概要
JR東日本・JR北海道が東北新幹線・北海道新幹線で運行する列車。
2002年(平成14年)12月1日、東北新幹線の盛岡駅~八戸駅間の開通に伴い、それまで大宮駅~仙台駅間をノンストップで運転する速達型の「やまびこ」(通称・「スーパーやまびこ」)を改称する形で新設された。東北新幹線では初めてとなる全車指定席の列車で、最高速度は275km/h。ただし、当初は仙台駅・盛岡駅発着の列車では自由席も設定された。
列車名について
列車名は疾風(しっぷう)の別の読み方「はやて」に因む。「白鳥」や「つがる」などと共に公募で決定されたが、「はつかり」や「みちのく」が上位であり、「はやて」は19位だった。
元々「はやて」という名称は、列車愛称を最初に採用した1929年(昭和4年)の一般公募時から候補の中に挙げられており、東海道新幹線の愛称公募でも第4位にランクインしていた。以後も列車名の一般公募ランキングにたびたび候補として浮上しながらもなかなか採用には至らなかったが、将来の新青森駅延伸も視野に入れて「斬新でスピード感を表す名称」として採用された。だが、大本命の新青森駅延伸時にはなんと九州から飛んできたあの愛称が採用された。
運行状況
元々は最速達列車として東北新幹線の全区間で定期運行されていたが、本列車を上回る最高速度の「はやぶさ」が登場してからは最速達列車としての役割を譲り、「はやぶさ」を補完する形での運行となった。以後は最高速度300km/h以上の列車を「はやぶさ」、最高速度275km/h以下の列車を「はやて」として区別している。
定期列車としては盛岡駅〜新函館北斗駅間に1往復(93・98号)、新青森駅〜新函館北斗駅間に1往復(91・100号)のみであり、どちらも下り列車は早朝、上り列車は深夜にのみ設定されている。これは盛岡駅〜新青森駅〜新函館北斗駅間の最高速度が260km/h(青函トンネルを含む北海道新幹線の三線軌条区間は当面160km/h)に制限されているためで、この区間のみを運行する列車は必然的に「はやて」の愛称で固定となるのである。
東京駅発着の定期列車は「はやぶさ」に吸収される形で消滅したが、以後も繁忙期には東京駅〜新青森駅間の臨時「はやて」が設定されることがある。
また、2024年1月2日の羽田空港地上衝突事故で羽田空港が閉鎖された際の救済臨として新函館北斗〜東京間の臨時「はやて」が設定されたことがある(普通車全車自由席、グリーン車とグランクラスは営業なし)。これは「はやぶさの自由席」の料金の設定が制度上存在しない為自由席特急券が発売可能な「はやて」を起用したものと思われる。
停車駅
本列車の前身である速達型「やまびこ」と同様、大宮駅〜仙台駅間はノンストップで運行される。これは後発の「はやぶさ」も踏襲している。
盛岡駅・新青森駅~新函館北斗駅間に1往復ずつ運転されている定期列車は、いわて沼宮内駅を除く全駅に停車する。
使用車両
この他、付属編成として秋田新幹線用のE3系0番台やE6系を連結する列車も存在した。なお、H5系はE5系と運用が分かれており、定期「はやて」に充当されたことはない。
歴史
- 2002年(平成14年)12月1日:東北新幹線の盛岡駅~八戸駅間が開通。大宮駅~仙台駅間をノンストップで運転する速達型の「やまびこ」(通称・「スーパーやまびこ」)を改称し、最速達列車として「はやて」を新設。当初は東京駅〜八戸駅間に15往復、仙台駅〜八戸駅間に1往復が設定された。停車駅は全列車が東京駅・仙台駅・盛岡駅に停車。2号を除く全列車が上野駅・大宮駅に停車。一部列車が上野駅・古川駅・一ノ関駅・北上駅・いわて沼宮内駅・二戸駅に停車。使用車両は全てE2系0番台・1000番台(J編成)で、東京駅・仙台駅〜盛岡駅間では秋田新幹線「こまち」(E3系0番台)と連結。八戸駅で特急「白鳥」・「スーパー白鳥」や「つがる」と接続。
