概要
紀勢本線の特急列車の輸送力増強とスピードアップを目的に1996年に登場。
車両名は“オーシャンアロー”。2012年3月16日改正まで同名の特急列車として運行していた。
現在は287系、289系と共に特急「くろしお」の運用に就いている。
381系の自然振り子から進化した制御式自然振り子方式を採用し、半径500m以上の曲線を本則+30km/hで走行可能である。ただしこの性能を発揮できるのは、導入と同時に地上設備の改良が行われた白浜-新宮間のみとされ、この区間のほぼ全てが最高速度95km/hであることから実質的に本則+25km/hの性能となっている。
基本6両編成(HB601・602)と付属3両編成(HB631・632)が2本ずつ、合計18両の希少車種。所属は吹田総合車両所日根野支所。
基本編成は和歌山・新宮方、付属編成のうちHB631編成は大阪方にパノラマ型非貫通先頭車(グリーン車)を有し、その他の先頭車はプラグドア付きの貫通先頭車。何れも低運転台で、同じ線区を走行する381系や281系・287系・289系とは大きく異なる外観である。
繁忙期には白浜以北にて付属編成を繋いだ9両編成で運転される場合もあるが、基本編成には予備車が1本も無いために、付属編成同士で第3編成を組成することがよくある。この場合グリーン車の位置が逆転し、ドア配置も変わる。
基本編成とグリーン車付きの付属編成が組んだ場合、両端にグリーン車が付くことになる。
車両デザインは、白浜への行楽客を意識したリゾート列車志向であり、前面展望が楽しめるグリーン車や3号車のラウンジスペースに表れている。
一方、客室部は落ち着いた色づかいが特徴で、昼夜で車内の印象が大きく変化する。特にグリーン車天井部のイカしたライトワークは見もの。
また公衆電話や自動販売機も設置されていたが、これらは2021年現在撤去されている。
近況
新宮直通便・速達便に主に充当され、後輩にあたる形式(287系・289系)が登場しても、それらが車体傾斜装置を有さないため、なおも区間内最速の運用を持つエース級の扱いであった。しかし老朽化の影響からか2018年以降は新宮発着列車の一部を白浜発着に変更(このときJR西日本は新宮発着列車を287系と289系に統一する計画もあった)、以降くろしおの主力は287系に譲ることとなる。
2021年のダイヤ改正により他車種との所要時間差はほぼ無くなったことから、他形式での代走が常態化。更に翌2022年には振り子機能を使用停止し、絞った車体裾によるホームとの隙間を埋めるべくステップが増設された。これにより振り子機能の再使用は不可能となり、381系から続いた車体傾斜装置による高速運転は終焉を迎えた。
最近はよく故障を起こすらしく、ダイヤ乱れの原因となっている。2022年末には天王寺駅の下り短絡線の勾配を登り切れず立ち往生を起こした。
南紀連絡特急としては最古参、さらには阪和線特急としても281系の次に古く281系共々置き換えが予定されていたが、2021年9月4日現在の版では計画に関する記述が削除されている(参照:JR西日本の保有車両一覧)ため、置き換え時期は現時点で未定となっている。
主な諸元
営業最高速度 | 130km/h |
---|---|
起動加速度 | 2.1km/h/s(約55km/hまで) |
減速度 | 4.3km/h/s(常用最大)、5.2km/h/s(非常) |
歯車比 | 14:78=1:5.57 |
駆動装置 | 平行カルダン駆動・歯車継手方式 |
制御方式 | 3レベル電圧形PWMインバータによるVVVF・すべり周波数制御
|
主電動機 | 自己通風形かご形三相誘導電動機
|
台車 | コイルばね+円筒積層ゴム式軸箱支持ボルスタレス台車・ベアリングガイドによる車体傾斜機構付き
|
製造所 | 近畿車輛(HB601・HB631編成)・日立製作所(HB602編成)・川崎重工業(HB632編成) |
運用
所定の充当列車はJR西日本の運行情報サイトで公開されている。かつては京都駅への乗り入れ運用も存在したが、2016年3月のダイヤ改正で新大阪駅までの運用に縮小された。
2024年3月改正時点での運用は以下の通り(5号と30号は繁忙期以外の平日月〜木曜日は運休となる)。
列車・行先 | 出発駅 | 発車時刻 |
---|---|---|
くろしお2号・新大阪 | 和歌山 | 5:14 |
くろしお5号・新宮 | 新大阪 | 9:28 |
くろしお30号・新大阪 | 新宮 | 15:04 |
くろしお29号・白浜 | 新大阪 | 20:13 |
くろしお14号・新大阪 | 白浜 | 翌9:20 |
くろしお11号・新宮 | 新大阪 | 翌12:13 |
くろしお36号・新大阪 | 新宮 | 翌17:46 |
くろしお35号・和歌山 | 新大阪 | 翌22:47 |
くろしお2号に戻る | - | - |
2022年3月12日ダイヤ変更で「くろしお」が全車指定席とされた為、本形式(及び287系、289系)は自由席特急券での利用が不可能となった。
関連イラスト
擬人化イラストが大半を占める。
関連タグ
イルカ:顔のモデルとされている。
381系:先代。283系登場後、「くろしお」用のアコモ改造車は類似の塗装に変更されている。
キハ283系:北のほうの特急型気動車。振り子式だったり少数精鋭だったりと共通点が多い。反面、故障は起こさなかったがそれ以上に洒落にならないことを・・・