フリーゲージトレイン
ふりーげーじとれいん
フリーゲージトレインは軌間(レールの幅)に応じて車輪と車輪の間の長さを変えられる特殊な機構を備えた台車を装備しており、この機構を用いることで別の軌間の路線に進入する事ができ、直通で目的地にたどり着くことができるようになる。
しかし、この機構を備えた結果、列車の重量が重くなってレールと枕木に大きな力がかかり、思うように速度を出すことが出来ないという欠点も存在するほか、各路線の電流(交流と直流)および電圧に対応した機器も導入しなければならず、作るだけでも莫大な費用がかかってしまう。
既存のミニ新幹線で電流・電圧の問題をほぼ無視し得たのは、直通先がいずれも交流電化であったためである。
海外で実用化されているフリーゲージトレイン
スペインのTALGOが有名。スペイン国内は在来線が1,668mmの広軌で建設されていたが、戦後、西側ヨーロッパ諸国間の国際特急TEEの運転に際して、隣国フランスやその先の1,435mm軌間の区間に乗り入れできる車両が必要になった。
この為1968年、当時最新鋭だった1軸連接軽量客車TALGO IIIの軌間可変形TALGO III RDが開発され、特急「カラタン・タルゴ」として運行を開始した。TEEの枠組みが廃止された現在も現役で運行されている。
軌間可変にかかる時間は1両あたり約30秒。
TALGOが50年も前に軌間可変に対応できたのは、動力を持たない客車であり、シンプルな構造で対応可能だったからである。動力集中方式で、機関車はスペイン国内ではスペイン国鉄の機関車、フランス国内ではフランス国鉄の機関車と、それぞれの軌間の専用機関車が牽引を担当している。
その後、スペイン国内でも日本の新幹線に相当する高規格高速専用線AVEが建設されるが、このAVE路線は1,435mm標準軌を採用した。そこでAVE標準軌線と広軌在来線との直通列車にもTALGOシリーズの軌間可変形車両が投入され、AVE路線内では最高速度200km/hで運転されている。
更に、AVE路線内を330km/hで走行できる TALGO Avril も開発されている。
一般の客貨車の台車の車軸を交換したポーランド製SUW2000も存在し、台車交換なしで異軌間鉄道の物流・交通を可能としている。両用連結器も使用することで、EU↔旧ソ連の間の列車運行に関しては機関車の交代程度で済ませることも可能。
ただし、工業の一大生産地である中国との直通では旧ソ連の採用した自動連結器(SA3)が障害となり、従来どおりの貨物積み替えをしている。
日本では
現在、新幹線と在来線を行き来できる軌間可変電車を実用化に向けて開発しており、完成を前提にした計画がいくつかたてられていたが、北陸新幹線および西九州新幹線のいずれも、200km/h以上の高速走行の際の騒音や振動、過大な車両重量、メンテナンス代など様々な課題があって開業段階では導入を断念する形になっている。
他にも200km/h以上の高速走行を必要とせず、また同じ会社ながらレールの幅が違う路線が存在する近畿日本鉄道が、国土交通省と協力して実用化に向けて開発をすすめると表明。近鉄京都線~(近鉄橿原線経由)~近鉄吉野線を直通する特急として走らせる計画(現時点で投入は「後回し」となっているが、2022年5月の鉄道技術展にて開発継続を公表している)。
東急電鉄多摩川線の蒲田駅と京浜急行電鉄空港線の京急蒲田駅を繋ぐ「蒲蒲線」の事業化に際し、現段階では京急蒲田乗り換えとしているところをフリーゲージトレイン化させて羽田空港駅方面へ直通運転する構想もある。
また、1両あたり数秒~長くて2分程度の変換作業ではないものの、東京メトロがトンネルのコンクリート検査用の保線用車両として、標準軌⇔狭軌の軌間可変車両を有している。保線車両に多い絶縁車輪のためのボルト締結構造を利用して、ボルトを一旦抜いて車輪を移動、再度締めることで2つの軌間に対応する。そのため、両方の軌間に対応した場所に輪座があるほか、車体は一番小さい銀座線のサイズに合わせたものとなっている。
さすがに映画に出てきたような車両ではない。
これまでに3編成の試験車両が製造されている。
第1次試験車両「GCT01形0番台」
1998年製造。3両編成で直流1500V、交流20000V、交流25000Vに対応。
鉄道総合技術研究所構内での試験走行を経て山陰本線、日豊本線、予讃線、山陽新幹線などで走行試験を行った。1999年にはアメリカ・コロラド州へと渡り、同地にある実験線でも試験を行った。
2006年までに試験を終了。2013年に解体されたが1両は何故か解体を免れ、川崎重工兵庫工場を経て南福井駅構内の建屋内に保管されている様子。
第2次試験車両「GCT01形200番台」
2007年製造。第1次試験車両と同じ3両編成で、直流1500V、交流20000V、交流25000Vに対応。
鹿児島本線、九州新幹線、予讃線で走行試験を行い、2014年までに試験を終了。2両は解体されたが、1両は解体を免れて四国鉄道文化館で保存されている。
第3次試験車両「FGT9000形」
メインイラストの車両。2014年製造。第2次試験車から1両増結された4両編成で、直流電化への対応を省略している。
外観はディープレッドとシャンパンゴールドの2色でまとめ、FGTのロゴが側面に入る。
部材に炭素繊維強化プラスチックを使用するなどしてN700系と同クラスの43トンを実現し、従来弱点とされていた車両重量の問題を解決した。
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