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葛西敬之

かさいよしゆき

JR東海名誉会長。国鉄出身。平成期の政界に強い影響力を持つ財界人の一人とされる。
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1940年10月新潟県に生まれ、東京都で育つ。東京大学卒業後は国鉄へ入社し、分割民営化後はJR東海社長会長を経て現在は名誉会長を務めている。

概要

国鉄時代は松田昌士(のちJR東日本社長・会長)、井手正敬(のちJR西日本社長・会長)と並ぶ「国鉄改革3人組」の1人として知られ、国労社会党の反対を押し切って現在の形にJRが分割された背景には、当時の中曽根康弘政権との関係をてこにした「国鉄改革3人組」の暗躍があったとされる。

葛西に対するネット上の評価

ネット上(特に鉄道関連)において葛西は以下の通り最悪ともいえる評価を受けている。

JR東海社長に就任後はワンマン経営を推し進めたとされている。最新型の新幹線車両や新幹線専用の運行管理システムの積極的な導入を行う等東海道新幹線を徹底的に強化することで、大幅な増収増益を達成。一方、在来線に関しては車内サービスの簡略化や運転区間の短縮、旧体制の運行管理システムの影響による遅延などの影響で平均的に約5分から10分の遅れは当たり前という(これは未だに解消される見込みは無い)サービス水準の低下が目立ってしまい沿線住民からの評価は芳しいものではなかった(その結果としてマイカー通勤へ切り替わる利用者が多くなってしまう結果となった)

JR東海初代社長の須田寛とは対照的に政治志向が強く鉄道への思い入れに乏しい人物とされ(後述)、葛西が経営の実権を握っていた時代のJR東海は、JR他社や私鉄(名鉄近鉄)への敵対的な姿勢が目立ち、集客イベントや特別列車の設定も不熱心であった。「俺様」・「無味乾燥で面白味が乏しい」・「退屈」といった同社の経営姿勢の元凶として、沿線住民だけでなく鉄道ファンからも総じて嫌われる人物である。

また、国鉄労働組合など、労働組合に強硬な姿勢を取った中心人物であり、これについては評価は真っ二つに割れる。「労使関係を正常化し、サービスを向上させた」といった称賛から、「法令を無視した不当労働行為を行い、労働組合を弾圧した」といった非難まで存在する。

さらに東海地方の政経界との関係も最悪であり、むしろ中央政経界とのパイプが強かった。

ネット上の評価に対する異論

…と、葛西に対するイメージは最悪ともいえる評価であるが、実際は以下の通り誤認されているケースも散見されている。

政経界との不仲について

まず「葛西は東海地方の政経界と仲が悪く、嫌がらせの為に「のぞみ」を「名古屋飛ばし」を行なっていた」とあるが、まず「のぞみ」が設定された時の社長は須田である。葛西は副社長の立場で仮に嫌がらせが理由であれば須田によって阻止されている。実際は後述の理由により須田の認可のもとやむなく「名古屋飛ばし」が実施されたのである。

「のぞみ」が運行された当初、保線後に地面を固める機器が未発達であり、始発列車を使って地面を固めていたが、そのため安全上の理由から保線を実施した区間は徐行せざるを得なかった。一方『東京発6時の列車に乗れば午前9時からの大阪の会議に間に合う』というキャッチコピーで売り出していたため東京新大阪間2時間30分運行は絶対であったが、名古屋に停車した場合それが達成できなかった為の決断であったといえる(実際東海地方の政経界から抗議を受けた際に須田が説得に出向いている)。

しかし名古屋のマスメディアは先にリークされた結果として『名古屋飛ばし』のみを大々的な報道しJR東海バッシングを行なっていた。つまり名古屋のメディアリテラシーに問題があり、明らかな風評被害ともいえる。また、名古屋駅だけでなく京都駅も通過していたが、こちらは『そんな時間に観光客は乗らないから1本ぐらいいいだろう』ということで理解を示しており、反発していたのは名古屋の財界とメディアのみである。

なお、葛西が社長に就任した後の1997年に地面を固める機械が開発・導入され、それにより名古屋飛ばしは解消されており、葛西はむしろ東海地区の政経界に配慮した行動を行なっている(但しサンライズエクスプレスは未だに名古屋飛ばしは続いている)。

在来線軽視について

葛西を批判するネタとして在来線軽視がある。その代表例として「葛西は(のぞみ停車で確執のある)静岡地区でトイレ無しのロングシート車両を大量に入れて嫌がらせをしている」というものであるが全くの出鱈目である。

