箱根登山鉄道
はこねとざんてつどう
本項では
- 箱根登山鉄道(初代)→小田急箱根ホールディングス(2004年持株会社化)→小田急箱根(組織再編により2024年吸収合併)
- 箱根登山鉄道(2代目、2004年分社化)→小田急箱根(組織再編により2024年吸収合併)
について解説する。
神奈川県小田原市に本社を置き、小田原駅以西を走る鉄道・ケーブルカー・ロープウェイ
- 「箱根登山電車」
- 「箱根登山ケーブルカー」
- 「箱根ロープウェイ」
…などを運営している、小田急電鉄を始めとする「小田急グループ」傘下の私鉄。「箱根登山鉄道」の初代法人格は2004年10月に持株会社「小田急箱根ホールディングス」へ移行しており、以降は2代目法人格により運営。
小田原駅~箱根湯本駅間は現在小田急の車両のみで運用されており、実質小田急小田原線の支線のような扱い。
箱根湯本駅~強羅駅間は本格的な山岳路線となり、自社の2、3両の短い編成の車両のみで運行。途中スイッチバックが数カ所存在し、停車のたびに運転士と車掌がホームを歩いて交代する。
通常のレールと車両のみを用いる「粘着式鉄道」としては日本で最も急な勾配(80パーミル)であり、同社車両の3両編成であれば編成の両端で高低差が3,6mにもなる。
- 箱根登山電車と小田急線の線路の幅が異なるため、かつては小田原駅〜箱根湯本駅間は双方の車両が走行可能な3本のレールが敷設された「3線軌条」であった。車両規格の都合で車両とホームの間に隙間ができてしまうことが「交通バリアフリー法に抵触する」可能性があったため、2006年に登山電車の小田原乗り入れが廃止、小田原駅~入生田駅間で標準軌に対応する線路が取り除かれた。ただし車庫が入生田にあるため、回送列車のみであるが入生田駅~箱根湯本駅間は3線軌条を使用している。
- かつては国府津駅前から箱根湯本駅までの軌道線(路面電車)があったが、東海道本線の新線開通や小田原駅~箱根湯本駅間の鉄道線への変更などにより廃止(1956年)になっている。
- また、グループ会社の箱根登山バスがバス事業を行っている。系列の路線バスは静岡県内でも走っていたが、箱根へ行く路線を除いて東海バスへ車両ごと譲渡。その際一時的ではあるが車両塗装はそのままで社名だけ書き換えられた。
- 2019年10月の台風19号で甚大な被害を受け、鉄橋が流出するなどの事態になった。同月24日に比較的被害軽微だった小田原駅~箱根湯本駅間は復旧し、翌年2020年7月23日に箱根湯本駅~強羅駅間の運転を再開させた。
- 2024年4月1日付けで経営合理化のための組織再編を行い、持株会社「小田急箱根ホールディングス」、芦ノ湖の観光船を運営する「箱根観光船」、箱根地区の関連施設を運営する「箱根施設開発」と合併し、小田急グループ傘下のまま会社法人は「小田急箱根」に改称。「箱根登山鉄道」は愛称・ブランドとして残すことに。
鉄道線(小田急車乗り入れ区間/箱根登山電車)
駅番号 | 駅名 | 乗り換えや説明など |
---|---|---|
OH47 | 小田原 | 鉄道線の始点駅。小田急線と同じ改札口を共有している。小田原線、東海道本線、伊豆箱根鉄道大雄山線乗り換え。小田原市街を通って箱根方面へ行くバスも出ている。 |
OH48 | 箱根板橋 | 往時の木造駅舎が今なお現役で使用されている。駅舎と反対側に使用されていないホームがあるが、これは強羅方面の車両が登山電車の車両の場合、進行方向右側のホームと車両の間が30cm程空いていたため対策として左側にホームを新設したためである。後述の箱根湯本での分断により不要となったため現在は閉鎖されている。 |
OH49 | 風祭 | 2007年までは、ホームが登山電車分の長さしかなかったため、小田急車両の停車時は駅員・車掌が非常用ドアコックで箱根湯本寄り1号車のドアを手動で開閉する光景が見られた。現在は20m車4両分のホームが用意されている。 |
OH50 | 入生田 | 後述の通り、入生田から箱根湯本間は現在でも3線軌条が残されている。 |
OH51 | 箱根湯本 |
|
OH52 | 塔ノ沢 | 両側をトンネルに挟まれた駅で、ホームに銭洗弁天を祭る祠があることでも有名。この駅を出たすぐのトンネルを抜けると有名な出山橋梁となる。塔之澤(塔ノ沢)の集落からは自動車が通れない山道を登った先にあるため、利用者は少ない。 |
