JR貨物 EH500形電気機関車
愛称(ニックネーム)は「ECO-POWER 金太郎(エコパワー きんたろう)」。製造元は東芝府中事業所。1997年に試作機(901号機)が落成、2000年に量産機(0番台)が落成して以降増備された。
外観上の特徴
2車体8軸の車体構造のほかにも、製造時期ごとに試作機(901)、1次車(1~2)、2次車(3~9)、3次車(10~81)に分けられており、3次車がいちばん車体塗装における赤の面積比率が高い。
また、車体には愛称にちなみ、金太郎のイラストが描かれている。
ちなみに、二両永久連結のH級機であるためEH10が「マンモス」というあだ名がついていたのに対応して「平成のマンモス」というあだ名がついている。
開発の経緯
老朽化したED75の代替と首都圏~五稜郭間における機関車付け替えの省略を目的に開発した。もともとはEF500を量産化しようとしたが、軸重が重すぎたり機器が複雑になったためと、さらに東北本線の藤田~白石間および十三本木越えや青函トンネルにおける勾配対策のために、国鉄のEH10形以来の2車体連結8軸方式で開発することになった。
なお、趣味誌やファンの考察で線路使用料をケチるために2車体連結仕様となったという見方がよく聞かれるが、JRFや第二種事業者から契約や規定に関する情報の公開がされていないため真偽は不明である。
交流区間でED75の重連程度の出力が要ること、直流区間では徒に出力を上げられないこともあり、搭載する主電動機は1基565kWの容量(1時間定格)があるが、運転上直流区間3400kW・交流区間4000kWとどちらもだいぶ余裕を取ってある。
区分
試作機(901)
1997年東芝府中工場で落成、1998年JR貨物に車籍編入し長町機関区(現在は廃止)新製配置され、各種試験に供された。1999年、仙台総合鉄道部完成に伴い同鉄道部に転属した。
クリーム色の前面帯は正面窓直下、形式番号表示部にあり、幅は量産車に比べ細い。
前照灯は正面下部に設置され、正面窓の傾斜角も量産車と異なる。
車体側面のルーバーは小型で、採光窓は片側5組(×2車体)と量産車に比べ多い。また、
車体側面の銘板は901号機のみ英語の「TOSHIBA」となっており、取り付け位置も量産車と異なる。
量産車は日本語で「東芝」と表記されている。
搭載機機についても量産車と差異があり、主変圧器は容量5,141kVAのものを1基、補助電源装置は
140kVAのものを2基搭載する。台車はEF210と同形式のヨーダンパ付ボルスタレス構造で1エンド側からFD7A、 FD7B、 FD7C、FD7D、となっている。「ECO-POWER 金太郎」のロゴマークは量産車と異なり、片方のJRFロゴの横につけられている。なお、落成時にこのマークはつけられていなかった。
1次車(1,2)
2000年3月製造。901号機の試験成績をフィードバックした量産先行機。主変圧器を各車1台ずつ搭載にするなど機器配置が変更された。台車は試作車とほぼ同等だが形式名末尾が順にFD7F、G、H、Iと改められた(EはEF210の量産車に適用)。塗装も臙脂色をベースに前面窓部に黒、ライトケース上に白帯を側面まで回り込ませたものになっている。
2次車(3~9)
2000年3月から2001年1月まで製造されたグループ。塗装や設計は1次車を踏襲したが、着雪による前照灯の照度低下を防ぐ為ライトケースが白帯部分に移された(が、EH800で元の位置に戻っていたことから効果の程は不明)。途中から「ECO-POWER 金太郎」のロゴマークが制定され、以降は落成時点で表示、既存機にも追加された。
3号機のみJRFマークが以降のものと異なり一回り大きい(1次車も同様)。
3次車(10~81)
2001年8月以降は基本的に全てこのグループ。塗装が明るめの赤に変更され白帯が前面両端で途切れた他、側面ナンバーの表示位置が運転台側窓下に移された。
同一グループの中でもマイナーチェンジが何度か行われている。
・15号機からライトケースが縁の小さいものに変更され白帯も幅がわずかに細くなる。
・61号機から屋根上の機器配置が見直され、ベンチレーターが強制排気式に変更される。
・63号機以降は2008年に新たに運転支援システムが導入されたのに伴いGPSアンテナがなくなる(既存機も撤去)。
・67号機から側窓上の黒塗装も省略。
・73号機から尾灯がLED化。消灯時はライトケースから赤い色が見えなくなる。
所属および運用
交流区間では50/60Hzどちらでも運行可能なため、仙台総合鉄道部(旧長町機関区)と門司機関区に配属されている。
2015年9月現在で82両在籍(900号機、0番台81両)。JR化以降に登場した機関車としてはEF210に次ぐ両数である。
仙台総合部所属機(901号機、0番台68両)は運行開始当初、山手貨物線・武蔵野線・東北本線(後に盛岡以北はIGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道に転換)で運用されていたが、交直流機関車であるにもかかわらず、黒磯駅が地上交直切り替え時代は同駅からの運用(すなわち交流区間のみの運用)が多かった。
※2018年1月以前の黒磯駅のデッドセクションを通過する際は、列車選別装置がついた機関車が必要だったが、EH500には当該選別装置はなかった。それ以外の列車(本形式の牽く貨物列車も含む)は地上切り替え、または機関車交換で交直切替を行っていた。
その後、デッドセクションは駅構内から駅の青森寄りに移設された。
常磐線泉駅から信越本線安中駅を結ぶ亜鉛精鉱運搬列車・通称「安中貨物」でも運用されている。
2016年に北海道新幹線が函館まで開業したことにより、新幹線との共用部分(主に青函トンネル内)が走行できなくなったため、青森以北はEH800に運用が代わり、北海道内で見られなくなった。これにより運用に余裕が生じた為、奥羽本線の秋田貨物駅と東海道本線の相模貨物駅にも乗り入れるようになった。
2017年にはJRグループ発足30年企画で30号機がカシオペアを牽引した。これに先立ち、25号機がE26系との連結訓練を、21号機が試運転を実施している。
2018年に全検入場した65号機は11月に大宮車両所から東芝府中事業所へ回送されATS-PF・ATS-Ps・青函ATCの撤去及びATS-DFの搭載が行われた。当機は2019年3月に大宮車両所へ戻され屋根上碍子の緑色化を行い同年4月に門司機関区へと転属している。
その後も2020年8月に73号機が、同年10月には66号機がそれぞれ東芝府中へ入場、65号機と同様の改造が行われ同年11月と翌年2月に門司機関区へ転属している。
門司機関区所属機(0番台15両)は、山陽本線幡生操車場から鹿児島本線北九州貨物ターミナルまたは鹿児島本線貨物支線の福岡貨物ターミナルまでの区間限定で運用しており、EF81重連による関門トンネル越えの代替機および福岡貨物ターミナルまでの1300t列車牽引機として活躍している。そのため門司機関区所属機には青函トンネル用のATCを搭載していない。
2021年3月13日のダイヤ改正より、千早操車場(福岡貨物ターミナルへの分岐点)以南での運用が始まり、鳥栖貨物ターミナル(田代駅とほぼ同位置)まで入線するようになった。
関連項目
DF200:システムを東芝が担当した電気式ディーゼル機関車
EF210:こちらはニックネームが「ECO-POWER 桃太郎」
EH800:同じメーカーで製造された青函トンネル専用機
EF30:13号機から17号機を東芝が製造した関門トンネル専用交直流電気機関車
あだ名つながりのタグ
EH10…あだ名が「マンモス」
EH200…あだ名が「冷凍マンモス」