概要
労働者に対し、雇い主が雇用契約を解除することである。雇われる側の都合で雇用契約を解除する場合は「退職」という。
病気や怪我などで職務に耐えないことによる普通解雇や不祥事を起こしたことによる懲戒解雇(公務員の場合は懲戒免職)など従業員側に原因があるケース、災害や経営破綻など経営側の事情による整理解雇などがある。
内部告発などへの制裁としての懲戒解雇や、「会社の雰囲気に合わない」など経営者の主観的理由による普通解雇、「早急にリストラを行わなければ経営破綻する」というほど経営状態が切迫していない状態での整理解雇の場合は、しばしば解雇の妥当性について争いになり、「会社都合退職」という扱いになることもある。
解雇の種類
どの解雇もいきなり実行するのは難しく、まずは戒告(厳重注意)や譴責(始末書を書かせる)といった軽めの懲戒処分を与え、それでも直らない場合は減給(給料を減らす)や出勤停止(一定期間給料を支給しない)、降格(役職を下げるか外す)といった重めの懲戒処分を与え、それでも直らない場合は退職勧奨または解雇を検討するという流れが多い。
普通解雇
諭旨解雇や懲戒解雇ほどでは無いものの、主に従業員に落ち度がある解雇。ただし病気や障害が理由の場合は例外。
主に以下の理由がある。
- 著しく能力不足であり、会社側が十分に教育・指導したにもかかわらず改善がみられない場合
- 正当な理由が無い遅刻・早退、無断外出を繰り返している場合
- 勤務態度が悪く、再三注意しても直らない場合。例えば以下のケースがある。
- 病気や障害(精神障害、発達障害を含む)などがあり、仕事に著しい支障をきたす場合。
- ただし病気や障害があるという理由だけで解雇するのは違反である。
整理解雇
所謂リストラ。企業の経営状態が悪い場合に特定の従業員を解雇すること。
バブル崩壊やリーマンショック、コロナ禍などで景気が著しく悪化した場合に行われやすい。
諭旨解雇(諭旨免職、諭旨退職)
懲戒解雇相当の理由がある従業員に対して、会社側の情状酌量により認められる処分。
懲戒解雇よりはやや軽く、「期限までに退職すれば懲戒解雇にはしない」というもの。しかし退職を拒否した場合は懲戒解雇になる。
懲戒解雇(懲戒免職)
最も重い解雇処分。従業員にきわめて悪質な理由があり更生の余地が無いと判定された場合にのみ行われる。
他の解雇と異なり、
- 予告なしにいきなり解雇することができる。(他の解雇は30日以上前に予告しなければならない)
- 有給休暇の消化が認められない。
- 退職金は支払われない。
- 失業保険は一応もらえるが、他の解雇より金額が少ない。
- 転職・再就職の際にも「前の会社を懲戒解雇された理由」を聞かれるため、転職活動がきわめて不利になる。
などのデメリットが非常に多く、特に最後のやつは社会人にとっては実質的に死刑と同じと言われることも多い。
懲戒解雇を受ける理由としては以下のものがある。
- 故意に会社や顧客の機密情報を洩らした場合
- 会社や顧客に対して誹謗中傷を行い、名誉を傷付けた場合
- 重大な報告を隠蔽したり虚偽の報告によって会社や顧客の名誉を傷付けた場合
- 従業員の犯罪行為によって会社の信用が失われた場合
- ちなみに誤解されがちだが、逮捕されただけでは懲戒解雇にするのは難しい。
- 他の従業員に対して日常的にハラスメントを働くなど著しく協調性が無い場合
- 特に被害者がうつ病などに罹った場合は懲戒解雇が認められやすい。
- 会社のお金を横領した場合
- ちなみに企業によっては少額の横領でも懲戒解雇になり得る。
- 学歴や職歴、保有資格などを詐称して入社した場合
- 無断欠勤が連続して14日以上続いた場合。または無断欠勤を頻繁に行った場合。
- 正当な理由が無いのに転勤や部署異動を拒否した場合
- ただし実際には転勤や異動を拒否した従業員に対しては懲戒解雇にする前に退職勧奨することが多い。
- また、元々地域限定採用だった従業員を無理やり転勤させるのは違法とされる。
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退職勧奨(退職勧告)…解雇相当の理由がある場合に対象の従業員に対して「辞めてくれないか」と促すものだが、解雇と異なり強制力は無い。