概要
JRグループ旅客会社6社が春休み・夏休み・冬休み期間に発売する企画乗車券。
「青春」「18」と付くが年齢の上限・下限は無く、何歳でも購入できる。
一方で子供料金の設定は無く、事実上13歳が下限になっている。
元は莫大な赤字が問題となっていた国鉄末期に集客と増収を図るために始めたもので、「のびのびきっぷ」と称して8,000円で販売していた。
後に現行の名称になると共に価格も10,000円になり、以後、消費税の増税等に合わせた微増を繰り返しながら、令和の現在では12,000円強で販売されている。
なお、現行名称の名付け親は後にJR東海の初代社長となる須田寛という。
時代によって金額は変われど、2024年の夏まで「1枚で延べ5日間、在来線の普通列車と快速列車の普通車自由席が乗り放題となる」と内容は基本的に変わらなかった。つまり国鉄のネットワークを駆使して北海道から鹿児島県まで自由に行き来ができ、分割・民営化後も会社の境界などお構いなしに文字通りのフリーパスで通れるわけである。この切符が桁違いの知名度を誇る所以である。
制約を加味しても、適用範囲の広さと1日あたり2,500円程度移動すれば簡単に元が取れるコストパフォーマンスの高さは特筆ものであり、金は無いが時間と体力はある学生の長期休みの際の帰省や旅行の友として古くから親しまれてきたきっぷである。
しかし夜行普通列車・快速列車の消滅や有人窓口の大幅削減、さらに国鉄時代からの特殊なルールがJR各社の規約に合致しなくなったことから2024年の冬に大ナタが振るわれることとなった。(後述)
利用条件
利用条件は以下のとおりである。
区間
18きっぷのみで利用可能
- JR線内の普通や快速系統(新快速や特別快速など含む)の普通車自由席。
- JR線から転換されたBRT。気仙沼線、大船渡線、日田彦山線が該当する。
- 宮島連絡船(但し入島税として別途100円が徴収される)。
- 特急・急行列車のうち、以下の特例区間(いずれも種別が特急でも運賃だけで乗れる)。但し特例区間を超えると特急・急行料金だけでなく特例区間を含めた全区間の運賃も請求される。※は普通車指定席の空いている席、それ以外は普通車自由席が利用可)。
- 第三セクターのうち、以下の特例通過区間。但し途中下車は不可で、する場合は別途当該区間の運賃が必要。
追加料金で利用可能
- 普通列車または快速列車の指定席(指定席券が必要。但しAシートはe5489サービスで割引を受けたものは不可)
- 普通列車または快速列車のグリーン車自由席(グリーン券が必要)
- ホームライナー(乗車整理券が必要)
- 北海道新幹線のうち、新青森駅から木古内駅の間(青春18きっぷ北海道新幹線オプション券が必要)
- 道南いさりび鉄道(青春18きっぷ北海道新幹線オプション券が必要)
利用不可(別途運賃も必要)
- 新幹線(博多南線や越後湯沢駅からガーラ湯沢駅間含む)
- 上記特例区間外の特急列車と急行列車(寝台列車含む)
- 普通列車または快速列車のグリーン車指定席
- 先述のBRT以外のJRバス(国鉄バス時代から利用不可)
- グループから外れた特例通過区間以外の第三セクター各社
但し、これらは正常時の対応で、交通障害が発生した場合に鉄道会社の判断で18きっぷのみで乗車できる場合もある(あくまで車掌や駅係員の指示に従うこと)
その他条件
2024年夏まで
- 自動改札に対応していないので必ず有人改札を利用することになる。通常の切符より時間が掛かりがちなので余裕を持った行動を心掛ける必要がある。なお、無人駅などの場合はその後の車内検札等で対応してもらえるので、利用できないということはない。
- 1日分の有効期限が0時から24時である。夜間に乗車していて24時(翌日午前0時)を過ぎた場合、その列車が自身の目的地もしくは終点に到着していなくても、次の停車駅で降りるか、もう1日分を消費しなければならない。逆に日付が変わった後に使用を開始して終電まで乗車し、1晩をやり過ごして始発で旅行を再開してもその日の24時までは1日分の消費で済む。
- 有効期間は任意の5日間(例えば最初に2日間利用し、5日空けて残りの3日間を使用する方法も可能)。また、同一行程であれば1枚の切符で(5人で1日分など)複数人の利用も可能。
- 最初は5枚綴りであったため別行程が可能であったが、転売や金券ショップへの売却が相次いで利益が出なかったことから1枚にまとめることとなった。尤も「任意の5日間」であったため、途中まで使用して残った状態で転売や金券ショップへの売却することが可能であった。
- 購入後の払い戻しは全くの未使用の間のみ可能。次回の実施期間への持ち越しもできない。
