概要
2009年12月、JR西日本が国鉄車両の単色化を発表。理由はお察しください。
その中のひとつがこの「中国地域色」。中央・総武緩行線のカナリアイエローよりは濃いめの黄色一色塗りという極めて単純な塗色である。イメージは「瀬戸内の太陽」だという。
対象が軒並み国鉄型車両であったため、単色化を嫌う当時の鉄道ファンによって、真っ黄色→末期色ということでこの愛称がつけられた。
この呼び名は後年、JR西日本も東洋経済Web版の記事で言及しており、事実上JRから公認を得たと言っていいだろう。
塗り分けや帯が一切入っていない一色塗装には、
などのように、どちらかといえば好評なイメージの物もあるのに、
- 垢抜けないデザインで性能も自慢できない国鉄気動車の、ただ塗っただけ感漂うたらこ色
- 両数が増え過ぎたうえに性能も陳腐化しつつある通勤電車と、それでも引退せず残っている半鋼製車に東武鉄道が塗った微妙なクリーム色
の方にイメージが近いのは、「真の目的がコストダウンであることを言わず」「手入れの悪いまま使い倒した旧型車に安直に既成の色を使い」「ただ塗っただけ」という、デザインとサービス不在のやり方に対する冷たい眼差しも影響しているのだろう。
…ところが地元のナウなヤングのなかには「幸せの黄色い電車」なんて言う者もいるらしい。
感覚なんて本当に人それぞれである。
まあ、警戒色になるといえばなるよね(棒読み)。
「犠牲車」たち
色々な車両が在籍していたため、対象となった形式はJR西日本の単色塗装の中で最も多い。
単色化のメリット
ただしこの単色化、網干総合車両所の保有車両数が網干本所・支所含め2016年の時点で1800両を超えており(JR九州の全車両を管理する小倉総合車両センターが約1600両)、要検(全般検査など大規模な工程を組む必要のある検査)施工件数が年間1000両を超える事態にも直面していたこと、近いうちに221系への体質改善工事を実施する計画も立てられていたこともあり運行に回すだけの車両が尽きるという危機に瀕していた背景があった。単色化はまさに危機に直面したJR西日本のウルトラCともいえ、これによって塗装に要する日数の削減(=工場の回転効率改善)ができ、車両運行の目処がつけられるようになったのである。
また、単色化による塗装費削減によって新車導入の資金捻出にも繋がっている。225系や521系追加増備、227系の新車導入もこのコスト削減によって生まれた資金が利用されているとされる。
このほか、気動車においては雑多な塗装による混色編成が常態化していたことに地元利用者からクレームがあったといい、結果的に編成の見た目をきれいに整えることに成功している。
対象はあくまで普通列車用車両であり、特急形車両やジョイフルトレイン、観光列車は独自の塗装が維持されている。また145系や443系といった事業用車も単色化の対象にはなっていない。
また、普通列車用車両でも近畿地区で運用される201系・221系・103系も塗装変更の対象とならなかった。
他地域の末期色
JR西日本は山陽地区に限らず、鋼製車体の営業車両については原則として単色塗装を採用している。「末期色」の語は、これらの総称としても用いられることがある。
北陸地域色(青)
いわゆるスカイブルーと比べるとかなり濃いめの青色。日本海をイメージしている。全車を塗り替えきれないまま北陸新幹線の金沢延伸を迎え、大半の車両が廃車または七尾線転属となったため微レアな塗装。
一部の413系はそのままの塗装であいの風とやま鉄道に譲渡されて運用されていたが、2024年6月で運行終了。
七尾線色(赤)
茜色とも。能登半島の名産品である輪島塗をイメージした深みのある赤色が特徴。ビビッドすぎない色合いがかっこいいという声もある。521系の増備により全車が運用を離脱し、2023年に消滅した。
京都地域色(緑)
抹茶色ともいうが、その名の通り京都のお茶をイメージしているという。こちらもかなり深めの緑色で、どことなく古めかしい印象を持たせる。
和歌山地域色(青緑)
和歌山の海(和歌浦)をイメージした鮮やかな水色。単体で見ると鮮やかすぎるくらいだが、単色化以前から113系はこれとほとんど変わらない塗装であったため、地元民は違和感がなかったとか… 転属と227系による置き換えで、単色化系では初めての消滅となった。
気動車色(朱)
タラコのような明るい朱色… もとい首都圏色そのものである。東は富山、西は下関まで西日本各地で見ることができる。単色化では唯一、JR化後の新形式にも塗装を行っている。
なおキハ33やキハ37も当初存在しなかった首都圏色が後になって採用されているが、これは後藤総合車両所が独自に行っていた取り組みであり、本記事で扱う単色化とは関係ない(それ以前から廃車済みである)。
現況
こうして一世を風靡?した末期色だったが、上述のように2010年代中盤以降新車による置き換えが始まり、徐々に勢力を減らしてゆくこととなる。
既に和歌山・七尾線・北陸地域色は運用を終了し、残るは京都地域色と元祖である黄色のみだが、前者は2023年3月改正で主力運用線区だった湖西線・草津線から離脱し福知山地区にごく少数が残るのみとなった。
それどころか最近では
・岡山電車区の115系のうち2編成を、地元からの要望で湘南色を維持
・末期色化で一旦消滅した105系の可部色(通称:ゆうパック色)が復活
・末期色化で(ry115系3000番台の瀬戸内色が下関地区で復活
・末期色に青帯が入ったような113系の初代福知山色が復活
と、末期色導入当初には考えられなかった事象まで現れている。
経営基盤の厳しさと上述の差し迫った事情から生まれた末期色。消滅の日はそう遠くないかもしれない。
…首都圏色を除いてな!
ちなみに
私鉄でも、前述の阪急や名鉄のほかに、古くから真っ黄色一色な電車を運用している会社があるが、こちらも末期色扱いはされていない。そもそも完全な黄色一色ではなく、先頭車に銀色の飾り帯が付いているほか、ドアがステンレス無塗装であるためアクセントになっている。
地下鉄では銀座線やその手本となったベルリン地下鉄でも同じ理屈から屋根以外真っ黄色な電車が走っていた。また、名鉄のお膝元名古屋を走る東山線も古くから真っ黄色一色の電車を走らせているが、これは銀座線の模倣ではなく、名鉄の緋色を提案した画家・杉本健吉氏による「地下では明るい色の方が警戒色になる」という提案から来たものであり、また地元では「黄電」と呼ばれむしろ親しまれたことから末期色扱いはされていない。地下鉄に関しては真っ黄色の方が相性が良かったのかもしれない。
名古屋では黄色の電車は消えてしまったものの、他の2例では(前者は黄色が濃くなりすぎてオレンジ色になったり銀色に取って代わられていたりしたが)現在でも全電車が大部分真っ黄色の電車で運用されている。
山陽電気鉄道では5000系5008Fが別の意味で末期色と呼ばれた時期がある。普段はアルミ無塗装に赤帯テープの組合せだが、該当編成は2018年にカードキャプターさくらクリアカード編のスタンプラリー開催に合わせ、一時的にアルミ無塗装+白に近いピンク色の帯の組合せで運用されていた。しかし、帯変更の際に車体洗浄をサボった感がある車体と帯の色(赤帯が経年劣化で色褪せたように見える)の組合せが図らずも廃車寸前の末期状態を演出してしまい、少し切ない感じが出てしまった。
関連イラスト
関連タグ
同類
JR東日本キハ110系(小海線のリバイバル企画ではあるものの首都圏色に塗られた車両が存在する)