- 2010年(平成22年)12月4日:東北新幹線の盛岡駅〜新青森駅間が開通。特急「白鳥」・スーパー白鳥」や「つがる」との接続駅が新青森駅に変更。
- 2011年(平成23年)3月5日:「はやて」の上位列車として「はやぶさ」が新設される。
- 2011年(平成23年)11月19日:東京駅〜新青森駅間の2往復と東京駅〜盛岡駅間の2往復をE5系に置き換え。同時にグランクラスの営業を開始。
- 2012年(平成24年)3月17日:東京駅〜新青森駅間の5往復、仙台駅〜新青森駅間の1往復、盛岡駅〜新青森駅間の1往復をE5系に置き換え。
- 2012年(平成24年)4月27日:東京駅〜新青森駅間の1往復をE5系に置き換え。
- 2012年(平成24年)9月29日:東京駅〜新青森駅間の3往復、東京駅〜盛岡駅間の1往復をE5系に置き換え。
- 2013年(平成25年)1月26日:東京駅〜新青森駅間の2往復をE5系に置き換え。
- 2013年(平成25年)3月16日:新青森駅発着の定期「はやて」をE5系に統一。これに伴い、E2系の盛岡駅〜新青森駅間の定期運用が終了し、E2系による「はやて」は臨時列車のみとなる。盛岡駅・新青森駅発着列車のうち4往復を「はやぶさ」に変更。以降、新青森駅発着列車は欠番が発生する。
- 2013年(平成25年)9月28日:新青森駅発着列車のうち3往復を「はやぶさ」に変更。盛岡駅発着列車のうち1往復に連結していたE3系0番台をE6系に置き換え。これにより、17両編成の列車が設定される。E2系とE3系0番台の併結による定期運用が終了。
- 2014年(平成26年)3月15日:新青森駅発着の定期列車が、盛岡駅〜新青森駅間の1往復のみに削減される。東京駅〜盛岡駅間(仙台駅〜盛岡駅間各駅停車)の「はやて」の一部列車を「はやぶさ」に置き換え。これにより、盛岡駅発着の定期列車は下り3本・上り4本となる。E6系による定期運用が終了。秋田新幹線との連結運転を終了(「はやぶさ」に完全移行)。
- 2016年(平成28年)3月26日:北海道新幹線の新青森駅〜新函館北斗駅間が開通。「はやて」が盛岡駅・新青森駅〜新函館北斗駅間での運転を開始。東京駅〜盛岡駅間(仙台駅〜盛岡駅間各駅停車)の上り2本が「はやぶさ」に置き換えられ、盛岡駅発着の定期列車は下り3本・上り2本となる。盛岡駅〜新青森駅間の1往復(93号・98号)に設定されていた自由席を廃止。これにより、全列車が全車指定席となる。
- 2018年(平成30年)3月17日:東京駅〜盛岡駅間(仙台駅〜盛岡駅間各駅停車)の2往復が「はやぶさ」に置き換えられ、東京駅〜盛岡駅間の定期列車は下り1本のみとなる。
- 2019年(平成31年)3月16日:東京駅〜盛岡駅間の「はやて」が「はやぶさ」に置き換えられ、東京駅〜盛岡駅間から「はやて」の定期列車が消滅。青函トンネル内の最高速度が140km/hから160km/hに向上。
今後の予定
新型車両の増備に伴い2027年度を目処に東北新幹線の盛岡~新青森間の最高速度が現行の260kmから320kmに引き上げられる予定となっている。
そのタイミングで、定期列車から「はやて」の名称も消滅するものと思われる。
もっとも、前述の通り「はやぶさ」には自由席の料金制度が無いので、「はやぶさ自由席」の料金制度ができない限り「はやて」の名前が完全に消えてしまうことはないだろう。