愛知県の豊橋駅から、静岡県浜松市天竜区にある中部天竜駅を経て長野県の辰野駅を結ぶ、全長195.7kmの鉄道路線。
概要
この路線の前身は、以下の4つの会社の所有路線を戦時買収の際国有化し、電圧等を統合した「鉄道省飯田線」である。
- 豊橋駅 - 大海駅間を敷設し、国有化後名古屋鉄道に合併された豊川鉄道
- 大海駅 - 三河川合駅間を敷設していた豊川鉄道の系列会社であり同様に名古屋鉄道に合併された鳳来寺鉄道
- 三河川合駅 - 天竜峡駅間を敷設した電力会社を親会社とし、国有化後は「三信航空機器」となったが戦後解散した三信鉄道
- 当初「伊那電車軌道」として路面電車を運行していたが、大正時代に鉄道に変更し、その後南に路線を伸ばしたものの、国有化により解散した天竜峡 - 辰野間を敷設していた伊那電気鉄道
その後、運輸通信省、国鉄を経て、現在はJR東海管轄となっている。
元が私鉄路線且つ基本的に旅客営業を主としていた路線であるため、駅数が非常に多く、且つ駅区間が短いところが存在するのが特徴(最短駅間は0.6km)。特にルーツが路面電車である伊那谷ではこれが顕著で、短い駅間に加え、線形自体が河岸段丘の田切地形を上り下りし、沿線集落をカーブで繋ぐものとなっている。このため豊橋 - 辰野間を直通する普通列車で全線を走り抜くには、6 - 7時間を要する(直通列車があるだけマシであるが)。なお、ほとんどの列車は、辰野以遠の岡谷や上諏訪方面まで足を延ばしている。
豊川駅及び後述区間を除き途中駅で他路線と基本的には接続しない。以前は本長篠より鳳来寺山・海老などを経由して設楽町田口へ向かう田口鉄道が豊川鉄道及び鳳来寺鉄道と一体運営されていたが、この路線は買収されず、戦後豊橋鉄道が併合し、田口線としたものの、一体運営不能及び木材輸送のため集落より離れていたことによる不振、及び水害に伴い廃線となった。また、名古屋本線からの路線乗入をスムースにするための支線である「小坂井支線」が存在したが、これは豊川線全通に伴い不要となり、廃線となった。
このほか1942年に豊川海軍工廠への連絡路線として「西豊川支線」が開通したが、終戦に伴い工廠が閉鎖され利用客が減少したことに伴い、1956年に廃止となった。この線路は工廠跡地に出来た浜松工場豊川分工場引込線へ転用され、1963年に日本車輌へ払下げられ同社専用線として使用されている。
渡らずの鉄橋
昭和30年代、沿線に存在する天竜川への佐久間ダム建設のため佐久間 - 大嵐間の多くが水没することとなったため、その部分の路線を敷設し直している。その際、掘削中のトンネルが崩壊寸前になったため破棄し、川に「川を渡るため」ではなく「川沿いの斜面を回避するため」のカーブした橋を架橋したり、出口付近が崩壊し掛かったためトンネルをY字としたりしている。この橋は「渡らずの鉄橋」と呼ばれ名所となっている。
飯田線はほぼ全線でワンマン運行となっているが、この区間に関しては元々地盤が弱い上切り立った谷の上にレールが敷かれており、「1人では何かあった際に対応出来ない」ため車掌が乗務している。
またこの区間は秘境駅が多数あることでも知られており、秘境駅マニアにとって重宝されているのは言うまでもない。
名鉄との共用区間
豊橋 - 平井信号場間は名鉄名古屋本線との共用区間であるが、この区間にある船町・下地駅はあくまでもJR東海単独駅であり名鉄列車は停車しない。これは豊川鉄道が名鉄の源流の1つである愛知電気鉄道と共に敷設したためであるが、飯田線普通列車でもこの2駅を通過する列車が存在している。
共用区間の信号・電気・運行管理は現状では上下線共にJR東海が行っており、基本的に飯田線列車の運行が優先され、名鉄列車は1時間に最大6本に制限(2021年ダイヤ改正地点では昼 - 夜間にかけて急行・快特・特急が各2本)されており、制限速度も85km/h以下に抑えられている。これは愛知電気鉄道の豊橋延伸に際し、豊川鉄道と線路共用を行う協定が結ばれたことによるものであり、現在も下り線(南側)はJR東海、上り線(北側)は名鉄所有となっている。名鉄の普通列車が豊橋まで来ず1つ手前の伊奈駅止まりとなるのもこのためである。
JR東海からして見れば自社線路を使用されている名鉄や利用者に対して線路使用料を取りたい所であるが、戦前から続く歴史的経緯から行っていない。また、前述のようにJR東海が名鉄列車の豊橋乗入本数を制限出来る形となるため、同社にとってもメリットがあるといえる。
