概要
国鉄民営化後に投入されたJR東海のキハ85系特急形気動車が、大規模なリニューアル工事を受けないまま製造から30年を経過したことから、その代替車両として開発された。「ハイブリッド式」と報道で発表されているが、実際は「蓄電池」を搭載した「電気式気動車」の1つである。
「Hybrid Car」の頭文字である「HC」を形式名として新たに使用、また「キハ85系」の「85」をそのまま形式名として継承した。
2019年~2024年に68両(試験走行車を含む)を製造し、キハ85系80両を置き換える。
ディーゼルエンジンを使用している点は従来の気動車と同じであるが、電気式気動車の場合はディーゼルエンジンで発電機を動かし、そこから発生する電力によりモーターを回している。HC85系の場合はさらに蓄電池も装備しており、ディーゼルエンジンが発生させた電力と、蓄電池の電力の両方を併用して車両を動かす。
このシステム自体はJR東日本のHB-E210系(仙石東北ライン用)やJR西日本の87系(トワイライトエクスプレス瑞風)等でも採用されているが、この車両は特急運用に特化する為に最高速度を120km/hまで引き上げ、さらに飛騨地方の豪雪にも耐えられる仕様とした。
- HC85系はまず量産先行車(D1編成)が2019年度中に落成。基本性能試験や長期耐久試験などの結果を踏まえて、2022年4月22日に量産車の第1陣が初めて落成した。
- JR東海伝統であった『ワイドビュー』の愛称を最初から持たず、前面展望も廃止。車内チャイムも『ワイドビューチャイム』から、国鉄気動車で使用されていた『アルプスの牧場』のアレンジバージョンに変更されている。
- 2022年7月1日の『ひだ』より営業運転開始(1、4、10、17号。その後も置き換えが進み、12月1日以降は富山駅乗り入れ開始。
- 2023年3月18日のダイヤ改正より、『ひだ』定期列車全てをHC85系に統一予定。大阪駅乗り入れ開始。
- 2023年7月 『南紀』にも導入し、キハ85系を全て置き換える予定。4両編成での運行を予定。(2023年1月1日発表。)
車種構成
形式
先頭車は85、中間車は84の番号を使用。この車両は(厳密には)気動車(ディーゼルカー)であるが、本来電車で用いられるべき記号「モハ」「クモハ」「クモロ」を使用している。
JR東海社内では、運転免許(動力車操縦士免許)は電車用・気動車用のどちらでも取り扱い可能とされた。
先頭車は分割併合を考慮して全車両が貫通型に揃えられた。
- クモロ85形:全室グリーン席の岐阜・大阪方の先頭車。トイレ付き。
- クモハ85形0番台:4両編成用。全室普通席の高山・富山・紀伊勝浦方の先頭車。トイレ無し。
- クモハ85形100番台:2両編成用。全室普通席の高山・富山・紀伊勝浦方の先頭車。トイレ無し。
- クモハ85形200番台:2両編成用。全室普通席の岐阜・大阪方の先頭車。トイレ付き。
- クモハ85形300番台:4両編成用。全室普通席の岐阜・大阪方の先頭車。トイレ付き。
- モハ84形0番台:全室普通席の中間車。トイレ付き。
- モハ84形100番台:全室普通席の中間車。トイレ無し。
編成
基本編成は4両編成。グリーン車を組み込んだ4両と、グリーン車無しの2種類が用意された。また、増結車両や利用客が少ない区間で使用する2両編成も製造。
2両1ユニット構成のため、キハ85系のような1両単位での増結は出来ない。各編成を組み合わせた2両、4両、6両、8両、10両編成で運用。
←大阪・岐阜/高山・富山・紀伊勝浦→
編成 | 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 編成数 |
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D1〜 | クモロ85-0 | モハ84-100 | モハ84-0 | クモハ85-0 | 8本 |
D201~ | クモハ85-300 | モハ84-100 | モハ84-0 | クモハ85-0 | 4本(予定) |
D101〜 | クモハ85-200 | クモハ85-100 | 10本(予定) |
その他
新幹線変形ロボ_シンカリオンZ_THE_ANIMATIONにて、『ザイライナーHC85ひだ』というHC85系をモデルとしたロボットが登場。新幹線N700Sが変形するロボット『シンカリオンZ_N700Sのぞみ』と合体する武装パーツに変形する。なお、放送時期はHC85系のデビュー前であった。
関連タグ
気動車 電気式気動車 ディーゼルカー ハイブリッド YC1系
JR東海 特急形 キハ85系 ひだ 南紀
高山本線 関西本線 紀勢本線 伊勢鉄道
ザイライナー シンカリオンZ_N700Sのぞみ