概要
岡山駅〜出雲市駅間(山陽本線・伯備線・山陰本線経由)の特急「やくも」に使用されている381系を置き換えるために製造された。
同社では283系以来実に27年ぶりとなる振り子式特急形電車であり、他社を含めても電車ではJR九州の885系以来23年ぶりとなる。
2023年10月に落成し、44両(4両×11編成)が製造された。
2024年4月6日より運用開始。
当初は下り「やくも5・7・11・21・23・27号」、上り「やくも4・6・10・20・22・26号」の6往復に充当。同月28日より12・13・28・29号、5月7日より2・3・16・17号と順次本数を増やしていき、6月15日以降は全定期列車が273系の運用となった。これに伴い381系は同日の1号をもって定期運用から離脱した。
車内チャイムは山陰地方発のバンド・Official髭男dismの曲が起用されており、上り・岡山方面はPretender、下り・出雲市方面はI LOVE…がそれぞれ流れる。
外装
宍道湖に沈む夕陽の鬱金(うこん)色、たたら製鉄の黄金(こがね)色、大山夏山開き祭のたいまつのような銅(あかがね)色、そして赤瓦の町並みの赤銅(しゃくどう)色の4つの色を基本に作られた「やくもブロンズ」という銅色をベースにしており、鉄道車両では珍しいメタリック塗装を採用している。
ライトは287系のものを縦に引き伸ばしたような形となっており、前照灯も横配置から縦配置になっている。
先頭車は基本的に貫通形だが、分割・併合で使用しない先頭車は片側の貫通扉が塞がれた状態となっている。
内装
在来系列とは明らかに趣の異なる意匠が採られており、シートモケットは普通車が緑/青緑、グリーン車が赤/黄色となっている。また、各車両に大型荷物スペースが設置されており、この部分の窓が潰されている。
新たな設備として、クモロハ272の連結面側には「グループ席」なる2または4人用サロンルームが設けられた。座面を展開することでフルフラット化することも可能。
全席コンセント付・Wi-Fi装備。
振り子装置
381系電車(国鉄→JR東海・JR西日本)で採用された自然付振り子方式や、2000系気動車(JR四国・土佐くろしお鉄道)以来全国各社の車両で採用されてきた制御付自然振り子方式をさらに発展させた、「車上型の制御付自然振り子方式」が国内で初めて採用される。
これはJR西日本・鉄道総合技術研究所・川崎車両の3社が共同開発し、本系列で初めて実用化するもので、車上の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、適切なタイミングで車体を傾斜させることにより乗り心地を向上させる。
要するに、地上設備への投資なしで振り子制御が可能というものである。また、在来の制御式振り子車と比べても「乗り物酔い評価指数」という何だかよく分からない値が最大23%低減されるらしい。その謳い文句に恥じず、在来の振り子式車両と比べても格段に滑らかで繊細な振り子制御を実現している。
なお導入に際しては空気バネを用いた車体傾斜式との比較検討が行われており、実際にJR四国から8600系を借りて伯備線で試験運転が行われていた。しかし圧縮空気の消費が激しいことや乗り心地の悪化が問題となり、空気バネ式は不採用となっている。