会社概要
富士急行グループの一社で、岳南鉄道の鉄道部門を2013年に分社化して設立。
路線自体は1949年に開業した路線を引き継いでおり、旅客営業については岳南鉄道時代の状態を維持している。
かつては国鉄(後にJR)を経由して貨物列車を走らせていたが、2012年にJR貨物の合理化につられる形で貨物輸送が終了。
これによる大幅な収入減が、分社化の契機となっている。
また、貨物輸送が盛んだったころの名残で、途中駅には広大な空き地や使われていない線路が未だに残っている。
昭和時代には吉原本町駅から入山瀬駅への支線や、岳南江尾駅から沼津駅への延伸も計画されていたが、実現することはなかった。
沼津駅の東側にある「3つ目ガード」は、岳南鉄道が通る予定で建設されたといわれている。
夜間の駅舎や車両の光景、沿線の工場夜景、車内から望む景観などが広く紹介された事から、日本夜景遺産の「施設型夜景遺産」に認定されている。
これを売りにして、日没後に工場夜景を観賞するためのツアー列車「夜景電車」を定期的に運行している。
沿線は概ね工場や住宅地で占めており、観光施設や名所には恵まれていないが、一応全ての駅から富士山が見えることを売りにしている。
先述の貨物輸送終了後は慢性的な赤字経営であり、自力での存続が出来ないことから富士市から補助金を受けて運営されている。
このため、2010年代後半以降は収益改善のためにイベントの企画に熱心で、鉄道ファンへのアピールを積極的に行っている。
中には吉原駅で一夜を明かす「ナイトステイホーム」、夜行列車を疑似体験できる「岳南夜行」、終電後に線路を歩いて探検する「岳鉄ナイトウォーク」、ギタリストのケリーサイモンによる生演奏を聴きながら走行する「超絶メタルトレイン」など奇抜なものも多い。
2021年12月~2022年2月の土日(合計16日)は、7000形25週間記念として、全線運賃無料となった他、ウォーキングイベントやクイズラリーなどが行われた。
岳南線
全区間合わせて9.2km(片道21分)で、静岡県富士市内で完結する。
駅名 | 読み | 接続路線 | 備考 |
---|---|---|---|
吉原駅 | よしわら | JR東海東海道本線 | 終日有人駅 |
ジヤトコ前駅 | じゃとこまえ | ||
吉原本町駅 | よしわらほんちょう | 商店街にある 平日6:45~11:26・15:02~18:00と土曜 7:35~15:37は有人駅 | |
本吉原駅 | ほんよしわら | 本社最寄り駅 | |
岳南原田駅 | がくなんはらだ | 駅舎に蕎麦屋が入る | |
比奈駅 | ひな | 駅舎に模型屋が入る | |
岳南富士岡駅 | がくなんふじおか | 車両工場がある 平日6:54~8:43は有人駅 | |
須津駅 | すど | ||
神谷駅 | かみや | ||
岳南江尾駅 | がくなんえのお | ※東田子の浦駅まで徒歩40分 |
車両
現役車両
全ての車両が元京王電鉄の中古車。車体も18m級とやや短い車両。
中古車両(20m級2両編成)を導入し、2027年2月に8000形、2028年2月にモハ7003を置き換える計画がある。
7000形
元京王3000系で、中間電動車を改造して両運転台化した単行車である。
塗装はインターナショナルオレンジで、これは工場の煙突や東京タワーなどと同じ色である。
2016年に、モハ7001が京王井の頭線をイメージした塗装(水色)になった。
2018年7月にモハ7002が老朽化により引退し、現在は2両が在籍。
モハ7002とモハ7003は連結しての運用もできたが、モハ7002が引退したため、現在は行うことは無い。
なお、モハ7002は岳南富士岡駅側線に留置されており、現役車両の部品取りとして使用されている。(一部のパーツは取り外され販売された。)
8000形
2002年11月16日より運行開始した車両。
7000形同様京王3000系の改造車であるが、こちらはモハ8001+クハ8101の2両編成。
1本が投入され、初めは朝夕のラッシュ時を中心に使用された。近年は日中の運用に入ることもあり、1両室内灯を消して運行される夜景電車にも使われる。
ワンハンドルで緑色の塗装が特徴。がくちゃんかぐや富士号の愛称があり、ヘッドマークが貼られていた。
塗装はデビュー当時は明るい緑だったが、後の検査時に濃い色に変化している。2021年の検査でヘッドマークが撤去された。