静岡新聞による流動調査において静岡地区の利用者は短区間の利用者が多く、出入りも激しいためクロスシートよりロングシートが適しているという地域に見合った施策を行なっていることが判明している。また静岡地区は同じ地域規模の仙台や広島と比較しても高頻度運転を行なっており、駅トイレも充実している。つまりトイレ無しに当たっても一旦駅で降りて用を足せばすぐに次の列車が来るのでロスはあまりなかったのである。

車両についても「葛西が社長に就任した373系はデッキがない低品質で(後に就任した)松本によってトイレ付の313系が導入された」という記述が散見されていたが、373系の導入が開始された1995年時点での社長は須田で313系の導入が開始された1999年時点での社長は葛西である。このように導入時の間違いが散見されている(そもそも373系は導入当初「165系を追い出した悪者」として過剰なバッシングを受けていたが、現在はそのバッシングも沈静化している)。

その他ATSに速度照査をつけたり(2005年に発生したJR福知山線脱線事故において速度照査の導入が遅れたJR西日本と比較し、マスコミから評価されている)285系電車を一部自社保有にしたりとむしろ在来線にも投資を行なっているのだが、何故かこれらは評価されず悪い部分ばかりクローズアップされている。

ちなみにJR西日本では数時間に一本しかこない線区にトイレ無しのキハ120系を導入したことが問題になったが、JR東海ほど叩かれていない(ただし、キハ120はのちにトイレ設置の改造が行われた)。

他社との仲悪について

よく槍玉に挙げられる例として「葛西の傲慢な態度で他の鉄道会社との仲が悪く、特にJR東日本と(私鉄の)名鉄は犬猿の仲の為に寝台列車廃止や在来線の直通運転が縮小された」とあるが、これについても信頼性が欠けるものとなっている。

まず鉄道は公共交通機関であり、険悪という感情だけで廃止や直通運転の廃止・縮小を決められるものではない。民営化後は車両乗入時に車両使用料や線路使用料など様々な費用が重くのしかかり、また安全面に関しても法律の厳格化でその分コストが増大。さらに全国共通の車両を製造していた国鉄と異なりその地域に見合った車両を各社製造するようになったが、これを他社に乗り入れるとするとそこを走らせるための設備追加やハンドル訓練が必要になってくる。このようにコストや手間が増大している状態で乗り入れのメリットが薄くなり、次第に縮小されているのは自然な流れになっていくであろう。

特に寝台列車については国鉄末期時代から慢性的な赤字であり、車両の老朽化による置き換えを実施しようにもどの会社がどれだけ負担するかで大変手間がかかる。昨今では高速バスの増発などで利用者が奪われており、乗車率も20~30%台と大幅に低下していた(寝台列車の場合定員の少なさや整備の煩わしさで損益分岐点が高く、100%でも雀の涙ほどの利益しか出なかったと言われている)。これについてもJR東海の独断で廃止できるものではなく、他社も同じ考えであることから相次いで廃止に至っている。

切符についても販売窓口で手数料を差し引かれる場合が多くなっており、JR東海は新幹線の比率が高いことからJR東日本などの他社窓口で購入となると手数料でかなりの負担となっている。その為にJR各社では自社内の窓口や改札でしか利用できない切符を相次いで販売しているが、利用者が切符に記載されている簡単な注意書きも読まずにJR他社の窓口や改札を利用しがちで特に駅が共有で混在し利用者も多い東京駅新大阪駅周辺でこういったトラブルが多い事から『こういうトラブルが多いのはJR東海のせい』や『せめて窓口の所はJR東海線専用窓口と記載しろ』というイメージが強くなりがちとなっている。

一方で、実際に葛西が他社と対立している事柄として、整備新幹線が挙げられる。整備新幹線は、「第2の国鉄」を作らないよう、建造費は国と地方自治体でまかない、JRからは「受益を限度とした」貸付料を徴収することで、JRグループの負担が過大にならない仕組みになっている(鉄道・運輸機構「整備新幹線の建設」)。

葛西は北陸新幹線の金沢以西、九州新幹線北海道新幹線に対して、財務省の財政制度分科会で「鉄道の人間としてみると極めて懐疑的」と表明した(財務省「財政制度分科会(平成30年5月14日開催)議事録」)。

葛西は、JR東海が自力でリニア中央新幹線を建造していることを強調しており(葛西敬之「■ご意見の内容」)、鉄道も道路も、新規建造は「必要最小限」にして、必要ならば「民間の力」で行えばいいと主張した。

