概要
京王3000系は、1962年に井の頭線向けに導入された京王初のオールステンレス車。東急7000系(初代)と同様の米国バッド社の工法で製造されたオールステンレス車黎明期の車両で、同世代の車両には南海6000系がいる。
5両編成29本・総勢145両が製造されたが、製造期間が1987年まで、また事故廃車の代替1両を入れれば1991年までの長きに渡ったため、大小様々な変更が加えられている。ただし3ドア18m車である点、先頭車が前面2枚窓の非貫通構造(湘南顔:新造時)である点は全編成共通。メーカーは全車 東急車輛製造。
先頭車の前面は合計で7色のバリエーションがあり、従来車の車体全体が緑一辺倒のものから打って変わってポップな印象で利用者に好評を博した。
この部分は当初繊維強化プラスチック(FRP)製で、車両本体の材質と合わせて「ステンプラカー」と呼ばれていたが、後述の更新工事を受けた車両は鋼製に変更されている。
前期車
第1~15編成まで。このグループは4両固定編成で登場し、後に輸送力の増強に伴いデハ3100形を1両組み込んで5両編成化されている。
このうち第1・2編成の4両編成2本は、従来の車両と同じく裾絞りなし(車体幅2700mm)・片開きドアの車両として登場。第3編成より裾絞りあり(車体幅2800mm)・両開きドアへ設計変更された。5両編成化で組み込まれた中間車・デハ3100形はこれに準じた車体で製造されたため、第1・2編成は1両だけ車体幅の異なる状態となった。
第13編成までは非冷房で落成しのち冷房改造、第14・15編成は新製冷房車。
制御方式はデハ3100形のみ界磁チョッパ制御、残りが抵抗制御で製造されたが、第10~15編成は改造で界磁チョッパ制御となった。
このグループはリニューアル工事の対象外となったためほぼ原型の外観のまま引退し、1000系(0番台)と代替された。
後期車
1975年より製造された第16編成以降のグループ。前期車はデハ3100形を除き抵抗制御であったが、こちらは編成丸ごと界磁チョッパ制御に揃えられた。第20編成からは外観を殆ど変えずに軽量ステンレス車体を採用。
1990年代中頃からリニューアル工事を実施。先頭車前面はFRPから鋼製へ変更され、前面窓が側面まで回り込むような意匠に変わった。
このグループは1000系(20番台)によって代替され、2011年12月をもって営業運転を終了した。
中小私鉄への移籍
京王が退役車両の中古流通に熱心なことに加え中型車両・ステンレス製と地方の私鉄が好む条件を満たしてるため多くの車両が売却された。これらの車両も移籍してから時間が経過し保守部品の枯渇などもあり順次置換中又は置換計画が進行しており在籍数は減少しつつある。
北陸鉄道8000系
1996年、北鉄金沢駅地下化および直流1500V昇圧を控えていた浅野川線向けに導入。第1~5編成の先頭車が移籍した。裾絞りなし・片開きドアの第1・2編成は「8800番台」、裾絞りあり・両開きドアの第3~5編成は「8900番台」。
京王3000系そのものは先頭車がモーターなしであったため、電動車化とパンタグラフの搭載など、2両編成で運転するための改造が行われている。
旧型部品を使用していることから予備部品の確保が問題となり、北陸鉄道ではその代替車両として元東京メトロ03系の改造投入を予定している。現在は置き換えが進み8801編成1本のみ残るが稼働率は新車投入前よりも下がってる。
北陸鉄道7700系
2006年、石川線向けに第11編成の先頭車を改造し導入。こちらは直流600V電化であるため、機器類・台車は石川線向け7000系(元・初代 東急7000系)と同一のものを取り付けた。
上毛電気鉄道700型
上毛電気鉄道では従来から東武鉄道の中古車を使用してきたが、非冷房かつ老朽化が深刻な300型・350型(元・東武3000系)の代替車両として当系列を抜擢。1998年から2000年にかけて2両編成8本を導入した。715編成~717編成の3本は中間車からの改造。
岳南鉄道(岳南電車)7000形・8000形
車体構造の関係で冷房改造ができない5000系(元・初代東急5000系)の代替用として導入。同系投入でワンマン運転も開始された。
いずれも中間車を先頭車化改造して誕生した。前面デザインはオリジナルの3000系に倣っているが、運転台下の方向幕が無い、テールライトが長方形であるなど僅かに差異が見られる。
- 1996年導入の7000形は、中間電動車を両運転台化改造した単行電車である。7001号~7003号の3両が登場した。7002号車は老朽化により、9000形(元・初代京王5000系)の導入と入れ替わりに2018年に運用離脱。
- 2002年導入の8000形は中間車を改造した2両固定編成で、1編成のみ登場した。7000形との識別のため、前面は橙から緑へ変更、運転台機器は京王6000系のワンハンドルマスコン(廃車発生品)を活用している。
松本電気鉄道(アルピコ交通)3000系
車体構造の関係で冷房改造ができない5000系(元・初代東急5000系)の代替用として、1999年~2000年に2両編成4本を導入。第6~9編成の中間車を先頭車化改造したが、前面窓は京王3000系リニューアル車と同等のものに変更し、運転台機器は京王6000系のワンハンドルマスコン(廃車発生品)を活用している。こちらも老朽化が進むこともあり現在は元東武鉄道の20000系を改造した中古車両へ順次置換中。
伊予鉄道3000系
2009年から2012年にかけて、軽量ステンレス車体を採用した第20編成以降を改造。3両編成10本を投入し700系(元・初代京王5000系)の一部と800系(元・京王2010系)を置き換えた。
伊予鉄道は直流600V・750Vの複電圧電化であったため、機器類を取り替え。IGBT素子を使用したVVVFインバータ制御へ変更された。