概要
特定の分野や括りにおいて、極めて優秀な能力を持っていながら、それを全く自覚していない人物・キャラクターもしくはそういった人物が主人公の作品ジャンルを指す言葉。
異世界もの(中でも転生ものの要素を含む作品)の主人公によくある傾向で、代表的なのがチート能力を授かって異世界に転生や転移、召喚された主人公が、その世界の標準的な能力を知らず、そしてそれを比べる機会がないことで、自身のチート能力を気付くことが出来ない(しかも、それが世間では普通の能力だと思い込むことが多い)。
その後にチート能力を披露し、それを目の当たりにした人々が愕然とする中でも、「あれ?どうしたの?」・「これぐらい普通なのに?」と周りの反応に困惑し、さらに何故か「もしかして、能力が低すぎて驚いた?」と真逆な思い込みをして気付けずにいることもある。
そんな事はないと説明しても「またまた…おべっかなんてやめてくれよ」と絶対に信じようとしない。
現地主人公もの作品の主人公の場合、本編開始までの間に育ってきた環境・受けてきた教育が理由で『自分を普通以下、未熟者や落ちこぼれだと思い込んでいる』という要素もある。
本人にその気はなくとも、他の登場人物や読者(視聴者、プレイヤー)からは嫌味に感じられてしまうこともある。
また、この無自覚状態を維持するために負のご都合主義の域に達する程の不自然なレベルで観察力や注意力、学習能力が無いことになっているパターンもあり、その場合も読者からは不快に思われてしまうこともある。
- 試験で他の生徒が普通に的当てをやってるのに主人公は的どころか背後の壁まで吹き飛ばして周囲が驚くと『威力が足りませんでしたか?』と言い出す
- 生き物を捕獲する課題で他者が普通に小動物を捕まえているのに主人公は巨大モンスターを捕まえてきて『こんな雑魚じゃ不合格ですか?』と言い出す
など
一方で主人公のチート能力を周りも気付いていないことがあり、追放もののざまぁ系の作品では悪徳勇者や高ランク冒険者パーティーがチート能力の主人公を追放したことで転落していく展開が多い。
この場合は、主人公とは駆け出しの時からの付き合いのために主人公のチート能力の凄さに気付いていないパターンや主人公のチート能力で強化された力を自前の力と勘違いして気付いていないパターンなどがあり、結局は追放した後に気付くことになる。
なお、チート能力に目覚める前に下位ランクの冒険者として数年過ごしたという設定で一般的な冒険者の水準を熟知しているはずなのにチート能力に目覚めた途端に
『モンスター素材を買い取って欲しいんだが』
『旦那、残念ですがうちじゃ買い取れないです』
『ふむ、シルバードラゴンなんて雑魚の素材じゃ値段が付かないか』
『逆ですよ! 全財産はたいても牙1本の値段にもならないんですよ!』
といった無自覚チート仕草をやりだすわざとらしい作品もある。
小説投稿サイトでは『無自覚系』というジャンル名が使われているが、恋愛的な無自覚(天然タラシ)やエロ方面の無自覚(無知シチュ)と混同されることもある。
無自覚チートキャラの例
『ドラゴンボール』の登場人物。もともと非好戦的な性格が災いして自らの才能や戦闘力に無頓着な所があり、精神と時の部屋の修行を経て父である孫悟空の戦闘力を超えたのを自覚せず、悟空のフルパワーに他の人物が驚愕する中、一人だけ「みんなが何に驚いているのかわからない」という反応を何度も見せていた。『オレンジスターハイスクール』では目立たないようにしていたつもりだが、野球では舞空術を駆使してホームランボールをキャッチする(その後空中からサードに超剛速球を投げる)、デッドボールを顔面に受けても痛がる素振りすら見せないと全く加減が足りておらず目立ちまくり、当人だけは目立ってないと思い込んでいる。
『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』の主人公。物心ついた時から育った故郷であるコンロン村が極めて規格外であったため、人間離れどころかこの世の理離れの領域に達する能力を持ちながら自分を未熟者だと思い込んでいる典型的な無自覚チート主人公である。そして一番タチが悪い点として自身が未熟極まりない無能であるという意識がアイデンティティと化しており、周囲が何と説得しようと「違う!僕は無能な出来損ないなんだ!みんなは嫌味を言ってるんだ!」と聞く耳を一切持たずに物語が完結してしまった
『転生賢者の異世界ライフ』の主人公。本編序盤の冒険者になるための試験では『攻撃魔法の試験で杖無し詠唱無しで並以上の威力を叩きだす』『剣術の試験で(スキルの力によるものだが)凄腕の剣士である試験官にやり直しで本気で戦っても絶対に勝てないと悟らせるほどに実力を見せつけ完勝』といったどちらも普通の枠には収まらない活躍をしており、前者に至っては「俺の魔法の威力がおかしいって……弱すぎって意味だよな?」は無自覚チートを象徴する台詞として有名。ただし、前述のロイドと違って教えてもらえばキチンと学習できる方である。だが肝心の自身のずば抜けた能力の高さへの指摘は聞き流して一切反応を示さない
