼ぎを主張するが、ソラからは実力と心情的にも信用されていなかった上、万が一トドメを奪われると膨大な魂を喰い損ねる危惧もあって、殺意混じりの態度で拒絶された。

シドニー本人は、拒絶ばかりか殺意まで向けられるとは思ってさえいなかったようで、衝撃を受けていた。


心装は美しい外見をした刀「村雨(むらさめ)

霧を発生させ、同時に相手を撹乱する幻影を生み出すことも可能。


  • モーガン・スカイシープ

御剣家初代から続く、名門スカイシープ家当主。元第六旗旗将でシドニーの祖父。先代の剣聖時代には側近として権勢を誇っていたが、「司徒」の座をベルヒ家に奪われしまい(モーガン自身が「司徒」だったのかは言及されていない)、スカイシープ家は勢力を失っている。

現在は閑職に回されているが、式部から有事の際に妻妾の護衛を任されるなど、一定の信頼はある模様。また、反ギルモア派からは人望があるため、ギルモアからは敵視されている。

中山の鬼ヶ島攻撃の際に式部の妻妾達の避難を任されたが、オウケンに苦戦しエマやイブキを危険に晒したが、ソラの救援により事なきを得る。

シドニーと共にソラの鬼神討伐を目撃したため、政敵であるギルモアから更に警戒されることとなる。


心装を使用しているが、姿や能力は不明。


  • ゼノン・クィントス

第一旗を除けば、青林八旗屈指の精鋭部隊である第三旗の旗将。

青林旗士屈指の伊達男としても知られており、腰まで届く長い髪を香油で丁寧に撫でつけるなど身だしなみに気を使っている。

新興のクィントス家当主にして、ラグナの傅役を務める人物でラグナからは信頼されている。

青林旗士としての評価は高く、御剣家内での評価はゴズに次ぐ四位の実力者であるとされているが、自己評価では自身はゴズを凌ぐと考えているようで、一方的にライバル視している。

ラグナを次期当主に立てるという点において、ベルヒとは一蓮托生の間柄だが、ゼノン本人はギルモアを嫌っているようで、内心ベルヒとは手を切りたがっている。

そのため、早々にラグナとアヤカの婚姻を推し進め、アヤカの実家である大貴族アズライト家の後ろ盾を得ることで、ベルヒと手を切る切っ掛けにしたいと考えているが、アズライト側からラグナが次期当主に就くまでは婚姻しないと通告されているため進んでいない。

また、アヤカ自身が父親を説得するそぶりを全く見せていないことから一抹の不安を覚えている。

ソラに対しては、鬼神討滅の一件で御剣家内でもソラを嫡子に戻そうとする動きがみられるため、ラグナの地位を脅かす可能性がある唯一の人物と考え危険視している(ソラに対しては元々悪感情もあるようだが、はっきりとは語られていない)。


心装は人の背丈ほどもあるの幅広の大剣「ネメアの獅子(レオ・ネメアヌス)

心装能力は不明。

空装は「獅子の心臓(コル・レオニス)

能力は心装の大幅強化。使用すると無骨な大剣が星の光を鍛えた宝剣へと姿が変わる。

心装より小型だがそれだけに取り回しに優れており、さらに込められた勁が心装とは比べ物にならない程強く、高い戦闘能力を発揮する。


  • ルキウス・クィントス

第三旗の副将を務めるゼノンの息子。

癖のある髪の毛をはねるがままにした、野性味を感じさせる彫りの深い顔立ちを持つ青年。

ラグナとは兄弟のように育てられた間柄で、母親にすら言わない不満や弱みをルキウスには隠さず話すこともあり、ラグナからは絶大な信頼を寄せられている。

鬼人族の柊都襲撃以降、強い焦りを覚えるようになったラグナに危機感を覚えており、様々な手段で払拭させようと対応に苦慮しているが、実を結んでいない。

空に対しては、父と同じような理由で危険視している(父同様、ソラに対しては元々悪感情もあるようだが、同じくはっきりとは語られていない)。


心装は漆黒の双頭刃「オルトロス

能力は不明。


  • シモン・ガウス

御剣家四卿の一つ「司空」を拝命している齢六十近い老人で、土木、治水を取り仕切っている。

青林旗士としては能力、実績ともに平凡だが、公正篤実な人柄を買われて長く司空の職を任されている人物。

御剣家内の派閥争いには興味を示さず、常に中立を保っている。

鬼人族襲撃の際に柊都の外郭を破壊された一件の責任を感じており、修復が終わり次第辞意を式部に伝えるつもりでいる。

ギルモアは空いた司空の地位に一族の人間を据えようと画策しており、御剣家内の派閥争いの新たな火種になりつつある。


  • 慈仁坊(じじんぼう)

青林旗士の第四旗九位に位置する老人。レベルは『73』。

カナリア王都ホルスの墓地で鎮魂と称して琵琶を演じていたが、実際はカナリア王太子アザールと帝国第三皇女・咲耶(さくや)の婚姻を成立させるために、クラウディア・ドラグノートを呪いを掛けて婚約破棄に追い込み、長く苦しめながら命まで奪おうとした張本人。

女性を呪いで嬲り殺すに喜びを覚える外道であり、かつて妻を絞殺した事でその快感に目覚めたという。後にこの件は、アドアステラ皇太子リシャールの命令を受けたギルモアの差し金であったことが判明したが、あくまで命じられたのは婚約破棄に追い込む事であり、長く苦しむような呪いでの殺害を企図したのは慈仁坊の独断である。

クラウディアをそのまま呪い殺そうと進めていたが、ソラの『魂付与(ソウルドナー)』により呪いを解かれ、快癒されてしまう。任務を果たすために実力行使でクラウディアを殺害を目論み、王都に大量のアンデッドを召喚して混乱に陥れた上でドラグノート公爵家を襲撃。パスカルやアストリッドを圧倒したが、ソラにほぼ一蹴されて敗北。

元嫡子であったソラに対しては思い入れなどなく侮蔑込みの口調で接し、容赦なく殺そうとしていたが、反面ソラが自身を本気で殺そうとするとは思っていなかった様で、敗北後はソラの処刑宣言に激しく動揺。「御館様にソラの力を報告し、勘当を解くように働きかける」と必死に命乞いするが、聞き入れられずに斬首された。

元々は寛仁に満ちた高徳の僧で、魔法使いとしても青林八旗でも上位に位置する程の実力者でありながら、ソラと同じく長らく心装が習得できなかった過去を持つ。いつまで経っても心装が習得出来ない上に身体の衰えによる焦りから、必死に青林旗士に留まろうとあがく姿を憐れんだ妻が掛けた言葉に激怒して手を挙げた時に「同源存在(アニマ)」の声が聞こえ心装を取得の手がかりを得た経緯がある。そのためか、ソラがどん底から独力で心装に至った事のみは内心で敬意を表していた。


心装は女性の頭部と手が生えた形状を持つ奇怪な琵琶「死塚御前(しづかごぜん)」。慈仁坊曰く、「我が妻の化身」。

使い手と同時に心装自体が自立で魔法を詠唱し、魔法の多重使用が可能。更に通常の『正魔法』の他に使用にリスクを伴う原初の魔法である『蝕魔法』を使用しても「死塚御前」にリスクを被せる事により、本人は呪われることなく更に心装は呪いにより更に強化される等の能力を持つ。

また、近づいた相手に「死塚御前」が勁による音響攻撃を用いて「自動反撃」を行うこともできるが、この攻撃は一定の勁量を持つ心装使い相手には一切通じないため、格下専用の能力に近い。

第八圏の正蝕魔法を同時かつ詠唱を省いて発動するなど、大陸基準の魔術師としての実力は聖賢(ロード)に匹敵する程で最高位に位置する。ただし、心装が鬼ヶ島での戦闘に向かない能力であるため、最弱部隊の第四旗に所属させられており、第四旗では上席の実力者だが、青林旗士全体では決して高位に位置する実力ではない。ソラからは第四旗に属していること自体が一種の左遷と皮肉られている。

事実彼の戦死によって事実確認の為にゴズ、クライア、クリムトがカナリア王国に派遣されたが、式部は慈仁坊の戦死を全く重視しておらず、御剣家内で軽視されていた模様。

ただ、他国の法を軽視あるいは無視する御剣家内でさえ、カナリア王国の王都であるホルスでアンデッドを大量召喚しての破壊活動は流石に看過できない問題行動だったらしく、死後にゴズから激怒されている。


  • ヘイジン

青林八旗の第四旗所属。鬼ヶ島ではなく、島外に常駐している。

クライアがソラに捕われた際、式部の命(実際はラグナが主導)でクライア救出するためにイシュカに派遣される。

慈仁坊には恩義があったため、慈仁坊を討ったソラに対して敵意を持っていた様で、クライアに接触した際にはソラと周囲の者に手を出さない様に忠告されても耳を貸さずにソラとの戦闘の意志を崩さなかった(事実、ラグナはこれを利用してソラを葬ろうと企み、ヘイジンをそそのかしていた)。

しかし、ソラと四旗の戦闘を避けたいクライアの機転で、ソラの膨大な勁を認識してしまう。結局、四旗の襲撃は行われなかったため、交戦を断念して逃げ帰ってしまったと思われる。

その際の報告は御剣家上層部にはゴズ達の報告同様に重視されなかった模様。

ドラグノート公爵と奴隷商組合の情報網を駆使したソラからはカナリア・アドアステラ国境上で存在を嗅ぎ付けられており、間諜としての能力は低い。

これは青林八旗自体が純粋な戦闘員であるため、この手の任務には向いていないためとされる。


  • 蝋燭の心装を持つ老婆

御剣家の地下室にいる老婆で、自身の心装の力により青林旗士全員の状態を把握する役目を担っている。

慈仁坊が外の世界で戦死した事をすぐさま察知し、式部とゴズに報告。絶大な戦闘力を有する青林旗士が外の世界で心装を展開した全力戦闘で戦死する事は滅多にない異常事態であった為、式部の命によりゴズ、クライア、クリムトの三名がカナリア王国に派遣される事になる。


心装は無数の数の蝋燭で、一つ一つが各青林旗士の状態を常時把握する能力を持つ。また、対象者が心装を使用しているのかを識別することも可能。

密閉した地下室でも蝋燭の灯火は消えない為、普通の火の様に燃焼している訳ではない。

蝋燭の火が消えた場合は対応する旗士が死亡した事を表すが、蝋燭の火を意図的に消しても対象が死亡することはない。


アドアステラ帝国編集

  • 咲耶(さくや)

アドアステラ帝国第三皇女。

カナリア王国の対帝国対策として、親帝国派閥からアザールの婚約者として推されている。

慈仁坊の呪いによりアザールとクラウディアの婚約が破棄された為、正式に婚約者となった。

しかし、アザールには王配(女王の番)としての立場を求める事を事前に宣言した為、不興を買っている。

反面、ソラやドラグノート公爵家には丁寧かつ温和な態度で接するなど誰に対しても高圧的に接している訳ではない模様。

カナリア王都ホルスに到着すると、すぐにドラグノート公爵家に依頼してソラとの面会を求めるなど、「竜殺し」の武勲を持つソラに注目しており、ソラがアドアステラ皇帝と面会が必要になった際には仲介を行っているが、現時点での意図は不明。