2024年冬から
- 購入時は予め使用開始日を伝えたうえで発券する必要がある。なお、未使用に限り1回のみ変更が可能。
- 自動改札機に対応している。
- 使用開始日が指定されることになったため、無人駅での対応を気にすることがなくなる。
- 1日分の有効期限が始発から終電である。最終日に24時(翌日午前0時)を過ぎた場合も終電までは有効である。
- ちなみにルール変更時点で夜通しで運転する普通・快速列車は存在しない。仮に臨時で運転した場合はその列車に限り終点まで行くことは可能(乗り継ぎの場合はその乗換駅まで有効)と推測されるが、対応としては自動改札で弾かるため有人窓口で対応か、無人駅の場合は車掌が回収といった措置が想定される。
- 3日券が新たに販売される。なお、5日間と比べて1日単位の料金が割高。
- 有効期間は連続した5日間または3日間(つまり間を空けての使用は不可)。また、1人1枚が鉄則となり、1枚で複数人の利用は不可。当然次回の実施期間は期限が切れるので持ち越し不可。
問題点
時間と体力を持て余した人間を大勢集めた時、往々にして発生するのがモラルハザードである。この企画も例外ではなく、座席の奪い合いやゴミの不始末、対象外列車への不正乗車などは当たり前。乗換目的の駆け込み乗車の為に駅構内を走り回り、それを「大垣ダッシュ」などと呼んでエクストリームスポーツのように扱う輩すら現れる始末で悪名も非常に高い。彼らは「18きっぱー」と呼ばれ、負の風物詩となってしまっている。
購入者だけが不利益を被るのであれば、まだ「安かろう悪かろう」で済ませることができたかもしれない。だが、JRは公共交通機関である。ただ乗り合わせただけの大勢の一般客がこれに巻き込まれかねない。普通や快速が対象という性質上、むしろ地元の定期利用者ほど干渉を受けやすい。
その是非は別として、昨今は減便や減車の進行で輸送量に余裕を無くした路線も増えている。そんな所に余所者が大挙して乗り込めば、局所的なオーバーツーリズムにもなり得る。
まして「大垣ダッシュ」の大垣駅など、列車同士の乗り換えで有名なだけの駅であって基本的に彼らが地元に落とす金はゼロである。最早観光客とすら呼べず、百害あって一利無しである。実際大垣市民の心証はすこぶる悪く、とりわけ影響の大きかった「ムーンライトながら」の廃止が決まった時は大層喜ばれたそうである。この手の列車は珍しい車両が使われることが多く、同じくトラブルを起こしがちな撮り鉄を呼び込みやすいという問題も同時に抱える傾向もある。
静岡県の東海道線区間も同様で、18きっぷ利用者の3割以上はこの区間を通過すると言われている(夜行列車全盛期は5割以上だったとも)が、静岡県区間は「快速なし」「ロングシート王国」「(車両によっては)トイレなし」という18きっぷ利用者にとっては過酷区間と称されており、ネット上では「快速を走らせろ」「クロスシートにしろ」の大合唱で、中には「静岡県民もそう思っているはずだ」という主張を行なっていた者もいる。しかし静岡新聞がネットの意見を踏まえ調査を行なったところ静岡県民は短区間利用者が多く、オール普通列車や乗降しやすいロングシートが適しているという結果が出ている(さすがにトイレなしは静岡県民も不満のようで315系の導入や313系の転属を進めており、2025年を目処に全列車トイレ付になる予定)。このことから大都市圏の遠近分離はともかく地方都市の場合は地域住民の利用実態と乖離することが多く、18きっぷ利用者の主張通りにしてしまうと地域利用者が不便を被ることになる。ちなみに2022年より静岡地区に元セントラルライナーの車両が導入され、18きっぷ利用者からは歓喜の声が挙がったが、「乗降が面倒」「座席転換が面倒」「知らない人とペアで座りたくない」など静岡県民の評価はあまりよろしくない。
真っ当に使用したとしても、長距離普通列車の削減による移動可能距離の減少や、廃線や第三セクター化の進行による適用路線自体の減少により、使い勝手は悪くなる傾向にある。
高速バスや格安航空会社の発達により、少し金を積むだけで遙かに早くて快適な移動が可能になった区間も多く、どのみち「乗り鉄向け商品」というイメージが強くなりつつある。
2024年冬からルールが変更となったが、「自動改札機対応」「0時を過ぎても終電まで有効」というメリットより「任意日から連続日に変更」「1枚で複数人の利用不可」の内容が注目されてしまい、鉄道ファンから反発を招いて「廃止のための口実作り」という陰謀論まで生じてしまったが、普段は鉄道ファンに優しいヤフコメですら「LCCや高速バスという選択肢がある」「本来の使い方から乖離している」「転売とかしてきた結果」とルール変更はやむをえないという反応が多数を占めている(一部の18きっぷ利用者は「某オレンジ色の会社の工作」を指摘していたが、過去コメを見ればそうでないことは一目瞭然で、うーん乱打など嘲笑されている)。