「究極超人あ~る」における飯田線
ゆうきまさみ原作の漫画『究極超人あ~る』の作中で、この路線は光画部の夏休み旅行の際によく登場する事は、読者には良く知られている所である。
また、ドラマCDやアニメで使用されている「飯田線のバラード(歌:山本正之)」は歌詞こそ「言い出せない」→「言い出せん」→「飯田線」というダジャレを使用しているが、切ない恋模様を描いた名曲なので、機会があったら是非聴いて欲しい。
「出て来るのはアニメの方で、漫画には一切言及が」と言われる方もおられようが、マンガでも豊橋(アニメと違うー)から秘境駅を巡りまくり飯田駅(アニメのじゃないい)へ至る間に、「天竜峡」なる「N県昇天峡」のような所が存在するので御容赦下され。
劇中ではJR東海色と初期塗装の2種類の119系が登場するが、本来非冷房だったはずの初期塗装の119系がAU75クーラーを搭載している場面があり、一部の鉄道オタクから作画ミスと指摘されたことがあった。当時の模型雑誌でジョーク的にグリーンマックス板キット時代の119系製品をベースに実際に制作した記事があったが、201系辺りと車体寸法は近似しているほかそもそも塗装が違うだけで実在する形態だったため思った程違和感はなかったそうである。
その他
飯田線内には「東上駅(愛知県豊川市)」が存在し、同じJR東海管内の太多線には「小泉駅(岐阜県多治見市)」が存在する。
関連イラスト
平成24年までの主力電車、119系。旧型国電を追い出すため作られ、30年後に213系などに置換えられた。一部は魔改造され福井にあるローカル線で走り続けている。
豊橋 - 飯田間には、特急「伊那路」も運行されている。
昭和58年に119系などへ置換えられるまでは、旧型国電宝庫としても有名であった。
現在運行中の車両
- 213系:119系置換用としてトイレを設置の上神領区から転属。元は関西本線で走っていた。
- 313系:1700・3000番台が運用されている。1700番台は115系(JR東海車)置換用として登場。そして、3000番台は119系置換用として神領区から転属して来た。以前は300番台も運行されていたが、119系定期運用離脱と同時に(原則として)飯田線運用から撤退した。
- 373系:特急「伊那路」として運用中。
- 211系(JR東日本車):中央東線・篠ノ井線から乗入れてくる。しかしオールロングシートのため、JR東海車と比べると見劣りしてしまう。ごく稀に八王子運用1000番台セミクロス車が入る場合あり。1999年までは豊橋 - 新城間にJR東海5000番台も運行されていたが313系300番台に置換えられた。
かつて使用された車両
- 119系:飯田線用に開発された近郊型電車。2012年に全廃。
- 115系(JR東日本車):中央東線・篠ノ井線から乗入れて来たが、2014年3月ダイヤ改正で211系へ置換えられた。また自社115系も静岡車両を用いて使用され 降雪地域を走るため主に1000番台が組まれたS編成がメインに使われ 検査時や晩年は東海道線用S編成または御殿場線、身延線B編成が使われた。2007年3月引退。
- 313系300番台:朝ラッシュ時応援運用(1999 - 2006年までは東海道本線直通特別快速)が豊橋 - 本長篠間で設定されていたが2012年3月の119系定期運用撤退と同時に飯田線運用を終了した。と思ったら213系事故長期離脱期間中に代走運用で姿を見せることがあった。
- 313系5300番台:2012年3 - 9月まで213系が事故で1編成運用を離脱しており、その代走として姿を見せていた。検査でこの編成が運用を外れると上記の300番台が代走していた。
- 313系2350番台:上記同様静岡からWパンタ、半自動ドア機能を生かして、飯田線へ遠征し代走したこともあり中央東線茅野駅まで入線したこともある。
- クモハ12:元クモヤ22形入替車。「ゲタ電号」として運用に就くことがあった。
- 113系:JR東海165系引退後に「さわやかウォーキング」臨時列車で姿を見せていた。
- 117系:臨時快速「ナイスホリデー天竜・奥三河」、「佐久間レールパーク号」などの臨時列車で姿を見せていた。
- 381系:臨時特急「ふれあい伊那路」で入線。パノラマグリーン車を連結した編成が入ることもあった。
- EF58122・157号機:「トロッコファミリー号」牽引機の他、霜取りや工臨などで運用されていた時期が存在。現在はJR東海自体が電気機関車運用を行っていないためこのようなことは行われない。
