※本記事中の「飛騨」と付く地名、駅名の正式な字は一部を除き「飛驒」だが、一般的な案内表記にあわせて「飛騨」と記載する。
路線データ
路線名 | 高山本線 |
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路線区間 | 岐阜〜富山 |
路線記号 | CG:岐阜〜猪谷 |
ラインカラー | 茶:岐阜〜猪谷 |
路線距離 | 225.8km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 45駅 |
信号場数 | 4箇所 |
最高速度 | 110km/h |
非電化区間 | 全線 |
単線区間 | 全線 |
閉塞方式 |
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保安装置 |
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運転指令所 |
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ICカード乗車券エリア | TOICAエリア:岐阜〜美濃太田 |
第一種鉄道事業者 |
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第二種鉄道事業者 | 日本貨物鉄道(JR貨物):猪谷〜富山 |
概要
岐阜県と富山県にまたがり、岐阜駅(岐阜市)から線名の由来となった高山駅(高山市)を経て富山駅(富山市)までを結ぶ、東海旅客鉄道(JR東海)及び西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線で、地方交通線。
岐阜駅〜猪谷駅(富山市)間がJR東海、猪谷駅〜富山駅間がJR西日本の管轄。
また日本貨物鉄道(JR貨物)が猪谷駅〜富山駅間の第二種鉄道事業者となっている。なお現在猪谷駅〜速星駅(富山市)間で貨物列車は運行されていないが、同区間も含まれているのはかつて神岡鉄道神岡線(廃止)直通の貨物列車が運行されていた為である。
日本国有鉄道(国鉄)時代の亜幹線の一つ。
JR東海管内はラインカラーが茶色で路線記号は「CG」であるが、JR西日本管内では設定されていない。
JR東海管内の岐阜駅〜美濃太田駅間は交通系ICカード乗車券「TOICA」エリアに指定されている。なおJR西日本管内の富山駅も「ICOCA」に対応しているが、高山本線では利用出来ない。
また岐阜駅〜美濃太田駅間及び下呂駅、高山駅、飛騨古川駅には駅ナンバリングが設定されている。
JR西日本管内は国鉄急行形気動車キハ58系が普通列車として定期運用されていた最後の路線としても知られている。
沿線概要
岐阜県北部の飛騨地方を経由する唯一の鉄道路線。木曽川や飛騨川に沿って走行する為景色が非常に良い事でも知られる。
また飛騨古川駅及び駅周辺が2016年(平成28年)に公開された新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』の舞台の一つとなり、聖地巡礼が行なわれている。
後述の特急「ひだ」が同地方へのアクセス・観光輸送並びに名古屋駅での東海道新幹線及び富山駅での北陸新幹線への連絡輸送を担っている。
但し2008年(平成20年)に東海北陸自動車道が全通して以降、低価格で移動できる高速バスとの競争が激しくなっている。
現状、対首都圏のルートは名古屋駅経由の高山本線・上述の高速バスのほか、さらに安房峠トンネルを通過する長野駅または松本駅経由のバス+北陸新幹線または中央東線特急「あずさ」、北陸新幹線富山乗り換えで高山本線の乗車区間の短いルート、と需要に対し非常に選択肢が多くなっている。