この件について、とあるYoutube動画投稿者からは指定日連続化の理由は「クレジットカード現金化の踏み台(回数券廃止の原因とも言われている)にされている現状を解消する為」(要約)と推測されている。現金化行為は反社(特に半グレ、闇バイト、暴力団、極左、カルト教団等々の反日)の主な組織犯罪の一角且つ資金源で看過しがたい事態であり、こちらへの対策を最重視したと見られる。18きっぷの連続日化による不正乗車/無賃乗車の増加が懸念されるが、両方を天秤にかけると基本的に個人犯罪の不正乗車よりも現金化の実害が桁違いなのは火を見るよりも明らか。
クレジットカードでの購入不可(現金でしか買えない)にすれば任意日のまま現状維持(不正乗車の増加を抑制)と現金化対策を両立可能のコメントもあるが、加盟店規約違反に抵触する行為ではないかと言われている。
但し、JRからは公式なアナウンスは無く、あくまで推測の域を出ない事に留意されたし。
↓参考動画
なお、今回の変更で特にJR東日本とJR北海道のみを4日以上利用する場合は「北海道&東日本パス」のほうが安くて便利(7日間有効で青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道、北越急行が途中下車含めて利用可。また北海道新幹線も特定特急券を買えば新青森駅から新函館北斗駅間の相互乗車もできる)となり、利用者は大幅に減ることが推測される。
そうした事情もあり、昨今では不要論も少なくないのだが、後述した独特の収益構造から止めるに止められないというのが実情のようである。
鉄道会社の配分
厳密な計算式は公表されていないものの、分割・民営化後の収益は継承した路線長等の条件に応じて各社に按分される方式になっているとされる。単純な窓口での売上ではないので、人口に比例して購入者が多くなる本州三社から、過疎化が進むいわゆる「三島会社」への間接的な支援になっている側面もある。
年間60~70万枚、売上にして約70~80億円が販売されており、均等割だと1社あたり12~13億円となる。JR北海道やJR四国の年間売上は約800億円であり、特に投資ぜずにこの額が手に入ることから貴重な収入源となっている。一方で年間売上が1兆円以上の本州三社からすればこの額は雀の涙ほどで、特に利用者が集中しているこの鉄道会社からすれば「少ない取り分で通過利用が多いので地域にお金をあまり落とさず、逆に混雑対策に頭を悩ませ、かつ18きっぷ利用者から不平不満を言われるばかりか別課金で新幹線の案内をしたら理不尽なバッシングを受ける」状態である。
18きっぷで到達困難な地域
石川県金沢市:2024年3月16日からは18きっぷ史上初の県庁所在地に行けない県となった。最寄り駅は津幡駅で富山駅からの通過利用可能。
福井県福井市:越美北線のみで、敦賀駅~越前花堂駅の通過のみ可能、福井駅は利用できない。
北陸新幹線沿線から新潟県JR区間:石川県・富山県⇔新潟県JR区間は、富山県-岐阜県-(長野県-山梨県)又は(愛知県-静岡県-神奈川県)-東京都-埼玉県-群馬県経由が唯一のルート。長野県・糸魚川市⇔新潟県JR区間は18きっぷだけでは長野県-山梨県-東京都-埼玉県-群馬県-新潟県経由のしかルートが無い。
長野県長野市の長野駅と豊野駅:18きっぷだけでは長野県-山梨県-東京都-新潟県-長野県を経由することになる。
大分県から宮崎県:普通列車が朝6時台の1本だけ(佐伯市で宿泊が必要=他線から乗り継ぎできない)、肥薩線は大雨による不通で北部九州と南九州の往来がほぼ不可能である。
類似企画
使用者が地元に金を落とさない問題、また本州三社にとっては売上自体も流出しかねない問題を解消するべく、適用区間を絞った切符も各社毎に販売している。
それらには使用期間をずらす、条件付きで特急などへの乗車を認める、沿線施設との提携サービスを付けるといった差別化を行っているものもある。
えちごトキめき鉄道や肥薩おれんじ鉄道など、18きっぷとの連動企画を用意している事業者もある。使用者が全くいなくなるのも、それはそれで問題なのだろう。
関連タグ
ムーンライトながら ムーンライトえちご ムーンライト九州 新快速 転換クロスシート:18きっぱーの崇拝対象。
東海道本線(静岡地区) 走ルンです 第三セクター 整備新幹線 ロングシート 杉並三駅(平日):18きっぱーの憎悪対象。少なくとも彼らだけには恨まれる筋合いは無いと思うが・・・