271系
にひゃくななじゅういちけい
JR西日本が運行している関西国際空港アクセス特急「はるか」は、2010年代後半より訪日外国人(インバウンド)の増加により指定席車両が満席になることが多くなった。このため、現行の「はるか」のうち6両編成で運転される列車を9両編成へ増結することを決定。271系は「はるか」用281系の増結用編成として製造されることになった。
JR西日本では、「はるか」用281系および「サンダーバード」「しらさぎ」用681系、「くろしお」用283系の置き換えを2024年~2027年の間に予定しており、271系は『(現状は)281系の置き換え用ではなく、「はるか」の輸送力増強用・増結用』という立ち位置である。
先頭車の貫通扉は幌を装備しており、271系同士で連結すると編成間での移動ができる仕様となっているが、営業運転では281系と常時連結するため幌を繋ぐことは当分行われない。
なお、本系列は2031年開業予定のなにわ筋線の走行も可能な設計としている。
281系では2019年1月からハローキティのラッピングが順次行われていたが、本形式も営業運転開始までに「ハローキティ はるか」のラッピングが全編成に施行された。
あくまでも増結用車両であることと、案内の容易化を図るため車両デザインは極力281系と統一感を持たせている。一方で281系の製造から25年経過しており、本形式は287系をベースに開発されている。
287系をベースとしているが、281系との併結を考慮したことによる車体長/連結面長の違い(287系の20.6m/21.1mに対して、281系と同じ19.5m/20.0m)から別形式に分類された。
287系と同様に0.5Mシステムを搭載し、全電動車となっている。
ただし、技術の進歩を反映し、323系以降で採用された全密閉主電動機+SiCスイッチングモジュール適用型インバータの構成となっている。車両制御装置のメーカーは323系・227系1000番台の三菱電機・東芝とは異なる日立製作所製であり、首都圏新都市鉄道TX-3000系・JR東日本E261系と共に日立パワーデバイス製フルSiCモジュール初採用の事例となった。
1台のインバータで1台車分の電動機を駆動し、低圧電源用の静止形インバータなどを一体の箱に収める構成はこれまで通りである。
また、本系列以降の新造車における標準品として、空気圧縮機が三菱電機製のオイルフリースクロール式に変更された。
287系と同等の10Mbpsデジタル制御伝送システムながら、異車種併結機能を追加することで281系との併結運転に対応する。
前面デザインは287系に準じた貫通形の高運転台構造かつ、運転台上部と貫通扉の左右に前照灯ケースを配置する構成だが、281系の内側にへこむ前面形状を元にした「インパースデザイン」を採り入れイメージを継承。側面の行先表示器は227系などと同等のフルカラーLEDに変更され、列車愛称表示器と一体化した。また、ドア横の号車・客室種別表示器も多色LEDに変更されている。
客室設備も287系を基本とした最新の設備だが、諸所に281系のカラーやデザインが取り入れられており、「はるからしさ」を演出している。
座席は287系の同等品だが、モケットの色調をブラウンとすることで281系のイメージを踏襲。また、肘掛部分には新たにモバイル用コンセントを装備する。
案内表示器は多言語案内や情報の拡充を想定し、新たに液晶ディスプレイ式が採用された。
また防犯の観点から、大型荷物置場がデッキから車内に移設され、客用ドア上部・荷物置場・案内表示器の右側に防犯カメラを設置している。
走行線区の都合上、683系・287系に装備されていた空気シリンダによるドア押さえ機構は省略。また、開扉時には盲導鈴が鳴るようになったほか、ドアランプが追加された。
2020年3月14日より運行を開始。増結用の3両編成6本の投入により「はるか」は全列車9両編成での運行となった。しかしデビュー直前にCOVID-19が世界的に流行したことから、海外からの渡航者減少のあおりを受け、2020年4月1日より「はるか」は全列車6両編成での運転に戻されることとなり、運用離脱。
その後、2021年3月13日より朝方2往復に9両編成が再設定されたことにより、再度「はるか」へ運用入りしている。なお増結用の3両編成はデビュー時とは異なり、3両とも指定席となっている。2023年10月7日から7号車が自由席とされ、自由席利用で271系に乗れるようになっている。