ホームライナー
ほーむらいなー
主に通勤時間帯や帰宅時間帯に長距離を座って快適に移動したい乗客のために特急型車両などを使って運行される快速列車の派生種である。
乗車にはライナー券などと呼ばれる乗車整理券が必要だが、金額が比較的安く設定されており、懐の厳しいサラリーマンの味方である。お値段は平均すると300円強。
元々は都心のターミナル駅に到着した特急用車両を郊外の車庫へ回送する際に客扱いを行うようにしたのが始まりである。
都心の駅に到着した優等列車を郊外の車両基地がある駅まで回送する代わりに営業列車にした例の最も古いものは1968年10月1日(ヨンサントウ)改正で設定された総武本線の気動車快速列車である。新宿駅に房総半島方面からの急行列車として到着した後、折返し御茶ノ水発千葉行きとして2本が運行された。停車駅は秋葉原駅と船橋駅で、今のホームライナーのように特別料金は徴収しなかった。しかし回送列車のダイヤをほぼそのまま踏襲したため所要時間は各駅停車と大差なかった。
ホームライナーという名称を初めて使った列車は、国鉄が1984年6月1日に東北本線上野-大宮間を回送する特急型電車を活用したものとされる。この頃の国鉄は赤字を少しでも減らすため収入を確保できることになりふり構わず挑戦しており、似たような列車が同年7月23日に総武本線で、9月には阪和線でも運行を開始した。
- 上野-大宮間の元祖ホームライナーに「ホームライナーおおみや」の愛称がついたのは1984年7月23日のこと。
- 総武本線の列車は「ホームライナー津田沼」、阪和線の列車は「ホームライナーいずみ」の愛称が付いていた。
運転開始当初は車内整備の関係からか1編成のうち数両でしか客扱いせず、1編成すべての車両で客扱いをするようになったのはそれから数年後のことである。
1986年11月に運行を開始した東海道線の「湘南ライナー」と阪和線の「はんわライナー」は回送列車の営業列車化ではなく、単独の旅客列車のスジを新規設定している。
民営化後はJR各社が持つ都市圏で盛んに設定されるようになり、JR東日本では首都圏だけでなく新潟・長野・仙台地区、JR東海では中京圏・静岡地区、JR北海道では札幌地区、JR西日本では近畿圏(アーバンネットワークエリア)、JR九州では福岡・宮崎・鹿児島地区で設定された。
しかし後にホームライナーを特急列車へ格上げする動きが加速し、採算性の悪い列車は普通列車や快速列車へ置き換えられていき、近畿圏から九州地方では2011年3月までに全廃。その他の地区でも本数が徐々に減っている。
- 最近では特急列車の回送を営業列車にするという例は減り、ライナーはライナーで運用を組む例が多くなっている。
- JR四国も一時ホームライナーを設定していたが、利用率が悪かったのか試験運行に終わり、定期列車にはならなかった。
乗車の際は乗車券の他に「ライナー券」または「乗車整理券」を駅で購入し、指定された号車または座席に乗車する。多くの場合座席の数しか発売しないため着席が保証されるが、札幌地区と静岡地区では制限なく発行されるため着席できる保証はない。
一部のライナー列車では運用の関係からグリーン車が連結されているがこれの扱いは会社や地域、列車によって異なり、ある列車ではグリーン券を購入することで着席可能、ある列車では普通車扱いでライナー券または乗車整理券と乗車券のみで着席可能、ある列車ではグリーン車は乗車不可能(通路として通り抜けることは出来る)とかなりバラバラである。
ホームライナーは多くの場合特急型車両を使い、停車駅を比較的大規模な駅に絞っているものの普通列車の扱いであり、特急や急行に乗車できない青春18きっぷでもライナー券や整理券を購入すれば乗車可能である。
相次ぐ縮小
JR東日本ではホームライナーの特急格上げが行われた結果、2021年春のダイヤ改正で設定を終了。2022年時点で最も多くホームライナーを運行しているのはJR東海である。こちらは相次ぐ運用縮小で余剰となった373系の有効利用という面もある。ただしJR東海も同年の改正で本数を大幅に減らしている。
北海道の特例
JR北海道では手稲-札幌間を途中無停車で運転するホームライナーが設定されているが、追加料金となる乗車整理券代は100円と格安に抑えられている。