  • アマデウス2世

アドアステラ帝国二十代皇帝。帝国の最高権力者。

かつて父帝を幽閉し帝位を奪った過去があり、若いころは帝国の勢力拡大に邁進する苛烈な皇帝だったが、現在は周辺国に対しては比較的穏当な外交政策に切り替えている。

ソラとは幼少の頃に面識がある為か、好意的な態度で接している。また式部、静耶とも面識があり、式部は徹頭徹尾己にしか関心がない、静耶は心根の優しい娘と懐述。ソラはその両方の性質を引き継いでいると看破している。


  • リシャール

アドアステラ帝国皇太子。

帝国四大貴族及び中央貴族から支持を受けており皇位継承に対して盤石な基盤を有している。

かつての皇帝を思わせる苛烈さで知られており、帝国の勢力拡大に策謀を巡らしている。そのため、皇帝とは対外政策の方針や紫苑の扱いを巡って関係が悪化し始めている。

アザールと咲耶の婚約を成立させるためにクラウディアに対する工作を御剣家に依頼した張本人であり、このせいでクラウディアが慈仁坊から呪いを受ける羽目になった。


  • 紫苑(しおん)

アドアステラ帝国皇子。咲耶の同母弟。

現皇帝の寵姫が生んだ末の皇子で心優しい純粋な性格の少年で、初対面のソラが一種の安心感を覚えるなど人を惹きつける魅力を持つ。そのためかアマデウス2世からは深い愛情を注がれているが、皇太子として擁立する意志はない模様で、ソラからもある意味カナリア王太子アザールよりも皇帝には向いていないと推察されている。

しかし母が東部貴族出身の為、中央貴族と対立している勢力には紫苑を擁立しようとする動きがあり、帝国内に火種を抱えつつある。


  • ジード

紫苑皇子の傅役。男爵。三十代後半。

元は帝国の近衛騎士で、かつて戦場で身を呈して皇帝の命を救った事があり、その際に右腕を失っている。

アマデウス2世からは信頼されており、上記の功績により男爵位を授かると同時に紫苑の傅役に任命された経緯がある。この人事にはジードの忠誠を評価すると共に、階位の低い貴族を紫苑の側近とする事で、『紫苑に皇位を継がせる意図がない』と内外に示す意図も含まれている。


イシュカ冒険者ギルド編集

  • エルガート・クゥイス

イシュカ支部のギルドマスターにして、カナリア王国では指折りの第一級冒険者。レベルは『35』。

蝿の王の一件では、当初は『隼の剣』を有用と考え、ソラの懲罰要求を拒否する代わりに好待遇を約束するも断られた。

ただし、リデルと違いソラの怒りには理解を示しており、彼からの挑発的な言動に対して特に不快には思ってはいない。また、不問扱いとなった『隼の剣』にも本来なら殺人と謗られても言い訳出来ない醜行だと断言し、ミロスラフを謹慎処分にするなど、『隼の剣』の行動を肯定してはいない。

しかし、庇った『隼の剣』が凋落して解散状態となった上に追放したソラがクラン『血煙の剣』を立ち上げて頭角を現したことで、有能な冒険者を見抜けずに手放したと見なされてしまう。

更に『隼の剣』のスキム山遭難事件では救出隊を組織する前に『血煙の剣』に救出されてしまったため、冒険者ギルドの信頼を損ない、損失を与えたとして周囲から非難されてさらに立場を悪くする。

大陸では規格外過ぎる戦闘力を有すると認識していたゴズ・シーマ達とソラが互角以上に渡り合ったのを知り、ソラの成長が自身の認識を遥かに上回る常識外な事だと驚愕した。

魔物のスタンピードや幻想種・ヒュドラの出現とその毒の汚染など立て続けに災厄に見舞われ、多大な被害を受けるもソラ達のおかげで何とかイシュカを守り切った。だが、セルゲイらに被害を受けたのは自身の無策と言い掛かりをつけられて責任を問われ、処罰の危機にさらされる。

今の状態で立場を強くしたソラから蠅の王の件で糾弾されれば自身の破滅に繋がりかねないため、現在ではソラに対して正式な謝罪の意思を示しており、書籍版ではセーラにソラとの和解の仲介を依頼しようとするが断られてしまう。


  • リデル

冒険者ギルド・イシュカ支部の受付嬢。

5年以上勤めており、イシュカ支部の受付嬢達を束ねている「長」の立場にいる。

ギルドマスターのエルガートには尊敬以上の想いを抱いている。

ソラにクビを言い渡した人物で、その時に「冒険者と職員とを問わず、当ギルドに所属している者はイシュカのために働く義務を負っているのです」という言葉を述べ冷たい態度であしらった(元々ソラを嫌悪しており、冷たい態度で接していたのもこのため)。

蝿の王の一件でもソラへの嫌悪から、贔屓にしている『隼の剣』を悪質な行為と知っていながらエルガートと一緒になって庇い立てたため、ギルドを含めた報復の対象にされる。

あくまでも当時のソラの追放は間違っていなかったとの主張を貫いていたが、『隼の剣』の失墜と『血煙の剣』の台頭で、もはや意味を成さないどころかギルドの利益と信頼が損失してしまい、しかもソラの行動が結果的にイシュカのためになっており、妨害したら信念に反するため止めることが出来ず、苦悩と葛藤に苛まれる。

ソラの思惑に薄々感づいており、これ以上ソラと敵対するのは不味いと判断した後は、彼との敵対を深めない様に奔走する羽目になるが、上述の経緯もあってソラからの心象は最悪の極致で、会う度に嫌悪感丸出しの嫌味を言われている。


  • パルフェ

イシュカ支部の受付嬢。リデルの同僚。

人を茶化すお調子者の性格だが、リデルの座を狙っている野心家でもある。新進気鋭の『隼の剣』を担当して鼻高々としていたが、『隼の剣』が解散状態となったことで深く落ち込んでいた。

ソラのことはリデルと同様に軽蔑していたが、台頭してきたことですり寄る動きを見せている。

また、給与の大半は寒村の実家に仕送りをしている孝行娘という意外な一面もある。


ホルス冒険者ギルド編集

  • セルゲイ・ウーリ

ホルス支部のギルドマスターで中小貴族の青年。

まだ20代だが、巧みな交渉術でギルドマスターに抜擢されるほどの有能。一方で、冒険者としての実績は無いため冒険者の機微に疎く、そのため彼らからの評判は良くない。

冒険者に慕われているエルガートを快く思わず、エルガート達が追放したソラの台頭と期待していた『隼の剣』が失墜した失態をこれ見よがしに厳しく非難する。さらにエルガートを蹴落とすためにソラに手を組むことを求めるが断られる。


ベルカ冒険者ギルド編集

  • カティア

ベルカ冒険者ギルドに籍を置くAランクパーティ『銀星』のメンバー。法神教の神官。

かつてはメルテ村に住んでおり、ラーズとイリアの幼馴染であった。生活苦から奴隷として売られたが、『銀星』リーダーのアロウによって解放、そのまま冒険者家業に身を投じた経緯がある。

『銀星』の主要メンバーがカタラン砂漠で未帰還となってしまったため、幻想種ベヒモスを探しに来たソラにメンバーの探索を依頼する。

奴隷になった当初はラーズ達が助けてくれると信じていたが、果たされず十年の歳月が経ってしまったことで、再会したイリアに憎悪に似た感情を抱いている(しかも、再会した時はすぐにカティアと気付かず、心無い言葉を浴びせられた)。


  • アロウ

『銀星』のリーダーで、『白騎士』の異名を持つ実力派の冒険者。

法神教のサイララ枢機卿などの法神教との関係が深い。

黄金帝国(インペリアム)の探索に強い拘りを持っていた模様で、数ヶ月前にカタラン砂漠で未帰還となる。


  • ジョエル

ベルカ冒険者ギルドに籍を置くAランクパーティ『砂漠の鷹』のリーダー。『黒騎士』の異名を持つ冒険者。年齢は三十半ば。

親、金、学がなかったため、実力で上を目指すために冒険者家業に身を投じた過去がある。

アロウが砂漠で未帰還になった件で、法神教に不信感を持っている。


奴隷商組合編集

  • フョードル

奴隷商組合に属している奴隷商人で、恰幅の良い糸目の男性。

ソラとラーズの決闘の際に中立としての立会人を務め、ソラが勝利したのを見届ける。

広い情報網を有しており、ソラがクラン『血煙の剣』を設立した後の活躍を全て把握している。その力を見込んでティティスの森深域で発見された鬼人(スズメ)捕獲の支援を依頼するが、これがスズメの危急をソラに伝える形となり、結果的にスズメはソラに保護されてしまう。

かなりやり手の人物で、バジリスクの毒により今後の毒消し薬の需要を見込み、ソラとスズメが知る強力な解毒作用を持つ『ジライアオオクスの実』に関する研究と運用を一任される形で、スズメから手を引く事を約束する。また、ソラを高く評価し、有望な投機相手と考えている模様で、ソラが冗談で言った『ひのき風呂のある豪邸』を僅か半日で探し出している。

奴隷商人としての職業意識は強く、奴隷の解放・誕生は本懐と述べている場面がある。


法神教編集

  • ノア・カーネリアス

法神教の教皇を務める隻眼の少女。

『隻眼の神子(みこ)』の異名を持つ、カリタス聖王国の最高権力者。

アドアステラ帝国四大貴族の一角『カーネリアス』の嫡女であり、父が枢機卿を務めていたため、すぐに法神教に帰依したが、6歳の時に神の啓示を受けたとして左眼を自ら括り抜いて聖壇に捧げた結果、神聖魔法に目覚めた経緯があり、これが隻眼の二つ名を得た経緯ともなっている。

それ以降は急速に力をつけ、史上最年少の神官、司祭、司教、枢機卿の就任記録を打ち立てて遂に史上最年少の教皇に就任。不死者の集会である『夜会』とは対立しており、既に不死王を三体倒すなど高い能力を持つ。

夜会に所属する不死王シャラモンとの戦闘でソラに助けられたが、同時にソラが御剣家の元嫡子である事をすぐに見抜いている。また、御剣出身のソラが鬼人であるスズメに慕われている事に衝撃を受けており、ソラの「大切な人の為なら平気で世界を敵に回す事もできる覚悟」には好印象を抱くと同時に恐ろしさも感じている。

そのため、ソラを決して敵に回さないために、ソラ個人を見極めようと心がけている。


  • サイララ

法神教の枢機卿。ベルカ市の法神教の指導者。五十歳頃の男性。

かつては『銀星』リーダーのアロウの父と共に砂漠への探索に挑んだ過去があり、『銀星』の壊滅にも心を痛めている。

ノアからの要望を受けて、ベルカに置けるソラの獣の王ベヒモス討伐の支援をしていたが、ソラがダークエルフのウェステリアを保護した事を危険視。夜会の総領がダークエルフであることを説明し、ウェステリアを引き渡すことを要求するがソラに拒否され、袂を分かつ。


森の王国アンドラ編集

  • テパ

ダークエルフ。アンドラ王国に所属する戦士。書籍版のみに登場。

筆頭剣士ウィステリアの部下を務める悪霊憑きの男性で、元は剣士隊に所属し、ウィステリアやガーダに次ぐ第三位の実力の持ち主だったが、悪霊に憑かれたため、除名処分を受けており、現在は一兵卒の扱いを受けている。

