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概要編集

自家用車の普及により、移動手段が車中心になった社会を指す。

かつて自動車は上流階級の乗り物であり、庶民には手の届かないものであったが、ヘンリー・フォードが自動車の量産化に成功したことで庶民にも自動車が普及し、それまで主流だった馬車を瞬く間に駆逐していった。


現在ほとんどの国において自動車が主流となっているが、例としてアメリカ合衆国やカナダのアーミッシュと呼ばれるドイツ系移民の宗教集団は教義や信念などの理由であえて馬車を使い続けているなど、完全に馬車が地上から消えた訳では無い。


アメリカ合衆国編集

20世紀初頭、全米の大都市にはくまなく路面電車が敷設され、大都市の近郊には「インターアーバン」と呼ばれる鉄道網が整備されていたが、1920年代から50年代にかけて、GMや石油関連企業が出資したナショナル・シティ・ラインズ社が全米各地のインターアーバンや路面電車の会社を買収し、これらの路線は次々と廃止されていった(アメリカ路面電車スキャンダル)。 また1950年代になると地方のハイウェイ(現在の日本でいう国道バイパス)の整備が進んだことから、細々と生き残っていたインターアーバンも力尽きて消え去っていった。この時期には日本からも視察団が盛んに訪れ漠然とした車社会への憧れが生じた。


1970年代までには米国の旅客鉄道は近郊交通機関、および都市間交通機関としてほとんど機能していない状態になり、全米の多くの都市のダウンタウン(中心市街地)は荒廃。「アメリカで車なしで過ごせるのはニューヨークサンフランシスコぐらい」とまで言われる状態になった。なお、アメリカの地下鉄は薬物中毒者の巣窟と形容される等日本のそれと比べても治安が非常に悪く、結局これらの大都市でも貧困層以外は自家用車頼りという状況である。しかしながらスラム化などによるあまりの荒廃ぶりに放置が出来なくなり、1980年代になると都心部の再開発に合わせてLRTの整備が図られるなどの動きがみられるが、アメリカ人から見た公共交通機関の印象の悪さ等から動きは鈍いものとなっており、2020年以降は中国肺炎世界的流行でさらに鈍化に拍車がかかっている。


日本編集

日本では高度経済成長期に入った1960年代に本格的なモータリゼーションが到来、比較的廉価な車、いわゆる「大衆車」の量産が開始され60年代後半から70年代にかけて一般家庭にも車が普及するようになる。しかし廉価とはいえやはり普通の買い物に比べると十分に高価だった為、この時点での自家用車としての車の普及はある程度収入のある壮年男性、しかも家庭を持つ一家の主から始まった。夫や父の運転する車でレジャーに出かけることが憧れの的となり、自動車メーカーもファミリー層に向けた宣伝広告を行った。このような背景もあり当時はまだ車は「一家に一台」というレベルであり、主に女性を中心に運転免許を取得しなかった人も多かった(この時免許を取らなかった人々が現代になって高齢になりいわゆる交通弱者と化している事も多い)。並行してこれまで劣悪だった道路網の整備が急速に進んだ。自家用車の保有が一般化した1970年代に入ると、元々公共交通機関が貧弱だった地域では一気に車社会化が進行して、採算が取れなくなった地方のローカル線中小私鉄路線バスは瞬く間に駆逐されていった。中には行政・警察から道路整備による踏切の解消などを名目にした立体交差化などを受けて消えた鉄道もあったという。さらに大都市でも慢性的な大渋滞によってもはや自動車交通の邪魔者でしかない路面電車の撤去が強力に進められた。


また、国鉄も長らく「汽車ダイヤ」と呼ばれる長距離列車に重点を置いたダイヤ設定をしており、東京・京阪神を除けば大都市周辺でも近距離移動には注力していなかった(名古屋市内でさえ当時の東海道線普通快速が毎時1本ずつという体たらくだった)。パークアンドライド(自宅から最寄りの駅や停留所、目的地の手前まで自動車で行って駐車し、そこから公共交通機関を利用して目的地まで移動する方法)という発想もなかった。


1980年代には国鉄及びJR赤字路線の廃止を進め、並行して路線バスも、不採算路線の廃止や都市間路線の高速バス化が大規模に進行したため、公共交通機関そのものが消滅した「交通空白域」が全国至る所に発生した。本数が少なく混雑する鉄道に頼るメリットが全くなくなったのである。


さらには1990年代に入ると「大店法」などの規制の緩和から地方都市郊外にショッピングモール、ロードサイド店舗が増殖し、商業エリアが分散した。相対的に中心市街地の商業施設はボロい、遠い、高い、そもそも駐車場が無いから行けない、駐車場あっても狭いし料金取るから嫌という存在になってしまい、全国的にシャッター通りや潰れる百貨店が続出して、再開発すらされずに廃墟化した建物が放置されたままの駅前が出現するほど、荒廃が止まらない状況に陥っている。


