概要
京浜急行電鉄(京急)が運営する鉄道路線。京急蒲田駅と羽田空港第1・第2ターミナル駅(いずれも東京都大田区)を結ぶ。総延長6.5km(営業キロ)。
東京の空の玄関口のひとつである羽田空港(東京国際空港)とのアクセス路線である。
1902(明治35)年に穴守線として穴守稲荷までが開業。線名から察せられるように当初は沿線の穴守稲荷への参詣輸送を目的に建設された。ちなみに当時の穴守稲荷の本殿は現在の羽田空港の敷地内にあった。
大正期に羽田近くまで延伸されるも戦後の米軍羽田地区の接収の影響を受け、終点の位置が変更されている。
米軍接収終了後に同線の終点として初代の羽田空港駅が誕生したものの、終点の駅の場所は空港島に渡る手前の海老取川の対岸に位置し、しかも当初は空港ターミナルへのアクセスバスすらなくほぼ駅名詐欺に近い状態であった。
当時の空港線は現在の大師線に近い性格の純粋なローカル路線であり、1980年代に入ってアクセスバスの開設や新性能冷房車の投入が成されるまでは旧態依然とした状態が長年続いていた。またそのアクセスバスもマイクロバスで行うというマニアックな形でのアクセス手段であった。
1990年代に入り航空業界の成長による航空路線の国内各地への拡充に伴い羽田空港の沖合移転が具体化、またそれまで空港アクセスの唯一の軌道系交通機関であった東京モノレールにも輸送能力の限界が見えてきたこともあって本格的な空港アクセス路線としての整備が開始された。1993年に旧羽田空港駅を廃止した上で海老取川を潜って空港島内に羽田駅(現天空橋駅)を開設、羽田空港の拡充や国際化の拡大に伴い空港島内部へ延伸を繰り返し、現在の姿となる。環八通りや産業道路など大きな踏切が多かった大鳥居駅付近の地下化もこの時期に行われている。
またこれに伴い運転本数が大幅に増加した為、ボトルネックとなった京急蒲田駅の大規模改良工事(要塞駅化)も後に行われ、品川方面だけでなく横浜方面への運行も容易になった。
多くの列車は京急本線に直通。特急・急行・普通列車は、運行系統が品川方面と横浜方面の2方向に分かれるため、行先をよく確認する必要がある。
羽田空港利用客や沿線住民の都心への通勤通学に加えて、羽田空港の関係者の通勤の足としても利用されているため、朝夕は両方向で混雑する。
なお、当路線の終点は厳密に言えば羽田空港第1・第2ターミナル駅だが、駅名が長いことから京急各駅や直通運転先の都営浅草線・京成線・北総線の各駅および列車案内はすべて駅開業時の羽田空港行きと案内されている。
方面の見分け方
品川方面
- 種別…✈快特・快特・特急(朝夕は急行もあり)。
- 車両…京急車・都営車・京成車・北総&千葉ニュータウン鉄道車。
- 両数…8両編成。
- 京急蒲田駅ホーム…4番乗り場(品川方面)から発着する。なので2階ホームから発着する。
横浜方面
- 種別…急行(朝夕は特急・普通もあり)。
- 車両…大半が京急車両(極稀に都営車両もある)。
- 両数…6両・8両編成。
- 京急蒲田駅ホーム…1番乗り場(横浜方面)から発着する。なので3階ホームから発着する。
加算運賃と割引運賃
2019年10月には加算運賃が170円から50円に減額。品川駅~羽田空港駅間及び京急川崎駅~羽田空港間の現行(現金)410円から300円に大幅値下げされる(消費税増税の影響で実質110円に減額。但し、交通系ICカードでは292円)。横浜駅~羽田空港間だと480円から370円(こちらも消費税増税の影響で実質110円減額。但し、交通系ICカードでは364円)に減額される。
但し、これは羽田空港利用のみの加算運賃であり、羽田空港を利用しない場合は加算運賃が徴収される事はない。また、天空橋駅と空港ターミナル間に乗車する場合に限っては例外として加算運賃の対象外である(ターミナル間移動は加算運賃の対象)。
これによって2020年(令和2年)度でのコロナ禍での空港駅の利用者減少の幅を抑えた上、2021年(令和3年)度の羽田空港関連駅の利用者回復に大きく貢献に寄与した(対照的にモノレールは値下げしなかった事と京急の値下げもあり利用者が減少が激しく回復も鈍い)。
