路線データ
路線名 | 参宮線 |
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路線区間 | 多気〜鳥羽 |
路線距離 | 29.1km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 10駅 |
最高速度 | 100km/h |
非電化区間 | 全線 |
単線区間 | 全線 |
閉塞方式 | 自動閉塞式(特殊) |
保安装置 | ATS-PT |
運転指令所 | 東海総合指令所 |
第一種鉄道事業者 | 東海旅客鉄道(JR東海) |
概要
多気駅(三重県多気郡多気町)と鳥羽駅(鳥羽市)を結ぶ東海旅客鉄道(JR東海)の鉄道路線で、地方交通線。
その名の通り伊勢神宮への参拝客を輸送する目的で作られ、戦前は伊勢神宮が国家神道の聖地ということもあり重要路線とされていた。
後述するが現在も名古屋駅から快速「みえ」が運行されており、競合路線である近鉄程では無いにしろ、伊勢神宮へのアクセス路線の一つとして機能している。
存廃問題
戦後国鉄が参宮線への投資を控えた事、かつては参宮線の一部であり比較的都市部を走っていた亀山駅〜多気駅間を紀勢本線として分離した事、競合路線である近鉄山田線・鳥羽線との競合に敗れた事、モータリゼーションの進行や並行する高速道路として伊勢自動車道(伊勢道)の開通により、国鉄時代ならば廃止されかねないほどの赤字ローカル線となっている。
とはいえ国鉄時代に赤字83線に選定されたり特定地方交通線として廃止が検討されたものの、廃線の例外規定に当てはまる程度の客数は確保していた為その都度廃止を免れている。
民営化後はJR東海が増発や臨時列車の運行等存続に向けた施策を行っている。
但し沿線には参宮線の存在そのものを否定的に考えている勢力もいた。その代表例が地元の有力者であり伊勢市及び三重県を代表する内宮銘菓製造会社の会長である。
彼は2007年(平成19年)、伊勢神宮で20年に一度の式年遷宮に備えて周辺地域への自動車での観光客誘致にこの路線が邪魔であるという理由から「(鉄道は近鉄もあることだし)参宮線は廃線にして跡地を駐車場にしたらどうか」と提案した。これに対してJR東海は身勝手な発言として釘を刺し、2013年(平成25年)の式年遷宮においては快速の増便・増結や臨時急行の設定を行って利便性向上を図った。
なおその発言者は当該企業による一度目の不祥事(製造期限偽造)で退任したが、ほとぼりが冷めた頃に会長に再任。しかし二度目の不祥事(反社会的勢力との繋がり)により再び退任した。
余談だがJR東海はすぐ近くにここよりもひどい路線を所有しており、そちらも国鉄時代は代替道路未整備という理由で特定地方交通線の廃止リストから外れている。なおこちらは民営化後災害により末端区間が長期間不通となった際にJR東海が廃止を検討したものの、自治体が復旧費用及び維持費用を負担する事を条件にJR東海の路線のまま全線復旧している。
沿革
開業から全線開通まで
- 1893年(明治26年)12月31日:参宮鉄道の路線として津駅〜宮川駅間開通。現在の参宮線区間では(初代)相可駅(現・多気駅)、田丸駅、宮川駅が開業。
- 1897年(明治30年)11月11日:宮川駅〜山田駅(現・伊勢市駅)間延伸。筋向橋駅(現・山田上口駅)、山田駅開業。
- 1907年(明治40年)10月1日:参宮鉄道が国有化。
- 1909年(明治42年)10月12日:国有鉄道線路名称制定により、関西鉄道として開業した亀山駅〜津駅間を合わせて亀山駅〜山田駅間が参宮線となる。
- 1911年(明治44年)7月21日:山田駅〜鳥羽駅間延伸に伴い、全線開通。鳥羽駅開業。
全線開通後から国鉄分割民営化まで
- 1917年(大正6年)10月10日:筋向橋駅が山田上口駅に改称。
- 1923年(大正12年)3月20日:(初代)相可駅が相可口駅に改称。
- 1959年(昭和34年)7月15日:亀山駅〜多気駅間を紀勢本線として分離。相可口駅が多気駅、山田駅が伊勢市駅にそれぞれ改称。
- 1963年(昭和38年)4月1日:外城田駅、五十鈴ケ丘駅、松下駅開業。
