概要
宅配便などの小口積み合せ貨物輸送のモーダルシフトを図るべく2003年(平成15)年に新製、2004年3月に運用開始されたJR貨物の動力分散式貨物電車(直流区間専用)。車両の製造は日本車輌製造、川崎重工業、東芝の3社が分担した。
現在、佐川急便が1列車貸切輸送する形で運用しており、搭載するコンテナの所有者も佐川急便となっている。なお、運行区間は東京貨物ターミナル駅(JR東海道本線貨物支線。東京都品川区)~安治川口駅(JR桜島線。大阪市此花区)間である。
2005年度鉄道友の会ブルーリボン賞受賞車両。貨物車両としては初の受賞となった。(※貨物車としては国鉄EF66形電気機関車以来2例目)
編成
先頭2両と最後尾2両がユニット編成の電動車、中間の12両は2両を半永久連結したユニット編成の付随車の計16両編成となっており、形式につけられる記号は英字となっている。各ユニットは先頭車を除き密着連結器を採用している。(先頭車、最後尾の運転台側のみ並型自動連結器)
製造両数は、Mc250+M251ユニットが6ユニット12両(3編成分)、T260+T261ユニットが15ユニット30両の42両で、16両編成2本と予備車10両の構成となっている。
電動車
シングルアーム型のパンタグラフを各電動車に1基ずつ搭載しており、専用の31ftコンテナ(※)を1つ積載できる。VVVFインバータ制御の1C1M方式。インバータの素子にはIGBTを採用している。なお、駆動方式はWN駆動である。
編成内ブレーキ装置は電気指令式空気ブレーキとなっており電動車では電制併用機能、付随車を含めると滑走抑制・応荷重制御機能もついている。電制については機関車牽引の貨物列車と同様に、同形式の配属区間・運行時間帯では回生ブレーキが安定した制動力を発揮できないことと旅客列車に比べると積載重量・編成質量ともに大きいため発電ブレーキを採用している。
※・・・31ft ≒ 9.4m
Mc250
運転台つき電動車。主幹制御器は左手ワンハンドル式マスコンを採用しており、運転台の計器盤には走行に必要な計器類のほかに各ユニットからの車両情報を表示するモニタがある。
パンタグラフは運転台の上に1基ある。
M251
中間電動車。Mc250とユニット編成を組んでいる。パンタグラフは付随車寄り側に1基ある。
付随車
専用コンテナを2つ積載できる。
T260
東京寄り付随車。
車両情報端末装置を装備しており、ユニットを組んでいる側のT261と本車の車両情報を運転台のモニタ装置へと送信するようになっている。
T261
大阪寄り付随車。
最大運行速度
JR西日本管内では車両規定の制約により、コンテナが満載にならなかった場合は死重(単なる重り)をつんだ事業用コンテナを積載する。
表定速度は91㎞/hと高く、東海道本線の東京~大阪間を走破した歴代の列車で最速となった。
(これまでは東海道新幹線開業前の特急「こだま」が最速記録【表定速度約85km/h】を保持していた)
余談
通常、JR貨物の機関車の所属表記は所属機関区の頭文字1~2文字の差し込み式プレートで表示しているが、M250系は電車ということで電車と同じく所属区の電報略号を車体に表示している。
ちなみにM250系はJR貨物関東支社大井機関区所属であるが、車体表記は『貨東タミキク』となっている。これは電車・気動車・客車・貨車に表示される所属表記では最も長くなっている。
なお、『東タミ』の表記自体は一部のコンテナ貨車(コキ100系列)の所属表記ではJR貨物関東支社東京貨物ターミナル駅常駐として扱っており、『キク』(『機関区』の電報略号)をつけることで、東京貨物ターミナル駅に同居している大井機関区を表すことになった。
(大井機関区は本来は乗務区であったが、M250系が初の車両配置となった)