概要
整備新幹線の路線の一つで、関東地方から北陸地方を経由して関西地方までを結ぶ計画路線。具体的には、群馬県高崎市から長野県長野市・新潟県上越市・富山県富山市・石川県金沢市・福井県福井市・同県敦賀市・京都府京都市などを経て大阪府大阪市までを結ぶ。
長野オリンピックに先立つ1997年10月1日、高崎駅〜長野駅間が先行開業した。当初は北陸地方に到達していなかったため、便宜上「長野新幹線」と案内されていたが、本来の正式名称はこの区間を含めて「北陸新幹線」である。2015年3月14日に長野駅〜上越妙高駅〜金沢駅間が延伸したことで路線が北陸地方に達し、「長野新幹線」の愛称は使用されなくなった。
2015年3月14日時点で、高崎駅〜上越妙高駅間がJR東日本、上越妙高駅~金沢駅間がJR西日本により管轄・運営されている。整備新幹線の中では、複数の会社によって管轄・運営されている唯一の路線である。
金沢駅~敦賀駅間の開業
2024年に金沢駅〜敦賀駅間が開業する予定であり、最終的には高崎駅と新大阪駅を長野駅・金沢駅経由で結ぶ。新大阪駅で山陽新幹線と合流して乗り入れを行う計画も存在している。
2020年11月10日の国土交通省の発表で、建設工事の遅れの影響により、2023年春に予定された金沢駅~敦賀駅間の開業は1年半延期になる調整であることが発表された。
敦賀駅~新大阪駅間のルート
敦賀駅までは着工の方針が示されていたものの、敦賀〜大阪間のルートが(終点も含めて)定まっていない状態であった。
フル規格での整備の場合、公式に示されている案は下記の3案で、2016年12月に「ルート2」案で決着がついた。
- ルート1:琵琶湖東岸を経由し南下、米原駅(滋賀県米原市)で東海道新幹線と合流し同線を走る(北陸・中京新幹線)。滋賀県推し。
- ルート2:福井県小浜市付近まで西に向かい、その後南方へ京都へ至る。JR西日本推し。
- ルート3:福井県小浜市・京都府舞鶴市付近まで西に向かい、南東に方向を変え京都府京都市へ至る。京都府推し。
なお、この他に小浜市・京都市西方を経由する案(整備新幹線計画当初の案)、琵琶湖西岸(湖西線沿い)を経由し南下する案等もあった。
しかし、いずれのルートもメリットが存在すると同時に問題も存在する。
- ルート1:費用が抑えられ、中京圏での経済効果も期待できる。しかし東海道新幹線は過密状態であり、中央新幹線ができたとしてもJR東海が乗り入れ(米原駅への接続含む)を認めない可能性と自社エリア内かつ根元区間を他社に委ねることをJR西日本が容認しない可能性が存在する。加えてそもそも北陸新幹線と東海道新幹線の運行システムが異なる。
- ルート2:大阪市内まで新線とした場合、JR東海との関係を考慮する必要は低下する、あるいは無くなる。ただし建設区間が長くなる分費用は嵩む、京都市内~大阪までの路線選定の困難が生じる。また、直接の沿線ではない湖西線が並行在来線として経営分離される恐れがある。中京圏へのルートも問題になる。
- ルート3:「国防上の重要拠点に新幹線を通すことで国益上有利である(舞鶴市長談)」とのことだが、理由としては苦しいところ。3案中一番遠回りであるため建設費所要時間とも最もかかる。基本計画線である山陰新幹線が着工した場合共用可能だが、舞鶴線・小浜線・山陰本線が揃って経営分離される恐れもある。
京都駅まで新線を通す場合の問題点としては、高架駅ならどこに建設しどうやって大阪まで伸ばすか、地下なら空間は多少はあるもののそこは旧都、掘り返せば遺跡が大量に見つかったり建設費用が莫大になる可能性などがあった。そのため当初建設案やルート3などでは亀岡などに新しい京都のターミナルを整備することなどが考えられていた。