顔の上部に悪霊の姿が浮き出ているため、常に仮面を付けている。

ウィステリアの事を尊敬しており、反ウィステリア派筆頭であり、悪霊憑きを見下すガーダとは仲が悪い。

リドリス制圧作戦に参加。その後、ガーダが独断でベルガの町へ向かい、その後を追ったためベルガにてソラと交戦するが、一蹴された。その際にソラの『魂喰い』で切り付けられたため、顔が悪霊憑きから戻りつつあり、ウィステリアがソラに悪霊を祓う手段があるのかもしれないと希望を抱かせることになる。


  • ガーダ

ダークエルフ。アンドラ王国の剣士隊の一隊を指揮する隊長格の一人。書籍版のみに登場。

長老衆に連なる有力氏族の出身で、剣士隊の中でも図抜けた戦闘力を持つ。しかし、そのために自尊心が強い性格で、人間やエルフ、果ては同胞でも悪霊憑きに対する差別意識を隠そうともしていない。

筆頭剣士に就任する事が確実視されていたが、ウィステリアが一気に台頭し、筆頭剣士となってしまったため、強い反感を持つ。特に女性であり、自身の半分も生きていないウィステリアの下に就いている現状や、彼女の悪霊憑き待遇改善にも反発しており、現在の反ウィステリア派の中心人物となっている。

ウィステリアに出し抜く事を画策し、始祖からのベルガの街の神殿を焼き払う任務を独断で、悪霊憑き5名を引き連れて実行するが、ベルガの街でソラと交戦するが、一蹴されて敗北。ソラから大した相手ではないと酷評され、引き連れた悪霊憑き達も圧倒されてしまったため、そのまま逃走した。

アンドラへ撤退後はウィステリアが悪霊憑きだったことを知り、ソラ達を連れてアンドラに帰還したウィステリアを殺害を目論むがラスカリスに制止される。

ラスカリスの開催した衆議の場でウィステリアの筆頭騎士解任と次期筆頭騎士に自身が選出されたことに有頂天になったのも束の間、衆議の場でウィステリアとソラ達の抹殺をラスカリスに主張し続けた結果、筆頭騎士としてガーダ自身の手でウィステリアたちを処断するように命じられるが、ガーダ自身の実力ではソラやウィステリアには及ばないため、ラスカリスに処断してもらうつもりでいる事を見抜かれ叱責されてしまう。

その後父親から醜態を晒したこと、ソラに敗北し恐怖心を抱いていながら誤魔化そうとしている事を指摘され、筆頭騎士に任じられたことがウィステリアより信頼を勝ち得たわけではなく、アンドラを出る事になったウィステリアの代わりに据えられただけにすぎないことを告げられ衝撃を受けている。

その後憎悪を滾らせている最中、同現存在が覚醒し悪霊憑きへ変じてしまい、同現存在の言葉に従うままに暴走した。

ウィステリアとテパを圧倒しつつ、ダークエルフ達を人質にとることで優位に戦闘を進めるが、土壇場でウィステリアが心装を会得した結果、形勢が逆転し巨大な熱砂の剣で両断され死亡した。


同現存在は「妖樹の王アールキング

森や人間を誘い込み、生気を吸って成長するという悪魔の木の最上位に位置する妖樹王。

他の悪霊憑きと同様に同現存在の制御はできていないようで、武器としては顕現せず、ガーダの肉体が二十本ほどの樹腕を持つ魔物になり果ててしまっている。


鬼界(鬼門内部)編集

  • カガリ

灰色のざんばら髪に赤銅色の肌、額に鋭く突き出た角をもつ鬼人の少年。

鬼人たちの王、中山四兄弟の末弟で『黒狼』の名を持つ実力者で強者と戦う事を好んでいる。

中山の『門』攻略遠征軍では副将を務めている。

また、強者との戦いで窮地に陥ってもその状況すら楽しんでおり、取り乱すことはない。

普段は闊達で陽気な性格で残忍なことは好まないが、戦での殺し合いや蹂躙は当然と考えるなどシビアな一面も持つ。

御剣家への奇襲では要塞都市「柊都」の城壁を破壊し、中山が制圧した他国の鬼人と魔物達に襲撃を敢行させる。剣聖の能力を確認する意図があったが、オウケンの敗退とソラの介入により鬼神化したイザキが倒されてしまったため、果たせなかった。

柊都に先行して潜伏していた際にソラと一度邂逅しており、ソラの実力を見抜くと共に鬼人族に伝わる腕輪に注目し、ソラに友好的な鬼人がいることを察して島から早く出ることを忠告をするなど、人間に対して一方的な敵意を抱いてはいない模様。ただし、オウケンや鬼神を圧倒したソラの実力には興味を抱いており、再会時には面と向かって「ぜひ戦ってみたい」と発言しているが、見分役は戦闘を監視し情報を持ち帰ることが任務であり、長兄アズマから戦うなと厳命もされていたため、オウケンを見捨てて撤退した。

襲撃作戦後はドーガと共に『門』攻略遠征の準備を進めていたが、崋山残党による反乱が発生すると急遽呼び戻され反乱平定のため大興山へ向かう。

大興山で蔚塁がランを斬ろうとしている状況を目撃し、光神教の信者が崋山の姫を殺そうとする状況を訝しがりつつも寸前で割って入り、蔚塁と激闘を繰り広げる。

礙牢で心装を封じられたにもかかわらず互角に戦い、最終的には礙牢を力ずくで破り優位に立つが蔚塁を取り逃がしてしまう。

その後、ヤマトの降伏の申し入れを受け入れ崋山反乱軍を平定し、状況を聞き出すためにヤマトの身柄はカガリが預かることになった。


心装は『饕餮(とうてつ)

饕餮は蚩尤に極めて近い存在であり、格なら鬼界最高を謳われるほどの強力な同現存在。

通常の心装のように武具や肉体変化で顕現せず、同現存在自体を具現化する特殊な心装で、金の眼と鋼の体躯、夜色の毛皮と一本角を持つ狼の獣人の姿で顕現する。

饕餮自体がカガリと同等の戦闘能力を有しており、勁打を放つことも可能。

さらに饕餮の攻撃はカガリを透過するため、同士討ちの類は発生しない。カガリが饕餮に触れる描写があるため、接触判定はカガリの意志で決めることができる模様。

ソラの見立てでは弱く見積もって不完全な蚩尤二体を相手取るようなものと考えており、極めて高い戦闘能力を発揮している。


  • オウケン

白い法衣を纏った鬼人。光神教の幹部にして五山の一つである現泰山公。軍には所属しておらず、従軍司祭として御剣家襲撃作戦に参加した。

御剣本家から法神教の神殿に避難するエマを始めとする剣聖の妻妾、侍女、子供を待ち伏せて襲撃。姿を消す神器と配下を利用し、護衛役であるモーガン、シドニー、祭、セシル達の戦闘を有利に進め、抵抗しようとしたイブキを嬉々として嬲るように痛め付けたため、ソラの逆鱗に触れてしまい配下を皆殺しにされ自身も半死半生の重傷を負わされる。

直後に鬼神が助けに来たため、辛うじて逃げ出したが、鬼神を倒したソラに追撃され、カガリにも見捨てられてしまい、惨殺された。

光神教の幹部ではあるが、命の危機に際して自身が知る光神教の情報と引き換えにカガリに助命を乞うなど口が軽い一面があるため、光神教の枢機は何も知らされていなかった模様。更にソラに追い詰められた際には「あなたの様な人間がいるとは聞いていない」と口走り、逃走中は「人間に謀られた」と激怒するなど、人間側から情報提供を得ていた可能性を示唆されているが、仔細は不明。


心装は「羅刹鳥(らせつちょう)

変異型の心装で烏を思わせる半鬼半獣の姿に変化する。飛行能力を有し、第九圏の風魔法を駆使する。肉体を変異させ、勁の防御加えた肉体強度は金剛石の城壁に匹敵し、鉤爪は鋼鉄を切り裂くとされているが空には通じなかった。

『愛し子』とも呼ばれる鬼神と深く繋がっている才能の持ち主の一人で、心装も強力。同時に短命という代償があり、更に父であった泰山王はこの影響で狂死しており、鬼神との繋がりを断つ術を求めて光神教に入信した経緯を持つ。


  • イサギ

巨漢の鬼人。元華山王ギエンの配下で、最精鋭『華山十六槍』筆頭を務めた猛者。

華山と中山の決戦ではカガリと相対したが、一瞬で懐に潜り込まれ一撃で昏倒させられてしまい、その後華山王ギエンがカガリに討たれたため、華山は滅亡し中山に組み込まれる。

華山滅亡後に将兵達の口減らしを兼ねた御剣家への強行偵察目的の襲撃に参加。御剣本邸を襲撃し、ラグナ(実質的にはアヤカも参戦している状態)と交戦したが、劣勢に陥ったため、鬼神『蚩尤』に対して我が身を依代としての『神降ろし』を行い、命と引き換えに鬼神化する。

ラグナに重傷を負わせ、第一旗の旗士三十数名を殺傷させるなど大暴れをしたが、ソラに敗れたオウケンの助けを呼ぶ声に反応し、御剣本邸から離れてオウケンを庇うべくソラに襲い掛かったが、敗北して死亡した。

御剣家を『裏切者の後裔』として激しく敵視している。反面で、華山を滅ぼしたアズマ王やギエンを仕留めたカガリ等の中山王家には含むところは無く、鬼門内部の逼迫した食糧事情から口減らしの必要性も理解しているため、御剣家相手への死を前提とした作戦に関しては『裏切者への報復の機会を与えてくれた』とむしろ感謝している。同時に中山王家による統一王朝により鬼人達の未来が明るいものになる事を信じている。

また、秘密主義の光神教やオウケンには不信感を持っている様で、好意的ではない。


心装は「 夸父(こほ)

太陽を落とそうとした鬼神配下の巨人の名を持つハルバードに似た心装。

イサギの膂力とあいまって破壊力は華山随一とされ、他の一山を陥落せしめると称されるほどの威力を誇る。


  • キフ

鬼人。『華山十六槍』の一人。

戦士ではなく暗殺者で、自身の力と闘い方を認めてくれた華山王ギエンに強い忠誠心を持つ。

ギエン死後は殉死を考えていたが、イサギに誘われる形で御剣家襲撃に参加。『柊都』西側の第八旗の旗士を多数殺害するが、ディアルトの荒絹の攻撃を防ぐ事が出来ずに、周囲の魔物ごと切り刻まれて戦死した。


心装は「 吊死女(つるしめ)

別名「縊鬼」。暗殺用の黒紐の心装。


  • アズマ

鬼人達の統一王朝「中山」の王。中山四兄弟の長兄。

かつて華山に敗れ、滅亡寸前まで追い込まれた中山を再建し、鬼界を統一した優れた君主。弟たちから強い尊敬の念を向けられており、カガリからは中山再建はアズマにしか不可能だったと称されている。

風貌は三人の弟と比べれば平凡の域を出ず、柔らかい物腰から文官のような雰囲気を醸し出しているため、武を重視する鬼人の王としては頼りなく写っている。

その結果、弟たちに及ばない愚兄と軽んじる向きがあるが、アズマ自身は中山では十指に入る実力者であり高い戦闘力を有している。

鬼門の奪取と現世への侵攻は鬼人族と中山の繁栄を第一の目的としており、アズマ自身は人間を殺戮する意志は持たない。この先で人間との戦火が拡大しても、必ず人間との休戦や講和が必要になるとの考えを持つ。