- 1969年(昭和44年)7月1日:伊勢市駅〜鳥羽駅間の貨物営業。
- 1973年(昭和48年)7月30日:無煙化。
- 1982年(昭和57年)10月1日:宮川駅〜伊勢市駅間の貨物営業廃止。
- 1986年(昭和61年)4月1日:貨物営業廃止。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化に伴いJR東海が第一種鉄道事業者として継承。
国鉄分割民営化以降
運行形態
定期列車は名古屋駅発着の快速「みえ」と、主に亀山駅発着の普通列車が運行されている。
臨時列車として特急や急行が設定されていた事はあるが、定期列車としては存在していない。
また競合路線である近鉄と違い名古屋駅方面のみの運行で関西発着の列車は団体臨時列車のみ。しかし使用車両の引退等で近年は設定されていない。
- 快速みえ
詳細は当該記事を参照。
名古屋駅と伊勢市駅・鳥羽駅間を終日に渡りほぼ毎時1本間隔で運行する列車。一部時間帯では停車駅を増やし普通列車の代替となっている。
- 普通
沿革の項でも記載した通り歴史的経緯から紀勢本線との繋がりが強い。
基本的には亀山駅〜伊勢市駅・鳥羽駅間の運行だが、一部松阪駅発着や多気駅発着の線内運用も存在する。過去には名松線からの直通列車も存在した。
概ね毎時1本程度の運行だが、一部時間帯は快速「みえ」が普通列車の代わりとなっている。
大半の列車がワンマン運転を行っている。
駅一覧
●:停車 ○:一部停車
廃止駅
使用車両
現在の使用車両
定期運用では名古屋車を使用し、快速「みえ」及び間合いで一部の普通列車として運用される。
美濃太田車は臨時列車や増結用で使用されている。
過去には関西方面からの修学旅行などの団体臨時列車も存在したが、使用されていたキハ181系などが廃車されたことにより、現在はこの方面からの乗り入れは途絶えている。
名古屋車両区所属の一般形気動車。
殆どの普通列車で運用され、一部を除きワンマン運転を行う。
過去の使用車両
国鉄民営化後の車両のみ記載。
JR東海所属
名古屋車両区所属の特急形気動車。
臨時列車として入線した。
名古屋車両区・伊勢車両区(廃止)所属の急行形気動車。
名古屋車は快速「みえ」及び臨時列車で、伊勢車は普通列車で運用されていた。
伊勢車両区所属の一般形気動車。
キハ30形は民営化直後まで、キハ40系・キハ11形はキハ25形への置き換えまで普通列車で使用されていた。
JR西日本所属
- キハ181系・キハ58系
京都総合運転所(現・吹田総合車両所京都支所)所属の特急形(キハ181系)・急行形(キハ58系)気動車。
修学旅行列車等としてJR西日本管内から乗り入れていた。
余談
単線化
戦前まで複数区間で複線化されており、前述の通り国家神道の影響から伊勢神宮の参拝者輸送の為重要視されていた。
しかし戦局の悪化に伴う金属資源の不足により、不要不急線として資源供給の為レールを1線分撤去し単線化された。
なお、同じくJR東海の路線である御殿場線も同様の理由で単線化されている。
近鉄・高速道路との競合
名古屋及び新幹線を利用し首都圏と伊勢・志摩を結ぶ需要は近鉄経由が圧倒的である。JR乗り放題の青春18きっぷやジャパンレールパスがある為JR経由の需要も一定数存在するものの、大きく差を付けられている。
元々近鉄は異なる複数の鉄道会社によって建設され、当初は名古屋線が狭軌、大阪線や山田線は標準軌だった。伊勢湾台風を契機として名古屋線を標準軌に改軌し、鳥羽線を開通させて名古屋と伊勢・志摩への直通を可能にした。
電車で運行され本数の多い近鉄に対し、国鉄は非電化単線の参宮線への有効な対策を取れず、また伊勢線の第三セクター転換に伴う値上げの影響もあり、今日まで大幅に差をつけられている。
また東海地方は元々モータリゼーションが進んでいる地方であり、東名阪自動車道・伊勢自動車道を経由すると名古屋方面とのアクセスが容易である。なお参宮線沿線を経由する高速バスは首都圏及び仙台駅発着の夜行バスが運行されているのみで、競合しているのはマイカーである。
関連項目
近鉄名古屋線 近鉄大阪線 近鉄山田線 近鉄鳥羽線 近鉄志摩線
三重交通:沿線で高速バスを運行