当然ながら通院や買い物、通学の困難化など、日常生活そのものまで支障をきたすようになり、さらに過疎化が進行する悪循環になっている。自動車・バイク免許取得年齢に達しない小・中学生は、親にロードサイドや鉄道駅まで送ってもらわなければ何事もできないという生活を余儀なくされる。また過疎化による税収の減少もあって、民間のバス路線への補助金は年々重荷になりつつあり、さらにコミュニティバスの運行を請け負う事業者の確保すらままならないという。なお、コミュニティバスが本格化するのは2000年代のことであるが、その大半は民間のバス路線撤退による交通弱者対策が理由である。また2000年代には痴漢・痴漢冤罪が鉄道のイメージを悪化させた。


このような状況が続く中有効な手立てを打てない行政や政治家などに対し「お偉いさんは秘書あたりが運転するかタクシーに乗るか都心に移り住めばいいだけなので公共交通支援には関心を示さない」「自家用車に対しても未だに「車=贅沢品」と思っているのか高額な税金をかけ続けている」「日本の政治家は根本的に封建時代同様の発想で移動の自由を保証するという概念は無いものと思われる」といった(その主張が妥当かどうかは別として)怨嗟の声をあげる人々も居るようである。逆に本数の碌にないローカル線を維持しようとする行為も税金の無駄なのだが。ちなみに自動車には消費税のほかに自動車税や重量税、環境性能割といった税金がかかっており、ガソリンにも様々な税金がかかっている。これは多重課税という立派な憲法違反である。さらに13年間大切に乗るだけで15%余計に取られるというおまけ付きである。クラシックカーをはじめ古い車を大切にしている人もいる中で古い車に乗っているだけで税金を余計に取るという行為が悪政であることは言うまでもない。悪い政治家に搾取されないためにも我々は選挙に行く必要があるのである。


中には「あんな辺境の土地に住んで何のメリットがある」「交通網が発達した都市部に移り住めばいいじゃないか」という声も聞こえてくるが、都市部への一極集中は様々な問題を生むし、自分の生まれた土地に愛着を持っている人もいる。「都市部に強制的に移住させろ」との声も上がっているが、21世紀の現代で強制移住政策なんぞ中国ロシアのような共産主義の独裁国がなすことであり、日本のような資本主義の民主国家がなすことではない。


ちなみに自家用車への依存は何も公共交通機関の乏しい田舎や地方都市に限った事ではなく、三大都市やその周辺の郊外(所謂ニュータウン)などでも見られる。2020年以降、中国肺炎の流行でテレワークが普及し、外出自粛が呼びかけられたことで旅行に行く人がへったこと、所謂3密を避けるのに自家用車が都合がいいことからそれらの地域でも、赤字による経営難に陥る事業者が続出、さらに2024年問題などによる乗務員の人材難などの問題から路線バスの減便や廃止が相次いでおり、また上記のように大手私鉄ですら減便・減車を進めた結果として「不便になった電車とバスを乗り継ぐより、自家用車で直接目的地に向かう方が早くて便利」なケースが増えているからである。


韓国編集

ソウル市中心部などの都市部では地下鉄などの公共交通機関が発達しているが、運転免許取得の難易度が低いこと、平均収入がそれなりに高いこと、車庫証明が不要なこと、税金が安いことから車を所有するハードルが低いため、都市部でも車を所有する人が多い。


車の台数に対し駐車場の数が追いついていないため、路上駐車が当たり前のように行われており、車を出したいのに路駐してある車が邪魔で動かせないといった状況も出てくる。そういった状況に備えてフロントガラスに車の持ち主の電話番号が見えるように書かれており、車をどけてほしい場合は持ち主に連絡して動かしてもらうのが通例となっている。


韓国は有事に備えて道路を滑走路として利用できるように作られており、国土面積の割に道路が広い。そのため、アメリカと同様大きい車が人気である。


関連タグ編集

軽自動車 車社会の地方では主役的存在と言われる。田舎と呼称されるような地域は狭い道も多く、軽自動車2台がすれ違うのにやっと、或いは軽自動車一台しか通れないという道も少なくない。また、普通乗用車と比べ燃費や税金等、維持費が比較的安く抑えられると言う面もある。


シャッター通り スプロール現象 ドーナツ化現象 郊外 渋滞 交通事故


公共交通機関 路線バス ローカル線 中小私鉄 特定地方交通線


中国肺炎 中国が広めた新型コロナウイルスによる感染症。2019年11月に中国武漢にて端を発し2020年から世界的に流行、2024年10月現在でも往時ほどの危険性は無くなったと言われているが感染者が頻出している。公共交通機関においても影響は深刻であり一時期は一部機関が壊滅寸前になるほどのダメージを被った。

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