そのため、御剣家の剣術を扱いながら、鬼人と友好的な関係を築いているソラに興味を持っている。


心装は『渾沌(こんとん)

形状等は不明。五感を剥奪する能力を持つ。

五感剥奪能力はアズマの周囲にいる生物全てに効果を及ぼすため、対象を選ぶことはできない。ソラは自分が攻撃されなかったことから能力の使用中はアズマ自身の五感も失われていると推測しているが詳細は不明。


  • ドーガ

鬼人。中山四兄弟の次兄。『門』攻略遠征軍総大将を務める中山最強の武人。

カガリから「自分がアズマ兄と戦えば、100回中95回は勝つが、ドーガ兄は100回中100回勝つ」と称されており、カガリ以上の戦闘力を有している模様。

見上げるような雄偉な体格を持つ巌のような鬼人で、中山王のアズマより威厳があると称される風貌の持ち主。中山統一前はドーガが兄取って代わるだろうと思われており、他国から離間の計が数回に渡り画策されたが、アズマを深く尊敬しているドーガには通じなかった。

遠征軍総大将として門奪還の準備を進めている最中、中山軍の指揮官を捕獲するため陣に乗り込んできたソラと対峙する。

アズマやカガリとは違い人間に対して強い不信感を持っており、講和を結んでも利益次第で容易く破られるという考えの持ち主。兄がソラに対して一種の期待を抱いていること、ソラから鬼人に対する蔑視が一切感じられない事を理解しているが、一方でアズマがソラと友誼を結べば兄が鬼人たちから強い反感を買う可能性を恐れている。


心装は「 窮奇(きゅうき)

オウケンと同じく愛し子であり、黒、金、白の縞模様を持つ獣毛と黄玉の瞳を携えた虎の獣人に姿を変えることができる。

魂喰いの斬撃を素手で受け止め、ベヒモスを喰らい力を増したソラの膂力をも凌ぐ膨大な勁と戦闘力を有している。

ドーガ自身が勁の扱いに優れており、勁の防御をすり抜けて相手にダメージを与える『勁打』(ソラの見立てでは殴打の瞬間に指向性を持たせた勁を放出し、相手の肉体を介して打ち込む攻撃魔法の一種)と呼ばれる格闘術を使用する。

ソラとの戦いでは使用しなかったが、空装も会得している。


  • ハクロ

鬼人。中山四兄弟の三兄。光神教司教。

人間離れした中性的な美貌を持ち、西都の民から絶大な人気を誇っている。才知に優れており、御剣家に対する強行偵察作戦の立案者でもある。カガリ曰く「ハクロの作戦は後味の悪い物が多いと苦手意識を持たれている反面で、後々必要な事だったと納得する事が多い」との事。

また、知略のみではなく戦場では負け知らずの武人で、彼を侮った敵将はみな戦場に屍をさらしており、高い戦闘力を有している模様。

オウケンの人間に謀られたという発言から光神教が御剣家と通じでいる、もしくは門の外の情報を入手する手立てがあると判断し、内偵を進めている。


  • ギエン

鬼人。五山の一つ、華山の王。

次々に五山を制圧した中山軍と対立していたが、劣勢となり、最終決戦では心装すら出せない程の満身創痍になりながらも抵抗したが、カガリに敗北してしまう。

カガリ達に鬼人達の悲願である鬼門の突破と故郷の奪還、華山兵への寛大な処置を託し、自らの角をへし折って死亡した。

かつて中山四兄弟の父を討ち取った過去があるが、その際はカガリ達を始末はせずに助命した経緯があった模様。


  • ヤマト

鬼人。崋山王ギエンの遺児。崋山滅亡後はただ一人生き残った崋山王家男児だが、実母の立場は低く滅亡以前は王位継承権すら与えられていなかった。

西都陥落時、姉のランによって連れ出され、旧崋山残党の旗頭として担ぎ上げられている。だたし旧崋山の将兵たちからは神輿程度としか思われていない。

ヤマト本人も反乱が行き詰っている事は感じている様で自身の首と引き換えに中山へ降伏する事を提案するが、ラン、カササギ、振斗の反対により却下されてしまう。(ランは弟の身を案じたため、振斗は崋山の残党を降伏させるわけにはいかないために反対していた)

魔物に襲われた際、崋山残党に潜入していたクリムトに助けられたため信頼しており、姉が危機に陥った際は守ってほしいと頼んでいる。

ランを始末しようとした振斗に襲撃されるがクリムトに再び救われる。直後に現れた蔚塁に光神教の機密を知られたと判断され殺害されそうになるが、反乱鎮圧のために突入してきたカガリが割り込んできたため事なきを得る。

その後崋山残党は中山に降伏し、ヤマトの身柄はカガリに預けられる事になった。


  • ラン

鬼人。崋山王ギエンの遺児。ヤマトの同腹の姉で十代半ばの少女。

西都陥落時、弟のヤマトを連れ出し以後は大興山の崋山残党軍に身を寄せている。

弟のヤマトを大切にしており、崋山残党軍の反乱が八方塞がりである事を理解しながらも弟だけは逃がそうとしたり、ヤマトが自身の命と引き換えに中山に降伏する事を進言した際は真っ先に反対している。

クリムトの事を当初は中山からの回し者と疑っていたが、魔物及び振斗に襲われた際に2度も命を救われた事から恩義を感じるようになる。クリムトが蔚塁によって重傷を負わされた際にクリムトが光神教の人間ではなく、鬼人族を裏切った御剣家の人間である事を告げられても必死に庇い続けた。

蔚塁にクリムト諸共殺されそうになるが、カガリが割り込んできたため事なきを得る。


  • ソザイ

鬼人。中山軍の典医(宮廷付きの医師)を務める老人。光神教信徒。

学者を思わせる細面だが痩身ながら鍛えられており、手足の細さや白髪も相まって鶴を思わせる風貌の持ち主。

先代の中山王時代から長く仕えており、中山が一度崩壊し流浪の集団になり果てても仕え続けた股肱の臣。

本来なら中山の宰相や元帥に任じられてもおかしくないほど功績をあげた人物だが、亡き先王の遺児たちが成人し中山の再興を見届けた後、一線からは退いている。

西都一の医者だけあって高い医術の持ち主な上、戦車の扱いにも長けているようで先代中山王の戦車の御者を務め、かつて多くの戦場を駆け回っていた。

カガリがクリムトの治療のために医者を大興山に寄こしてほしいと要請したことからソラやドーガと共に大興山へ赴き、クリムトの治療を行った。


  • カササギ

鬼人。『華山十六槍』の一人。

崋山滅亡後、ヤマトを旗頭とした崋山残党軍を取り仕切っている壮年の鬼人。

元々崋山という国ではなくギエン個人に忠誠を誓っていた人物で、ギエンの遺児であるヤマトやランを神輿程度にしか考えていない。

武勇は優れているが、指揮官としては有能ではない様で反乱は瞬く間に行き詰ってしまう。また自分の意志でが起こした反乱が光神教に誘導されたものである事に気付いていない。

蔚塁の撤退後、光神教の裏切りとカガリの勁の強大さを知り、反乱を諦め降伏した。


  • 蔚塁(うつるい)

方相氏の長を務める老人。光神教信徒。

儺儺式の達人でその実力は振斗とは比べ物にならず、クリムトを一蹴し、礙牢を破り心装を展開したカガリと正面から打ち合えるほどの実力者。

作中では勝手な行動をして報告をよこさない振斗の状況を確認するため大興山に現れる。

そこで振斗の失態で光神教の機密をクリムト、ラン、ヤマトの三名に知られたことを悟り振斗を粛清した。

そのままクリムトと戦闘状態になり右腕を切り落とし勝利したが、カガリが乱入したため殺害にまでには至らず、今度はカガリと戦闘状態に突入。礙牢を破られ分が悪いと判断し撤退した。

その後、秘密を知った相手を始末するべく玄蜂を大興山に嗾け、中山軍を混乱させた上でカガリの暗殺を目論むが、ウルスラの妨害に遭い交戦、対剣聖用に編み出した聖喰で勝利するが、ウルスラの空装により重症を負ってしまう。

ウルスラに止めを刺す直前に割り込んだソラと対峙し、ソラの自身の右腕を囮にした勁砲をまともに食らってしまい気絶したが、ソラが玄蜂に意識を向けている間に姿を消しており、何れかの手段で逃走した。

撤退後は光神教の本殿に戻り、方相氏の失態で光神教の暗躍を中山に知られたことを教皇に報告した模様だが、崋山残党の反乱に協力していたのは、光神教の意に沿わない方相氏の暴走であると、中山に釈明するための手土産として処刑された。


方相氏の長としては特に厳格な人物であるとされ、失態を犯した配下を容赦なく斬り捨てる厳しい人物。しかし、光神教の秘密を知ったにもかかわらず、ランとヤマトを光神教教皇に頼んで預けて助命する事を考えたり、殺害を決意したクリムトに対しても式部を通じて家族に対する遺言を届けさせる事を約束しようとするなと、決して非情な人物ではない模様。

かつて御剣式部と戦い敗れたことがあるようで、再び式部と戦うための技を編み出すなど現在でも強く意識している模様。そのためかソラの顔を見た際に面影を見たようで思わず式部の名を呟いている。


  • 振斗(しんと)

方相氏の一員である30代後半の男性。光神教信徒。

40にも満たない年齢で習得に時間のかかる儺儺式を修めた剣士。

蔚塁の命令で中山を弱体化させるために、カササギが崋山残党をまとめ上げ反乱軍を形成する様に誘導していたが、反乱に呼応する旧崋山兵が想定より少なく反乱は行き詰ってしまう。

対策として御剣家に協力を要請(本人は命令しているつもり)し、反乱を撃滅した中山軍を襲わせる計画を立てる。その後タイミング良く現れたクリムトを式部が送り込んだ尖兵と誤解してしまい、姿隠しの神器を求めるクリムトに情報源として利用される。

ヤマトが中山に降伏しようとしたため、姉のランを惨たらしく殺し中山の仕業に見せかけようとするがクリムトに阻止されてしまう。

そのままクリムトにも襲い掛かるが、振斗の礙牢では弱体化こそさせたが心装まで封じることはできず呆気なく返り討ちに遭う。

直後に現れた蔚塁に報告の不備や独断専行(御剣家に対する要請)、クリムトを式部が差し向けた手勢と誤解した挙句、機密を漏らしてしまった事を叱責され、首を刎ねられ死亡した。


才能はあるのだが承認欲求が強く、優越感に浸るあまり相手が聞いてもいない事を話し続けた挙句、機密情報を漏らしてしまうなど間諜や謀略に向いていない性格の持ち主。

御剣家に対しても儺儺式を修められず鬼人の技に頼った半端者、方相氏の従者に過ぎないと認識しているため、一貫して見下した態度で接している。


夜会編集

  • ラスカリス

不死者たちの集会『夜会』の主催者で、12~13歳頃の少年の姿をしたダークエルフ。「妖精王」、「惑わす者(ウィル・オー・ウィスプ)」とも呼ばれる

夜会第一位の実力者で、第三位のシャラモンを大きく上回る実力を持つ。

多くの裏事情に通じている模様で、「法神教や教皇ノアの目的」、「法神教とアドアステラ帝国との繋がり」などソラにも多くの事情を語ったが、ソラからはあまり信用はされていない。また、300年前の人間と鬼人の戦争に関する詳細や光神教に関しても詳しく知っている模様。

