国鉄(日本国有鉄道)が設計・製造した勾配線区向け直流電気機関車。
概要
国鉄時代
当時直流電化されていた奥羽本線の板谷峠区間(福島駅〜米沢駅間、通称「福米」)で補機を務めていたEF16の後釜として開発された。
碓氷峠区間(横川駅〜軽井沢駅間、通称「横軽」)を含む信越本線用に開発されたEF62形をベースとして、同区間向けの装備を外したほか、軸配置などの設計変更を行っている。台車は北陸本線で運用されていたEF70のものを改良して使用するなど、機械的には冒険をせず手堅くまとめられている。
1964年に先行試作車が落成、翌1965年より増備された量産車とともに福島機関区に配置された。1968年9月に福米間が交流電化されてからは稲沢第二機関区に転出し中央西線の名古屋駅〜中津川駅間で運用に就いた。
1966年から増備された車両は、甲府機関区・長野運転所・篠ノ井機関区・稲沢第二機関区などに配置され、中央本線や篠ノ井線で運用された。
歯数比はEF65と同等になっており、許容最高速度は同じ115km/hであるが、実際の最高運転速度は100km/hに抑えられている。他方、EF65にはない発電ブレーキ機構のために主回路の逆転機構が電機子形になっている(EF65は界磁形)ほか、普通列車などを牽く運用を持つことから旅客用として増備されたグループは電気暖房用電動発電機を装備する。
1980年には上越線のEF15・EF16・EF58等の旧型電機置換え用に1000番台が投入された。機械的には台車や台枠などに、EF81と同系の部材を多用するなど、0番台とは別形式レベルで大幅に設計が異なっているが、労組との兼ね合いで能力的に同等なEF64の枝番台となった。
0番代同様に旅客用の増備車もあるが、こちらでは電動発電機をサイリスタインバータに改めた。
1982年に製造されたラストナンバーの1053号機が「国鉄が最後に新製した直流電気機関車」となった。
平坦線・勾配線の双方でパフォーマンスを発揮できる真の「万能機」であり、能力的に不足を起こすことは基本なかったが、事故等で破損するとなかなか替えがきかない高価な車輛であったことも事実であり、EF65やED75などの汎用機では廃車判定されるダメージでも、期間をかけて完全復旧されることが常だった。車体に大ダメージを受け、完全復旧までの短期間、間に合わせの補修で走っていた車輛(1002号機)すら存在する。
民営化後
本形式は民営化時に全機JRへと継承され、JR東日本に14両、JR東海に3両、JR西日本に2両、JR貨物に113両継承された。
東日本の機関車は主にブルートレインの牽引に、東海、西日本の機関車はジョイフルトレインや工臨として使用された。
貨物の機関車の運用は国鉄時代末期と変わらず重連で中央本線・篠ノ井線・上越線、そして単機で伯備線での貨物列車の運用であった。
0番台、1000番台共に経年が浅く、21世紀になるまで目立った動きや後継機関車の話もなかったが、2003年に後継機関車EH200が投入され0番台から徐々に廃車が始まった。運用を失った0番台の内、経年が比較的浅い機関車は重連に必要な装置を機能停止の上で伯備線運用へと追いやられていった。
2010年には上越線の重連運用が消滅、2012年には中央東線での重連運用が消滅し、登場時は考えられなかった都市部での運用が中心となった。東海道線で高速貨物を引く姿すら見かけられたが、2021年のダイヤ改正によってそれも見られなくなっている。
2013年には伯備線での0番台の運用が消滅し、全車廃車ないし休車となった。
また2022年には中央西線の運用にEH200が投入され、一部の運用が減らされている。
JR東日本に所属する1030・1031・1032号機は、総合車両製作所新津製作所で製造された首都圏向けの通勤電車(E231系やE233系など)を牽引するために、連結器をEF63と同様の双頭連結器を装備し、さらに今の電車に多い電気指令式ブレーキにも控車なしで対応可能なよう改造も受けている(読み替え指令器を機関車内に設置)。
また、長野総合車両センターへ廃車になった車両を牽引する役目も受け持つようになったため、鉄道ファンからは「死神」という渾名がつけられている。
一方で前述のように新津製作所で製造されたばかりの、言うなれば生まれたばかりの電車を車両基地に牽引するという「コウノトリ」のような役目を受け持つことから、これら3機はJR東日本の車両の生と死に関わる機関車なのである。
また、高崎に所属する1001号機は長らくぶどう色に白帯塗装で親しまれていたが、近年のリバイバルの流れから2017年に原色の青塗装に復元された(Hゴムもグレーに戻されている)。入れ替わるように1052号機がぶどう色・白帯となっていたが、さほど時間がたたずに廃車となっている。貨物機は識別の必要がなくなったため、今後国鉄色で出場する模様。
現在の定期貨物運用路線
カラー
- 国鉄色
伝統のカラー。東日本と貨物で見られる。
- 更新色
2代目の更新色。貨物のみ見られる
- 広島更新色
かつて広島車両所で更新を受けた貨物所属の機関車が纏っていたカラー。最後まで残っていた1046号機が全般検査で国鉄色に戻されたためこの色は絶滅した。(ちなみに1046号機が貨物機最後の全般検査となっており、以降は検査の切れた車両から順次廃車にしていくと思われる。)