『賢者の孫』の主人公。異世界転生した先で田舎住まいの凄腕魔法使いに15年間育てられ、普通の感覚を知る機会がなかったため。都会に移住してからは自分の異常さを自覚し自重するようになるが、それでも時折やらかす。例の俺、また何かやっちゃいました?の生みの親でもある。そのチート具合が生み出す安心感の高さは、シンの預かり知らぬところで可愛い女の子キャラが惨たらしく殺され、シン本人には気づいてももらえないシーンのテコ入れが入ったほど。
『実は俺、最強でした?』の主人公。異世界転生を執り行った女神のやらかしが自身の与り知らぬところで発生したため。その後も自分が他人と異なる力を持っていることは自覚しているものの、怠けること最優先で小難しいことに対する理解を放棄している。
『Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ』の主人公。異世界召喚後にろくな知識や情報を与えられないまま追放されたため。時間経過により得た力の大きさを実感し下手に振るわないよう努めている。
『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー』の主人公。複数の動物達を同時に仮契約して使役する(普通のビーストテイマーは複数の動物を同時に使役しようとすると精神崩壊する)、昆虫等動物以外の生物も使役できる、仮契約した動物に自分の精神を憑依させその動物として行動できる、相手の身体能力を最大限発揮させる魔法(パーティーメンバーの1人曰く失われた魔法)を使用できる等普通のビーストテイマーが不可能なことを得意としているが、本人は穏やかで謙虚な性格に加え、以前所属していた勇者パーティーにいいようにこき使われていたこともあり、現在のパーティーメンバーから指摘されるまで上記の能力が普通のことだと思い込んでいた。
- ローナ・ハーミット
『世界最強の魔女、始めました』の主人公。自身のスキルが貴重であることを理解しているが、天然ボケに加え作中の世界設定が原因で周囲に与える影響力を過小評価している。
『俺は全てを【パリイ】する』の主人公。最下級スキルを長年の修練で極めた結果、超人的な技術を体得したが、当の本人が田舎育ちで学がないため自分の凄さを理解しておらず、周囲との会話もお互い勘違いしたまま話が進んでいく。
『ウマ娘プリティーダービー』に登場する、実在した競走馬アグネスデジタルをモチーフに誕生したJC。
レースで活躍する為に存在する彼女達ウマ娘だが、本来芝かダートどちらかしか適正を持たない中でその2つを両方持ち合わせており実力自体もエリート校の中でも上澄みに位置している天才少女。
天才アスリートと言うだけでも十二分に凄い彼女だが、更に趣味の同人活動で壁サークルに位置する程の神作家であり、それ以外でもあらゆる分野の知識や技術を持ち興味が沸くと高すぎる適応力で専門家と同等レベルにまで達してしまう掛け値なしの神童。
…なのだが、本人は「どこにでもいる"平凡"なウマ娘」を自称しており、オタク気質なせいか周りからの評価に鈍感である。
関連タグ
WEB小説:小説家になろう・カクヨムを始めとした投稿サイトに『主人公が無自覚チート』の作品が多数投稿され、作品ジャンルとして確立された。
謙遜・過小評価:無自覚チート主人公は己の能力の高さに反比例するかの如く、物腰が低いのもあるある要素の一つだったりする。
またオレ何かやっちゃいました?:無自覚チートの代名詞とされるセリフ。元は上記のシンが漫画版にて発したもの。
まるで成長していない:能力自体は人間離れの域に達する程に高くとも、一般常識(特に自分のチート級の規格外の能力に対しての無頓着さ)に関しては他者から何度教えられても頭ごなしに否定して、微塵も改善されないという厄介なパターンもある。(上記のロイドがその模範例)
負のご都合主義:前述の通り『主人公が自分のチートに無自覚である』という状態を延長させるために、張本人の主人公や周囲の人物達だけでなく、能力を測定するスキルや装置にまでこれが働くケースも見られる(例:『対象の能力値等を測定・鑑定するスキル・装置』を主人公に対して使用する場合、『下4桁までしか測定・表示できない』『極端に大きい(オーバーフローな)数値だった場合、測定不能やエラー等ではなく0と表示する』等の欠陥があったために、主人公は自分の能力を正しく自覚できない)。
異世界もの(追放もの):無自覚チートが主人公を務める定番ジャンル。