法神教教皇のノアからは敵意を持たれている模様。

書籍版では森の王国アンドラでダークエルフ達の始祖、最長老として国家元首も務めている。


  • シャラモン

夜会第三位の実力を持つ「不死の王(リッチ)」。

多くの不死の王と同様に幽世と呼ばれる霊域に本体を置き、現世には影を顕現させているため、滅ぼすことは困難な存在と化している。

教皇ノア、ルナマリア、ミロスラフを当時に相手しても戦闘を有利に進める程の実力者で、ティティスの森でノアの抹殺を図るが、ソラの『魂食い』の特性により影を切ると幽世の本体にもダメージが及んだため、ソラに圧倒されて滅ぼされた。


過去の人物編集

  • 御剣一真(みつるぎ かずま)

幻想一刀流の創始者。300年前に鬼神を封じ、世界を救った英雄と語り継がれる初代剣聖。

当時方相氏の従者に過ぎなかった御剣家を興隆させた人物でもある。

御剣家の創始者として鬼ヶ島では尊敬を集める一方で、鬼門内部の鬼人族からは裏切り者と呼ばれ強い憎悪を向けられている。

そのため友好関係にあった鬼人族を何らかの理由で裏切り、鬼門に追いやった模様。オウケンの発言が真実ならば、その際に鬼人族の女子供対しても容赦なく虐殺を行っている。


心装の能力、形状は明かされていないため不明だが、最高ランクである太極の同現存在の心装を持っているとされる。

(御剣家300年の歴史で太極の同現存在を得たのは初代剣聖、17代剣聖式部を含めた3名のみと語られているため)


  • 御剣仁(みつるぎ じん)

初代剣聖・御剣一真の実弟。

若くして御剣家の当主になった兄を支えることを望む少年。

方相氏が父と叔父を捨て駒のように扱い死亡させたと考えており、敵意と不信感を抱いている。

そのため、儺儺式の修練に身が入っておらず、一真から自分より遥かに剣才があると明言されているにもかかわらず、腕前は兄に及んでいない。

儺儺式使いを毛嫌いする一方で兄との関係は良好。嫌いな儺儺式の鍛錬も兄のためと思えば打ち込めるなど強く慕っている。

兄が初代剣聖として歴史に名を刻んだ一方、仁の名は現在の鬼ヶ島では伝わっていない模様。


その他編集

  • 青い小鳥亭の父娘

冒険者時代、ソラが利用していた宿屋の親子。娘の名前はコロナ。

ソラからは好感をもたれていたようだが、内心ケチな客と嫌っていたようで冒険者を除名されたソラを追い出すだけでなく「今度はチップを持って来い」と嫌味を言った。

その後、再びソラが滞在し約束通り(当てつけで)毎回大金のチップを貰えるようになったが、ソラが頭角を現したことで報復されるのではないかと勝手に邪推し、怯える日々を送るようになる。


  • セーラ

イリスの母親。メルテの村の司祭。高レベルの回復魔法の使い手。

若々しい容貌で、優しく慎ましい性格だが、茶目っ気もある。ソラの母・静耶に似た雰囲気を持つため、ソラから好意を寄せられる。

かつては後に夫となるゴードンのチームで冒険者をしており、ゴードンのライバルであったイシュカ冒険者ギルドマスターのエルガートとは旧知の間柄。

ラーズ達の『隼の剣』解散とイリア達メンバーがソラの『血煙の剣』への移籍した件が穏当なものではなかった事に気付いており、同時にソラの激しく酷薄な一面がある事も理解しているなど、聡明。


  • アインツヴァイドーラ

メルテの村の子供達。セーラが面倒を見ているため、イリアの義弟妹に当たる。

メルテの村でのイリアへの報復に関する下準備としてセーラと共に交流を持ち、ソラの藍色翼獣の竜騎士として憧れを持ち、ソラ自身も食料やクラウ・ソラスに対するエサやり等で配慮したため三人ともソラに非常に懐いている。


  • ペリィ

イシュカの街で活動するクラン『死神の鎌』のリーダー。ゴズを連想させる大男で、仲間たちからの信用も厚い実力者。

過去に住んでいた村が鬼人に襲撃され、妻子を殺害された過去を持つため、ティティスの森での鬼人(スズメ)狩りに参加し、スズメの保護のために狩りに参加したソラと知り合う。

バジリスクの出現を確認したため、若手メンバーをソラに託して自身は残留。その後、バジリスクとの戦闘で落命した。

竜騎士としてのソラの実力を見込んでいたため、かなり好意的で自身のクランに勧誘しているが、断られている。また、ソラからはスズメを助けるために彼らと殺し合いになったら「後味が悪いどころではない」と感じる等、ソラからも好感を持たれていた。

書籍版では登場しない。


用語編集

国家編集

  • カナリア王国

第一部の舞台。首都は王都ホルス。

隣国は東のアドアステラ帝国と南のカリタス聖王国(北は海に、西は大砂漠に面している)。

アドアステラ帝国の侵略に対抗して大陸西部の諸都市が連合して設立した経緯があり、反帝国感情が強いが、帝国と正面から対抗できる国力はない。また、法神教を国教として定めてもいない。

近年は帝国からの圧力が強まっており、王政府内でも親帝国派と反帝国派に二分している。

領内にティティスの森、スキム山、カタラン砂漠といった魔獣の生息地を多数抱えているため、魔獣の被害が多い。ただし、基本的に被害は概ね辺境部の諸都市に限定され、同時に魔獣から得られる素材や資源を有効活用してきたため、国庫には余裕があり、経済基盤や民の生活は豊かな水準にある。

しかし、作中はティティスの森で発生した魔獣暴走(スタンピード)やケール河流域での毒素汚染、王都でもアンデッド騒動など災害続きであるため、王太子と帝国第三皇女の婚姻を進めて、帝国からの支援を得る親帝国派が優勢になる。後に王太子と帝国第三皇女の婚姻が成立したため、リシャール皇太子と帝国派閥の目論見は成功した。


  • アドアステラ帝国

カナリア王国の三倍以上の国土を有する東方の大国。首都は帝都イニシウム。

着物や漢字(東方文字)など和風の文化が見受けられる。

有力な大貴族としてアズライト、パラディース、カーネリアスが存在する。

御剣家も大貴族として帝国に属しており、御剣家を含めて帝国四大貴族と呼ばれる。ただし、帝国第三皇女・咲耶の言によると「御剣家は国政に関わらぬゆえに表に出ることはない」とされている。

リシャール皇太子を支持する主要貴族による中央貴族と、末子の紫苑皇子を担ぎ上げようとする東部貴族勢力と後継者問題を絡めた内部対立が存在し、帝国内の火種となっている


  • カリタス聖王国

カナリア王国南部に位置する国家。法神教の総本山で、大地母神や戦神などの様々な宗教施設の本殿が置かれている信仰の中心地である宗教国家。

冒険者ギルドの総本部はこの国に置かれている。


  • 森の王国アンドラ

カタラン砂漠内に存在するエルフ種の王国。ウィステリアの故郷。

領域の中心部に存在する龍穴「奈落」の影響で国土の大半は樹海が形成されており、砂漠の中でも生存圏を確保している。

隔絶した領域を生存圏とし、アンドラ人の結界が幾重にも張られている。更には結界周囲を幻想種のベヒモスが徘徊しているため、原則として人の世界とは交流はない。アンドラでは外の世界の存在を知らない者も多い。

ベヒモスを「神獣」「大いなる獣」と呼ぶが、特に信仰の対象になっている訳ではない。

龍穴を有するためか、住民が鬼ヶ島同様に「同源存在(アニマ)」を有する事があるが、制御法を確立していないため、「悪魔(デーモン)」と呼び、強大な戦闘力から恐れの対象となる。「悪魔」に憑かれた場合は下記のベヒモスを利用して処刑される。


書籍版では外の世界の事は周知しており、リドリスのエルフとは対立関係にある。また、法の神殿がある街を攻撃目標としているため、法神教やカナリア王国とも敵対関係にある。最長老であるラスカリスが始祖として君臨し、長老衆と呼ばれる代表達が統治を行う。また、筆頭剣士(グラディウス)と呼ばれる剣士隊隊長職が存在し、事実上は始祖の名代としてアンドラ軍を統括する大元帥の役割も持つため、アンドラではナンバー2に当たる。


  • 中山

鬼門内部の鬼人達の王国。鬼人達の五つの王朝群、『五山』の一つ。かつては『五山』では最弱であったとされ、一度は華山によって崩壊し、国とも呼べない流浪の集団にまで落ちぶれたが、中山王の遺児達である四兄弟により復興。各王朝を次々に併呑し、五十年振りとなる鬼人族の統一王朝を実現する。

現在は鬼界最大都市である旧華山首都『西都』に王府を置き、御剣家との戦争と故郷の奪還を進めている。


  • 華山

『五山』の一つ。鬼界内部にて中山王朝以外に最後に残された勢力だったが、中山軍に敗北し、国王ギエンの自死により滅亡・併呑された。『五山』乱立の時代には最大勢力を誇っていたとされる。


  • 泰山

『五山』の一つ。既に中山王朝に敗れ、併呑されているが、泰山王家は泰山公家として中山王朝内でも存続している。五山の中でも早くから光神教に帰依していた過去がある。


組織編集

  • 御剣家

アドアステラ帝国四大貴族の一角。

鬼ヶ島を統治し、帝より要塞都市「柊都」中心部にある「鬼門」の守護を命じられた『人の世の護り刀』を自任する一族。ソラはこの家の出身。

一応は貴族として帝国に属しているが、内実は一種の独立国家に近い。

国政に関与せず、国家間の争いには『侵さず、侵させず』を旨とし、帝国が侵略を受けない限りには参戦しないとされている。

しかし、実際は帝国の皇帝や帝臣からの依頼による陰謀や暗殺などといった表沙汰にできない汚れ仕事全般を請け負っている実情があり、実例として、リシャール皇太子の依頼を受けて慈仁坊に命じ、呪術によるクラウディアの婚約破棄および暗殺を実行させている(後に判明するが、実際に主導したのはギルモア)。慈仁坊は婚約破棄には成功させたが、暗殺はソラに阻止されて失敗した上、交戦して戦死している。ただし、式部自身は帝国の国政には興味はないらしく、依頼自体は全く重要視していない。

「滅鬼封神」を唯一絶対の法としているため、他国の法を平然と侵して鬼人抹殺に動いており、そのために他国で諍いを起こす事もある(作中では、ゴズの言動がそれを如実に示している)。

