E351系電車(E351けいでんしゃ)は東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流特急形車両。
概要
1993年12月23日に特急「スーパーあずさ」(現「あずさ」)として営業運転を開始した。JR東日本の新幹線を含む新製車両の中で、初めて形式称号に「E」が冠された。
並行する中央高速バスに対抗するため、制御つき自然振り子装置を採用し、曲線区間でのスピードアップを可能とした。最高速度は130km/h、新宿 - 松本間の最速列車は2時間25分で、山岳路線の列車でありながらも表定速度は90km/hを超える。
振り子の有無と最高速度の違いにより所要時間に差が生じたことで、E351系使用列車は「スーパーあずさ」とし、183・189系(⇒E257系)使用列車を「あずさ」として、列車名を使用車両ごとに区別した。後継車両としてE353系が2017年12月23日にデビューしたことでE351系は2018年3月17日のダイヤ改正に合わせて定期運行を終了し、同年4月7日のラストランをもって引退した。老朽化が激しい事や振り子式車両という特殊性から他線への転用が難しい為に廃車された。
廃車後は全車解体されており、現存するものはない。なお、特急形電車の全車廃車解体はJR東日本において初となった。
仕様
編成
編成は4M4T(基本編成)+2M2T(付属編成)で、フル編成状態では6M6Tの12両編成で構成される。
グリーン車は基本編成のみに連結されている。
車体
車体は普通鋼製であるが、従来の鋼製車よりも軽量化が図られている。
車体傾斜時に(特に中央線の小断面トンネル内で)トンネル壁などに接触することを防ぐために上部が絞られ、車体断面はたまご型となっている。
空調装置は低重心化のため室外機の一部を床下に設置するセパレート型を採用。ただし(特に試作車は)天井の空調装置がかなりのサイズとなっているため、トンネル内で空調装置が壁にこすってしまった事故もあったとかなかったとか…
車内
車内は普通車・グリーン車ともに(左右でのバランスを保つために)4列座席となっている。
座席は自動車のシートと同じ立体成型シートを採用した。
グリーン車の座席にはシートヒーターも組み込まれている。
制御装置
制御装置は試作車がGTOインバータ(日立製)、量産車がIGBTインバータ(日立製)を採用。
量産先行車のインバータの動作音は機器更新前の西武6000系や京王8000系に、量産車のインバータの動作音は東武30000系や京王1000系(日立IGBT車)に似ている。
走行機器
電動機
電動機は新型のMT69型三相交流誘導電動機を採用。
外扇式のため、高速域では東急2000系などと同じような高い音が目立つ。
定格出力は150kWと平凡ながら、許容回転数は7000rpmという(鉄道車両用の電動機としては)非常に高い値に設定されている。
この数値がどれだけ異常なのかというのは、
- E231系や223系1000番代の電動機の許容回転数が5800rpm程度
- 京成AE100形/3700形の電動機の許容回転数が5700rpm
…という辺りで察することはできるだろう。
量産車では、少し性能が変わり、IGBT素子VVVFインバータ制御、ギア比16:89=1:5.56、主電動機定格回転数3575rpm、最高回転数4900rpmに変更されている。
駆動装置
駆動装置はTD継手が採用されている。
ギア比は量産先行車は17:88=1:5.18に、量産車は16:89=1:5.56に設定。
台車
コロ式振り子台車を履く。軸箱支持方式は円筒案内式。
車体傾斜時にパンタグラフの離線を防ぐため、パンタグラフ台座と台車枠を車体を貫通して直結させ、パンタグラフが常に真上を向くようにしている。
中央西線~篠ノ井線を走る「しなの」(381系・383系)と異なり、中央東線は電車導入時点で振り子車両を入れなかった区間のため、車両側で車体傾斜によるパンタグラフの偏位をキャンセルする機構が必要だったためである。
性能
起動加速度は未公表ながら、旧型の183系よりもかなり向上しているようだ。
最高運転速度は130km/hではあるものの、中央線の高速化を視野に入れた設計となっており160km/h走行にも対応していた。
最終的には引退まで、160km/h対応という高速性能を活かす運転がなされることはなかった。
また新宿~八王子(高尾)は通勤電車の間を縫って走行しており、しかもこの区間の距離が高尾まででも40km近くある。一応最高速度はこの区間についても95km/h(201系引退後100km/h)取られているが、雁行せざるを得ない時間帯ではそこまで出すことはない。
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APT・・・はるか異国の地で産まれたそっくりさん