駅一覧
駅名 | 伊那路 | 快速 | みすず | 乗換路線 |
---|---|---|---|---|
豊橋 | ● | ● | ||
船町 | | | ↑ | 一部普通列車通過。 | |
下地 | | | ↑ | 一部普通列車通過。 | |
小坂井 | | | ● | ||
牛久保 | | | ● | ||
豊川 | ● | ● | 名鉄豊川線(豊川稲荷駅)TOICAエリアはここまで。 | |
三河一宮 | | | ● | ||
長山 | | | ● | ||
江島 | | | ● | ||
東上 | | | ● | ||
野田城 | | | ● | ||
新城 | ● | ● | ||
東新町 | | | ● | ||
茶臼山 | | | ● | ||
三河東郷 | | | ● | ||
大海 | | | ● | ||
鳥居 | | | ↑ | ||
長篠城 | | | ↑ | ||
本長篠 | ● | ● | ||
三河大野 | | | ● | ||
湯谷温泉 | ● | ● | ||
三河槙原 | | | ● | ||
柿平 | | | ↑ | 一部普通列車通過。 | |
三河川合 | | | ● | ||
池場 | | | ↑ | 一部普通列車通過。 | |
東栄 | | | ● | ||
出馬 | | | ↑ | 一部普通列車通過。上市場との駅間距離は0.6kmで最短 | |
上市場 | | | ↑ | 出馬との駅間距離は0.6kmで最短 | |
浦川 | | | ● | ||
早瀬 | | | ↑ | ||
下川井 | | | ↑ | ||
中部天竜 | ● | ● | ||
佐久間 | | | ● | ||
相月 | | | ↑ | ||
城西 | | | ● | ||
向市場 | | | ↑ | ||
水窪 | ● | ● | ||
大嵐 | | | ↑ | ||
小和田 | | | ↑ | ||
中井侍 | | | ↑ | ||
伊那小沢 | | | ● | ||
鶯巣 | | | ↑ | ||
平岡 | ● | ● | ||
為栗 | | | ● | 一部普通列車通過。ただし、朝の豊橋行快速は停車・ | |
温田 | ● | ● | ||
田本 | | | ● | 一部普通列車通過・ただし、朝の豊橋行快速は停車。 | |
門島 | | | ● | ||
唐笠 | | | ● | ||
金野 | | | ● | 一部普通列車通過。ただし、朝の豊橋行快速は停車。 | |
千代 | | | ● | 一部普通列車通過。ただし、朝の豊橋行快速は停車。 | |
天竜峡 | ● | ● | ||
川路 | | | |||
時又 | | | |||
駄科 | | | |||
毛賀 | | | |||
伊那八幡 | | | |||
下山村 | | | |||
鼎 | | | |||
切石 | | | |||
飯田 | ● | ● | ||
桜町 | ▲ | |||
伊那上郷 | ▲ | |||
元善光寺 | ● | |||
下市田 | | | |||
市田 | ● | |||
下平 | | | |||
山吹 | | | |||
伊那大島 | ● | |||
上片桐 | ● | |||
伊那田島 | | | |||
大沢(信) | | | |||
高遠原 | | | |||
七久保 | ● | |||
伊那本郷 | ▲ | |||
飯島 | ● | |||
田切 | | | |||
伊那福岡 | ● | |||
小町屋 | ● | |||
駒ヶ根 | ● | ● | ||
太田切 | ↓ | ▼ | ||
宮田 | ● | ● | ||
赤木 | ↓ | ▼ | ||
沢渡 | ● | ● | ||
下島 | ↓ | ▼ | ||
伊那市 | ● | ● | ||
北伊那 | ● | ● | ||
田畑 | ↓ | ▼ | ||
北殿 | ● | ● | ||
木ノ下 | ↓ | ● | ||
伊那松島 | ● | ● | ||
沢 | ● | ● | ||
羽場 | ● | ● | ||
伊那新町 | ● | ▼ | ||
宮木 | ↓ | ● | ||
辰野 | ● | ● | 中央本線 | |
川岸 | ● | ● | ||
岡谷 | ● | ● | 中央本線 |
関連動画
飯田線のバラード / 山本正之