帝臣の中には強すぎる御剣家を警戒し、隔意を示している勢力も存在する模様。


  • 冒険者ギルド

大陸各国の主要都市に支部を持つ冒険者の管理組織。イシュカ支部や王都ホルス支部があり、本部はカリタス聖王国に置かれている。

冒険者の階級は最高位の一級から最下位の十級で区分けされており、十級の者だけは三年経っても昇級できなかったら除名される規則がある。

第一級の冒険者はカナリア王国内でも五名しか存在しない。


  • 隼の剣

イシュカ冒険者ギルドで話題になっている新進気鋭の冒険者パーティ。結成されてから僅か5年でCランクパーティにメンバーは6級冒険者まで昇格している。

メンバーはラーズ、イリア、ミロスラフ、ルナマリアの4名でかつてソラも在籍していたが、レベルが上がらないことを理由に追放されている。

蝿の王から逃走中、偶然その場にいたソラを囮にする暴挙を行う(この時、ラーズは気を失っていたため、彼のみ無実)。後に生き延びたソラから糾弾を受けるが、これに怒ったエルガートとソラを元々嫌悪していたリデルに庇われ、軽い罰則で事なきを得る。

だが、この一件で堪忍袋の緒が切れたソラから報復されることとなり、ラーズ以外のメンバーは血煙の剣へ移籍することになり、ラーズは当面冒険者家業を離れる意向を示したため、事実上解散した。


  • 血煙の剣

ソラが設立したクラン。冒険者ギルドの塩漬け依頼を受ける事でギルドの信頼を間接的に奪うために嫌がらせを目的としていたが、現状では十分な利益が出ているため、そのまま継続して活動している。

ソラが竜殺しを達成した後は実力派クランとしての地位を確立しているが、同時に「竜殺しだけ」と侮る者も現れ始めていたが、ソラ不在時のイシュカ第一防壁での戦闘にルナマリア達が参加し、多大な成果を上げたため、払拭されている。


  • 死神の鎌

イシュカの街で活動しているクラン。リーダーはペリィ。

狩人達のチームで、ティティスの森で鬼人(スズメ)の目撃情報により鬼人狩りに参加。スズメを逃がすことを企図したソラがクラウ・ソラスを使用した人員・物資輸送に協力したため、知り合う。

最終的には蛇の王バジリスクとの戦闘で主要メンバーの大半を失い、壊滅する。

その後はソラがスズメを保護するため奴隷商組合との裏取引により表向きのバジリスク討伐は「死神の鎌」の功績となったため、生き残ったメンバーはドラグノート公爵家にソラと共に招待されている。

書籍版には登場しない。


  • 銀星

ベルカの冒険者ギルドに属するAランクパーティの一つで、構成員は二十名超えの大型チーム。リーダーは『白騎士』のアロウ。

同じAランクの『砂漠の鷹』とは実力や実績が拮抗しており、ライバル関係にある。

しかし、数カ月前に砂漠の未踏破区域調査で主力メンバーの大半が未帰還となり、ほぼ壊滅状態に陥っている。

所属メンバーはカティア。


  • 砂漠の鷹

ベルカの冒険者ギルドに属するAランクパーティの一つ。リーダーは『黒騎士』ジョエル。

『銀星』と同等の実力を持つが、『銀星』が事実上の解散状態に陥っているため、現状では事実上唯一のAランクと見做されている。


  • 法神教

大陸で最大の信徒を有する宗教組織で、カリタス聖王国に本拠を置く。アドアステラ帝国では国教に定められており、御剣家の宗教も法神教に則って行われている。

現教皇のノアは帝国四大貴族の一角であるカーネリアス家の出身で、現当主の子でもあるため、カーネリアス家との繋がりが非常に深い。

鬼門内部の宗教組織「光神教」が組織の前身であり、300年前の人間と鬼人の争いでは光神教の一派が鬼人側に与した結果、鬼人敗北後は多くの人々から邪教と見なされ排斥されたため、現在の法神教と名を改めた経緯がある。


  • 夜会

不死の王(リッチ)達による集会。法神教と激しく敵対している。


  • 光神教

鬼門内部での鬼人達で信仰されている宗教組織にて、鬼界では唯一の人間組織。鬼界領域東部の「本殿」と呼ばれる宗教都市を本拠地としており、都市全体を光の壁を思わせる結界が覆っており、鬼界を冒す瘴気を防いでいる。

300年前の人間と鬼人との大戦の際に唯一鬼人達に味方した人間組織であり、当時多くの鬼人を救い出したとされている。光神教に入信しても鬼神の加護は失われないため、現在の五山の鬼人達にも一定の信者たちが存在する。

多数の神器を有し、御剣家に争いを仕掛ける中山王家にも協力体制を取るが、独自の目的と思惑を有している。


  • 方相氏

光神教の暗部を担う実働部隊。

古くから魔除け、魔物の討伐を担う集団であり、四ツ目の鬼面を被り人々を守り続けた滅鬼の士。

しかし、人の身でありながら悪鬼を討ち滅ぼす強さから次第に人々から恐れられ「鬼」と呼ばれ排斥されたとされているが具体的な経緯は不明。

作中の時間軸から300年前の時代に光神教と関わり、手を結んだとのこと。

人間の守護者を自負する方相氏は人外の力に頼る事を強く忌避しているため、鬼人を技術である心装はおろか攻撃魔法、精霊魔法、神聖魔法の類も扱わず、儺儺式と呼ばれる独自の剣術で戦闘を行っている。


御剣家は系譜を遡れば、方相氏の末席に連なる従者の家系に行き着く。かつて鬼ヶ島(当時は青林島と呼ばれる)を治めていたのも方相氏だったが、現在の鬼ヶ島ではこの事実はおろか方相氏の名すら知られていない。


地理編集

カナリア王国領

  • イシュカの街

第一部の舞台にして冒険者ギルドがある街。カナリア王国領の都市。城壁を持つ城塞都市で、魔獣の領域である「ティティスの森」の最前線に位置し、近隣に同じく魔獣生息地の「スキム山」も存在するため、冒険者ギルドの権限が強い。

二十年前にスキム山から発生した魔獣暴走(スタンピード)で被害を出した過去の教訓を活かして城塞化が行われた経緯があり、現在では魔獣の被害を受ける事も少なくなった。

都市住民のギルドに対する信頼は強いが、ソラの『血煙の剣』の台頭で陰りを見せている。


  • ティティスの森

イシュカの近くにある一国を覆いつくす程の面積を持つ大森林。蠅の王などの王クラスの魔物も生息し、最深部には最強クラスの幻想種系の魔物も生息しているとされる。

スズメがソラに出会う前に住んでいたかつて御剣家に滅ぼされた鬼人の村「カムナの里」はこの森にあり、最深部には「龍穴(りゅうけつ)」が存在する。


  • 王都ホルス

カナリア王国首都。カナリア王宮やドラグノート公爵家の邸宅、冒険者ギルドのホルス支部などがある豊かな都市。

綿密な都市計画により整然とした街並みを誇り、大通りは東西と南北にそれぞれ十本を碁盤目状に形成。車道と歩道が区別し、更に車道も二本用意し、左側通行を徹底する事で渋滞も対策している。都市の完成度ではアドアステラ帝国首都イニシウムを上回っている。


  • スキム山

カナリア王国領内の赤い山容を持つ巨大な山。イシュカの街からは馬で急いでも四日は掛かる場所に位置する。

ティティスの森にも並ぶ魔物の巣窟で、グリフォンやハーピィ等の飛行能力を持つ魔獣が大量生息している。二十年前に魔獣暴走(スタンピード)が発生し、多くの街に被害をもたらした事がある。


  • ベルカの街

カナリア王国の西部国境に位置する都市で、西側に広がるカタラン砂漠の魔物に対処するために防備が整えられている。

ベルカの冒険者ギルドにはAランクパーティが二組、Bランクパーティが七組在籍しており、Bランクパーティ三組しか有さないイシュカの街よりも高位の冒険者達が集まっている。書籍版ではベルガのギルドはイシュカとは違い殺伐としており、冒険者や職員も余所者に排他的な雰囲気を持つ。


  • カタラン砂漠

カナリア王国西部に位置する巨大な砂漠地帯で、ティティスの森やスキム山と並ぶ魔物の領域。

飛竜の飛行能力でも横断する事が叶わない程の領域を誇っており、それ故に魔物の総数や生息する魔物の全貌も判明してはいない。幻想種である『獣の王ベヒモス』が正式に確認されているため、危険度は高い。

この砂漠には黄金帝国(インペリウム)と呼ばれる伝説上の都市が存在するとされている。


  • リーロオアシス

カタラン砂漠内にあるオアシスに作られた小都市の一つ。オアシスの湧水量が多い為、カタラン砂漠探索の拠点としている冒険者が多い。


  • アルウェトオアシス

カタラン砂漠内にあるオアシスに作られた小都市の一つ。未踏破区域に最も近いオアシスであり、魔物の襲撃を受ける事も多い。


アドアステラ帝国領

  • 鬼ヶ島

ソラの故郷で、御剣家が統治する島。古名は『青林島』であり、青林八旗の名称の由来となっている。『鬼門』と呼ばれる鬼神を封じた場所があり、鬼神の呪いによって大陸とは比較にならない程に強力な魔獣や妖怪が跋扈する危険な島。

要塞都市「柊都」以外には住める場所がなく、大陸との交通は一日二回の定期便しかない。


  • 柊都(しゅうと)

鬼ヶ島で唯一の都市にして、御剣家の本拠地。七芒星の城郭を有する要塞都市で、七つの防御郭には青林旗士の第二~第八旗が駐屯して外側の防備を担当している。更に都市中心部は鬼門が存在し、第一旗が守護しつつも平時は各部隊の後詰の役割を担う。

建設から三百年間は難攻不落の歴史を誇っていたが、鬼門内部で中山王朝が五山統一を果たした最初の襲撃で都市各所の城壁がカガリによって破壊されてしまう。


  • 鬼門

鬼ヶ島唯一の生活圏である要塞都市『柊都』中心部に存在し、外見は朱色に塗装された巨大な鳥居。鬼神が封じられたとされ、鬼門から溢れる鬼神の魔力が世界を侵食し続けているため、鬼ヶ島の魔物は異常な強さを持つ。

実際は鬼門内部には『鬼界』と呼ばれる赤錆色の空と草木も生えない土と石だけの現世とは別次元とも呼ぶべき世界が存在し、かつて御剣家の祖先達により封じ込められた鬼人達による『五山』と呼ばれる5つの王朝が乱立している。

ごく僅かな耕作可能な土地を巡って争い続けていたが、『五山』最弱とされていた『中山王朝』により鬼人勢力の統合が成立し、人類に牙を剥く。


鬼門内部

  • 西都

鬼門内部(鬼界)の最大都市で、旧華山首都。現在は中山統一王朝の王府が置かれており、鬼人族の中枢都市となっている。


その他

  • 原初の森(プリムシルヴァ)

ルナマリアの故郷であるエルフ族の領域。所在地は不明。

統治体制は不明だが、長老と呼ばれる者達が複数名いる模様。

かつては大陸各地の人間とは対立関係にあったが、現在は法神教仲介により人間国家との間で不可侵条約を締結しており、表立った対立は終焉している。

ただし、エルフ族内でも人間への意見は分かれており、またエルフよりも短命な人間世界は情勢の推移が早い為、原初の森では定期的に人間社会に同族を送り込んで情報収集や友好関係構築のための活動を行なっている。

大陸西側でダークエルフ達と抗争している西方エルフ族勢力のリドリスとは友好関係下にあるため、エルフ族を統一した勢力ではない。


  • リドリス

ベルカの街から南に位置する西方エルフ族の最大集落で、指導者は族長。

長らくダークエルフ族のアンドラ王国と戦い続けてきた武闘派組織の顔も持つ。

原初の森(プリムシルヴァ)のエルフ達とは友好関係にあり、リドリスがアンドラのダークエルフ達により陥落した際にはベルガの街に避難を行なっており、ベルカとも友好関係にあると思われる。