また普通列車の一部内装簡素化や富山で北陸新幹線と「ひだ」を乗り継いでも新幹線乗継割引は適用されない事情(そもそも本数自体が少ない)等も相まって、次第に劣勢に立たされつつある。但し高速バスと違い「ジャパンレールパス」が利用出来る為、高山市を観光する訪日外国人の利用は多い。
地域輸送においては岐阜駅~鵜沼駅間は名鉄各務原線と競合しており、所要時間や運賃はこちらの方が勝るが、本数や高山本線の交換待ちの影響で名鉄に劣勢に立たされている。但し両線共に利用者の減少に悩まされており、近年は沿線自治体と共に競合から共存へ方針を転換している。
2004年(平成16年)10月の台風23号「Tokage」で飛騨地方が被災。高山本線も橋梁や路盤流出等の被害を受け、2007年(平成19年)9月8日の全線復旧まで3年もの長期運休を余儀なくされた。
沿革
1920年(大正9年)11月1日に岐阜県側で高山線として岐阜駅〜各務ケ原駅間が開通した事が始まり。その後少しずつ延伸を繰り返していった。
1927年(昭和2年)9月1日には飛越線として富山県側の富山駅〜越中八尾駅間が開通。こちらも徐々に延伸を繰り返し、1934年(昭和9年)10月25日に高山線飛騨小坂駅〜坂上駅間が延伸された事で全線開通、飛越線が高山線に編入され高山本線に改称された。
その後は準急「ひだ」(後の急行「たかやま」)「のりくら」や名鉄直通準急「たかやま」(後の特急「北アルプス」)の運行を開始するなど観光輸送にも力を入れ始めるが、民営化後に前者は特急「ひだ」に統合、後者は廃止されている。
1987年(昭和62年)4月1日に国鉄が分割民営化。岐阜駅〜猪谷駅間をJR東海が、猪谷駅〜富山駅間をJR西日本が第一種鉄道事業者として継承。また岐阜駅〜高山駅間及び猪谷駅〜富山駅間で貨物輸送を行なっていた為JR貨物が同区間の第二種鉄道事業者となった。但し1995年(平成7年)9月30日に坂祝駅〜上枝駅(貨物としては高山駅の側線扱い)間で貨物列車の運行が終了し、2007年3月18日に岐阜駅〜坂祝駅間の貨物列車が運行終了。同年4月1日付で岐阜駅〜高山駅間の第二種鉄道事業が廃止された。
運行形態
特急
詳細は「ひだ」を参照。
東海道本線名古屋駅〜高山駅・飛騨古川駅・富山駅間及びJR西日本JR京都線大阪駅〜高山駅間に計10往復運行されている。大阪駅発着の1往復は名古屋駅発着の列車と岐阜駅〜高山駅間で併結しているが、2001年(平成13年)9月30日まで名鉄名古屋本線新名古屋駅(現・名鉄名古屋駅)発着の特急「北アルプス」を美濃太田駅〜高山駅間で併結していた。
なお「北アルプス」はJR鵜沼駅・名鉄新鵜沼駅構内の連絡線(通称鵜沼連絡線・廃止)を経由しており、美濃太田駅までは名鉄乗務員が乗務していた。
また2003年(平成15年)〜2010年(平成22年)には、越中八尾駅のある富山市八尾地区(旧婦負郡八尾町)で毎年9月1日〜3日に開催される「おわら風の盆」にあわせて、キハ181系特急形気動車を使用した臨時特急「おわら」が大阪駅〜越中八尾駅間で運行されていた。キハ181系の廃車や北陸新幹線の並行在来線となった北陸本線の第三セクター化等により、現在は線内の普通列車を増発して対応している。
普通
2003年(平成15年)10月1日ダイヤ改正までは猪谷駅を跨ぎ高山駅〜富山駅間を運行する列車が存在し、現在JR西日本管内で運用されているキハ120形気動車で運行されていた。
現在は一部を除き美濃太田駅、高山駅、猪谷駅で運行系統が分割されている。
- 岐阜駅〜美濃太田駅
岐阜市近郊である為高山本線の普通列車が最も多く運行されている区間。
