国鉄が1963年より設計・新製製造した交流専用電気機関車。その後の交流機の基礎となった名機。
概要
常磐線の高萩駅〜平駅(現いわき駅)間の電化に備えて登場。前年に登場した北陸本線用のED74の大幅改良版。
車体構造・台車はED74のそれを引き継いでいるがED71以来の貫通扉が復活した。制御系に磁気増幅器を採用することによってそれまでの交流機に比べての保守の平易化と特性の大幅な向上を図られた。さらに内部機器は当初より50/60Hz共用仕様でで作られておりごくわずかの改造で両周波数に対応する事が可能ではあった。
国鉄分割民営化時までには300番代と500番代は引退しており、0番代・100番台・700番代・1000番代がJR東日本やJR貨物に承継された。
2012年3月のダイヤ改正でJR貨物の定期運用が消滅した。2024年現在でも700番台の4両がJR東日本に車籍は残ったまま時折工臨運用などに就いているものの、今後の動向は不透明。JR貨物所属のED76が2025年にEF510 300番台に置き換えられEF81共々全廃される可能性が高いため、国鉄が製造した交流機最後の生き残りになる可能性が高い。
番台区分(登場順)
- 0番台(M型):1963年〜1967年に掛けて製造された50Hz専用機。国鉄時代は東北本線・常磐線・奥羽本線で運用され、JR化後は軌道強化された磐越西線においても運用されED77に取って代わった。
- 300番台:ED73の増備扱いとして鹿児島本線久留米駅〜熊本駅間の電化に伴い1966年に登場したM型の60Hz専用機。九州で運用されたが後に北陸から転じたED74やEF70と同じく重い軸重やSG(蒸気発生装置)を持たないことが仇となり客車普通列車の運用に入れず鹿児島本線熊本駅以北や長崎本線にて貨物列車の貨物列車の牽引に従事した。
- 500番台(S型):1966年に501号機のみ試作された50Hz専用のサイリスタ位相制御機。1966年に501号機のみ製造。SG未搭載だったことや札幌都市圏では誘導障害が問題視され試作で終わり、改良版としてED76500番台が登場した。岩見沢駅〜旭川駅間において貨物列車牽引のみ従事した。
- 100番台(M型):常磐線草野駅〜岩沼駅間の電化に伴い1967年から翌1968年に掛けて製造された50Hz専用機。東北本線全線電化に備えて0番台の耐雪耐寒仕様を強化したタイプであるが区分は0番台と同じM型である。こちらも東北本線・常磐線・奥羽本線・磐越西線で運用された。
- 1000番台(P型):東北本線の盛岡駅〜青森駅間が電化された1968年に登場。1976年に掛けて製造された50hz専用機。高速貨物列車および20系客車牽引に対応している。東北本線・常磐線・奥羽本線で使用された。最後の2両は廃車されたED71の代替である。
- 700番台:奥羽本線の秋田駅〜青森駅間の電化に伴い1971年に登場。1976年に掛けて製造。日本海縦貫線での使用を効率し塩害対策が強化された50hz専用機。奥羽本線・羽越本線のち東北本線・常磐線・磐越西線でも使用された。機器の小型化により屋上はうってかわってすっきりとした外観となるとともに技術的な完成機となり、特急運用を含む旅客列車・貨物列車牽引に広く運用された。粘着係数の高さからEF65・EF64に匹敵する牽引性能を持ち、安定した高水準な性能から「交流電気機関車のゼロ戦」との異名を持った名機。主な運用エリアから、ファンにおける通称の一つは「赤べこ」とも呼ばれた。一部が津軽海峡線向けにED79形に改造され、JR北海道に承継されたが、2016年3月の北海道新幹線開業により、その役割を終えた。なおJR貨物所有の50番代は改造でなく新造車両である。775号機は鉄道博物館に保存されている。
輸出用
輸出用として特筆されるものに、コンゴ・KDL鉄道用に日立で製造された1600kW交流電気機関車があげられる。全般にED75を範としているが前面デザインは簡素化され、出力・最高速度もデチューンされて製造されている。近年まで現存している事が確認されているが、詳しい運用状況などは不明。