御剣家関連編集

  • 幻想一刀流

御剣家の流派。心装を使用する流派で、高い戦闘力を誇っている。

初代剣聖が生み出した流派であるとされているが、実際は300年前に鬼人達の秘術を学び、参考にした流派であり、鬼門を潜った青林旗士にのみ、その事実を伝えられる。


  • 青林八旗

御剣家配下の鬼ヶ島を守る防衛部隊で全員が幻想一刀流を操ることができるが、全員が心装使いという訳ではない。

青い陣羽織がそのトレードマーク。

鬼門の影響で魔獣・魔物が大陸よりも強力な環境に加えて心装の会得方法を確立しているため、青林旗士達の実力は一般旗士でも大陸では英雄級の実力を持ち、各国の兵士達を大きく上回る。

ソラが非才であった頃を知る者が多いため、現在でもゴズ達の『ソラが心装を得て、幻想種クラスの魔物を単独撃破した』という報告をラグナとギルモアを中心に全く信じない等、未だにソラに対する侮蔑が蔓延している。

しかし、鬼ヶ島に出現した鬼神にラグナが完敗し、逆にソラが単独で討ち倒してしまったため、ギルモアが事実と功績の改竄に動く(これは式部に退けられる)など青林旗士の一部には動揺が走っている。

第一旗~第八旗と部隊編成が行われており、判明している部隊概要は下記の通り。また、部隊内での序列が存在し、第一位が旗将、第二位が副将を勤める。

旗将、副将に就任条件があり、少なくとも副将に就任するには幻想一刀流の奥伝である八卦の型を一つは修める必要がある。


第一旗:当主直属。鬼門守護担当。他の隊なら上席に位置する実力者が一般隊員として所属している最精鋭部隊。所属する条件として心装の会得が定められている。双璧の二人とゴズ、「黄金世代」のウルスラが所属している。また、ゴスの妹セシルも所属していた(式部の側妾になったため脱退)。


第二旗:アヤカが所属していること以外、不明。


第三旗:精鋭部隊。柊都北側に専用の修練場を有する。旗将はゼノン・クィントス、副将はルキウス・クィントス。ラグナも所属している。


第四旗:島外任務担当。島での戦闘に耐えられない・有効ではない旗士達を対外戦力として当てているため、実力は全部隊最弱。青林八旗内でも軽んじられているが、大陸基準では絶大な戦闘力を持つ。ラグナがソラ謀殺に利用したものの、失敗している。作中に登場した所属者は慈仁坊とヘイジン。


第五旗:クライアが所属。副将は女性が務めている模様。


第六旗:かつてモーガンが旗将を務めていた。祭、シドニーが所属。


第七旗:クリムトが所属していること以外、不明。


第八旗:新兵が多く、心装未習得者が多数所属(新兵教導担当?)。旗将は慎重な人物が務めている。


  • 黄金世代

御剣家でソラの同年代の門下生達の総称で7名が該当。

一年代にこれ程の才能の持ち主が集まることは珍しい為、御剣家で注目される反面で当時非才と見做されたソラへの蔑視が増大する理由の一つにもなった。特に祭とクリムトはソラをこれでもかというほど侮蔑している(クリムトは後に態度を軟化するが、祭は鬼人と組んだソラを許せず、完全に敵対の意思を示している)。

序列は下記の通り

第一位:アヤカ・アズライト

第二位:御剣ラグナ

第三位:ウルスラ・ウトガルザ

第四位:九門 祭

第五位:シドニー・スカイシープ

第六位:クライア・ベルヒ

第七位:クリムト・ベルヒ


  • 四卿(よんけい)

御剣家当主を支える重臣の称号。「司徒」「司空」「司寇」「司馬」の役職を指す。

司徒は家中の人事・財務・外務担当、司空は治水・土木担当、司寇は青林八旗の犯罪取り締まり担当、司馬は当主の軍事面での補佐役を担当している。

青林旗士の会議ではこの四卿と各部隊の旗将・副将までに発言権があり、たとえ御剣家嫡男でも発言は許されない。

四卿の役職は旗将、副将の兼任は認められていない。そのため、旗将の任に就くものが四卿に選出された場合、旗将を辞する必要がある。

ギルモアはこの四卿の全てをベルヒ家のみで独占しようと暗躍しており、ゴズの失脚やシモン引退の隙を突く事に勤しんでいる。

司徒:ギルモア・ベルヒ

司空:シモン・ガウス

司寇:ベルヒ家関係者

司馬:ゴズ・シーマ


  • 双璧

青林旗士の中で、当主を除いた最高戦力の2名のこと。

第一旗旗将「ディアルト・ベルヒ」、第一旗副将「九門淑夜」が該当。


  • 九門家

御剣家の家臣を務める一門。

御剣家の中でも最古参の歴史を持ち、初代剣聖の側近を務めた旗士を起源に持つ。

現当主は双璧の一角にして一旗副将九門淑夜。

初代剣聖の時代から続く名家だが青林旗士としての本分を重んじており、政治に一切興味を示していない。歴代の当主は四卿の地位に就くことを避けており、三百年間で四卿を輩出していない模様。

一方でその姿勢から御剣家内では敬意を向けられており、権勢とは無縁にもかかわらず家中で一定の影響力を保持している。


  • スカイシープ家

御剣家の家臣を務める一門。

九門家と同じく初代剣聖に仕えた旗士を起源に持つ名家。

四卿の司徒を代々世襲してきた一門で、現当主モーガンは先代剣聖の時代は側近として隆盛を極めたが、現在はやや没落しており、司徒の地位とかつての邸宅をベルヒ家に奪われている。

そのため、現在最大派閥を形成しているベルヒ家(厳密にはギルモア)に対して敵意が強く、反ベルヒ(実質反ギルモア)の急先鋒な立ち位置となっている。


  • ウトガルザ家

御剣家の家臣を務める一門。

四卿の司寇を代々世襲していた一門で、歴史と位を見れば名家と言って差し支えないのだが、青林旗士の犯罪を長年取り締まってきた経緯故か御剣家内では疎まれており、名家として名が挙げられることはない。

現在では司寇の地位はベルヒに奪われている。

現当主に関しては不明。ウトガルザ家の人間はウルスラしか登場していないが、ウルスラが当主とは明言されていない。


  • ベルヒ家

御剣家の家臣を務める一門。

四卿の司徒、司寇の位を有しており御剣家内で最大派閥を形成している。

現当主はギルモア・ベルヒ。

元々は下級旗士の家だが、ギルモアが式部に見出されたことで勢力を伸ばした。ギルモアはその権勢を傘に御剣家中を我が物顔で取り仕切ることが多く、快く思わない旗士も多い。

ギルモアは四卿をベルヒ家で独占することを目論んでおり、御剣家内における権力争いが激化する原因となっている。


  • 心装

簡単に言えば「同源存在(アニマ)」と呼ばれるもう一人の自分を武器にしたものとされる。より使いこなせば「空装」と呼ばれるより強力な戦闘力を有した形態になる事も可能。

御剣家初代当主が300年前に生み出されたものとされ、心装使いは全て御剣家の管轄に置かれる。

同源存在は大別して「固有(ユニーク)」と「世界(ワールド)」の2枠に大別する事ができる(Web版のTips①より)。

前者は個人的無意識(使用者固有の記憶)から生じ、後者は集合的無意識(人の種としての記憶)から生じた同源存在となる。原則として「世界」の方が強力な心装となる事が多い。

更に上位クラスの同源存在は、下記の名称で区別される(Web版のTips②より)。

太極:Sランク。御剣三百年でも認定されたのは初代剣聖、十七代剣聖の式部を含め3名のみ。

両儀:AAAランク。

四象:AAランク。このランクの実力があれば、剣聖に至れる可能性がある。

八卦:Aランク。青林旗士の旗将クラス。


  • 勁(けい)

魔術師風には「オド」とも呼ばれる体内で生み出す魔力の事で、本来は一般的な魔術師が使用する自然界が生み出す魔力「マナ」よりも弱い力だが、上記の心装使いは膨大な勁を生み出すので、本職の魔術師を上回る力を発揮する。御剣家の心装使い達である幻想一刀流では勁の上達は欠かせないものとなる。


  • 滅鬼封神(めっきほうしん)

御剣家に代々伝わる家訓あるいは掟のこと。

鬼人を媒介とした鬼神の現出を防ぐべく、鬼人の即時抹殺を前提としているため、御剣家および御剣家に仕える者にとって、この滅鬼封神は絶対遵守すべき唯一の法であり、他国の法やしきたりには絶対に従わない。

仮に他国で罪人になろうとも、ゴズ曰く「鬼人を放置する害に比べれば、我らが咎人(とがびと)になるなど安い代償」との認識でしかなく、鬼人を匿ったり、自分たちの行動を妨害した者達は程度や身分に関係なく反逆者として殺害し、場合によっては一族郎党の殲滅も厭わない。

そのような非道も御剣家では「正しき行い」と称賛され、逆にこの家訓や掟に従わなかった、逆らった者は厳罰(最悪の場合、死罪)の対象となる。


一方でこれらを揶揄されたり侮辱されることは、御剣家と旗士にとっては最も堪え難い屈辱と恥辱になるようで、ソラに「滅鬼封神の掟のためなら嘘も方便、殺生は武略。それが御剣家」と直言(これにはゴズ、クライア、クリムトがスズメを奇襲した際の言動、亡母の命日にかこつけて御剣家への帰参を突き付けたことの二つに対する皮肉が込められていた)されると、ギルモアを始めとした多くの旗士が怒りを露わにし、ソラに御剣家への帰参を説得していたゴズも怒声と罵声が飛びまくる場の空気に呑まれ、説得も反論もできなくなった(ちなみにその後、ギルモアが「滅鬼封神の掟を侮辱し、我らの志に唾をかけた」としてソラの処刑を式部に嘆願したが、却下されている)。


  • 島抜け

旗士が鬼ヶ島から無断で脱走する行為のこと。

その罪は滅鬼封神の掟に背くよりも重く、どんな事情があろうと死罪になったとしても抗弁できない。

御剣家設立以来の300年間で島抜けを成功させた者はいないとされている。しかし、ギルモアとディアルトの姦計によりクリムトを助けるためにクライアが島抜けを敢行。ベルヒ家の陰謀によるものであるため、追っ手や追撃は行われず、結果的にソラの元まで辿り着き、島抜けを達成してしまっている。


  • 笹露・笹雪(ささのつゆ・ささのゆき)

御剣家に伝わる二振りの刀。

御剣家の家宝であり、特に笹露は当主が代々佩刀としてきた宝刀だが、300年前の戦争で失われており、現在では笹雪しか御剣家には残っていない。

笹雪は御剣式部の佩刀であり、笹露が失われた後は笹雪が御剣家当主の佩刀となった模様。


鬼人・鬼界関連編集

  • 鬼人(きじん)

幻想種の一角である鬼神を崇めるという亜人種族。男性は一本角、女性は二本角を額に持つ。

鬼人族の額の角は体内魔力(オド)生成器官としての力を秘めており、高品質な魔法媒体として珍重される。300年前に人間との争乱に敗れた種族であるため、人間からは迫害を受けている。

