車両概要
1979年に登場した京都市営地下鉄烏丸線への乗り入れを前提に設計されていた車両で、様々な試作的要素が取り入れられていた。車体材質はステンレスで制御方式は電機子チョッパ制御を採用するなど近鉄唯一の特徴があった。また、登場時点で日本国内では唯一の東急車輛製造以外の車両メーカーが製造した、オールステンレスカーでもあった。これはオールステンレス構造車両の製造ノウハウの殆どをアメリカのバット社が権利を持っており、東急車輛製造はそのバット社のライセンス使用許可を受けて製造していたためであり、当形式はそのバット社のライセンスに抵触しない形で設計製造されている。(それ以前の東急車輛製造以外が製造したステンレスカーは車体外板のみステンレスのスキンスレンレスあるいはセミステンレス構造)
車両組成は4両で、かつてはク3502形を切り離して3両で運転することも可能だったが、モ3002形が運転台を撤去したことにより4両固定になった。また、ステンレス製の欠点である加工の困難さが仇となり、乗務員室跡の空間が残っていた。
ブレーキは全電気指令式空気ブレーキを近鉄で初採用したが、在来車との互換性がなかったため、1991年に電磁直通ブレーキに差し戻し改造されるまでは他の車両と連結することができなかった。また、登場時は運転台はデスクトップタイプのものを採用していたが、それも改造により在来車と同様のものに変わった。
最初に戻るが、京都市営地下鉄烏丸線への乗り入れは同線の京都駅~竹田駅間の用地の買収が困難で当初の計画から遅れたため、当系列の登場から10年弱経った1988年6月に実現となった。その当時、VVVFインバータ制御の電車の実用段階だったために当系列の特徴を踏襲する必要性がなかったことから、烏丸線への乗り入れは大型押出型材を使用したアルミニウム合金製車体でVVVFインバータ制御方式を採用した3200系を導入することになった。そのため、当系列は烏丸線への直通運転の準備の過渡期である存在だった。
しかし、当系列は試作的要素が多かったために2010年以降、制御装置の不具合が起きる車両故障が多発し、ほとんど運用されなくなり、2012年2月20日に休車となり、同年6月に廃車。当系列は形式消滅した。
現在はク3501形の先頭部のカットモデルが高安検車区に保存されている。静態保存されない事が多い近鉄の車両としてはレアな事例だが、前述の製造技術面で見れば技術資料としての価値が高い。また、高安には18400系のカットボディもある。
関連項目
近畿日本鉄道 近鉄 近鉄京都線 近鉄橿原線 3200系 近鉄3200系
ステンレス 205系(東急車輛製造以外の車両メーカーも量産した最初のオールステンレスカー)
201系(同年に登場した電機子チョッパ制御方式の電車。)