ほぼ終日に渡り毎時2本運行されている。多くは太多線に直通し多治見駅発着で運行されるが、下り列車については美濃太田駅発着や1〜3時間に1本程度美濃太田駅を跨ぐ列車も存在し、最長で猪谷駅まで運行される。
- 美濃太田駅〜高山駅〜猪谷駅
特急がメインの区間。山岳地帯に入る為運行本数が減少する。
美濃太田駅で岐阜駅方面の列車と接続している。下麻生駅、白川口駅、下呂駅、飛騨古川駅、坂上駅発着の列車も設定されている。
美濃太田駅〜高山駅間・高山駅〜飛騨古川駅間は概ね1〜3時間に1本運行されるが、飛騨古川駅〜猪谷駅間は下りの高山発坂上行最終を除くと8往復のみの運行。なお猪谷駅で富山駅方面の列車との接続が考慮されている。
- 猪谷駅〜富山駅
平成の大合併により全線が富山市内となったJR西日本管轄の区間。
前述の通り現在は同社管内のみで運行され、全て富山駅を始発・終着とする。猪谷駅発着と越中八尾駅発着が交互に運行される。運行間隔は富山駅〜越中八尾駅間は概ね1〜2時間に1本、越中八尾駅〜猪谷駅間は2時間に1本程度だが最長4時間程間隔が開く時間帯が存在する。
なお、「おわら風の盆」開催時は普通列車の増車や富山駅〜越中八尾駅間で臨時快速を運行して対応している。
また2006年(平成18年)10月21日〜2011年(平成23年)3月11日には社会実験により増発が行われ、毎日営業の臨時駅として婦中鵜坂駅が設置された。社会実験終了後は本数はほぼ元に戻ったが、当初は期間中のみ営業予定だった婦中鵜坂駅は富山市の要望により毎日営業の臨時駅のまま存続し、2014年(平成26年)3月15日に常設駅に昇格した。
貨物
あいの風とやま鉄道あいの風とやま鉄道線富山貨物駅〜速星駅間に通称速星貨物が1往復運行されている。これは速星駅付近に日産化学富山工場があり、同駅構内から伸びる専用線を使用して濃硝酸や硫酸、液体アンモニアといった化学薬品を輸送する為である。
かつては猪谷駅と奥飛騨温泉口駅を結んでいた神岡鉄道神岡鉄道神岡線への直通列車が設定され、神岡鉱山(廃止)の最寄駅だった神岡鉱山前駅から硫酸輸送列車が運行されていた。しかし2005年1月1日付で廃止。これによりトドメを刺された神岡鉄道は2006年12月1日に廃止された。
駅一覧
●:停車 ○:一部停車 レ:通過
岐阜駅〜猪谷駅
駅番号 | 駅名 | 特急 | 乗換路線 | 備考 |
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CG00 | 岐阜 | ● | ||
CG01 | 長森 | レ | ||
CG02 | 那加 | レ | 名鉄各務原線(新那加・KG10) | |
CG03 | 蘇原 | レ | ||
CG04 | 各務ケ原 | レ | 名鉄各務原線(名電各務原・KG04) | |
CG05 | 鵜沼 | ○ | ||
CG06 | 坂祝 | レ | ||
CG07 | 美濃太田 | ● | 当駅発着あり | |
↓太多線多治見まで直通運転 | ||||
古井 | レ | |||
中川辺 | レ | |||
下麻生 | レ | 当駅発着あり | ||
上麻生 | レ | |||
飛水峡信号場 | レ | |||
白川口 | ○ | 当駅発着あり | ||
鷲原信号場 | レ | |||
下油井 | レ | |||
飛騨金山 | ○ | 当駅発着あり | ||
福来信号場 | レ | |||
焼石 | レ | |||
少ヶ野信号場 | レ | |||
CG16 | 下呂 | ● | 当駅発着あり | |
禅昌寺 | レ | |||
飛騨萩原 | ○ | |||
上呂 | レ | |||
飛騨宮田 | レ | |||
飛騨小坂 | ○ | |||
渚 | レ | |||
久々野 | ○ | |||
飛騨一ノ宮 | レ | |||