2021年(令和3年)現在では加算運賃回収率が85.2%と高い。2019年(令和元年)度~2021年(令和3年)度の回収率の伸び率(約85.2%→85.6%)が鈍かった。
更に、2022年度の乗降人員では前年度と比較して第3ターミナル駅で16,428人で前年度より7,997
人(48.7%)増加、第1・第2ターミナル駅では89,728人で前年度より29,383人(32.7%)増加しているし、86.3%と増加。
今後の利用者増加次第では一気に廃止、または減額する可能性が出てきている。
一方、都営地下鉄方面から羽田空港に向かった場合は上記の加算運賃とは別に60円(成田空港~羽田空港間の利用は京成本線経由・成田スカイアクセス経由ともに90円)の割引運賃が適用される。この割引額は2019年10月の運賃改定前から据え置きのものであり、結果的に都営線方面から利用した場合は加算運賃よりも割引運賃の方が大きくなる(合計で10円あるいは40円の割引)ため、空港よりも手前の天空橋駅で下車した場合、逆に高額になる(利用する駅によっては穴守稲荷駅以西も)というねじれ現象が発生してしまっている。
そのためこの現象への対策としての企画切符「羽田みらいきっぷ」が2019年10月より発売されている。
但し京急の公式ホームページでは案内されておらず(案内はpdfのみ)、また窓口のみ販売で大型の紙券にゴム印を押し、入場時には入鋏印を貰うという、(現物を見ると分かるが)なんともマニア好みな様式の切符になっている。なお発売は天空橋ー糀谷間の各駅に限られ、都営線方面での発売はない。(逆側からの利用は可)
加算運賃一覧表
発着駅は全て羽田空港第1・第2ターミナル駅基準。
到着駅 | IC乗車券 | 乗車券 | 備考 |
---|---|---|---|
品川駅 | 327円 | 330円 | |
京急川崎駅 | 327円 | 330円 | |
横浜駅 | 397円 | 400円 | |
上大岡駅 | 453円 | 460円 | |
金沢八景駅 | 560円 | 560円 | |
逗子・葉山駅 | 670円 | 670円 | |
横須賀中央駅 | 670円 | 670円 | |
新橋駅 | 541円 | 550円 | 都営浅草線と京急の合算 |
押上駅 | 635円 | 650円 | 都営浅草線と京急の合算 |
青砥駅 | 826円 | 840円 | 都営浅草線と京急と京成の合算 |
成田空港駅 | 1819円 | 1840円 | 都営浅草線と京急と京成と北総の合算(北総経由) |
成田空港駅 | 1624円 | 1640円 | 都営浅草線と京急と京成と北総の合算(京成佐倉経由) |
回収率
年度 | 回収率 |
---|---|
2017年(平成29年)度 | 76.3% |
2018年(平成30年)度 | 81.8% |
2019年(令和元年)度 | 85.2% |
2020年(令和2年)度 | 85.3% |
2021年(令和3年)度 | 85.6% |
2022年(令和4年)度 | 86.3% |
2023年(令和5年)度 | 87.5% |
歴史
1902(明治35)年 蒲田駅(現在の京急蒲田駅)~穴守駅(現在の穴守稲荷駅)間が穴守線として開業。
1910(明治43)年 全線複線化。
1913(大正2)年 蒲田~糀谷間を現ルートへ移設。穴守駅を現在の羽田空港の空港島のある穴守神社の近くまで移設し、0.8km延伸。
1914(大正4)年 旧穴守駅の位置に羽田駅が開業。1年後に稲荷橋駅に改称。
1945(昭和20)年 GHQによる接収で稲荷橋駅~穴守駅間休止。1952年まで上り線が連合軍に接収され、一時期国鉄からの引き込み線に転用し単線並列となる。
1947(昭和22)年 架線電圧を直流600Vから1500Vへ昇圧。
1956(昭和31)年 稲荷橋駅が穴守稲荷駅に改称。穴守稲荷駅~穴守駅間に羽田空港駅(初代)を新設復活。羽田空港まではバス連絡。
1963(昭和38)年 穴守線を空港線に改称。
1971(昭和46)年 羽田空港駅~穴守駅間が正式に廃止。
1976(昭和51)年 車両を此までの230形等の小型車から400形へ交替し大型化。
1983(昭和58)年 羽田空港再乗り入れ構想が浮上。
1985(昭和60)年 500形運行開始。