出山信号場 | 本路線の有名な撮影ポイントである出山橋梁を見下ろす位置にある信号場。スイッチバック用の停車場なので乗客の乗り降りは出来ない。 | |
OH53 | 大平台 | 大平台の集落の中にある。スイッチバック用の施設を持つ駅で、スイッチバックの光景をホームから観察できる唯一の駅である。 |
上大平台信号場 | 大平台の集落の上端近くにある。スイッチバック用の停車場なので乗客の乗り降りは出来ない。 | |
仙人台信号場 | 列車交換用の信号場(スイッチバック用ではない)。元々駅として使われていたという説も有るが詳細不明。 | |
OH54 | 宮ノ下 | 宮ノ下の集落の上にあり、集落へは坂を下りていく。明治開業の和洋折衷建築が有名な富士屋ホテルの最寄り駅である。 |
OH55 | 小涌谷 | この駅の近くにある国道1号の踏切で、箱根駅伝の際に選手の通過を優先して電車を停止させる光景が有名。元箱根・箱根町方面へのバス停が駅のすぐ近くにあるほか、小涌谷温泉とその中心にある箱根小涌園(温泉施設ユネッサンで知られる)は当駅が最寄り駅。 |
OH56 | 彫刻の森 | 元々は「二ノ平」という駅名であったが、1972年の箱根彫刻の森美術館の開館とともに駅名が改められた。 |
OH57 | 強羅 | 鉄道線の終点駅であり、ケーブルカー(鋼索線)への乗り換え駅。標高は553m。駅舎は関東の駅百選に選ばれている。 |
鋼索線(箱根登山ケーブルカー)
以下は箱根湯本~強羅間で旅客運用にあたっている車両。
小田原〜箱根湯本間は特急ロマンスカー現役全車種が乗り入れるほか、各駅停車の車両に小田急1000形4両編成が充当されている。
モハ1形(101~107)
湯本~強羅の開通に備えてアメリカ合衆国から基礎部分を輸入した日本国内で組み立てられた車両で、登場時の形式はチキ1形(チホウテツドウ線用キャクシャの意味)であった。チキ1号からチキ7号までの7両が製造されたが、暴走事故を起こして転落・大破した5号を除いて1950年に車体が更新され番号も100を足した現在のものへ変更された。その後1952年に形式が現在のモハ1形へ改称されている。
元々は両運転台車であったが、輸送力増強のために片運転台の車両による2両編成へと改造され、多客時はモハ2形1両を増結して運用される。
2019年7月に最後まで釣掛式で残った103号-107号が廃車された。104号-106号の1編成2両のみが現役。
モハ2形(108~112)
こちらはスイスから輸入した機器を使用していて、登場時の形式はチキ2形であった。1956年から1958年にかけて車体を乗せ換えた108~110と、当初より新造した鋼製車体を採用した111・112がいたが、基本的な見た目や性能等に変化はない。
両運転台車両であり、基本2両編成を組むか1両をモハ1形の編成に連結して運用されることもある。
108号車のみ現役。
1000形(ベルニナ)
1981年ならびに1984年に新製された車両で、「ベルニナ」の愛称がつけられている。1982年には、鉄道友の会からブルーリボン賞を受賞した。
元々は2両編成であったが、2004年の冷房化改造時に電源供給のため2000形の中間車2200形を組み込み、3両編成に組み替えられた。
現在B1編成とB2編成の2編成が運用中であり、B2編成は2200形を含めて登場時の塗装へ復刻されている。
2000形(サンモリッツ)
1989年から導入された車両で、「サンモリッツ」の愛称がつけられている。
当初は2両編成であったが、1993年に中間車2200形が追加されて3両編成になり、さらに2004年に1000形に中間車2200形を挿入し組み替えたため、S1編成とS2編成が2両編成、S3編成が3両編成で運用されている。2両編成のものは3000形と連結が可能。
予定では更新工事で3000形に合わせたVVVFインバータ制御化や、冷房装置の搭載位置変更が見込まれていたが、それらの施工は見送られて更新された模様。
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