この他、フル規格ではなく湖西線を経由(ミニ新幹線化or軌間可変電車による直通)する案もあるが、湖西線の改軌と場合により交流化(北部は新快速直通のため直流化したのに逆戻りになる、新幹線の交流25,000Vと直流1,500Vの営業用直通車輌の実例は2018年現在JR東日本のE001形ただ一つであり、対応に手間がかかる。直流用パンタグラフは大電流に耐える必要から集電舟や接続ワイヤが大ぶりとなり、交流の新幹線区間で畳む前提であっても空気抵抗や騒音源になることが避けられない問題を抱えている)に時間と費用がかかる上工事中運休となる影響が多大であることや、軌間可変電車の開発自体が苦戦中のなかでさらに交直切替と耐寒耐雪機能を付加することができるか、また湖西線のもう一つの運休原因となる突風(比良おろし)…などの問題があり、現在の所主力案とはなっていない。
湖西線絡みでは、上述した琵琶湖西岸ルートがかつての有力案でもあった。建設費が米原ルート並みに安く、かつ他のルート並みの速度で敦賀~京都~大阪を一度に結べるルートとされた。しかしながら湖西線利用計画同様に突風や豪雪対策が必須であるだけでなく、湖西線がJRから分離され第三セクターになるという懸念(湖西線は20~30分に一本間隔で運転され、アーバンネットワークに組み込まれているため、必ずしもそうなる可能性は高くないのだが、されないと決まったわけでもないことが住民の不安を誘った。並行在来線問題も参照。)から地元の反発を受け、ルート選定の主力から外れることとなった(なお、敦賀と京都を結ぶ他の諸案でも湖西線が並行在来線と見做される可能性はある)。
そして2017年3月15日、ルート2とルート3を組み合わせた敦賀駅~東小浜駅~京都駅~松井山手駅~新大阪駅間の南回りルートが確定した。
余談
- 北陸新幹線(元・長野新幹線)は東北・上越新幹線とは違い、高崎~軽井沢間・飯山~上越妙高間にある飯山トンネル内に最急30‰にも及ぶ急勾配が連続する。そのため、運用する車両には登坂モーターに抑速ブレーキを装備する。
- JR東日本とJR西日本の境界駅は上越妙高駅(駅自体はJR東日本管轄)であるが、金沢開業時の乗務員交代は全列車が停車することになる長野駅で行われている。したがって、長野~上越妙高間はJR東日本管内にもかかわらずJR西日本の乗務員が担当することになる。
- 送電周波数が変更される地域を通過するため、新幹線では珍しく周波数切り替え地点が数か所ある(50Hz→60Hz:軽井沢~佐久平間、糸魚川~黒部宇奈月温泉間。60Hz→50Hz:上越妙高~糸魚川間)。新潟県内区間は通常時は東北電力から受電するため50Hzであるが、変電所異常などの緊急時には富山県・長野県側から延長送電で対応するため、地上設備も50・60Hz両対応となっている。
- 北陸新幹線建設期成同盟会の掲示したポスターには萌えキャラが採用されている。
- この新幹線は整備新幹線であるため、並行在来線問題が発生し、廃止もしくは第三セクターに移管される区間が存在する。
- 信越本線を分断する形(高崎-横川間、篠ノ井-長野間、および分離されない直江津以遠)で存続し、碓氷峠区間は廃線、軽井沢-篠ノ井間、長野-妙高高原間はしなの鉄道、妙高高原-直江津間はえちごトキめき鉄道に移管。
- 北陸本線は市振-直江津間をえちごトキめき鉄道が、倶利伽羅-市振間をあいの風とやま鉄道が、倶利伽羅-金沢間をIRいしかわ鉄道が運営する。
- また開通以前に運営されていた特急なども(七尾線乗り入れ分を除き)分割される区間までとなるか、廃止された。
- なお寝台特急は運行すると主張していたが客車の老朽化などを理由にそれ以前にすべての運行を廃止した。
- 首都圏と富山・金沢方面のアクセスが便利になった反面、特急全列車が金沢止まりとなってしまったため名古屋・関西方面と富山方面のアクセスはかえって不便となってしまった(金沢~富山間のみでは新幹線によるメリットがほとんどない上、乗り換えの手間を考えると在来線時代とあまり差が出ないため)。
- 新幹線の走行時間は原則として6時から24時までであるが、在来線時代は富山を4時台に出発する大阪行きサンダーバードがあり、富山から金沢への移動すら一部で時間が遅くなった。