1986(昭和61)年 高性能普通車両800形運行開始。一気に高性能冷房化100%を達成し、吊り掛け駆動車は全て廃車。
1988(昭和63)年 羽田空港再延伸工事着工。
1991(平成3)年 1月工事進展につき穴守稲荷~初代羽田空港駅間運転休止。
1993(平成5)年 3月穴守稲荷~羽田(現・天空橋駅)まで再延伸、同時に初代羽田空港駅を廃止。本線より直通急行の運転が開始され、ホームも6両対応に延伸 北総鉄道からの直通だった為、京急・京成・都営車両を貸借。
1994(平成6)年 全駅8両ホームに再延伸し、北総鉄道の車両貸借を解消。
1997(平成9)年 本線直通急行の半数を特急に格上げ。大鳥居駅前後の区間を地下化。
1998(平成10)年 11月羽田空港駅(現・羽田空港第1・第2ターミナル駅)へ再延伸 羽田駅は天空橋駅へ改称。
羽田空港~成田空港間の直通列車であるエアポート快特、エアポート特急が新設。
2001(平成13)年 蒲田~大鳥居間の高架工事着工。
2006(平成18)年 日中のエアポート快特が全て京成佐倉駅止まりとなり、羽田空港~成田空港直通列車が激減。
2010(平成22)年 5月蒲田~大鳥居間上り高架完成。急行はエアポート急行へ改称し、北総鉄道方面~羽田空港、新逗子~羽田空港の二方向で運転。成田スカイアクセス運転開始と共に羽田空港~成田空港間の直通特急が復活。
2012(平成24)年 10月蒲田駅前後の高架完成。エアポート急行は新逗子発中心に、品川方面はエアポート快特や快特中心の運転となる。
2019(令和元)年 天空橋駅~羽田空港国内線ターミナル駅間の加算運賃廃止。
2022(令和4)年 11月運行系統の再編により日中の北総鉄道直通快特を特急に格下げし、横浜方面のエアポート急行を削減。
2023(令和5)年 11月エアポート急行が(現行の)急行へ改称。
京浜国道踏切のエピソード
地上線で開業して以来、京急蒲田駅を出て直ぐにあった京浜国道踏切は、時代と共に道路渋滞を引き起こす遠因となっていた。
実は大正時代から立体化構想があったものの長年実現せず、当初都営地下鉄との直通も、東京都は当初から空港線との直通を望んでいたが、京浜国道踏切の存在と、当時の空港線は14~16㍍の小型車規格だった為、京急川崎への直通に変更された逸話もある。
そして、年始恒例の箱根駅伝1月3日の復路では、この踏切が勝敗を左右する魔の踏切と言われ、電車通過踏切遮断中はロスタイムとして計上され、様々な悲喜交々のエピソードを生み出した。
羽田空港乗り入れを始めた1993年から2010年迄は本線との直通を中止し、線内折返し運転で対処、本来の優等列車は京急蒲田で運転を打ち切り、神奈川新町駅まで回送して折り返していた。
2011年の京急蒲田駅高架暫定完成時からは高架上の線路のみを使い、遂に魔の踏切の歴史が終わり、2012年10月の京急蒲田駅高架完成で遂に終止符を打ち、最後に京浜国道踏切を渡ったのは、都営車による翌朝始発の送り込み回送列車だった。
駅一覧
●は停車、レは通過。普通・急行・特急は空港線内各駅に停車するため割愛。
駅番号 | 駅名 | 快特 | ✈快特 | 接続路線 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
KK11 | 京急蒲田 | ● | レ | 京急本線 | ✈快特は品川から羽田空港まで無停車 |
KK12 | 糀谷 | レ | レ | 2012年に高架化 | |
KK13 | 大鳥居 | レ | レ | 1997年に地下化。かつて当駅近くにセガ本社旧社屋があった。リラックマとのコラボでは『大キイロイ鳥居駅』に変更された。 | |
KK14 | 穴守稲荷 | レ | レ | 文字通り穴守稲荷への最寄り駅だが、ヤマト運輸羽田クロノゲート最寄り駅でもある。 | |
KK15 | 天空橋 | レ | レ | 東京モノレール(MM07) | |
KK16 | 羽田空港第3ターミナル | ● | ● | 東京モノレール(MM08) | |
KK17 | 羽田空港第1・第2ターミナル | ● | ● | 東京モノレール羽田空港第1ターミナル駅(MM10)/羽田空港第2ターミナル駅(MM11) |