鉄道車両の形式名のひとつであるが、2024年現在東京急行電鉄(東急電鉄。以下「東急」)のみに存在する形式であるため本項では東急7600系(メイン画像上から2番目)を開設する。
概要
※車両形式は社名が併記されない限り東急の車両である。
足りない電動車、余剰の制御付随車
東横線に9000系が導入されたことに伴い、同線および大井町線でMT比1:1の6両編成で運用されていた7200系は、老朽化した3000系および5000系置換えのため目蒲線および池上線に集中投入されることになった。
転属に際しMT比2:1の3両編成に組み替えることになったが、この際電動車デハ7200・7300・7400形が総数29両(こどもの国線に導入されていたアルミ試作車を除く)に対し制御付随車クハ7500形が22両であり、モーターのないクハ7500形に編成がいくつか作れるほどの余剰車が発生していた。
改造
この余剰となるクハ7500形を有効活用する目的で電装したものが7600系である。
同時期に新造された9000系と同様の三相交流かご型誘導電動機とVVVF-GTOインバータ制御を搭載した。
ただし9000系は日立製作所製で1両分のモーターを制御する1C4M方式の制御装置を搭載したのに対し、本形式は東洋電機製造製で2両分のモーターを制御するの1C8M方式の制御装置を搭載した。
当時のVVVFインバータ制御は自車のみを制御する方式が主流であり、ユニット制御方式は本形式が日本初だった。
機器類の構成は6000系デハ6002に試験搭載されたものと一致する。
台車は製造時のパイオニアⅢ形台車から8000系に装備されたものをベースとするTS-831形台車に交換された。
屋根には2基のパンタグラフと4基の熱交換機も搭載された。
改造に合わせてマスコンもワンハンドル型に改造されたが、もとが回生ブレーキ併用の電磁直通だったためにワンハンドルのブレーキ設定器で電磁直通ブレーキを動作させている。ここは同時在籍の7700系、7200系アルミ車と同様である。
改造は長津田工場が7200系および8000系の冷房化工事で余裕がなかったため東急車輛製造で行われた。
落成
1986年に2M0T2両編成3本が組成され、うち第1編成と第2編成は長津田検車区に所属し大井町線で運用された。クハ7500形を編成の二子玉川園方に連結し4M2Tで運用された。
一方第3編成は雪が谷検車区奥沢班に配置され目黒方にデハ7200形を連結、3M0Tで目蒲線で運用に就いた。
集結
大井町線への8090系の入線により、当初の予定通り7200系は目蒲線・池上線に集中投入されることとなった。
大井町線に投入されていた第1・第2編成も編成を分割して池上線に転属するが、この際に制御器の冗長化のため1C4M制御に変更された。
これと同時期に7700系と編成構成を統一するため、電動車の配置を五反田方2両から蒲田方2両に変更。デハ7600形の電装を解除してクハ7500形を電装、以下のように改称された。
凡例 | < >は先頭車の運転台跡、-は貫通路(以下同じ) |
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←大井町・五反田 蒲田・二子玉川園→ | |
大井町線 | デハ7600-デハ7650>クハ7500 |
目蒲・池上線 | クハ7600-デハ7650>デハ7650 |
台車も両車で交換され、クハ7600形は製造時のパイオニアⅢ形台車を再び履いた。
この際にクハ7500形から改造されたデハ7650形はパンタグラフを搭載していないなど差異が生じたため、形式が10繰り上がった「デハ7661・デハ7662」と附番された。
改造工事の途上で目蒲線で運用に就いた時期もあった。
終わらぬ、変化
第3編成は五反田方に東洋電機製造の電装を受けたデハ7200形デハ7255を引き連れていたが、1990年に編成を離脱した。
この際にデハ7603が電装を解除して五反田方先頭車クハ7603となったところまでは第1・第2編成と同様だったが、このころ7200系アルミ試作車が検測車に改造されるにあたりクハ7500を電装化する必要があった。そのためクハ7500形の電装は行われず、デハ7400形デハ7402がデハ7650形と同等の機器に交換され編成の中間に組み込まれた。
ビフォー | デハ7255<デハ7603-デハ7653 |
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アフター | クハ7603-デハ7673-デハ7653 |
デハ7402は蒲田方にパンタグラフを備えていたため、近接するデハ7653の五反田方パンタグラフが撤去された。
同時期にクハ7600形全車の台車がTS-831形と同型の付随台車TS-839形へと交換されている。
その後
1994年に池上線ワンマン運転実施に備えて対応改造を実施。これに合わせて第1・第2編成の中間に組み込まれていたデハ7651・7652の運転台は撤去された。
この際に第3編成中間に組み込まれたデハ7673も正式にデハ7670形に区分され、第1・第2編成中間車も同形式に組み込まれたが、もともと中間車として製造されていたデハ7402→デハ7673に対し運転台撤去車であることから座席定員が1名少ない2両はそれぞれ「デハ7681・デハ7682」に改番された。
この際に車体前面を黒く塗装した「歌舞伎塗装」に変更された。
第一編成 | クハ7601-デハ7681>デハ7661 |
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第二編成 | クハ7602-デハ7681>デハ7662 |
第三編成 | クハ7603-デハ7673-デハ7663 |
2000年の東急多摩川線成立後は同線の運用にも入ったが、2007年から7000系(2代目)が投入されたことにより2010年3月に第3編成が運用離脱。
その後東横線から撤退し、多摩川線・池上線用に転用された1000系1500番台が投入されたことに伴い第2編成が2014年7月に、第1編成が2015年2月に運用離脱し、全車引退となった。
最後に残った第1編成は2014年11月から赤帯を撤去した「クラシックスタイル」に復刻して運用され、2015年2月のさよなら運転では前面の行先表示器と運行番号表示器を幕式に復元して運行された。