鬼門内部に住まう鬼人達は蕎麦すらろくに実らない土地を巡って争っている。

心装使いも存在し、蚩尤の加護を得た者は現人神の如く崇拝され、王族として君臨していることも珍しくないと言う。

また、角の数が多い女性の方が魔力値が高い傾向がある。

詳細は不明だが、人間を裏切者とみなしており、特に鬼人を問答無用で殺しに来る御剣家を憎悪している。


なお、亜人はエルフ族、獣人族の他にドワーフ族もいるようだが今の所設定のみ。


  • 蚩尤(しゆう)

鬼神。鬼人達が崇める神。鬼人族ではあらゆる武具を開発した兵の神として信仰されているが、人間達の間では幻想種の一種ともされる。

全ての鬼人族の「同源存在(アニマ)」であり、角を媒介に蚩尤と鬼人は繋がっている。そのため鬼人族の心装はすべて蚩尤の一面を示すものとされている。


  • 鬼神化

鬼人が自らを依代にすることで鬼神を降臨させること。人間世界で言う「神格降臨(コール・ゴッド)」にあたる魔法の一種。

人間が神格降臨を行うには教皇クラスの器が必要で奇跡とも呼ばれるほどだが、角を媒介として鬼神と繋がっている鬼人族は比較的容易な条件で神を降ろすことが可能。

しかし神を降ろすには人の器は小さすぎるため、鬼神本来の強さを再現することは出来ない。

作中では華山十六槍筆頭のイサギが御剣家襲撃時に鬼神化を果たす。現界時間は短く戦闘力は十分の一程度だったが青林旗士最精鋭の一旗を三十人以上殺傷するなど高い戦闘力を発揮した。

強大な力ゆえ鬼門内部で鬼神化を行うことは禁じられている。


  • 中山四兄弟

五山の一つに数えられながらも弱小勢力に零落した「中山」を立て直し、鬼界の統一王朝にまで導いた中山王家の四兄弟。

長男に中山王「アズマ」、次男に鬼人最強の武人「ドーガ」、三男に光神教司教「ハクロ」、そして四男に黒狼の異名を持つ武人のである「カガリ」の四名。

全員が優秀な能力を持ち、兄弟関係も極めて良好な関係を維持しており、鬼界統一までの戦乱では数多の敵対勢力が兄弟間の離間を図ったが、一度も成功していない。


  • 崋山十六槍

五山の一つ「崋山」において崋山王ギエンが最精鋭の戦闘力を持つ武人達に与えていた称号。筆頭はイサギ。

崋山滅亡後は十六槍関係者の一部は中山軍に編入されており、御剣家襲撃作戦に参加。イサギやキフの他にも多数の十六槍が参戦し、一定の戦果を挙げたが全員が戦死した。

崋山残党による中山への反乱軍にも十六槍の一人であるカササギが指揮官として参加しており、まだ生き残りは存在する模様。

十六槍の名の通りに、任命された者が十六名いたのかは不明。


  • 愛し子(めぐしこ)

鬼人達の中でも特に鬼神「蚩尤」からの加護が厚く、同源存在としての繋がりが深い者達の総称。

心装を展開すると武具の現出ではなく肉体が変異し、鳥や虎といった動物の特徴を現した姿となり、強大な戦闘力を有する。御剣家では「変異型の心装」と定義されている。

戦闘力を重視する傾向が強い鬼界の鬼人達からは現人神の如く崇められ、五山に数えられた各王朝の支配者層の多くが愛し子であったとされている。

ただし、その能力と引き換えに短命な者が多いとされており、鬼神から祝福された存在として見られているが、愛し子の中には鬼神の加護を「呪い」として忌む者も存在する。


  • 祈りの腕輪

鬼人族に伝わる送った相手の無病息災を祈る腕輪。

葦の茎から葉を払い落として細かい細工を施したブレスレットで、スズメは幼少の頃に母から「病魔を遠ざける腕輪」として教わっており、鬼ヶ島へ一時帰郷する際にスズメからソラへ送られた。

鬼界内部の鬼人達にも「贈った相手に幸多かれと願う祈りの腕輪」として一般的な品であるため、少なくとも300年以上前から作られてきた物であることが窺える。

柊都に潜入したカガリがソラに注目する最初のきっかけを作り、中山王アズマも外の世界に鬼人の生き残りがいることを知り、同時に鬼人と友好関係を持つソラを将来的な鬼人と人間の講和の架け橋になる事を期待する様になる。


  • 姿隠しの神器

光神教が多数保有する神器。高徳の神官がその身に神を降ろして作り出した護符を黄金色の腕輪に取り付けた物。

文字通り自らの姿を隠匿しながら自在に動き回る事が可能で、この腕輪を使用して青林旗士の最精鋭である第一旗が固める鬼門の守備を素通りし、柊都襲撃事件を引き起こす。

ただし、完全に姿・気配を隠すものではなく、相手に近づき過ぎると気付かれてしまうこともある模様。

また、早くから光神教に帰依していた泰山公家は独自に多数の姿隠しの神器を保有している。


  • 儺儺式(ななしき)

方相氏が扱う独自の剣術。

自身を起点に範囲内にいる者の勁を極限まで削り取る結界術式『礙牢』を主軸に編み出した鬼人殺しの剣。

人外の力に依らず、人の力のみで鬼人の心装に対抗するために編み出された戦闘術で、使い手によっては心装の維持はおろか初歩の勁技すら使えないほどに弱体化させることも可能だが、相手の実力次第では結界を破られる、もしくは全く効き目がない場合もある模様。

会得には相当な時間がかかるようで、蔚塁から高い才能の持ち主とされる振斗は礙牢の会得に十年以上、儺儺式の会得に更に十年以上の時間をかけている。

そのため、使い手が少ない上、剣士として働ける実働期間も短いという問題を抱えている。また、会得の難しさから儺儺式を修めた者が傲慢に振る舞うことも多いようで、方相氏内で儺儺式を修めた武官と修めていない文官の間で軋轢が生じている。


その他編集

  • 幻想種

血肉を得た災害とまで恐れられる最高位の魔物。一匹が出現したら国の存亡にも関わる程の力を持ち、王クラスの魔物の力を遥かに上回る。

該当する魔物は八つ首を持つ「猛毒の多頭竜ヒュドラ」、「獣の王ベヒモス」など。

竜種、巨人種等の種類が存在し、特に竜種が最強の力を誇る。ソラの「魂喰い」も幻想種に連なるものとされる。

討伐に成功した場合、国から叙勲が行われたり、『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』『神獣殺し(ホーリースレイヤー)』等の称号で呼ばれることがある。

極めて膨大な魂を保有しているため、ソラは強くなるために積極的に幻想種を狩るための行動を行っている。


  • 王クラス

幻想種には戦闘力は大きく劣るが、出現が確認されたら即座に正規軍派遣による駆除が行われる災害級の魔物。

「蠅の王」や「蛇の王バジリスク」などが該当し、鬼ヶ島に生息する「土蜘蛛」も王クラスの実力を持つ。


  • 奴隷

ほとんどの国にあるいわゆる身分外の階級で廃止されているのは南の聖王国のみ。

実態は様々であり、技能に応じて金額が変わりある程度権利が認められたものも存在する。


  • 魔法

自然界の魔力「マナ」や体内魔力「オド」を使用する事で発動させる事が可能。本来の魔導師は「マナ」を使用して魔法を行使する。地水火風が基本属性となる。

魔法の序列は最下級の第一圏から最上級の第九圏まで区別される。大陸で第九圏を使用する魔法使いは聖賢(ロード)と称えられ、魔術史に名を刻む事になるが、カナリア王国の最も優れた魔法使いである宮廷魔術師達でも第七圏が限界であり、滅多に現れない領域であるとされる。

更に魔法構築の際に正しく改変された通常の魔法である「正魔法」と、正当に改変されていない原初の魔法「蝕魔法」の二つに区別する事も可能で、蝕魔法は使用者にも心身の変化を強いるため、使用には多大なリスクを被る。


  • 精霊魔法

術者が精霊に願いを掛けて、精霊が願いを叶えるという手順で発動させる魔法。

通常の魔法と違い詠唱は必要なく、願う内容によって効果を変えられる為、様々な状況に対応可能なメリットがあるが、効果を細かく定める程術の成功率は低下する、術者の力量によっては願いを無視される、最悪の場合では敵対行動さえ取る場合があるなどデメリットも存在する。


  • ジライアオオクスの実

ティティスの森の奥地にあるジライアオオクスの木の実。強烈な酸味があるため、食用に適していないが、食すると体内の毒性を急激に中和する働きを持つ。

ソラはスズメと出会った際にこの実も効力を知り、奴隷商組合のフョードルにジライアオオクスの研究と運用を任せ、ソラがワイバーンでティティス奥地にあるジライアオオクスの実の確保を行う事を約束することで、スズメの保護するための交渉に利用する。

後にジライアオオクスの実が慈仁坊の呪いに苦しむドラグノート公爵の次女クラウディアの体調を一時的に改善させる事にもなり、ソラとドラグノート公爵家が出会うきっかけにもなった。

藍色翼獣(インディゴ・ワイバーン)であるクラウ・ソラスが食べても効力があり、人間以外にも効果がある。


  • クラン

冒険者ギルドから独立したフリーの冒険者パーティのこと。

ギルドの恩恵を受けられないかわりに、ギルドの束縛を受けることもなく、ギルドに報酬を中抜きされることもない。イシュカの街だけでも三桁ほどのクランが存在するが、ギルドとは違い自力で依頼や顧客を集めなければならないため、ほとんどが開店休業か何でも屋状態になっている。

ソラも追放された後に『血煙の剣』を結成する。結成目的はイシュカ冒険者ギルドへの報復で、結成前にギルドの大量の塩漬け依頼をこなすことで信頼と顧客を確保し、同時にギルドの依頼遂行能力に疑問を抱かせた上で顧客を奪うためでもあった。


  • 龍穴(りゅうけつ)

大地に空いた巨大な穴で、膨大な魔力(マナ)を無尽蔵に放出し続ける一種のエネルギーポイント。龍穴は繁栄の象徴ともされる。

ティティスの森の最深部に存在し、巨大な大森林と強力な魔物を生み出した元凶。

他にもアドアステラ帝国首都イニシウム、カリタス聖王国の大腐海、アンドラの奈落も存在するとされる。


  • 魔獣暴走(スタンピード)

ごくまれに発生する魔物の暴走。イシュカでは20年前にスキム山脈、本編中にティティスの森で発生している。

発生した場合、大量の魔物が移動を開始し、進路上に町があれば甚大な被害を被ってしまう。

20年前にスキム山脈から発生したスタンピードは活性化した火山の影響で魔物の生態系激変したためと推測されている。

本編中のスタンピードの発生には龍穴が関わっており、龍穴からヒュドラが顕現した結果発生した。


出版編集

アース・スターノベル:既刊8巻


関連タグ編集

「お前ごときが魔王に勝てると思うな」:主人公が劣っていて追放されるが、後に異質の能力を持つと判明。という境遇繋がり。

戦極姫:作者が連載していた『聖将記』の二次創作元。

追放もの


外部リンク編集

反逆のソウルイーター ~弱者は不要といわれて剣聖(父)に追放されました~ - 小説家になろう

反逆のソウルイーター -魂の捕食者と少女たち-

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