鉄道車両の形式の一つ。
ED76形電気機関車
国鉄が1965年より設計・新製した交流専用電気機関車。ED75と同等の電気機器(九州の商用周波数にあわせ60Hz対応へ設定を変更)、ED72から引き継いだ無動力の中間台車を装備しており、その負担力を変えることで動輪の軸重を可変することが可能である。軽軸重で軌道負担力の弱い路線での運転を、最大軸重で軌道負担力の強い路線で重量高速運転が可能とする機構を持つ。暖房装置はEF58やEF61同様の蒸気暖房装置である。
九州向けの0番台・1000番台(高速列車用)と北海道向けの500番台がある。両者間には車軸配置と客車への暖房供給方式以外共通点はほとんどなく、0・1000番台はED75基本番代同様磁気増幅器を利用した低圧タップ制御で非重連型、500番台は50Hz対応、ED94のサイリスタブロックを回生ブレーキの省略などの簡易化をしたうえで暖房用大容量蒸気発生器を搭載した重連型であり、実質的には別形式といってよい。にもかかわらず同一形式とされたのは、労働組合が新形式の導入を非常に嫌がっており、その折衝に手間がかかるためである(同じことはDD51 800番台やEF64 1000番台でも起きている)。
なお500番台は軸重可変機構は暖房用の重油・水積載時の調整にしか使われず、函館本線内では小樽側のパンタグラフを上げることを定位としていた。
国鉄民営化後
国鉄分割民営化時には0番台がJR九州とJR貨物に、1000番台がJR貨物に、500番台がJR北海道にそれぞれ承継された。JR移行後は客車列車運用の消滅から屋上の蒸気発生装置の煙突をふさいでしまったものが多い。
JR北海道では、ED79の需給状態より、内部機器の大半を撤去したうえでED79同等品の機器を搭載、海峡線用に改造された550番代も登場。当初は数輌が改造予定だったが輸送量の伸びなやみから551号機1輌のみの改造に終わった。車体長がED79に比べ長いことから持て余し気味であり、青森・五稜郭両駅で客扱いの無いトワイライトエクスプレスに運用される姿がよく見られた。1999年には函館本線電化30周年記念の特別列車牽引に使用するため赤2号の単色に復元された。その後はその塗装のまま運用され、2001年に廃車された。
JR九州には0番台の後期型が継承された。九州に乗り入れてくる寝台列車(ブルートレイン)の牽引を主に担当し、門司駅を起点に九州全土で幅広く活躍した。しかし、九州新幹線の開通と寝台列車の需要低下による廃止と共に運用が減少。2009年3月ダイヤ改正で、最後まで残っていた富士・はやぶさが廃止されたことで定期運用が消滅。予備車として残存した3両が2012年に廃車され、姿を消した。うち1両が大分県日田市の道の駅で客車と共に保存されていたが、2021年8月に客車共々解体された。
2023年時点ではJR貨物に0番台・1000番台が合計10両在籍しており、九州内各線での貨物列車牽引に運用されている。ただし、2022年からは後継機であるEF510形300番台が投入され、EF81と共に順次置き換えられる予定である。
その他
- 定期運用を持つ最後の交流電気機関車である。
- 1000番台の後期形は、桜島の降灰対策として運転席側面窓がアルミユニットサッシになっており、外観で判別しやすい。耐寒対策が目的の東北地方のユニットサッシとは若干見た目が異なる。