2022年に11月12日に、導入20周年を記念してインターナショナルオレンジと白帯に塗装変更された。引退した5000形をイメージした塗り分けで、7000形とは少しデザインが異なる。
9000形
2018年11月より運行開始した車両。
元京王5000系(初代)→富士急行1000形(1206F)の譲渡車で、モハ9001+クハ9101の2両1編成が、前述のモハ7002の代替で導入された。
かつて所属した5000形に倣ったインターナショナルオレンジに白帯の塗装になっている。
セミクロスシート車両のため、「岳南夜行」などのイベント列車に多く使われている。
なお、行先表示器は富士急行時代の方向幕から板を差し込むタイプに変更されている。
引退車両(電気機関車)
2012年の貨物輸送終了に伴い運用終了し、全車が2015年頃に除籍されている。
その後は岳南富士岡駅側線にワム80000貨車2両と共に留置されていた。一部車両は2017年に売却先を募集したが買い手が現れず、処遇が不安視されていたが、2021年にはこれらを観光資源として再活用する方針に転換。車両と側線を整備し、同年8月21日より「がくてつ機関車ひろば」として展示・公開している。
ED29
現在の飯田線の一部であった豊川鉄道が1927年に導入したもの。日本車輌製。
1944年に鉄道省に編入され、1959年に国鉄から岳南鉄道に1号機が譲渡。
主に貨物輸送に使用され、1993年に引退。以降は予備車となるが復活することは無く、機器の一部をED50に供出していた。
ED50
上田電鉄の前身・上田交通が1928年に導入した凸型車体の機関車。川崎造船所製で、当時は同型機が西武鉄道や小田急電鉄にも存在した。
1940年に名古屋鉄道が購入し、1970年に岳南鉄道に1号機が譲渡された。
名古屋鉄道時代の名残で、車番はローマン字体で書かれている。
末期には入換機として運用され、貨物輸送最終日まで活躍した。
比奈駅にある鉄道模型店「フジドリームスタジオ501」は、本機が名前の由来となっている。
ED40
アルピコ交通の前身・松本電気鉄道がダム工事のために1965年に2両導入したもの。日本車輌製で、同社の電気機関車としては末期の作品である。
ダム工事終了後に不要となり、2号機と3号機が岳南鉄道に譲渡された。ちなみに1号機は欠番のため元々存在しない。
2号機は貨物輸送最終日まで活躍したが、3号機はその数日前に不運にも故障し、一足先に引退している。
引退車両(電車)
5000形
1981年に東急5000形(通称:青ガエル)を2両×4編成導入した。中間車の改造だが、オリジナルの先頭部に近い形状とされた(通過標識灯がない)。インターナショナルオレンジに塗られ、赤ガエルの愛称で親しまれた。末期は5001編成が青ガエルにリバイバル。1997年に引退したが、長らく留置線に放置され、2008年頃に解体された。
旧形車両
小田急電鉄、西武鉄道、駿豆鉄道などの中古車両が多く、1両単位で車両を置き換えていたため、車両がバラバラで、車両番号や台車も混ざりあっていた。
1957年からは、木造車両の部品を流用し、日車標準型とよばれる車体を載せた、モハ1100形が登場し、新造車両6両と、小田急の車両を改造した2両が1981年まで活躍していた。
このうちモハ1105は試作ステンレス車体で大井川鐵道に譲渡され、1996年まで活躍した。(2015年解体)
一部車両は比奈駅で倉庫にされ、2011年まで残っていた。
その他
- 「岳ちゃん」という7000形をモチーフにしたキャラクターのTwitterがあり、エゴサーチで有名のようである。運用しているのは同社の若手社員とのこと。
- 2021年に7000形25周年を記念してクラウドファンディングを実施し、6月7日に目標達成。返礼として吉原駅の使わなくなった側線を整備し、運転体験に使用している。
- 吉原本町駅周辺の商店街には、富士市が誇るB級グルメ「つけナポリタン」を扱う店舗が複数存在し、この食事券をセットにした乗車券を販売している。
- 貨物輸送では突放(貨車を機関車で押して切り離し、貨車のみを惰性で走らせ入れ換え作業を行うこと)を行っており、その作業が間近で見れる私鉄として有名だった。
- 岳南富士岡駅と岳南江尾駅の近くの踏切は、現在では珍しくなった電鈴式踏切である。なお、後者は2021年冬頃に新しい踏切に交換されたが、引き続き電鈴式を保っている。(警告灯は新型になっている。)