EF55

いーえふごじゅうご

鉄道省(日本国有鉄道の前身)が製造した直流区間用電気機関車。流線型の車体が特徴。

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概要

鉄道省が1936年に3両製造した直流電化区間用電気機関車。

東海道本線の電化延伸にあたり、優等列車を牽引すべく誕生した。

最大の特徴はその外見であり、国産電気機関車としては他例のない流線型の前後非対称形状の車体を持つ。

これは鉄道・自動車などの分野で当時世界的に流行していた「流線形ブーム」に触発されたもので、1934年に試験改造されたC53（43号機）、同時期に製造されたC55の中期グループなどにも見られた。（電車・気動車では、国鉄・私鉄を問わず類例が多数存在する）

機構的には実績のあるEF53を踏襲しており、歯車比を若干高速向けに振り向けた設計となっている。

電装部品などは共通であったため、高崎機関区に保管されていたEF53・EF59から融通出来た事も復活後長期運用できた理由である（後述）。

EF55は多くの特徴を有する機関車であった。

車体を美しく仕上げるため、車体の成形には当時最先端だった電気溶接を使用した他、第1エンドは連結器を露出しない（格納式）流線形、第2エンドは切妻のデッキ式という異なる顔を採用、側面も車体裾部にカバーを取り付けてスマートさを強調した。

第1エンドを先頭にする前提で設計されたため、第2エンドの運転台は簡易運転台の扱いであった。さらに台車の軸配置すらも前後非対称で、両側で先輪の数が異なる。（2-C-C-1）

しかし、当時の日本の鉄道の速度域（制度上の最高速度は95km）では流線形による空気低減の効果は少なく、むしろ整備時の手間が増える、さらに運用時には蒸気機関車のように必ず方向転換を必要とする弊害をもたらしたため、わずか3両の製造に終わった。

そもそも誕生の経緯そのものが、鉄道省（国鉄）が国内外への喧伝のために、看板列車である特急「燕」「富士」などの牽引用に必要数だけ製造した節も否めないであろう。

運用開始後、第1エンドの連結器は常時露出するよう改造され、第2エンドも運転台が本線用に整備された。

戦後も引き続き運用されたが、後継機のEF58（SG装備）によって置き換えられ、1952年には活躍の場を高崎線に移す。その頃になると整備性の向上のために1エンド側連結器周辺や側面のカバーが撤去され、美しさは完全に失われむしろ惨めな姿になってしまった。

高崎線転用後も電気機関車でありながら転車台による方向転換を必要とするなど、他の電気機関車との共通運用が難しい課題は最後まで付きまとい、1958年頃になると運用から外されるようになり、結局1964年までに全車が廃車になった。

1号機のみが解体を免れ、東京都国分寺市に所在した中央鉄道学園の教習用として使われた。（その後高崎第二機関区に移動）

なお、1962年に廃車になった3号機の電装品の一部が、交直流電気機関車のED30（北陸本線米原～田村間の接続用）に流用されている。

1号機は1978年に準鉄道記念物に指定され、既に撤去されていたスカートや連結器カバーを復元されたがその後は事実上放置に状態だった。しかし1985年の機関車展示会において機関区有志の手により構内運転が可能な状態にまで整備された。

翌年には大宮工場で本線走行可能な状態まで復元され、奇跡的に車籍も復活した。

JR発足にあたりJR東日本高崎運転所に継承され、イベント列車の牽引用として活躍した後、2009年に老朽化により再び引退した。

そして引退から約9年後の2015年1月23日深夜にEF64牽引で高崎運転所から大宮に輸送され、1月26日に正式に鉄道博物館での展示が決定。大宮総合車両センターで整備され、4月12日から鉄道博物館ヒストリーゾーンの転車台上に展示されている。

現在でも同館の看板的な立場を担っており、世代を超えて鉄道ファンに愛されている。

ちなみに、戦時中に機銃掃射を受けた跡（運転台の上の辺り）を残す太平洋戦争の生き証人でもある。

2022年にアニメ化が発表された、ラブライブ!シリーズの外伝作品『幻日のヨハネ』のティザーPVにて、ヨウ(幻日のヨハネ)の背景にEF55によく似た機関車が描かれている。EF55が新製配備されたのは同作の舞台でもある沼津機関区であり、フィクションながら古巣への帰還を果たしたと話題になった。
その沼津機関区で1986年に行われた開設100周年イベントの目玉に抜擢され、当時所属していた高崎第二機関区から同区に貸し出され、東海道本線で記念列車を牽引した。この際、方向転換のために二俣線（現在の天竜浜名湖鉄道）に送り込まれ、天竜二俣駅の転車台を使用している。
鉄道模型では2000年にマイクロエースが初めてNゲージ完成品を発売。しかし、カーブで流線形の車体カバーと台車が干渉するのを防ぐため、先輪は常時宙に浮いているダミーとなった。この問題は、2023年に発売されたKATOの完成品が、台車の軸をカーブに応じてずらすという新機軸を採用したことでようやく解決された。