概要
四国内での高速道路網発達に対抗するため、特急列車の速度向上を狙って開発された振り子式気動車(ディーゼルカー)。振り子式気動車としては世界初、制御付振り子式車両としては日本初となる。車両形式はJR四国ではじめて4ケタ形式が与えられた(以降のJR四国における新形式車はすべて4ケタ形式を使用している)。1990年に鉄道友の会よりローレル賞受賞。
土讃線などカーブの多い区間は振り子を使用し、瀬戸大橋線などカーブが少ない区間は振り子を使用しない。
相互直通運転の関係で第三セクターの土佐くろしお鉄道も同じタイプの車両を保有していた。
この車両の開発まで、“世界的には”レシプロエンジンの気動車に振り子式を含めた車体傾斜機構を搭載することは不可能と考えられていた。というのも、重量の大きいレシプロエンジンはカウンタートルク(エンジンブロックが出力軸と逆方向に回転しようとする力)が大きく、車体がそちらに傾いてしまうと考えられていたからである。
(このレシプロエンジンのカウンタートルクを狙って利用したのが、旧日本軍の戦闘機パイロットが使った「右捻り込み」である)
では2000系が何故振り子機構が可能になったのかと言うと、床下にエンジンを2基搭載することでそれぞれのエンジンのカウンタートルクを相殺する(同型エンジンを背中合わせに積んでいるので、出力軸の回転方向は逆になる)ようにしたからである。
ちなみにこのエンジンの搭載方法はキハ10系の2エンジン車キハ50形・キハ51形以来のもので、2基のエンジンがカウンタートルクを打ち消し合っている効果があるのはキハ20系のキハ52形100番台による試験ですでに解っていた。
なお後の実験でエンジン1基でも問題ないことが判明し、故障などで車両のやりくりがつかない時には1エンジンでの運行を行っているという。
車両区分
本形式を大まかに分けると次の通り。
上記を踏まえた製造両数の内訳は次の通り。
区分 | 非貫通型先頭車(下り方) | 半室グリーン席・非貫通型先頭車(下り方) | 貫通型先頭車(下り方) | 中間車 | 貫通型先頭車(上り方) |
---|---|---|---|---|---|
試作車「TSE」 | 2001 | - | - | 2201 | 2101 |
量産車 | 2002~2011 | 2151~2157 | 2202~2219 | 2102~2123 | |
N2000系試作車 | - | - | 2458 | 2424 | |
N2000系量産車 | - | - | 2459~2463 | 2520~2523 | 2425~2429 |
土佐くろしお鉄道保有 | - | 2030 | - | 2230,2231 | 2130 |
改造・廃車など
- 試作車「TSE」は1990年の量産車登場後に量産化改造を受けているが、前面の黄色の警戒色やヘッドマークがない点、2001号車が半室グリーン席になっていない点など量産車と異なる箇所が多い。
- その試作車「TSE」は2018年3月ダイヤ改正にあわせて定期運行を終了、廃車となった。
- N2000系試作車の2424号車・2458号車はN2000系量産車とは前面形態が異なるが、塗装はN2000系量産車と同一のものに揃えられた。
- 量産車の2008号車・2218号車は2005年に列車衝突事故のため廃車となった。代替新造は行われず既存車の転属で対応。
- 量産車の一部はアンパンマンのアニメキャラクターに関連した装飾が施された「アンパンマン列車」となり、運行ダイヤも「アンパンマン列車」専用となっている。車両検査の時は通常カラーの量産車に1両ずつ差し替えられる。なお、土佐くろしお鉄道所属車は当初、JR四国所属車と共通運用で1両単位での運用が組まれていたが、後に4両全てが「アンパンマン列車」となり、4両編成単位での運用が組まれるようになった。土佐くろしお鉄道所属車は2020年に全て2700系へ置き換えられた。
- 2009年から先頭車(一部を除く)を対象にリニューアル工事を実施。中間車はリニューアル工事の対象外で、対象外となった車両は2700系に置き換えられることになっていた。
- キハ185系より車齢が浅いものの走行距離の大きさで酷使され、それによる経年劣化が進行していたため、リニューアル車含め廃車が進んでいる。
使用列車
2019年3月改正
- 特急「宇和海」
- 特急「南風」、「しまんと」、「あしずり」
- 特急「ミッドナイトEXP高松」(2018年3月改正以降は土曜日のみ)、「モーニングEXP高松」(2018年3月改正以降は日曜日のみ)
- 特急「うずしお」
2021年3月改正
運用範囲が縮小され、「宇和海」と「あしずり」のみとなっている。
関連項目
JR四国 2000系 TSE N2000系 気動車・ディーゼルカー 特急 それいけ!アンパンマン・アンパンマン JR四国2600系・2600系・2700系
キハ283系:JR北海道の振り子式特急車両。車体の軽量化と走行路線の過酷な条件が災いし経年劣化が激しくなり、大半が引退し、現在は振子不使用の特急に転用。