CG25 | 高山 | ● | 当駅発着あり | |
上枝 | レ | |||
飛騨国府 | レ | |||
CG28 | 飛驒古川 | ● | 当駅発着あり | |
杉崎 | レ | |||
飛騨細江 | レ | |||
角川 | レ | |||
坂上 | レ | 当駅止あり | ||
打保 | レ | |||
杉原 | レ | |||
↑岐阜県/↓富山県 | ||||
猪谷 | ● | JR西日本管内富山方面 | JR西日本管理駅 |
猪谷駅〜富山駅
●:停車 ○:一部停車 レ:通過
現在の使用車両
JR東海所属
名古屋車両区所属のハイブリッド式特急形気動車。特急「ひだ」で運用中。
美濃太田車両区所属の一般形気動車。
キハ25形はJR東海管内全線、キハ75形は岐阜駅〜下呂駅間で運用中。
名古屋車両区・美濃太田車両区所属の事業用気動車(レール輸送車)。
JR西日本所属
金沢車両区富山支所所属の一般形気動車。
キハ120形はJR西日本管内で運用されているが、前述の通りかつてはJR東海管内高山駅まで乗り入れていた。
キハ40形は城端線・氷見線用車両で「おわら風の盆」開催時の臨時列車としてのみ運用される。
- キヤ141系「ドクターWEST」
吹田総合車両所京都支所所属の事業用気動車(検測車)。
JR貨物所属
愛知機関区所属のディーゼル機関車。速星貨物牽引機。
過去の使用車両
国鉄民営化後の車両のみ記載。
JR東海所属
名古屋車両区所属の特急形気動車。
キハ82系は昭和から平成初期にかけて、キハ85系は平成から令和にかけて特急「ひだ」で運用された。
キハ85系は後述の名鉄キハ8500系特急「北アルプス」と併結可能だった。
美濃太田車両区所属の急行形気動車。
急行「のりくら」及び普通列車で運用されていた。
- キハ11形100番台
美濃太田車両区所属の一般形気動車。
トイレが無い為長距離運用には就かず、独自運用が組まれていた。
登場時は岐阜駅〜飛騨古川駅間で運用されていたが後に岐阜駅〜白川口駅間での運用に変更された。
美濃太田車両区所属の一般形気動車。
JR東海管内全線で運用されていたが、2015年6月30日に運用を離脱した。
JR西日本所属
- キハ181系
京都総合運転所本所(現・吹田総合車両所京都支所)所属の特急形気動車。
特急「はまかぜ」用の車両で、高山本線では臨時特急「おわら」として運用された。
- キハ58系(キハ58形・キハ28形)
富山地域鉄道部(現・金沢車両区富山支所)・京都総合運転所本所所属の急行形気動車。
富山車は普通列車としてJR西日本管内〜JR東海管内高山駅間(末期は西日本管内のみ)で運用されていた。2011年3月11日に運用離脱し、JRからキハ58系の定期運用が消滅した。
京都車は更新工事を受けた6000番台が急行「たかやま」として運用されていた。
キハ65形・キハ28形「ゴールデンエクスプレスアストル」
金沢総合車両所(現・金沢車両区)所属のジョイフルトレイン。
臨時特急「ユートピア高山」等で高山本線に入線した。
JR貨物所属
東新潟機関区所属のディーゼル機関車。
速星貨物を牽引していたが、2021年(令和3年)3月13日ダイヤ改正で運用を外れた。
愛知機関区所属のディーゼル機関車。
岐阜口の貨物列車を牽引していた。
名古屋鉄道所属
全て新川検車区(現・犬山検車場新川検車支区)所属の特急形気動車。
急行→特急「北アルプス」で運用されていた。
国鉄時代には夏季に富山駅から先富山地方鉄道に直通し、立山駅まで、また民営化直後は定期列車として富山駅まで乗り入れていた。
- キハ8500系
特急「北アルプス」用車両で、キハ8000系を置き換える為導入された。
JR東海のキハ85系をベースとしており、高山本線では同形式と併結して運用された。