- 敦賀駅までの延伸開業時にはさらに北陸本線の敦賀〜金沢間が経営分離される。石川県内はIRいしかわ鉄道、福井県内はハピラインふくいが運営する見込み。
- 敦賀より先においては経営状況次第により小浜線や湖西線が分離される可能性があるが、特に後者は大阪圏を中心としたアーバンネットワークの一路線でありどうなるかは不透明。
- 京都より先でJR片町線(学研都市線)のルートと一部並行する可能性があるが、特に該当する松井山手より大阪寄りでは通勤路線としてかなりの収益をあげており分離する可能性は極めて低い。
- 当初は福井~敦賀間の新駅名を南越駅(仮称)としていたが、2021年5月13日に越前たけふ駅とする計画を発表。福井鉄道福武線にある越前武生駅と読みは同じだが、北陸新幹線駅で初めてひらがなを採用した駅でもある。また、安中榛名駅と同じく単独駅となる。
運行形態
2013年10月10日に、長野-金沢間開業時に運航される新幹線の愛称が、かがやき(速達)、はくたか(停車)、つるぎ(金沢-富山シャトル)、あさま(現長野新幹線)に決定した。金沢延伸後の運行形態については、以下の通り。
- かがやき(10往復)
- はくたか(東京-金沢)14往復 (長野~金沢)1往復
- つるぎ(18往復)
- あさま(東京-長野)17往復 (軽井沢→長野)下り1本
停車駅
凡例 ●:停車 ○:一部通過 レ:通過 空欄:運行なし
停車駅/種別 | かがやき | はくたか | つるぎ | あさま |
---|---|---|---|---|
東京駅 | ● | ● | ● | |
上野駅 | ○ | ● | ● | |
大宮駅 | ● | ● | ● | |
熊谷駅 | レ | レ | ○ | |
本庄早稲田駅 | レ | レ | ○ | |
高崎駅 | レ | ○ | ● | |
安中榛名駅 | レ | レ | ○ | |
軽井沢駅 | レ | ○ | ● | |
佐久平駅 | レ | ○ | ○ | |
上田駅 | レ | ○ | ○ | |
長野駅 | ● | ● | ● | |
飯山駅 | レ | ○ | ||
上越妙高駅 | レ | ● | ||
糸魚川駅 | レ | ● | ||
黒部宇奈月温泉駅 | レ | ● | ||
富山駅 | ● | ● | ● | |
新高岡駅 | レ | ● | ● | |
金沢駅 | ● | ● | ● |
未開業区間
金沢駅 |
小松駅 |
加賀温泉駅 |
芦原温泉駅 |
福井駅 |
越前たけふ駅 |
敦賀駅 |
東小浜駅付近(駅名未定) |
京都駅 |
松井山手駅付近(駅名未定) |
新大阪駅 |
使用車両
- E2系0番台:1997年10月~2017年3月。8両のN編成を使用。
- 10両のJ編成(※0番台)は北陸乗り入れ定期運用はないが、お召し列車としての運用実績はある。
- 200系:12両のF80編成。長野オリンピック(1998年)開催時の臨時列車として運用するため、長野乗り入れ改造を行った。
- E4系:2001年7月から2003年9月までは「Maxあさま」として運転。軽井沢発上野or東京行の上り列車のみで運用された(乗客を乗せて碓氷峠の急勾配を登れなくなる可能性があるため)。全26編成のうちP51・52編成は急勾配対応で軽井沢乗り入れが、P81・82編成はさらに周波数切り替え装置も搭載し長野乗り入れが可能であった。
- E7系:2014年3月~
- W7系:2015年3月~
関連タグ
新幹線 長野新幹線 E2系 E7系・W7系
北陸/北陸地方 JR東日本 JR西日本
あさま かがやき はくたか つるぎ
信越本線 しなの鉄道
北陸本線 IRいしかわ鉄道 あいの風とやま鉄道 えちごトキめき鉄道 ハピラインふくい
北越急行
- 長野オリンピック:アクセスのため高崎~長野間が先行開業。
- 令和元年台風第19号:千曲川が決壊し長野新幹線車両センターが浸水被害を受けた。「E7系・W7系」の記事も参照。