概要
大韓民国の首都で、東アジアにおけるメトロポリスの一つでもある。大韓帝国時代は漢城と称し、大日本帝国時代は京城と称していた。戦後の独立の際に、京畿道から分離して同国唯一の「特別市」となった。
あまり知られていないが、首都でありながら朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国境(38度線)がかなり近い場所にある(約40km)ため、北朝鮮からミサイル発射実験や核実験を予告される度、市内は日本以上に緊迫した状態になる。
名称
李氏朝鮮・大韓帝国の首都名は漢城(府)、大日本帝国の朝鮮総督府所在地名は京城(府)であったが、韓国において古代から朝鮮語の「ソウル/서울」が国民の間では使われており(日本語で言えばみやこ)、独立後は朝鮮語の「ソウル」となった。そのため、日本の地図ではカタカナで書かれている(中国では同音に近い首爾が使われている)。
しかし、便宜上鉄道路線などには京の字が使われる(例、京釜線)。
歴史
3世紀に邪馬台国が使者を派遣したとされる帯方郡は、現在のソウルにあったとする説がある。
記録に残る限り、ソウルが最初に首都となったのは百済の慰礼城である。「三国史記」によると紀元前18年に初代温祚王が建設したとされるが、12世紀に書かれた歴史書なので信頼性が低いともいわれる。とはいえ遅くとも4世紀には百済が存在し、慰礼に都があったというのが通説となっている。しかし475年には高句麗に包囲されて熊津(忠清南道公州市)に遷都し、慰礼を手放すこととなった。
その後半島を統一した新羅は全国の地名を縁起の良い漢字2文字に変えさせたため、慰礼も漢陽に改称された。だが新羅は百済の敵国だった故か、漢陽を重視しなかった。
新羅が滅んで高麗が成立すると、漢陽は風水の良さと交通の利便性が評価されて南京(副首都)に指定され、重要都市の地位を取り戻した。
高麗を滅ぼして成立した李氏朝鮮は1392年に漢陽に遷都して漢城と改称し、その後数百年にもわたって朝鮮半島の中心地とした。
日本統治時代には京城に改称された。鉄道網が整備されたことで急速に成長し、路面電車や百貨店、朝鮮唯一の帝国大学が建設された。
1945年の終戦後は「みやこ」を意味するソウルに改称された。過密化が深刻になったことを受け、1962年に周辺の村を編入する大合併が行われ、1970年代にはその合併で編入した場所に副都心として江南が造成された。
一極集中
韓国は日本以上に首都一極集中が進んでおり、2024年時点で全人口の過半数がソウル首都圏(ソウル、仁川、京畿道)に住んでいる。「ソウル共和国」という言葉があるほど、ソウルはあらゆる面で韓国の中心である。
ソウルには韓国の大企業のほとんどが集中しており、主要財閥のうち首都圏に本社がないのは現代重工業(蔚山)くらいである。そのため就活生はソウルの企業を好むようになり、就職したい地域の南限を示す南方限界線という用語までできてしまった。
またソウルには主要大学のほとんどが集中しており、「インソウル大学」「イン首都圏大学」が難関大学の代名詞となるほどである。これはかつて政府が首都圏への大学新設を制限した結果、大学が不足したことで難易度が上がったからといわれており、一極集中を防ぐ政策が裏目に出る形となってしまった。
一極集中を是正するべく政府は行政機関の地方移転を進めており、1980年代には大田の大徳研究団地に国の研究機関が移転し、2000年代には世宗特別自治市を建設して中央省庁の大半が移転した。だが以後もソウルの人口は増え続けているため、政策の効果は限定的といわれている。
交通
航空
ソウルの空港は仁川国際空港・金浦国際空港の2か所があり、基本的に国際線は仁川、国内線は金浦を発着する。ただし金浦からも羽田、関西、北京、上海、台北などの近距離国際線が運航されている。
鉄道
長距離路線
高速鉄道KTX・SRTをはじめ全国に向かう列車が発着している(KORAILの項も参照)。主なターミナル駅は以下の4つ。
都市鉄道
ソウル首都圏には地下鉄・KORAILの通勤路線などが張り巡らせている。これらはまとめて首都圏電鉄と呼ばれ、運営会社に関わらず運賃制度は共通である。そのため地下鉄からKORAILなどに乗り換える際も改札口を通る必要がない。また全路線で交通系ICカード「T-money」が利用できる。
バス
市外バス(高速バス)
韓国は日本以上に高速バスが活躍している。バスターミナルは3箇所あり、方面別ではなく運行会社別に分かれている。
- ソウル高速バスターミナル(江南ターミナル)
- 東ソウル総合ターミナル
- ソウル南部バスターミナル
正確には、江南ターミナルは京釜線ターミナル(慶尚道・大邱・釜山・蔚山・江原道方面)とセントラルシティ(全羅道・光州方面)が隣接するという形である。なお忠清道方面は両方のターミナルを発着する。
市内バス(一般路線バス)
韓国では路線バスのことを市内バスと呼ぶが、その名に反してソウル市外に向かう路線も多く、高速道路を経由するバスも大量に運行されている。塗装は運行会社に関わらず共通で、種別ごとに異なる色が塗られている。
- 広域バス(赤)
- 幹線バス(青)
- 支線バス(黄緑)
- マウルバス(黄緑。コミュニティバスに相当)
- 循環バス(黄)
なおソウルには京畿道、仁川広域市の市内バスも乗り入れている。種別名や塗装が微妙に異なっているが、基本的な構成はほぼ同じである。また、T-moneyはソウル首都圏の全てのバスで利用可能。