概要
1977年(昭和52年)に700系(2代)の車体に5000系と同等の機器を搭載して代替新造して登場した京阪電気鉄道の通勤形電車。現在の1000系は3代目である。
京阪線(京阪本線・宇治線・交野線)の架線電圧1,500V化に伴い、ツリカケ駆動の車両は全廃させる方針で、元の車種である700系も昇圧対応改造の対象外とさせられていた。しかし、700系は1967年(昭和42年)からの車体新製で経年が浅く、車体の状態も良好で、かつ冷房化改造にも車体強度に問題が無かったため、車体を流用して1000系に改造されることになった。ただし、改造に際しては原種である700系を廃車扱いにして、新造名義で認可申請したことから、書類上の扱いでは代替新造となっている。
なお、700系は44両が在籍したが、中間電動車の781と799以外の42両が改造された。対象外となった781と799は1978年3月にそれぞれ600系の690と691に改番され、1983年12月に廃車、その後解体の運命を辿っている。
1000系への改造後
仕様に関しては基本的に700系時代と大きな変更はなかった。すなわち、裾絞りの無い車体に2連ユニット窓で構成された側窓配置、2200系などの両開き扉よりも100mm狭い1,200mm幅の両開き扉の構成で、その扉の窓は扉枠いっぱいに広げられている。
700系から1000系への改造に際しては、外観上の変更点は前面幌の撤去や前面貫通扉部への種別・行先表示装置の新設、前照灯のシールドビーム化に留まった。ただし、車内天井部は冷房化に伴って一新され、中央部に1列配置されていた照明が、他系列と同様に左右2列に分散して配置される形に変更された。車内補助送風機はラインデリアと京阪独特の回転グリルを併用した形態がとられており、5000系にはじまる新製冷房車の標準仕様を踏襲している。
改修工事
1990年(平成2年)に入り、車体の新製から25年が経過し、各部の補修が必要となったことから、2400系に継いで更新修繕工事が1993年(平成3年)より施工された。制御方式は抵抗制御から界磁添加励磁制御で1C8M化され、制動方式は回生ブレーキ付きとなったが、それに伴って一部車両の編成組成位置の変更ならびに車種の変更がなされた。改修前、先頭車は電動車(モーター車)だったが、改修後は先頭車の電装が解除され、電動車は中間車4両にそろえられている。
また、更新時期を迎えていた冷房装置は、6000系の冷房装置出力増強に伴う発生品に取り替えられた。なお、この冷房装置は寸法が大きく、構体側の大改造を要する取り付け位置の変更を行わなかったことから、各車両大阪寄りの冷房装置のカバーが車端部よりわずかにはみ出している。
車体関連では、先頭車の台枠を100mm延長し、乗務員室拡幅ならびに前面デザインの全面変更が施工された。つまり、魔改造である。それに際して、左右の前面窓は大型化され、中央部の貫通扉は非常用脱出扉として外開き化され、その窓は2400系と同じ種別・行先表示装置と一体化した縦長の窓ガラスとなっている。その他、前照灯は埋め込み式となり、尾灯は8000系と同じステンレスの飾り枠を付きのLED式となっている。また、ワイパーは電動化されている。
対して側面見つけは大きな変化は見られないが、外板総張り替えに際して台枠との接合部分が重ね溶接から突合せ溶接に変更されたため、車体裾部にわずかな段差が生じている。この溶接方式はほかにも、2200系の2304号車でも見られる。また、側窓は下段が固定されて、上段下降・下段固定という方式に改められたほか、種別・行先表示装置の窓ガラスの支持枠がHゴム式から金属枠固定式に変更された。
内装は2400系と同様、6000系に準じたカラースキームに改められ、化粧板はアイボリー系、座席モケットは緑系、床敷物はブラウン系とされている。そのほか、戸閉予告ブザーや開扉時の自動放送装置が設置され、ドアエンジンも静音式のものに交換されたほか、後期に更新修繕工事を施工された3編成(1501~1503編成)についてはフリースペース(車いすスペース)が新設された。フリースペース設置によって、車体寸法の関係から「1人掛けロングシート」(?)なるものが生まれている。
補足(改修工事後)
2006年(平成18年)以降に検査出場した車両には優先座席のモケットに絵柄が追加されたほか、2007年(平成19年)頃より連結部の貫通扉の開閉用グリップが縦長の極太形状のものに交換された。
その後、2008年(平成20年)より「KEIHAN」の新CIロゴが追加され、以後順次、車体色の新塗装化が施された。また、2009年(平成21年)より防護列車無線器・無線列番設定器が順次取り付けられた。
その他、京阪中之島線開業前日である2008年10月18日に、1503編成が出町柳駅発、天満橋行きの天満橋駅到着の最終列車に充当され、天満橋行きを表示した黄色地黒文字の特製行先表示看板を先頭車の前面左側に掲出して運行された。列車番号は「Q1503T」であったことから、1503編成を充当する演出がなされたのであった。
余談
京阪1000系の前身京阪700系(二代目)は京阪1000系(二代目)、1100系、1200系、1500系、60形を種車としたツリカケ更新車で、再改造で元の1000系を名乗る事となり、その車歴から数えると実に80年近い車齢となるが、京阪1000系への再改造の際に、上記種車の部品は全て消滅し、車籍も除籍された為、そこは多少残念である。
性能
編成 | 7両編成 |
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営業最高速度 | 110km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
起動加速度 | 2.5km/h/s |
減速度 | 4.0km/h/s(常用最大)・4.5km/h/s(非常) |
全長 | 18,700mm |
全幅 | 2,720mm |
全高 | 4,185mm |
車体材質 | 普通鋼 |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
主電動機 | 直流直巻電動機(出力155kw) |
駆動方式 | 中空軸たわみ板継手平行カルダン駆動 |
歯車比 | 84:16=5.25 |
制御装置 | 界磁添加励磁制御方式 |
台車 | 電動車はエコノミカル式、付随車は側枠緩衝ゴム式 |
制動方式 | 回生制動優先全電気指令式空気ブレーキ |
保安装置 | 京阪形ATS、K-ATS |
製造メーカー | 川崎重工業 |
走行音
起動時の音程が減5度で、歯車比は5.25と小さく取っているので、あまりうるさくない。