要するに、葛西はJR他社に対して「新幹線が欲しければ、全部自費で作れ」と煽ったことになる。

東海豪雨での対応

上述の通り葛西が批判を受けていることが多いが、その最大の要因として下記の東海豪雨での対応が挙げられる。

2000年に発生した東海豪雨がある。この時東海地方の各鉄道事業者は相次いで運休を行っていたのに対し、東海道新幹線は葛西の鶴の一声で定時性を優先したため無理をして運行を続けた結果足止めを喰らう列車が続出、結果最大で22時間21分の遅延を起こす事態(運休を除けば現在でもこの記録は破られていない)に陥った。さらにその後の社長定例会見で、「あれは未曾有の大災害が原因で、正常で適切な運行だった。」と発言。鉄道ファンだけでなく世間からもバッシングを受け、更には運輸省(現・国土交通省)からも会見内容を含め注意を受けたことから、「多くの乗客にご迷惑をおかけした」と謝罪するに至っている。

またこの件で、『たまたま葛西がのぞみに乗車しており、足止めを喰らった車中で乗客が車掌に詰め寄った光景を見て自分が襲われるのではないかと思い込み、他の車掌に頼んで多目的室に避難した』という噂が流れた。これについて初出は信憑性の低い某週刊誌で、それを基に左派機関紙や一部タブロイド紙も記事にしたが、乗客の目撃情報がなく全国紙や仲の悪いとされている中日新聞、さらにこのような話に熱心な週刊新潮や週刊現代といった主要週刊誌も触れていない。また豪雨対応に追われている葛西が新幹線で移動するのはあまりにも不自然で、その指摘に明確な反論もないことからこの話はガセであることがほぼ確実である。しかし当時の2ちゃんねるYahoo!知恵袋でこの話が事実として流布され、ウィキペディアにも長い間書かれていた(出典なしで削除済)。現在でもTwitterなどのSNSでこの話をする者がおり、いかに葛西が鉄道ファンから嫌われているかが分かるだろう。なお、某週刊誌はJR東海管内のキヨスクから締め出されその後廃刊となった模様である。

葛西社長退任以降のJR東海

葛西は2004年、松本正之に社長職を譲ったものの代表取締役会長に就任し権力を誇示。ジョイフルトレインや保有機関車の全廃や他社の乗り入れ縮小を行なっている。松本正之がNHK会長に就任したため山田佳臣が後任した後も会長職に留まり、キハ25という車体がほぼ313系の気動車版を誕生させるなど合理化を推し進めていった。

山田佳臣がJR東海会長に就任することになった2014年には代表取締役名誉会長が創設され、就任。名誉会長なのに代表付の取締役という理解不能な立場を設定したことで永久に権力を誇示させたかったのだろうが、さすがに葛西・山田・社長に就任した柘植康英の3人が代表職に就任している状況を「トロイカ体制」と批判された(しかも批判したのが葛西寄りの論調をしている産経新聞)ことから、2018年に代表権のない取締役名誉会長となり、2020年には肩書から取締役が外れており、現在は名誉会長となった。

なお名誉会長となった葛西は海外や国会対応専門となり鉄道事業には関心を示さなくなった事から柘植康英社長によってこれまでの方針が一部転換(須田寛時代に近い状態に戻る)されている。

余談

  • 財界における代表的な保守論客の一人。フジサンケイグループ読売新聞等の保守系メディアや自民党との関係も強い。(読売のライバルである)中日新聞とは敵対関係でもある。また民主党日本維新の会の保守系議員とも繋がりがある。
  • 政治的思想は保守。親米反中であり、日米同盟の強化を支持しているが、歴史問題ではアメリカの対日姿勢を批判している。「リニアは日米同盟の強化になる」として、リニア新幹線技術のアメリカへの輸出を渋々ながら提唱。一方で中国に対する新幹線技術供与には反対した。
  • 安倍晋三を熱心に支援しており、安倍政権に強い影響力を持っている財界人とされる。第一次安倍政権時には教育再生会議委員に就任した。また、第二次安倍政権での籾井勝人のNHK会長就任は葛西の強い推薦で実現したとされる。
  • 「ゆとり教育は迷走している。社会や国家への自己犠牲、奉仕の精神を備えるリーダーを育てたい」と主張しており、その理想をもとにした蒲郡市に全寮制の海陽中等教育学校を創設している。

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